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  3. コピーマスターさんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年8月)

コピーマスターさんのレビュー一覧

投稿者:コピーマスター

26 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本殉教者

2016/05/10 01:08

これは本物

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

加賀乙彦氏はカトリックだとは知っていたが、クリスチャンが主役の小説は初めて読んだ。
「宣告」、「錨のない船」、「湿原」等、氏の作品は相当大部な印象があるが、これはわずか200ページあまりの、しかしとても力強い作品である。
ペトロ岐部カスイ(本書の表記)は、エルサレムを旅し、ローマで学んだ実在の日本人のイエズス会士である。
キリシタン弾圧の風が吹き荒れる日本にわざわざ殉教覚悟で帰ってきて、激烈な拷問を受けても最後まで棄教しなかったという信仰の人を作り上げた膨大な“積み重ね”が細やかに描かれていて感動的だ。
これは加賀氏の解釈なのだけれども、ペトロ岐部の「巡礼の旅」というのは、単なる個人的な好奇心や自己実現のためのものではなかったはずであるという思いが伝わってくる。冒頭は生硬な文章で始まるこの小説だが、いよいよ勢いをましていき、カスイの高揚感の頂点において、矢継ぎ早に迸り出るのは、ほかでもない文語調の聖句の数々であり、聖書のエピソードの語りのそれである。クリスチャンが読めば、決してこれが機械的な引用の羅列とか、創作行為の放棄と批判することはありえまい。これこそ爆発的な生の歓喜を共有するにふさわしい表現にほかならない。
この物語では、何か華々しく大げさな奇跡が起こるわけではない。カスイは、耳をすまして神の助けを静かに聞きわけ、主の恩寵に感謝するのである。われわれと同じ日本人の一つの魂、何よりも努力の人が、命よりも大切なものを命をかけて守り抜くことで、本当の命をただしく生きたのだという事実を教えてくれる。殉教者を描いているにもかかわず、明るい希望の光が差すような爽快な読後感に浸れる宝石のような一冊である。

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アブサン・ブームの再来なるか

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

終電を逃してしけこんだと或るバーのメニューに「アブサン」とあるのを見ておやっ?と思った。こんなの日本で飲めるのか?溶ける氷の周辺に妖しげな白濁を生じ複雑な芳香を放つそれは本物のアブサンだった。確か昔、ピカソの青の時代の絵画を見たことがあって、アブサン=貧乏画家が飲むアルコール度数の強い安酒で脳髄を破壊する印象があった。調べてみたところ、本場スイスで2005年に解禁されたそうで、今や本物のアブサンは、バーでも飲めるし、ネットでも買える酒になっている。(ただし決して安くはない!また常識的な範囲でたしなむ分には脳髄も破壊されない)
というわけで、アブサンについて気になっていたところに上梓された本書を見つけたときはほぼ即買いであった。そして正直なところ、本書は期待以上の内容であった。図版の多さ、記述の豊富さ、一つ一つの歴史的ストーリーの面白さ。傑作ノンフィクションとして久しぶりに一気読みである。これほど引き込まれたノンフィクション作品はサイモン・シンの著作以来の体験である。
なお、本書の原著は1988年が初版だそうで、今現在のアブサン飲みガイドではなく、主に歴史的な背景に迫ったものである。解禁前で、成分のツヨンの影響についてもまだ曖昧な時代に書かれたもので、本書の最後には著書が現地の密造酒を入手するシーンが出てくる。今となってはだが、本書はそういう先駆的ジャーナリズムの本なのである。
ワインやウイスキー、ビールの本はごまんとあるのに、アブサンに至ってはこれまで皆無であった。本書は日本でのアブサン認識に空白に風穴を開けた快挙といえよう。

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献身的に生きるルネサンス的エリート

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「日陰者ジュード」を彷彿とさせる表題につられて思わず手に取ってしまった本書は、ササルという著者の知人の田舎の開業医について、切れ味の鋭い写真と文章でつづったエッセイの傑作であった。
他人のために献身的に生きるルネサンス的エリートであるところのササル医師のストイックな生き方の孤独と苦悩、そして幸福とはどのようなものなのか。
医師という職業の不思議さ、職業の人生における不思議さ、結局のところマウントする場所と時間をひとつ選択せざるを得ない人生の不思議さ、自分と他者、貧困と富、個人と集団、肉体と精神。激しくぶつかり合うパラドックスまで話題を広げ、片田舎のふとした日常の一コマからインフレーション的に演繹していく壮大さには圧倒される。
写真と文章のリズムの饗宴がぴったりとはまり、まるで音楽のようである。だが同時にそれは結論や評価が確定した演奏後の音楽ではなく、まさに演奏中の音楽のそれなのである。
かくいう私も、正直に告白するが、本書の内容をすべて消化しきれているとはいえないし、この書の魅力をつたない言葉ではとても十分に形容し得えない。むしろ、この書物のレビュー欄を拙文で汚してしまうことに罪の意識を感じる。しかし、あえてレビューを書くのは、これがめまいを覚えるほどの凄みのある書物であることは間違いないからである。

