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先月(2017年6月)

okadataさんのレビュー一覧

投稿者:okadata

39 件中 1 件~ 15 件を表示

クールでは無いミステリアス・ジャパン

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いやあこれは爽快、バブル崩壊後に日本にメガバンクは四つあれば良いと書いた元アナリストで、現在は寺社仏閣などの文化財修理会社小西美術工藝社社長のデービット・アトキンソンさんの日本社会への提言。日本はまだまだ遅れた部分がある、だからそこを伸ばせば成長できるとこういうストーリーだが日本社会へのだめ出しっぷりが気持ちいい。

例えば非科学的なことを大真面目に語るミステリアスジャパニーズ現象の数々
メガバンクの頭取がプライベートバンキング部門を新設するとコミット、どれだけ人員を割きますかという問いへの答えは「5人!」、しかし日本人アナリストは「買い」推奨(笑)なぜかというと「頭取の目つきがいつもと違っていた!」だ。日興銀の頭取は合併を主張し、その根拠として「利益も少ないし、含み益はあるけど人も店舗も少ない、しかし実態を無視して株価は高い」と説明するアトキンソンさんに「この興銀の廊下から壁から。これまで日本経済を支えてきた産業界、経済界の人々のパワーが出ている。それが利益に反映されていないだけだということが、株が高い理由です」だと。元々銀行幹部はアナリストは「俺が言ってることを黙って書けばいいんだ」という態度だったらしいがそれは外国企業には通じないわなあ。

そんなアトキンソンさんの日本の現状の基本認識はこうだ。日本の一人当たり購買力平価GDPは世界25位、先進国ではアメリカ10位、ドイツ17位フランス、日本、イギリスが24〜26位だ。世界一の技術大国だというならアメリカやドイツに並んでいないとおかしい。

GDPに占める輸出入の割合が小さいのは成長のための大きなポイントになる。輸出ですら世界シェア3.9%でドイツの半分以下だ。そしてここからが本題で観光業には大きな可能性があるが日本は観光客が望むものを理解しているとは思えない。「お・も・て・な・し」を勘違いするとせっかくの資源が無駄に終わるよと言う話。アトキンソンさんは裏千家で茶道をやっておりお茶の基本は「もてなすための臨機応変」だという。普通の町の人の小さな親切の方がおもてなしとしては本筋なのだ。

イギリスでは観光客の多くが文化財を見に来るのに日本の文化財保護予算は余りにも少ない。しかもアトキンソンさんの修復には国産漆を使いましょうと言う訴えはなかなか受け入れられなかった。ただコストを下げろといのではだめで、観光客はその世界を取り巻くストーリーを体験しにくるのが「文化」なのだと。そして観光業が雇用も経済成長も呼ぶのだ。日本の予算はイギリスの1/10しかなく入札が無防備で工事終了後の検査制度がなく、つまりちゃんとした仕事もやっつけ仕事も入札金額でしか評価されていない。

アトキンソンさんの重要な指摘は「シンプルアンサー」を求める人が多いことだろう。アベノミクスで景気が良くなるとかもそのわかりやすい例だ。サッチャーもレーガンも効果が出るまで5〜7年はかかっていた。15年度の税収は予算を上回り54.5兆だとか。新規国債の発行は4兆円減らして37兆円。そして文化財保護費用は81億ほどで、観光業収入は149億ドルとマカオの1/3以下。だからといってカジノやIRに飛びつくのが「シンプルアンサー」だ。観光地でお金を落とす国民で日本に来ているのはアメリカと中国くらい。オーストラリアやヨーロッパのリピーターが来る様な施策が必要だ。外国人観光客が日本に来て食べたい料理はステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼き、お寿司、鉄板焼きと言う順。イメージとの違いはやはり数字に基づいた分析と細かい改善を積み重ねていくしかない。

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電子書籍地震は必ず予測できる!

2015/10/24 22:55

地震も火山もGPSでわかるのか

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

地球の表面は絶えず上下左右に微妙な動きを続けている。測量学の専門家である村井氏が同じく航空測量学の専門家の荒井氏に誘われGPSを用いた地震予知の研究を始めたのが2002年ごろ、日本に1300ヶ所ある電子基準点のGPSデータが一般公開された頃だった。北極と南極を結ぶ自転軸をZ軸とし赤道上で直行するX軸とY軸で地球の中心を基準とした座標を表す。この方法で地表の動きを記録し続けたところが2003年の十勝沖地震の時に明らかな前兆現象が見られたのだ。

しかし、特許を取ろうとすると座標の面積の反転現象は井戸水の水位の反転現象が知られていると拒絶され、そもそも「三角網を使った地震予測など誰でも考えられる」という拒絶を受けた。地表で行う三角測量とGPSを使った絶対座標を一緒くたにされてしまっている。また、地震学会も冷ややかでどうも審査官が地震の専門家だったようだ。自分たちもできていない地震予測の特許を門外漢に取らせたくないということか。

昔から週刊誌に時々のる何年後に地震が起こる確率何%と言うのは「グーテンベルグ・リヒター則」と言うのが元になっている。小さな地震が起こる確率と、大きな地震が起こる確率の比は常に一定だと言う経験則からきており、小さな地震が続くと大地震の確率が高まる。まあこれでは意味のある予測にはなりそうもない。

ようやく取れた村井氏の特許を用いた研究は元教え子が勤めていた電力会社で2007年から3年間の実証研究として実施された。その結果2000年から07年までの8年間、日本と近海で起きたマグニチュード6以上の地震162回を全て調べた結果全ての地震に前兆現象が見られたのだ。そして3・11についても村井氏は1ヶ月前に前兆に気がついていたという。前兆現象があっただけでなく東北地方の太平洋沿岸のかなり広い地域で日本海溝に向けての変位が閾値を超えていたのだ。

しかし村井氏がアドバイザーを務める会社の親会社は公表を禁じた。外れれば会社は信用を失うし、公表自体がパニックを呼ぶかもしれない。それでも発表すべきだったというのが村井氏の後悔になっている。

東日本大震災の後でも日本地震学会は「地震の予知は現時点では非常に困難」と宣言し役所も地震予測はしても良いが「役所としては民間人の予測は占いとして扱う」と言った。転機になったのは2014年3月9日のMr.サンデーに出演し、南海地方に3月末までに来ますと明言し、5日後に伊予灘でマグニチュード6.2の地震が発生したことだ。

