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ピザとビールさんのレビュー一覧

投稿者:ピザとビール

紙の本君たちはどう生きるか

2015/10/28 11:26

子供も大人も読むべき本

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1937年(昭和12年)初版の本を、著者が二度改訂しており、これは1967年の二度目の改訂後の本。岩波文庫からは初版のものが出ている。そちらは表現や内容は古いが詳しく、それはそれで味わいがあるが、あえてそちらを苦労して読まなくてもこのポプラ社の本で内容の奥深さ、著者の考えは十分伝わってくる。子どもが天に愧じない大人になるための視座の持ち方を平易に書いている。岩波の後書きに丸山真男が書いているとおり、経済学・社会学に通じる話を学問の論から演繹して書いたようなブキッシュな内容ではなく、子どもの体験を子供の視点で書きながら、それがどんな意味をもつのかという学問上の命題に結びつけていくところに吉野のすごさがある。

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紙の本フラニーとズーイ

2016/08/11 03:04

知能と美貌に恵まれながら精神的ジレンマを抱えるフラニーと、そこから解放してやろうと試みるズーイ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

知的水準が高くかつ精神的に早熟であるがゆえに、世間が間違っているんだと叫びながら、人とうまくコミュニケーションが取れなくなっているフラニーと、彼女を、その精神態度の危険性から(母から言われてしぶしぶながらも)解放しようと試みる兄ズーイ。母、兄、妹の三者の会話を軸に、七人兄弟の上の兄たちによって知らず知らずのうちに埋め込まれた精神態度の特異性とそこに至った経緯を、飛び石のように断片として提示してゆき、読者を物語に引き込んでいく。

頭脳明晰で美貌に恵まれたフラニーがかかえる大きなジレンマと、その解決策として「世間の人びとに正しさを求める」のではなく、「豊かな現実」をありのままに受け止めてその中でいかに生くべきかを追求すべきなのだ、という宗教的なテーマを、サリンジャーは兄ズーイのセリフを通して読者に投げかける。

読んでいて、ヒンドゥー教の寺院に掲げられている「栄光の顔」の話を思い出した。世界をなぎ倒して来た悪魔が最高神シヴァに無理難題を押し付けてきたときに、シヴァ神は第三の目を光らせて新たな悪魔を呼び出した。その新たな悪魔に食い殺されそうになった最初の悪魔は、シヴァ神に「慈悲」を乞い、守ってもらった。呼び出された新たな悪魔が、「では私はどうしたらよいのだ」と訊ねると、シヴァは「おまえ自身を食えばいい」と答え、第二の悪魔は自分の足、手、胴体を食って顔だけになった、という話である。これが示唆することは、すべての社会は矛盾に満ち、不平等であり、また悪意や悲しみに満ちているということ。学ぶべきは、そうしたありのままの現実の中でいかに生くべきかということであり、社会を直そうとしたり、苦しみも悲しみもない世界を創り出したりことではない、と神話学者ジョーゼフ・キャンベルはいう。

なお、新潮社が開設した「フラニーとズーイ、特設コーナー」で訳者の村上春樹は、この物語はサリンジャーが宗教に傾倒していたときに書いたもの、と解説している。

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紙の本風の歌を聴け

2016/05/14 04:07

文体の心地よさ+後段で明かされる事実で前段を読み解く面白さ

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この文章は一体何を意味するんだろう? と一読しただけでは疑問に思うが、再読してモチーフが見えてきた。九本指の女が子供を堕ろしたことが後のほうで明かされ、前段の行動の謎(一週間ほど「旅行」に行くというのは、堕胎手術を受けることを意味する)が解けるという構成になっている。彼女はその深い心の傷をかかえながら、「僕」の部屋に半ばアクシデント的に転がり込んでしまい、「僕」と淡いやり取りをする。「僕」への好意も多少なりとも芽生えるものの、それが深い傷の裏返しなのかどうか判然としない。堕胎という「死」と呼応するように、以前付き合った彼女の死などのエピソードが盛り込まれている。つまり堕胎というモチーフに沿って、以前付き合った三人の彼女の話や、産道の暗喩(火星)の話などが配置してある。

会話、音楽、ビールなどを組み合わせてスタイリッシュに書いている。文章はリーダブルで心地よい。でも心地よさの中に悲しみが隠されており、作品の奥は深い。村上春樹自身、「どれだけスタイリッシュに小説を書いていこうと前もって決心していても、書いているうちに内部から否応なく湧き出てくるものというのはやはりあるんですよね。それが設定されたスタイルを内側から突き崩していく。それこそが小説の与える基本的なスリルです」と『若い読者のための短編小説案内』で述べているが、このデビュー作で見事にそれを実現している。