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ハウツーでも行動心理学でもない一風変わった「ビジネス書」

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

HONZで絶賛されていたので、気になって読んだ。
これはビジネス書というより、理系ノンフィクションを読んでいる気がしてくる不思議な本である。
巷のビジネス書のように、商業道徳や精神論を説くのではなく、人はどのように注目するのか、注目の段階とトリガーについて論理的かつクールに説明している。
ハウツー本というわけでもない。
むしろ、この分野を本を読みまくっている人にとって、すぐに使える方法は少ないと思う。
たとえば「破壊トリガー」を挙げれば、どう「破壊」するかは結局自分で考えなければならず、他人の真似事など意味はない。
また、行動心理学の本というわけでもない。
この分野の本を読みまくっている人には目新しい発見は少ないだろうし、どうして人間はこういう行動パターンをとりがちなのかという興味への追及だけにとどまらず、むしろ、人間はこうだから、注目を惹くにはこういう方向性で仕掛けるべきだという話につなげているところがキモだ。
つまり一貫して「実利」につなげるためという目的意識で書かれている。
だから、やっぱり本書はビジネス書なのである。

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紙の本旅愁 下

2017/09/03 00:53

壮大な舞台仕立ての“自分探しの旅”

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

長い小説である。ちびりちびりと読んで、読んで、それでも遂には読了に至ったわけであるから、面白い小説であったと言って差支えなかろう。ただし読んでいて爽快な小説だったとは言えない。事実はその逆で、辛気臭いことこの上ない。辛気臭いからこそ面白い。いや有意義であるとでも言っておこうか。
横光利一は同じく岩波文庫で出ている短編集を随分前に読んでからこの『旅愁』が気になっていた。この岩波文庫版が出なかったら寸でのところで講談社文芸文庫版を読んでいたかも知れない。岩波文庫がこの小説を検閲前の稿で新刊で出したというのはアヴァンギャルドな所業だとおもう。現に『旅愁』の読者は多くないと思うのだが、さらに検閲前の稿となると或る意味ほとんどの人が初めて読むことになるわけで、岩波文庫がなぜ検閲前の稿にこだわったのかそのわけが知りたいという下心もあった。岩波文庫が単に奇をてらっただけでないことは上下各巻に主な変更箇所の対照表を附録掲載していることから明らかである。そこには如実に検閲を通すために変えたであるところもある一方判然としない変更点も多い。こういう大部で読後どこまでも覚えているものでもない筈だが、検閲変更箇所には、確かに読んだ記憶のある箇所が散見されるので、件の検閲がこの小説の味わいに与えた影響は少なからずあるのだろう。
この小説をやれ日本だヨーロッパだ、やれ信仰だ家柄だと高尚な論議にかこつけて結局は恋愛を描いているという向きもあるようだが、やはり本質的なのは恋愛でもなくて壮大な舞台仕立ての“自分探しの旅”であるように思う。本来『旅愁』とはそういうものではないだろうか。
主人公はひとり何か本質に迫ろうとしていて他の人とは違う感を打ち出しているようで論理基盤が脆弱で、まさに戦後七十余年経つも相も変わらず薄っぺらな日本人の頭のなかを覗き見てしまったようで何ともいえない不愉快さを感じてしまう。
ところで富豪の生活というのはうらやましい。船旅となるともっとうらやましく、ヨーロッパ旅行となると無茶苦茶うらやましい。加えてロマンスの一つ二つもあれば「爆発しろ」と言いたくなる。きっと現代の「豪華客船の旅」なるものもこんな風に面白くて有意義で、結局は凄く辛気臭くて、打ちのめされるものなのだろう。そういう私らはどうすればよいか。横光利一の『旅愁』を読んで消耗していればよいのである。