村井氏のメルマガ「週刊MEGA地震予測」の読者は一気に増えたが果たして役所や電気会社はこの予測を元にして方針を変えることは出来るのだろうか。地震の前後で地面がどう動いたか、普通に考えれば地震との相関はあるに決まっている。予測の精度を上げるのはまだまだ難しいことがあるのだろうが。しかし例えば東日本大震災と同じような前兆現象や座標の変位があったとしたら無視できるものではない。

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リーマンは倒れた、そしてAIGが焦点になる

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2008年9月12日CNBCにテロップが流れた。「関係筋によると、リーマンの問題解決に公的救済はない模様」13日土曜日、ポールソンがウォール街の全CEOを招集し冒頭でポールソンはこう言った。「週があける前に、何らかの解決策を見いださねばならない。公的資金注入はその答えではない。あなた達だけで解決してもらう。」買い手の2社は支援なしでは資金は出さない。その片方のバンカメCEOのケン・スミスもここにおり、参加者は全て状況を知っている。もしリーマンが倒れたら次はメリルリンチ、そしてモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス(GS)と破綻は連鎖する。この日のメンバーではないがAIGやGEも危ない。メリルもバンカメとの合併に意欲を見せておりもしバンカメがリーマンを助けたら今度はメリルが窮地に陥る番だ。7月にGS出身の財務次官ロバート・スティールがCEOに就任したワコビアも危ない。AIGの方は新たな損失が見つかり資金は600億ドル必要と見積もられた。

14日朝、イギリスのバークレイズはリーマンのバッドバンクに他の銀行が330億$融資すれば残りを買収することを表明していた。CEO達は拠出を決意しリーマンは救われるかに見えた。しかしイギリス政府はアメリカの金融危機を持ち込むのを嫌い許可しなかった。なぜアメリカ政府が何もしないのにイギリス政府がリスクをとる必要が有るのか・・・

ついにプランBがスタート、連銀は貸し出し枠を拡大する準備を始めたがそれをリーマンに利用させるとモラル・ハザードが拡がるためその日の内にリーマンに破産申請させる必要が有った。政府に破産を強制する権限はないのだが。もはや時間も策も残されていないリーマンの取締役会はこの日の夜遅く破産を決定し、15日にチャプター11を申請した。その裏では1株29$と言う金融業界市場最高のプレミアでのバンカメのメリル買収が決まった。

16日午後1時連銀の繋ぎ融資が受けられなければAIGは後数分でキャッシュ不足で破産するところまで追いつめられていた。AIGは世界的な金融システムの事実上の要であり、もし破綻すると世界中の金融機関のレバレッジを支えたCDSの保証が消えあらゆる銀行が資金調達の必要に迫られる。さらにAIGは世界中で8100万件の生命保険を発行しその総額は1.9兆$を越える。AIGの破綻は大恐慌を再来させかねない、まさしくTOO BIG TO FAILだ。連銀はAIGにLIBOR+8.5%と言う高金利で850億$を貸し付けたがその後のAIGのモラル・ハザードはオバマ大統領のボーナス奪還宣言によく知られている。

ポールソンは9月19日に不良資産救済プログラム(TARP)を発表し、10月3日下院の再審議でようやく可決された。とにかく各銀行に先ず資金援助を受け入れてもらう、そうしておかないとTARPを利用する銀行は危ないと狙われるためだ。TARPの準備金は7000億$(70兆円)。2008年9月24日に成立した麻生内閣の景気対策が75兆円、09年度の当初一般会計予算が88.5兆円だ。

のちにポールソンはリーマンを救済しなかった理由を定期的に修正している。最初は警告のため、そして後にはその権限がなかったと。それでもバークレイズをつなぎ止める手は残っていたしモラル・ハザードがなくなったわけでもない。このように批判される部分はあるにせよよくこれだけの手を打ったものだ。ブッシュ大統領が全く金融システムを理解しておらず、ポールソン、ガイトナー、バーナンキ達に丸投げだったことは幸運だったのかもしれない。麻生政権の景気対策も使い道はともかく非常時の対策としてはもっと評価されるべきなのだろう。鳩山内閣のぐだぐだ進行が1年前に始まっていればと考えるとちょっと怖い。

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元素変換は追試で確認されている

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「セシウムがプラセオジウムに、ストロンチウムがモリブデンになるということなら、タングステンからプラチナがつくれるんじゃないですか?」「できてますよ。」

1989年ユタ大学で発表された常温核融合は世界中にセンセーションを起こし、結局追試による検証が出来ず全面的に否定されるに至った。発表したフライシュマン等は電気化学の専門家ではあったがユタ大学の広報策にのって「とにかく常温で核融合が起きた!」と反応してしまった。日本では有馬朗人博士ー原子核物理学者で東大総長、そして後の文部大臣ーが否定的な見解を示したため学会は概ね否定的だったが一部の研究グループは1990年代から科研費を得て研究を続けていた。その中の一人が三菱重工所属の岩村康弘氏だった。岩村らが2004年3月に凝集体核科学国際学会の第1回ジュリアーノ・プレパラータ・メダルの第1回の受賞を受けたことからもわかるように元素変換の世界では日本が研究をリードしている。

一般的な核融合反応は高温高圧でプラズマ状態にして反応を起こす。この本で紹介される元素変換は常温で電気分解を基本技術としておりそこは常温核融合と共通している。

1994年NEDOが事業母体となり「新水素エネルギー実証試験プロジェクト」が当初予算総額40億円で発足した。化学反応では説明できない過剰発熱があるなら使いたおそうと言うのが表の命題でさらに年間1億円が裏アジェンダである地道な基礎研究に振り分けられた。マスコミは常温核融合はなく、このプロジェクトは失敗したと報道したが研究者ははっきりした核変換現象や多くの反応による生成物を確認していた。STAP細胞とは違い理論的な解明は出来ていなくても現象は追試され確認されていたのだ。

岩村が利用したのは「重水素透過法」と言う方法で核変換の対象元素をスパッタ薄膜にし、そこに電気分解で発生した重水素を通過させ固体上で核変換を起こす。プラズマ状態の重水素同士をぶつけるより固体中を通過する原子の方が衝突確率が高いので温度を上げなくていいというのがアイデアだろう。加圧と真空やイオン透過を利用した電気化学的な方法で水素濃度を高めたことにより収率を高めることにも成功した。岩村はNaturen投稿するが拒否され、Japanese Journal of Applied Physics(JJAP)にようやく受理された。しかしこの時も日経サイエンスが半ページの記事にした程度で全く注目を受けていない。それほどまでに常温核融合へのアレルギーと有馬氏の否定発言の影響が強かった。