また、エッセイ『職業としての小説家』で、このデビュー作『風の歌を聴け』は、当初書いたものに納得できず、冒頭一章分ほどを英語で書いてみてそれを再度日本語に翻訳した――「翻訳といっても、がちがちの直訳ではなく、どちらかといえば自由な「移植」に近いものです。するとそこに必然的に、新しい日本語の文体が浮かび上がってきます。それは僕自身の独自の文体でもあります。僕が自分の手で見つけた文体です。(中略)とにかく僕はそうやって新しく獲得した文体を使って、既に書き上げていた「あまり面白くない」小説を、頭から尻尾までそっくり書き直しました。小説の筋そのものはだいたい同じです。でも表現方法はまったく違います。それが今ある『風の歌を聴け』という作品です」(同書)と、この作品が生まれた経緯を紹介している。

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真贋ものがたり

2015/10/18 02:38

復刻してもらいたい良書

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本物を見ること、焼物とその歴史を研究することを生業とし、普段はその関連のことについて書いているその道を究めた著者が、副次的に避けがたく贋物も大量に見てきており、それならいっそ美術の「真贋」をテーマにした本を書いてみようか、と取り組んだ本。

著者はあとがきで、実体験をもとに書こうとしてから文章の流れがよくなったと述べているが、まさしく後半、とくに最後の部分にかけてぐいぐいと引き込まれて行く筆ののりだ。

美術品の鑑賞に関して、テレビの人気古美術鑑定番組よりさらに深掘りした内容となっており、また「究めた人」にとっては素人が、マニアが、それぞれ美術品を見ることについて、どんな風に感じているのかを疑似体験できるような書きぶりで、とても興味深い本である。このような良書は是非復刻してもらいたい。

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紙の本自負と偏見

2015/10/01 10:55

なるほどこれは名作

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最初の三分の一は「女の噂話」を活字にした小説を我慢して読む、という捉え方だったが、途中から俄然のめり込み、個性的な登場人物たちの世界に引き込まれた。

「神の視点」で、登場人物の心情が各々書かれており、それぞれの積極的意志がぶつかる中で、どう展開するのか、と読者に期待させる。そこが事件らしい事件は起こらない中で、先を読ませる文章の力になっている。また、特にMrビングリーの台詞に代表されるイギリス的な皮肉とユーモアは、特筆に値し、この本のもう一つの大きな魅力となっている。

人を誤解し、偏見の目でみてしまっていた、という状況をうまく描き出しているが、「嫌な相手が好きな人に変わる」という単純な青春物テレビドラマのパターンではなく、「相手に対する誤解が解けると、同じものでもこんなに違って見える」ということを鮮やかに描写していて飽きさせない。

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紙の本未必のマクベス

2015/08/21 11:17

人に薦めたくなる秀作

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新聞の書評欄を見て購入したが、著者の描き出す世界に予想外なほどどっぷり浸かって堪能した。ミステリー/サスペンス系の立てつけになっているが、それのみでなく、初恋(?)の思いを淡く、時に濃くサスペンスに溶かし込んで、読み手である自分のノスタルジックな感情を揺すられる。人に薦めたくなる秀作である。

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紙の本1973年のピンボール

2016/05/14 04:10

この小説に埋め込まれた暗喩――私の解釈

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僕と鼠と双子の姉妹が「現在」の主な登場人物。そして「過去」に付き合っていた直子。彼女とは、1969年から1973年(大学2年から社会人2年目)の間付き合って、彼女が死んでしまったということを胸の内に抱え込みながら、現在通訳をやっている自分の生活を描いている。双子、ピンボール、バーテンダーのジェイ、親友の鼠、通訳の仕事と事務所の女の子という日常の情景を詩的な文章で綴っている。

この物語を一つの大きな暗喩の提示だとすると、「スペースシップ」というピンボールマシンは、付き合っていた直子という女性を表し、最後に50台のピンボールマシンを集めた倉庫に行くというのは、彼女が現在勤めている異質な世界(夜の稼業?)に会いに行ったという解釈ができる。「スペースシップ」でゲームを行うことは彼女との性行為のメタファーだ。そう解釈するなら彼女はもちろん現在も死んでおらず、15章に出てくる傍線が引いてある部分はそういう世界に行かざるを得なかった彼女に対して、無力(経済的に?)な自分は何もしてやることが出来なかったということを表現しているのではないか。双子の姉妹について人物造形が立ち上がって来ないように描いているのは、直子への思いが強く残っているからその後付き合った女の子はそのようにしか見えなかったことを表している。

というのが私の解釈です。

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