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電子書籍【全1-8セット】だがしかし

2017/08/02 13:01

読むと駄菓子を見る目が変わるマンガ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ギャグが面白いというレビューが多いようだが、このギャグはシュールなタイプではなく、小学生的ともいえるストレートなタイプ。ギャグマンガとしての評価は読者の笑いのツボによると思う。
むしろこの漫画の魅力は、
(1)駄菓子のうんちく(この商品は駄菓子か否かという、駄菓子性を議論するみたいな哲学的考察がいきなり始まったりする。今後、駄菓子コーナーを見る目が変わると思う。)
(2)深みのあるストーリー(一話完結だが、ストーリー性がある。田舎、父子家庭、跡継ぎ問題、出会いと別れなど、社会性というか人生のリアルな感じも漂っていて、メルヘンだけに終わらない深みがある)
(3)ほたるの圧倒的なキャラクターの強さ(「美少女」と書いてあるが、単純にセオリー通りにきれいに描きましたというという感じではない。じわじわ来る←嫌な表現だが)
にあるといえよう。
この手の漫画は巻を追うごとにダレてくることも多いので心配したが、むしろクオリティが上がってくるところがすごい。なのでセット購入がお勧め。

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紙の本萬葉集物語 改訂新版

2017/06/16 20:22

「万葉集+入門書」でググって出てこない極上の入門書

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ひょっとしてググって出てこないのは表記が「萬葉集」からだからかもしれない。
実は戦前からあるロングセラーだという。
(というわけで、ググっても出てこないのは、わが国の民にとって多大なる損失なのでここにレビューを書きます。長文です。)

本書のすばらしい点は、なにより最後まで読み切れる本であるということであろう。
とにかく情報の密度が高いのと、語りの美しさに魅了される。
一見、大き目の文字で「中学生・高校生以上」が対象ということだが、あなどってはならない。
読みながら、37歳のオジサンがこれはすごい本だと何度も感嘆させられた本である。
たとえば、124ページはこんな感じで始まるのだ。

新年のお喜びを述べ、友だちの幸いを祝い、また泰平(たいへい)の御代をことほいだ歌は、いつよんでみましても、気持ちのよいものと思います。そうしたおめでたい歌を賀歌(がのうた)ともうします。

※引用文中のカッコ内は本文中ではルビ。
この一文にて読者は「がのうた」というワードを初めて知ることになる。そして「ことほぐ」というようなワードがスッと出てくるこの感じ、この衝撃。ひらがなと漢字の使い分けの上品さも絶妙だ。惚れてしまう。

入門書として秀逸な点はまだある。
本文中、かなり丁寧にルビがふられているので読みやすい。難読な人名、地名が多々あるので、これは重要なことだ。
また、読んでいて本当に「分かった気になる」ということ。
それは、読まれた歌の内容、時代、地域、当時の人の生活、喜怒哀楽、さらには万葉かな、万葉集の研究史まで、さまざまな観点で解説されているからだろう。
本書の著者は、今はわからないけどとりあえず覚えなさいと勧める。きっと良さが分かるときが来るからと。
若者に対し、こういうことを言う先輩は信頼できる気がする。
歴史教科書も大きく変わる時代。昔の本というと内容の正確性が気になるところだが、実は本書は2008年に最新の研究成果をもとに改訂復刊されたものでロングセラーとはいえ決して陳腐化していない。復刊した出版社の英断と、著者、関係者の尽力には頭が下がる思いだ。

ところで「万葉集」について、全く知らない日本人も多いのではないだろうか。
恥ずかしながら私もそうだった。今も知っているとは到底言えないが、この年まで知らなかった恥ずかしさよりも、本書に出合えた喜びのほうが大きい。
読んでいて、幾度となく、子供のころの学ぶ楽しさを思い出したし、子供のころ食べた懐かしい味を思い出すようなやさしい気分に包み込まれた。
そう。「萬葉集物語」とはかなりの程度、私自身の物語でもあるのである。

万葉集を学ぶには、もっとポップな学生向け参考書とか漫画とかがいくらでもあるだろうが、格調高い本書で学べたことが何よりうれしい。
古代の歌といえば、中高生にとってはなんといっても百人一首ではないだろうか。
春過ぎて夏来にけらし白たへの衣ほすてふあまの香具山
知っていた。結構好きな歌であった。ところがである。いまは断然、万葉集バージョンな自分がここにいる。

春過ぎて夏来(きた)るらし白たへの衣ほしたり天(あめ)の香具山
(本書249ページ)

老若男女の読者をして万葉集ファンにならせしむに十分な入門書である。
なお、本書の造本も実に素朴で「ますらおぶり」で好ましい。

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ブコウスキーの文章は英語でもブツブツ切れてく感じなのか―「そうだよ」

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有名作家の翻訳が話題になることもあるとはいえ
文芸翻訳において圧倒的に大多数の翻訳者は認知されない存在であり
我々が見知るのは訳文の完成形であって醸成のプロセスではない。