三菱重工が核変換に何を期待しているかと言うと原子炉メーカーらしく放射性廃棄物の無害化だ。とかく悪者になりがちな原子炉メーカーだが放射線廃棄物処理を独占できれば利益も大きいし会社のイメージと言う点でも申し分ない。残念ながら2002年以降重工も基礎研究経の資金を減らしてしまい、岩村も途中から研究から外されそれでも週一で異動先の高砂から横浜の研究所に通い続けた。安定元素のセシウムやストロンチウムはすでに核変換は実証されているがまだサイエンスレベルで廃棄物処理に使えるめどは全く立っていない。あわてて実用化を目指すより反応のメカニズムを解明することが優先される段階だ。それでも理論的には代表的な放射性廃棄物であるストロンチウム90を安定で有用なパラジウムに変換することは可能だ。現状では希釈して海に流すしかないトリチウムも電気分解で濃縮しもしこれが核変換に利用できれば効果は大きい。1兆円単位で増加する燃料費のことを思えばもう少し国家予算を付けてもいいんじゃない。100万年単位の放射線廃棄物処理を100年単位にできるかもしれないのだから。

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日本にとっては厳しい評価

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モルガン・スタンレーで250億ドルを運用するルチル・シャルマが世界経済の脈を測りたい時にチェックするのは、ロンドンでも、フランクフルトでも、東京でもない。ソウルだ。過去50年の平均経済成長率が5%を上回ったのは韓国と台湾のみで世界の経済レースにおける金メダリストだ。韓国の一人当たりGDPは28千ドルを超え、アベノミクスで円安になった日本の33千ドル(2011年比で3割ダウン)に並びかけようとしている。金融危機の後創造的破壊から生まれ変わった韓国をシャルマはブレイクアウト・ネーション(現状を突破できる国)の筆頭候補に挙げている。一方で日本に対する評価は厳しく、ブレイクアウトを忘れた方がいい国だ。

中国に対する幻想
賃金が上がり組み立て産業としての国際競争力を無くしつつある中国だが内需の拡大で質的転換を図り経済成長を続けるというのが中国政府の方針だ。しかし、この30年間中国の消費支出は年平均9%近いペースで伸びてきた。高度成長期の日本より1ポイント高く絶好調時の台湾に匹敵する。GDPに占める消費の割合は40%とまだ低めだが、それは単に投資の伸びが大きすぎるだけだ。中国の成長が減速しても製造セクターは他国にシェアが奪われるだけで世界経済が地殻変動を起こすことはない。

インドの魔術
インドの富裕層の純資産の対GDP比率は17%、ロシアの29%ほでではないが中国の4%を大きく超える。縁故主義がはびこりビジネスにおける決定的な要因が政府との正しいコネの有無になっている。しかもチャーチルがかつて言ったようにインドは国というより地域と捉える方が実態に近い。インド合衆国では州ごとの地方政府の影響が強いのだ。またインドでは州ごとに売れ筋が違う。どうやらインドと言うマーケットはないらしい。人口ボーナスを享受するためには農村から都市への人口の移動と農業から工業への転換がつきものだが政府の福祉政策のために村から離れたがらない。それでも出発点の低いインドはこれからも発展する。

ブラジルはあまりにもインフラ投資がなくGDPの僅か2%。需要はあるのにインフラが整備されていないために供給が追いつかずインフレに苦しむことになる。天然資源のコモディティー頼りの経済では投機的な資金が流れ込み、投資に回らない。フォーシーズンズの宿泊費を比べるとモスクワが924ドル、サンパウロが720ドルイスタンブールが659ドルと続く。同じく資源国のジャカルタは230ドルで、KLは160ドルだ。ロシアとともにコモディティー価格が下がり始めこれからは苦難が待っている。

ブレイクアウト・ネーションの候補は韓国を始めとしヨーロッパのスイートスポットであるポーランドとチェコ、イスラム教とうまく折り合ったトルコ、コモディティーから得られた金をしっかり国内投資にまわしたインドネシアなどだが忘れてはいけないのが製造業に回帰しつつあるアメリカだ。

ルチル・シャルマは机上の投資家ではなく、毎月1週間を新興国で暮らし、現場の話を聞いている。過去10年は多くの国が追い風に乗って反映してきた。しかしこれからは違う。「風がなければ、自ら漕ぎ出せ」投資家のルチルからすればそれを実践してきた韓国の評価が高く、できるだけ現状を守ろうとしてきた日本の評価は低い。

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通商を中心にした近代国家の成立

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1説によると4000万人を殺したというチンギス・カンや元寇からモンゴル帝国・元は「文明の破壊者」という野蛮なイメージがある。最も悪者イメージを持つのは中国史においてだ。科挙の廃止なども文化の破壊として取り上げられている。しかし、どうやらこのイメージは多くが清の時代に作られた様なのである。満州族の清は漢人から夷狄と呼ばれるのを嫌がり少しの批判でも処刑した。その鬱憤が元の悪口に向かったと言うのだ。

1260年チンギスの孫の時代、第四代モンゴル帝国皇帝モンケの弟フレグがシリアに侵攻中にモンケの崩御の報せが届いた。兄クビライの即位を聞いたフレグはイランにフレグ・ウルス(国)を立ち上げた。アフガンあたりにはチャガタイ・ウルス、中央アジアからロシアにかけてのジョチ・ウルスそしてモンゴルから華北に広がり南宋を滅ぼすクビライの大元・ウルスと書くとモンゴル帝国が分裂した様に見えるが元々遊牧民族は緩やかな連合国家のようなものでクビライは大元・ウルスのカンでありモンゴル帝国のカアンとなったのだ。

クビライについては37才で表に出るまで目立った記録が残っていない。しかし帝国を代表する姻戚集団と譜代集団の長が義兄にあたりこの集団を代表する形で力を持ったらしい。クビライは科挙を廃止する代わりに実力主義でアラブ商人や江南の水軍、中華の官僚制度と何でもとりあげ世界貿易システムを作り上げた異才である。モンゴル騎馬軍団の武力、直轄する当時最も豊かな中華特に江南の経済力、そしてその富を循環させるムスリムの商業力がその力の源泉である。

大都(北京)を首都にしたのも明らかな理由がある。中央アジアと中華の接点だけであれば北京と言う場所はあまりにも辺境によりすぎている。しかし西安になく北京にあるものが水運だ。また当時世界最大の都市だった杭州を結ぶ京杭大運河を復活させたのもクビライだ。クビライの構想では海上の通商網が重視されているだから北京が首都になったのだ。同時に陸上交通網も整備され中央アジアの全ての道と駅伝網は夏の都、上都につながっている。

