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minorinoriさんのレビュー一覧

投稿者:minorinori

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本あこがれ

2016/08/09 05:20

どこか懐かしいピュアな小説

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

断然、圧倒的に、第1章の「ミス・アイスサンドイッチ」が良かった。
とても懐かしい気持ちで読んだ。
中学高校のころ耽読していたレイ・ブラッドベリあるいは宮沢賢治の世界。
あるいは大島弓子の少女コミックの世界。

ピュアで、すぐに壊れてしまいそうで、男性でも女性でもなく、中性的な子供独特の世界。
いつの間にか失われてしまった世界。
取り戻そうとしても決して取り戻せない世界。
今となっては「あこがれ」るしかない世界。

この人の本質はやはり詩人だと思う。
振り幅の大きい彼女の作品群のなかでももっとも詩情豊かな作品と言って良いだろう。

特に印象に残ったのは主人公の心の動きを、スチールカメラで切り取ったような情景描写で積み重ねてゆくところ。
「ミス・アイスサンドイッチ」でいうと84ページ。
ミスサンドイッチに絵を渡したあと、帰るところの転換。
この繊細さは見事というしかない。

<本文引用>
 アスファルトの地面は黒いところと濃い灰色がびっしりつまっていて、靴底にあたる感触はいつまでもかたかった。
 スーパーのわきにきちきちにならべられた自転車。クリーニング屋さんの看板の蛍光の色をしたまるっこい文字。政治家の顔がいっぱいに写ってる四角いポスター。ペンキがはげて途切れ途切れになった白線。もう誰も住んでいる気配がなくて古くなった家の紙とかちらしが飛び出している郵便受け。名前を知らない緑の草たち。たくさんのダンボールに野菜を入れてトラックに積んで売りに来ているいつものおじさん。このあいだヨークシャテリアをみかけた茶色のベンチ。何に使うのかはわからないけれど、誰かの庭の、水をいっぱいにためた大きなたる。掲示板にはられた何枚かのお知らせの紙。マンションの三階のはしっこのベランダから飛びだしてる色あせたサーフボードのゆるいさきっちょ。鉢植え。ドアの前の三輪車。表札。マンホール。門とかゴミ箱。ぼくはそんなものを眺めながら、家までの道を歩いていった。

みごとだ。

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紙の本わたしを離さないで

2016/03/01 05:10

読んでから見る

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すでにドラマを見ている方には申し訳ないが、この本については先に読むことをお勧めしたい。
おそらくはかなり最初の段階で、作者も明らかに意図的に悪い予言でもするかのように、何気なくキーワードをひそませてくる。それに読者も気付く。しかし、その悪い予感を信じたくない思いの方が強く、物語を読み進める。
作者はこれでもかというくらいに、絶妙のタイミングで悪い予兆を投げかける。それもわずかなばかりのヒントを。
最後にすべてが明らかになる。読者の予想通りだ。絶望的なまでのストーリーのはずであるのに、どこかに安心感が漂う。いかにも英国文学。
最後まで一人称の独白で450ページを読ませる作者の力量に感嘆する。翻訳もうまい。

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