それゆえ
放置しておけば人知れず消えて終う仕事や苦労話
翻訳者自身のとおっておきの「スゴ本」の類についての物語は
ゴマンとあるに違いない。

本書に寄稿している多数の翻訳者に共通するのは
同業者の牽制に躍起になるさもしい根性ではなく
翻訳の魅力をぶちまけたいという思いであり
先人達へのふかい感謝の念である。

これから文芸作品の翻訳に打って出ようと考えている人を対象に書かれた体でいて
翻訳作品を読む上でのヒントも多く載せられていると思う。

異なる言語に移し替えるというのがそもそも無理筋であることを常に念頭に置きつつも
足し算と引き算、言葉の持つ質量のバランスを調整して読者に届ける技巧の
職人芸、芸術、ロマンのすべてがここにある。

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ドーダ文士をドーダする鹿島茂

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この本の初出は朝日新聞出版のPR誌であるところの「一冊の本」の連載である。小林秀雄のドーダ論をリアルタイムで読んで面白かったという印象があったので、地元のジュンク堂の店頭で小林秀雄と森鴎外のドーダ本が単行本としてリリースされているのを見つけたときは誠に欣喜雀躍。エキサイチングな心持で即購入に至った次第である。
さて、本書は、成島柳北、坪内逍遥、森鴎外が1:1:2のカクテルである。白眉の森鴎外のドーダ論では、森鴎外vs坪内逍遥、森鴎外vs麦飯派(いはゆる脚気論争)、森鴎外vsナウマンという論争(むしろ森鴎外が一方的に難癖をつけたエピソード)から森鴎外の内部を完膚なきまで丸裸にする。ところが丸裸にしているのは森鴎外個人ではない。もっと拡張して森鴎外的なるもの、つまり明治から現在に至る日本人の思考方式の恥部をたたいているのである。鹿島茂氏は本書に於いて森鴎外というドーダな人物を徹底解剖することにより見事にドーダをかましている。それも堀江敏幸氏ばりの過剰な教養でノリノリに揶揄しまくっている。これはまさにGNUのような再帰的芸当であり、あまりの芸術的キマり具合に読んでいてハハハと声に出して笑わされてしまう瞬間が何度かあった。氏はドーダの快感に酔いしれるあまり、とうとう終盤に至り海外通販番組か酩酊親父の繰り言を彷彿とさせる無限ループ状態の様相を呈しており、これはもはや書物として破綻寸前な放送事故ならぬ出版事故である。兎に角、本書を読了した暁にはわれわれ日本人にしかと森鴎外的ドーダが内包されているという驚愕の知見が得られること必至である。
P.S.尚ほ、鴎外の鴎の字は違うのは承知ですが、いざPOSTするときに、「レビュー内容に使用できない文字」と怒られてしまったので、この表記で我慢されたい)

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激しくも“かぶれ”る

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新しい音楽、新しい絵画、新しい詩に直面する当時の文士たちの興奮が伝わってくる。思えば本書はノンフィクションのはずが語り手の山田登世子氏がいつしか七五調になっているせいもあったかも知れぬが…。とりわけ関心なのは明治・大正の日本人がフランスの単なる猿真似にとどまるにはあまりも才能が有りすぎたせいであろうか彼らが異文化の急速な吸収と行動力をあますところなく発揮するところはには目を見張るものがある。「明星」や「スバル」に始まり上田敏や堀口大學の訳詩に至ってはもうひとつのパラレルワールドであろう。芸術の新しい潮流をも商業目線な受容に収斂してしまいがちな昨今の軽薄な傾向とは一線を画す激しい没入というものがここにある。斯ういう深め方というのは戦後の武田泰淳や竹内好の中国に対する向き合い方に通ずるものが感じられる。古き日本人というのはこれほど恰好よく「かぶれ」ることができたのであってその才能とバイタリティーと文化的強靭さには羨望を感じざるを得ない。さて本書のような硬派の書物を完読できたのには山田登世子氏の美文の力によるところも大と附言しておきたい。

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紙の本はじめての短歌

2016/10/13 01:40

詩歌には詩歌の言い分があるわけで。会社よりも詩歌が重要。

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二度見した穂村弘の生年は、1962。信じられない。
おれたちとおんなじ船に乗ってる人。つまるところは日本狼。
住宅地。しゃがんでじーと探すもの。蝶々の唇はNG。
台風が来たらコロッケ食べる人、この本を読め、これは命令!