戦争の手段もなかなか独創的である。華北の地は北宋の時代に金と南宋の時代にすっかり荒れ果てており騎馬軍団が長期に軍をおける場所ではなくなっていた。さらには黄河、淮河、長江が横たわりこれを越えるのも大きな問題である。華北地域の荒廃が万里の長城以上の大きな壁になっていた。クビライは黄河沿いの開封を根拠地として漢水上流の襄陽を包囲、しかしまともに城攻めはせずやっているのは土塁を築いて少数を残し、籠城側が攻めて来たら飛び道具で追い払うという黒田勘兵衛の様な戦だ。

元寇自体が南宋攻略の一環であり、実際に主力となったのは江南の水軍である。当時人類史上最大の外洋大艦隊でありもし元寇が成功していたらと想像してみるとおそらく日本の自治は大元の統治の元で守られていただろう。役立たずと見られた制度は廃止されたかも知れないが博多が大元や世界との貿易港として栄えイスラム商人もやってきていたことだろう。

クビライの政策が受け継がれていればモンゴル帝国による大航海時代が生まれており、日本の姿も大きく変わっていたに違いない。モンゴルを追い出した明は紫禁城を造り北京を引き継いだが、鄭和の大艦隊は長続きせず北京を攻められた影響もあり万里の長城にエネルギーを注いだ。そしてモンゴルが活用したイスラムの海商ルートはルネサンスを経たヨーロッパが跡を継ぐことになった。

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紙の本キャプテンの責務

2015/10/25 08:45

見習うべきは何か

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外務省のHPによると2003年以降の世界全体の海賊事案発生件数は200〜450件の間で推移しており、そのうちシージャックの発生は10〜20件程度だったのが2008年から2011年までは50件ほどのシージャックが発生した。この間増えたのはほぼソマリア沖、アデン湾のもので海賊事案全体の半数、そしてシージャックの8割ほどを占めていた。国際的な取り組みにより2012年以降は海賊の発生を抑えており、2014年の場合9月までの累計で事案が10件、シージャックは0となっている。現在海自の護衛官2隻が派遣され1隻はアデン湾を往復しての護衛を行い、もう1隻は割り当てられた海域の警戒活動を行っている。ほかにP−3C哨戒機も2機派遣されており不審な船舶の情報提供を行っておりこの活動は同海域における警戒活動の6割を占めている。

2009年3月30日リチャード・フィリップスは船長としてオマーン南岸の港町サラーラに停泊中のマースク・アラバマにキャプテンとして乗り込んだ。インド洋に面するサラーラからアデン湾の奥、紅海に入る手前のジブチを経由しそこからソマリアをぐるっと回ってケニアのモンバサまで3ヶ月間がリチャードの仕事場となる。この航路はいつも天気がよく、停泊する港も興味深い場所ばかりでお気に入りの航路だった。17トンの積み荷の内5tは国連世界食糧計画によるルワンダ、コンゴ、ウガンダ向けの支援物質で全てケニアのモンバサかタンザニアのダルエスサラームを経由して陸路で運ばれる。ソマリアの海賊は元漁師が貧困のために海賊化したと言う話もあるが2008年以降は成功率の高さに眼を付けた組織的な海賊が主流となっている。

学生時代はどちらかと言えば悪ガキでタクシーの運転手をしているときに一番チップの払いのいいのが船乗りだったと言うのがリチャードが船乗りになったきっかけだった。海事学校で規律を叩き込まれ、そしてリチャードは口うるさく手強いボスになった。ある甲板長がリチャードに最高の賛辞を贈ったことがある。「あんたは面倒くさい上司だけど、おれにはあんたが言うことが言われる前にわかるんだよ」

マースク・アラバマでのリチャードの最初の仕事はビールを求めて先を急ぐ船員を捕まえきちんと船の様子を聞いておくことだ。次いで乗船して初めの数時間船内を点検して回ると船中の扉と言う扉が開きっぱなしで侵入柵にも鍵がかかっていない。セキュリティが少し緩んでいた。4月2日リチャードは1等航海士のシェーンに「今日は抜き打ちで海賊対策訓練をやろう」と言った。たいていの航海士なら「ええっ、船長、それ、やらないといけませんか?」と言うところだがシェーンは違う「抜き打ち訓練ですか、いいですねえ」

5日にジブチについて6日に出航し海賊の影が見えたのがこの日だった。そして8日ついに海賊のボートにおいつかれ放水もむなしくはしごを用意した海賊4人が乗り込んできた。リチャードと二人の船員が人質になるが、シェーンや機関長のマイクは訓練通りに船内に隠れ船の機関と運行は渡さない。他の乗組員の捜索に行く中で一人の乗組員はうまく隠れ、続いて海賊のリーダーを逆に仲間が捕えた。そしてここからがリチャードの粘り強い戦いが始まりだった。ここからが物語のクライマックスだ。

キャプテンの責務とは何か?リチャードのモットーは「われわれはみな船のためにここにいる。われわれのために船があるわけではない。」だが実は続きがある。「ただ、船長は乗組員のためにここにいる」だからリチャードは仕事となったら面倒くさいと言われようととことんやる。おそらく見習うべきなのは海賊に襲われるまでのところなのだろう。

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制度は変えられる、しかし容易には変わらない

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「世界には四種類の国がある。先進国、発展途上国、日本、アルゼンチンだ。」ノーベル賞経済学者のサイモン・クズネッツの有名な言葉だそうだ。1914年のアルゼンチンは50年ほどの経済成長を達成し世界で最も裕福な国の一つだった。しかしその後は独裁主義と民主主義の間を行ったり来たりした。民主主義と言ってもペロンの正義党は巨大な集票組織による利益供与の賜物で権力は著しく集中していた。そして2001年には経済危機を迎え先進国から果て得ん途上国へと滑り落ちていった。

日本は逆に19世紀中頃までは中国とともに鎖国政策の元で停滞していたが完全な中央集権の中国とは違い、薩摩藩が琉球を通じた交易で密かに力を蓄えていた。日本の明治維新が成功しより包括的な政治制度へと踏み出したのに対し、なぜ太平天国の乱や辛亥革命は収奪的な制度を維持してしまったのか。藩の独立性が高かったことで説明しているのだが藩内部の構造は収奪的で独裁的だったのではないのか。明治維新後は中央集権制の下で少なくとも民主化が進んでいる。徳川家を打倒した後薩長内戦が起こり、薩摩独裁政権が生まれても不思議ではない。しかし現実は坂本龍馬の船中八策と言う当時の常識ではかなり急進的な政策が採用され政治制度が生まれ変わった。

歴史的な記録は近代化が必ずしも包括的な制度に結びつかないことを示している。20世紀初頭豊かな工業国として発展したドイツと日本でナチスドイツや日本の軍国主義の拡大を防げず弾圧的独裁政権と収奪的制度に屈し工業化はそれを支えてしまった。敗戦後の日本がアメリカ主導で民主化に一機に向かったのはアメリカ国内の例をみると必然だったとも言えない。そのアメリカの収奪的な制度の名残は今でもまだある。1901年に書き直されたアラバマ州憲法256条は現在でもこう述べている。「議会は、公立学校制度、公立学校の資金の割当制度、白人の子供用と有色人種の子供用の別々の学校を創設し、維持する義務を負う。(中略)どちらの人種の子供も、もう一方の人種用の学校に通ってはならない。」この憲法を削除する修正案は2004年に州議会で僅差で否決された。南部ではプランテーション農業は存続し、差別的な法律がいくつも成立した。これらの制度が崩壊しだしたのは1950年代からの公民権運動によるものだ。

アフリカの植民地の大半では奴隷制は20世紀になっても存続した。しかしアフリカにも包括的な制度を導入できた国がある。ツワナ人の国ボツワナは南アの北にあり、西はドイツ支配下のナミビア、東にボーア人支配のトランスヴァール(現南ア)やセシル・ローズのローデシア(ジンバブエ)に挟まれていた。これらの勢力の拡大を防ぐためにイギリスが支配したが植民地化には値せず出来るだけ手をかけない方針だったがツワナの三人の首長はよりましな方、イギリス人の支配の強化を求めた。1895年チェンバレンの言質を取りイングランドを遊説し庶民の支持を得た。またコットゥラと言う集会所では成人男子の総会が開かれ誰でも発言が出来る。そして実力が認められれば誰でも首長になれる。

ここで得られた結論は制度は変えられると言う楽観論でもあり、しかし容易には変わらないと言う悲観的な見方でもある。現在の中国のように収奪的な制度化であっても一定期間の経済成長は歴史上多く見られた。包括的な制度が永遠に続く保証はなくメディアや国民の監視によってなんとか続けていくものなのだろう。そして収奪的な独裁制の下での持続的な発展が続いた例は歴史上ない。

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銃・病原菌・鉄だけでは説明しきれなかったことがある

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ジャレド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」で文明発祥と伝播には栽培可能な穀物や家畜が反映する社会を生んだ原動力となり東西には伝播しやすく自然環境の異なる南北には伝播速度が遅いと唱えた。それは一つの強力な仮説だが本書の調査結果によると歴史的に野生の牛や豚が棲息した地域の分布はヨーロッパからアジアの非常に広い範囲に及び米の原種はインドから東南アジアにかけて広く分布している。小麦の原種も肥沃な三日月地帯だけでなく地中海東岸からイラン、アフガン、中央アジアの「スタンズ」にまで広がっている。ダイアモンド自身も「文明崩壊」で同じ島でありながら崩壊しつつあるハイチと発展を目指すドミニカの違いを書いている。また、ニーアル・ファーガソンは西洋文明が優位になった理由を「競争、科学、所有権、医学、消費、労働」とまとめた。

それに対して本書では北朝鮮と韓国、フェンスを挟んで貧富の差が激しいアメリカとメキシコのノガレスなどを上げながら地理や気候と経済的成功の間には単純な、あるいは持続的なつながりはないことを明らかにしていく。そして政治制度が包括的で多元的であれば繁栄の好循環を生み、収奪的で独裁的であれば貧困の連鎖を生むとしている。包括的な市場と言うのは個人の権利が尊重され、権力者による搾取がない市場、包括的で多元的な政治制度とは参政権が広く開かれ、色々な考え方が許容される政治制度と考えればいい。産業革命がイギリスで生まれたのは偶然ではなく、イノヴェーションが個人の利益を生むと言うモチベーションが後押しした。

しかしイングランドで包括的な制度が生まれたのは偶発的なものだった。1688年の名誉革命によって王権の制限や多元的な制度を求めた商人達を含むグループが勝利したがイングランドで包括的な制度が力を持つにはまだまだ時間がかかり、ラッダイト運動でイノヴェーションに対する抵抗に会っている。それを黙認したのはイノヴェーションにより政治権力が脅かされることを怖れた権力者だ。17世紀には王家や貴族は専売制の独占権の分配によって収奪的な制度を維持しておりこれが国家の大きな収入源だった。1642年独裁的なチャールズ1世に対抗した議会はオリヴァー・クロムウェルの指揮の下王党派を破りチャールズ1世を裁判にかけて処刑したがそれはただ、クロムウェルの独裁を生んだだけだった。議会はオレンジ公ウイリアムとメアリを招き立憲君主制を成立させた。王と議会の力関係が代わりより多元的になったわけだ。

「発見」された当時のアメリカ大陸では現在のアメリカとカナダの人口密度が最も低くこれだけでも地理説は力を持ちにくい。どこで差がついたかと言うとアメリカの入植はことごとく上手くいかず入植者に所有権と参政権を与える試みだけがうまく働いたのは収奪するほどの先住民がいなかったということでもある。メキシコや南米に入植したエリートは強制労働を元にした植民地制度を享受していたからだ。そしてクーデターはあっても制度は維持された。アメリカ合衆国が楽園とは言えずとも世界最大の経済大国になった成り立ちには自由主義や民主主義が大きなモチベーションとなったことは間違いはない。

では共産党一党独裁の元で収奪的な政治制度の下で繁栄する中国はどうなるのだろうか。収奪的な制度の下で経済的な発展を達成するケースはある。中央集権制がない政治制度よりはまだ条件としては整っている。「漢江の奇跡」の韓国の政治が包括的制度に移行したのは1980年代盧泰愚政権の時だ。しかし著者の見立てでは中国が韓国の様に包括的制度に移行する見込みは薄い。

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ベア・スターンズは既に倒れた。次はリーマンだ。

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008年9月12日夜ニューヨーク連銀にウォール街の銀行のCEOが集められた。議題はライバル会社であるリーマン・ブラザーズをどうやって救うか。政府の支援はない。5大投資銀行のうち最も弱く、最もリスクの高い(レバレッジの大きい)ベア・スターンズは既に倒れた。サブプライムローンなどの債券はひとまとめにされ、それから切り刻まれ、またまとめられてCDOという債券に仕立て上げられた。理論上はリスクを分散することで低格付けのCDOを組み合わせて出来上がったCDOは格付けが上がる。しかし、分散したはずのリスクはつながっていたためサブプライムローン市場の崩壊で金融システムそのものが崩壊の危機に陥った。