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紙の本渡辺のわたし 新装版

2016/10/11 00:26

“初版になかった解説もつけた。お得だ。”だって?!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これは好きだなあ。と思う。腐女子的な表現を借りるとすれば“好きすぎる!”とか“わたしホイホイ”といったところか。
もう本当に素晴らしい。
「うつむいて並。 とつぶやいた男は激しい真顔となった」の妙味や如何。
いやしくも日本語を語るならば、斉藤斎藤は押さえておかねばなるまい。新装版のあとがきが振るっている。「お得だ」とはなんと控えめな物言いではないか!
もし自分にこんな才能があればこの1冊を5分冊くらいにしてリリースするくらいのことはやってのけたことだろう。
1ページ3行。信号機に、盛り上がるタイトル字。チクショー。港の人がまたやってくれましたwww

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紙の本一柳慧 現代音楽を超えて

2016/09/08 01:35

現代音楽ファンならば一読の価値あり

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この本はレビューするのをやめて、未評価または、★だけつけてレビューを書かないというのが、「4分33秒」的態度なのではないかという思いも一瞬だけよぎったのだが、やはり書いてしまう。
昔、NHK-FMの「現代の音楽」という番組が好きだった。
当時の司会は白石美雪氏で、テープに録音しておいて、気に入った曲は繰り返し聞いたものだった。
番組でしばしば紹介される楽曲の作曲者の中に一柳慧がいた。なぜ覚えているかというとおそらくその時聴いた作品が印象深かったからだと思う。
後になって購入したCDに収録されていた「ピアノ音楽 第4 エレクトロニック・バージョン」を聴いて、こんな作品もあったのかと驚いた。
本書では、パフォーマンスや、図形楽譜など中々前衛的なこともやっていた現代音楽家が最近は五線譜で作品を書くようになっている理由や、昨今のオケの演奏技術の向上、テクノロジーの向上をどう思っているか、ジョン・ケージの音楽は何だったのか、雅楽などの日本の伝統音楽に関する話など、以前から疑問に思っていた点が語られていて非常に興味深く読んだ。
インタビュー記事ではどの程度編集が加わっているのかは不明だが、自作についてどういうことを考えてどう表現したかという説明が驚くほど適格な言葉で語れられていて、現代音楽の話をしているはずなのに、そのわかりやすさには小気味よさすら感じるほどである。インタビュアーに対して、それは違います、むしろこうでなんですと訂正する場面もあり、行間から氏の温厚で真摯な性格が伝わってくる。一見すると単なる過去の記事の寄せ集めのようでいて、読み応えのある完成度の高い評論集となっている。現代音楽ファンならば一読の価値あり。

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レンアイ句集

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「レンアイ句集」と銘打ってあったので、もっと現代的な感じのものを予想していたが、選ばれている言葉といい、意外に多い旧仮名遣いといい、そこはかとなく漂う気品といい、本格派。特に大胆な破調のものが実によい。直截的に恋愛を想起させるものばかりではないのだけれど、美しい瞬間のドキドキ感とか、多幸感に充たされたときの光、温度、空気とかを封じ込めたような一句一句が続く。だからこれは人にとって広義の意味でのレンアイなのかもしれないと思った。ところで、自分の植物についての知識の足りなさにはちょっと反省。立葵と詠まれた瞬間にこちらに立葵のイメージというのがないと真に味読できているとは言えない。装丁はさすが港の人。この軽さ、手触り、活字の質感。紙書籍ならではの所有する歓びがある。

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紙の本駱駝祥子

2016/07/06 00:26

もう一つの阿Q正伝

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実は、2001年夏の岩波文庫一括重版を、いつか読もうと積読してあったのをついこの間読了した。
物語の印象はもう一つの「阿Q正伝」といったもの。
人力車引きの話なのだが、中国人の金にたいする執着とか、死生観とか、最後にたどり着く無気力とか、実に「濃い」。
ストーリーもまさに情節複雑と評すべきもので、このサイズの文庫にしては、読んでぐったり疲れるほど内容の充実を感じさせられる。
ところで、人民文学出版社版も入手済みで、生粋の北京方言満載の原文にチャレンジしようか、翻訳で読もうか迷っていたが、結局最初に読むこととなったこの岩波文庫版は、後年カットされた部分も残した初版に近い版を底本に用いているというし、なかなかの名訳でとても満足の一冊だった。森鴎外の即興詩人のように、これだけ版を重ねた名訳ならば、もはや半ば日本文学といってもよいのではないか。要するに中国現代文学の名作、老舎の代表作というだけでなく、日本の翻訳文学の金字塔として一読の価値ありだと言いたい。

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