コロラド大学の将校養成プログラムで弱いものいじめをする教官につっかかって放校処分になったファルドが上巻の主人公であり、雑用係のバイトとして入ったリーマンでスタートレーダーでAMEXに買収されるまでの8ヶ月間、クーデターを起こし会社のトップに立ったグラックスマンに見いだされた。94年にAMEXがリーマンを放り出した際ファルドはCEOに抜擢され後のCOOである盟友ジョー・グレゴリーとともにアグレッシブな取引でリーマンを成長させた。このグレゴリーの人事が後に色々問題を引き起こすのだが直感に従い、後にリーマンを救おうと奔走する債券部門のトップ、ハーバート・マクデイドを専門外のエクイティ部門に移動させ、ブロンド美人(写真を見る限り?キャリアウーマンっぽくはある)のエリン・キャランをCFOに据えた。キャランは実力を見せようと張り切るが元は税務が専門でプレゼンは上手かったが破綻間近のCFOとしては適任ではなかった。人情家で激しやすいファルドは人事には関わらず、後にはグレゴリーやキャランを切ることも上手く出来ない。リーマンに投資する機関投資家はいくつかあったが最終的にはファルドが主導権を握りたがり、リーマン株を高く売りつけようとしたが為に全てご破算になっている。拡大期には戦闘を走る魅力的なリーダーだったファルドには負け戦の殿軍の指揮は向いておらず、実際にリーマンが破綻する下巻では存在感を失っている。

金融危機を救おうとするポールソン、FRBのバーナンキ、ニューヨーク連銀のガイトナー、ビッグ・ファイブやシティ、JPモルガンといった商業銀行のそれぞれの立場で物語は進むがリーマンと並んで大きな位置を占めたのがAIGだった。AIGは会社の破綻に備える保険(CDS)を売り出し、大きな収益を上げていたが金融システムが破綻すると保険金の支払いは不可能になる。この本では「空売り屋」のヘッジファンドは名もなき悪役だが、マイケル・ルイスの「世紀の空売り」ではアンチヒーローとして描かれており、むしろ問題なのは無謀なレバレッジをかけてリスクを膨らませた投資銀行や破綻が足下に来ているのにCDSの販売をやめなかったAIGの方だ。原題の「TOO BIG TO FAIL」はリーマンではなくAIGに代表される複雑に絡まり合った金融システムそのものだが連鎖破綻を防ごうと資金注入すると、無謀なリスクをとった人達に高価な報酬を与えることになり、報酬を制限すると人員が逃げ出し問題の解決が遅れてしまう。政府としては何をどうしても批判は避けられない。

上巻で最も納得がいくのはオマハの賢人バークシャー・ハザウェイのウォーレン・バフェットの投資哲学だ。投資相手を検討してもし疑問点が余りにも多ければ例え答えが用意されていても投資しない。わからないものには手を出さないに限る。複雑な債券化商品を売り出したCEO達は自社の資産の時価を計算することが出来ず方針を誤った。

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現代の宝島はどこにあるのか

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世界の貿易取引の半分以上が、少なくとも書類上はタックスヘイブンを経由している。全ての銀行資産の半分以上、多国籍企業の海外直接投資の1/3もオフショア経由だ。タックスヘイブンと言うとケイマン諸島のような産業のない島国が思い浮かぶ。本書の原題はTreasure Islands、宝島だ。しかし現代の宝島があるのは意外な場所だった。

税率が低いと言うことだけがタックスヘイブンの要件ではない。むしろ法人の設立が容易で「誰が」その法人の実質的な持ち主なのかわからない守秘法域であることが金を呼び寄せている。世界の守秘法域で中心的な役割を果たすのは3つの地域で1つめはスイスに代表されるヨーロッパ、2番目はシティ・オブ・ロンドンと大英帝国につながるネットワーク、3番目がアメリカでそれ以外の地域はあまり重要ではない。多国籍企業はタックスヘイブンに利益を落とし、租税条約にもよるがタックスヘイブンの低い税率を払った後で配当金を送れば企業にとっては合理的で合法的な税金対策になり、配当に課税されるとしても少なくとも送金しなければ税金の繰り延べ=政府からの借金と同じ効果を持つ。銀行もオフショアを利用して準備金規定や他の規制を回避し借り入れを増やし信用を拡大した。オフショアからの借り入れと利息の支払いがプライベート・エクイティのビジネスモデルの根幹になっている。コスト(利息)はオンショアで課税所得から控除し、利益は税金のかからないオフショアにおちる。

第二次世界大戦終了時に7億人以上の外国人を支配していた大英帝国の領土は1965年にはわずか500万人に縮小していた。経済の中心はアメリカに移るが57年の時点ではポンドは世界の貿易の40%を占めていた。イングランド銀行の外国為替部門の責任者ジョージ・ボルトンがやったことは傍目にはわかりにくい。55年頃からミッドランド銀行(現HSBC)が為替管理令に違反する米ドル預金を受け入れていた。政府が銀行に対してポンド建て国債融資に制限をかけられるように規制をかけた際、銀行は単に融資をドルに切り替え、そしてイングランド銀行は規制をせずなおかつ他国からの規制も防いだ。これがユーロ市場というオフショアの誕生だ。1986年の金融ビッグバンはこのビッガーバンの付け足しだというほどだ。そして大英帝国が崩壊した後に残った海外領土は守秘法域としてシティのネットワークにつばがり、金融帝国がひっそりと生残った。

アメリカの銀行は2005年まで海外の犯罪資金を自由に受け入れることが出来た。マイアミは中南米向けのスイスだった。アメリカは従来貸し出し金利を厳しく規制していたのだが78年に新しい時代が始まる。州ごとに決められた上限金利に関して税率18%のネブラスカの銀行が12%のミネソタ州の住民に貸し出す、つまり金利を輸出することが合法だと裁定がおりたのだ。つまり一つの州が上限金利規定を廃止すればそれは事実上全米に波及することになる。これに眼を付けたのがデラウェア州知事のピート・デュポン、80年に再選されたデュポンはデラウェア記入センター開発法に署名しカードやローンの上限金利は撤廃され、住宅差し押さえの権利を手に入れた。事務所はオフショアの守秘法域に守られさらには逆進的な税制度も受けられる。アメリカの公開企業の半数以上、フォーチュン500企業の2/3がこの州で登記されている。

結局のところ現代の宝島の所在地はシティとマンハッタンだった。中国は上海に続いて天津、福建省、広東省にも自由貿易区を作ろうとしているが実際に進められているのは金融の自由化だ。この本を読むと汚職の金を送金しやすくするのが目的のように思えてくる。

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光あれ

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進化の歴史を辿ると5億4400万年前には動物の門は3つしかなかった。その後わずか4〜5000万年ほどで外骨格を持つ動物が門を越えて多数現れた。この本ではほぼ現在の38の門が全てこの時期に出そろったと言う説をとっている。これがカンブリア爆発だ。カンブリア爆発が起きた原因については例えばスノーボールアース説などさまざまな説が存在するが残念ながら全て有力な反証があり説明できていない。この本では眼の誕生が進化を促したという説を唱えている。

5億4300万年前の三葉虫の化石から彼らは誕生とほぼ同時に複眼を備えていたことがわかっているがその100万年には眼はできていなかった。ダーウィンが「比類のないしくみをあれほどたくさんそなえている眼が、自然淘汰によって形成されたと考えるのは、正直なところ、あまりに無理があるように思われる」と書いたカメラ眼の誕生にはどれほどの世代が必要なのか。出発点である皮膚の斑点=原始的な光受容器からカメラ眼に達するまで1世代当たりの変化率を0.005%と控えめに設定すると魚類のカメラ眼に進化するまで40万世代もかかっていない。1世代1年だと50万年足らずで眼が誕生するのだ。網膜のタンパク質はより原始的な眼点や他の感覚受容器に共通しており、神経も他の感覚のものを流用できる。三葉虫以前の捕食者、クラゲやイソギンチャクは偶々獲物が通りかかるのを待つだけであったが、三葉虫は眼の発明によって獲物を探すことが出来るようになった。補食による淘汰圧がいきなり高くなるとそれぞれのニッチでの適応が始まる。能動的な捕食者がボディプランや外形の変化を促したわけだ。

多くの動物だけでなく植物も擬態をしたり、色やダンスでパートナーを誘ったり、光ったり、花粉を運んでもらうために鮮やかな花を咲かせたりしている。特定の形状や色が子孫を残すために有利になるような圧力が働いた結果であるが眼が誕生してしまえば視覚が最も汎用的な情報であり光ほど影響力の強い刺激はない。また一般に栄養豊富な環境下では生物量は増えるが多様性は減る。栄養豊富な北極海の氷の下では膨大な量のプランクトンがクジラを育てたりしているが色彩は貧栄養な環境のサンゴ礁の方がカラフルなのはニッチな環境に淘汰圧がかかると変化が促されるからだ。逆に光が届かない洞窟の奥では眼が退化したり、体色がなくなったりするのはそこにエネルギーを使うのが無駄だからだ。例えば深海にすむオオグソクムシは1億6千万年の間ほとんど進化してこなかった。環境の変化が小さく色の変化のない深海では淘汰圧が働かない。

カンブリア爆発が起きた浅海の動物達がどんな色をしていたのか。復元図が示されているのだが体毛や殻の表面に回折格子が出来ていて鮮やかな虹色を示している。実際にアンモナイトの化石は金属的なオパール光沢ー真珠を想像してもらえばいいーを備えている。虹色のメリットは詳細には説明されていないがおそらく保護色として働く効果があったのだろう。アマゾンのエンジェルフィッシュの銀色の体も散乱光の中では姿を隠す働きをする。

では一体何が眼の誕生を促したのか?これまた明確な答えはないがカンブリア紀の地表や浅海は現在よりももっと暗かったと考えられている。例えば空気中の水蒸気量が減ったためか、太陽系が宇宙塵の多い銀河の腕から抜け出たためか定かではない。ただ世界が明るくなったのがきっかけではないかと言う。スノーボールアースからは3200万年の開きがあるので氷が溶けてもまだ世界は暗いまだだったのか。答えはよく分からない。

宇宙論のビッグバンも生物進化のビッグバンも最初の一言は「光あれ」だったのかも。

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オイ、ヴェイ、ヴェイ。・・・・

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雷に打たれ命を取り留めた替わりにいきなり音楽に取り憑かれた男、金管楽器の低音に反応しててんかん発作を起こす船乗りと言った様々な症例を紹介するオリバー・サックスは「レナードの朝」の原作で有名な神経学者だ。

歌手がよく音楽の力を口にするがどうも一定の条件では本当に力を持つ。言葉を話せなくなった失語症の患者が音楽にのせると会話ができるようになる事がある。なんと話しかけても「オイ、ヴェイ、ヴェイ。・・・」を繰り返す自動症の患者に音楽に乗せて問いかけると答えが帰ってくるようになった。「コーヒー、それとも紅茶?」「コーヒー」・・・「デイヴィッドは治っている!」彼の食事を持って帰りこう告げた。「デイヴィッド、朝食だよ」「オイ、ヴェイ、ヴェイ。・・・」

絶対音感を持つ者がいれば、音楽を認識できない人もいる。4~5歳で音楽の訓練を始めた場合ちなみに中国人の6割は絶対音感の基準を満たしたのに対し、普通のアメリカ人の場合わずか14%に留まった。声の高低を使う声調言語が音感を鍛える様なのだ。絶対音感のある音楽家の脳は側頭平面の大きさが、左右で大きく違っており、赤ん坊の方が絶対音感に頼るところが大きいことから「大部分の人間は絶対音感をなくし、音楽能力が縮小した」のかも知れない。とは言え絶対音感と美しい音楽を作る能力は別物だ。

生まれつきの視力障害の場合に聴力が発達するのは使われない視神経を聴覚に割り当てるからで、感覚神経は融通が効くものらしい。音色や言葉や数字に色を感じる共感覚はなんだか電話が混戦しているような話だ。特定の才能だけが飛び抜けている知的障害のサヴァン、「なぜ私たちみんなにサヴァンの才能がないのだろうか?」、胎児や乳幼児で弱い左脳が損傷を受けた場合、右脳が対照的に過剰発達をしてしまうのか。左脳が発達すると右脳機能の一部を抑制したり阻止したりするのだが左脳の損傷で変則的に右脳優位になる場合がある。

脳神経に起きているのはおそらく物理的な現象だがそれにしてもいろんなことが起こる。オリバー・サックスの新作は「見てしまう人々 幻覚の脳科学」すでにiPadの中で積ん読状態でこちらも楽しみだ。

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大量のメタデータはテロを防ぐことができたのか

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私があなたの行動を知りたいと思ったとき、電話の"内容"を盗聴する必要はない。あなたがかけた"電話"の記録をすべて見ることができれば、通話した相手がひとり残らずわかる。

2004年にNSAが令状を取らずに違法に盗聴しようとしたことをバラそうとしたニューヨーク・タイムズに対しに対し、ブッシュ大統領は執務室に呼びつけこの事実を明らかにするとテロリストを手助けすることになると、意味不明の主張を繰り返した。テロとの戦いで正当化されてきた"国家安全保障"の過度な濫用を改革すると誓って選出されたオバマもベビーフェイスにはほど遠い。長年の間オバマに肩入れしてきたアメリカ人ジャーナリストも今ではオバマを報道の自由に対する重大な脅威ーニクソン以来、最も弾圧的なリーダーーととらえるようになった。

外国諜報活動監視裁判所は通信業者Verizonに対しアメリカ国内、国際通信の通話記録をNSAに提出するように命じていた。この裁判所が1978年から2002年まで諜報活動が却下された件数はゼロ、その後10年で2万件以上の承認に対し却下は11件だった。ついで911を受けて制定された愛国者法により政府が企業の業務記録を入手する際に必要とされる基準が"相当な理由がある"から"関連がある"場合に格下げされた。さらにオバマは1917年のスパイ活動法を適用して7人の内部告発者を逮捕しており、これは成立以来前政権までに逮捕された人数の倍を超える。

ブッシュ政権でNSAを擁護したのは共和党員だったが、オバマ政権では今度は民主党支持者が擁護に回った。こうなると個人の人権ではなく敵味方の主導権争いでしかないのだが。

エドワード・スノーデンが明かそうとしたNSAの自国民に対する監視活動はマイクロソフト、グーグル等大手9社のサーバーから直接データーを収集するPRISM計画ーこの計画によってNSAはインターネット企業から欲しい情報をなんでも手に入れられるようになったーなどでスノーデンの動機はインターネット空間の自由を守るということになっている。

それではNSAの監視は対テロ戦争に効果をあげたのか。愛国者法の忍び込み条項ー相手に知らせることなく捜査令状を執行できる許可ーが適用されたのはほとんどがドラッグ関係で詐欺が1割未満、テロ案件はわずか15件と1%ほどだ。それにもかかわらず大量のメタデータを入手したことがテロを防いだという実例を司法省は一つも挙げられていない。

多くの御用メディアがスノーデンと著者のグレン・グリンウォードを攻撃した。NSAの監視に反対する一般のアメリカ人の多くもスノーデンの逮捕はやむなしと考えている。それでもスノーデンの暴露はアメリカを少し動かしかけた民主党議員と共和党議員が共同でNSAプロジェクトへの予算を凍結する法案を提出し、賛成205、反対217と僅差で敗れたものの賛成は民主党、共和党ほぼ半々の支持を得たのだ。

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50年後の1億ドルの為に今いくら金をかける?

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1900年と2000年を比べると、二酸化炭素排出量は20億tから300億t以上に増え、平均気温が0.8℃上昇した。大気中の二酸化炭素濃度は1960年代の310-20ppmから2010年には390ppmに上がってきている。問題はこの調子で二酸化炭素の排出量が増え続けた場合に2100年には平均気温が何度上がり、その結果としてどんな事態が起こりえるかなのだが色々なシナリオによるとさらに1〜3℃ほど上昇するとみられている。この本では世界の気温上昇を2℃に抑えるためには どういう方法が有効かを経済学的な視点から提案している。

気温変化に対する応答には臨界点があり例えばグリーンランドの氷床の融解についてのシミュレーションでは5℃の上昇では20%が融けるだけだが6℃になるといきなり80%以上が融けそれから温度を5℃下げても20%しか氷床は戻ってこない。正しい答えは2℃ではなく4℃なのかもしれないが、どこかに臨界点が存在する。アルベド効果と言って白い氷は光を反射するが氷が融けると黒い大地が光を吸収しより温度が上がりやすくなる正のフィードバックも起こる。

温暖化人移設に対する懐疑論も根強い。曰く、0.8℃の上昇は二酸化炭素が原因とは言えないし直近10年では温度上昇は見られず今後も上昇はしない、地球は寒冷化に向かっている、数℃の上昇は悪いことではないなど様々だ。クライメートスキャンダルについてはこの本では触れられていないが、懐疑論を後押ししたことは間違いない。ただそれでも臨界点を超えないように安全サイドを目標にするというのは納得がいける考えだ。

排出削減の方法は経済成長の抑制、エネルギー消費の削減、炭素集約度の低下(より排出の少ないプロセスに変える)、二酸化炭素の除去などが有るがここは経済学者らしく費用と便益を比較しながら提案している。まず50年後の損害が1億ドルとした際に現在削減策にいくらかけれるかを現在価値に割り引いて計算する。投資の回収では普通の計算だが現在の費用が将来の便益(損失の回避)になるので適切な割引き率が設定できれば良く著者は4%を使い14百万ドルとはじいている。政策がある程度効率的に実施された場合気温上昇を2.5〜3℃に抑えるために必要な費用は割引き率世界総所得の1%以下でこれは楽観的に思えるがアメリカをはじめとする参加率の高さが前提となる。

著者は削減策としてはキャップアンドトレードでも、炭素税でも参加国が導入しやすいもので良く、ただ重要なのは国際的に炭素の最低価格を決めることだと言う。(試算では25ドル/t)ただ燃費規制などはコストの割に効果がなく、例えば小型車よりもSUVに甘い燃費規制を導入すると消費者に大型車に乗るインセンティブを与えてしまいかねない。

費用便益分析の結果では気温上昇の損害額は温度上昇と正比例の関係に近く、費用は上昇幅を小さくしようとすると急激に上昇するため費用と損害額を足した総費用には極小値が生まれる。参加率の高い楽観的シナリオでは割引きなしで計算すると2.3℃上昇で費用は世界総所得の1%となり、消極的な国が削減策に参加しない現実的なシナリオでは3.8℃で4%となった。ただし損失を4%で割り引いて計算すると4℃で2.5%ほどになる。効率の鍵は割引き率ではなく参加率の方となる。

「生態系の価値はお金では表せない」とか「いかなる対価を払ってでも、ホッキョクグマを救わなければならない」と言う人もいるかもしれないが、アメリカ、中国、インドが参加しないプログラムは無力なので、経済的な分析は有用だ。中国でも排出権取引は始まったしそれ以前に中国人自身が温暖化はともかくPM2.5にはうんざりしている。むしろ問題はアメリカの方かも。

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