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先月(2017年8月)

よこくろさんのレビュー一覧

投稿者:よこくろ

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本吸血鬼

2016/04/16 14:23

吸血鬼ラップ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

YoYo!今は読書の秋?ではないが佐藤亜紀?の新作『吸血鬼』。出てくる詩人はアダム・クワルスキ。住んでる村はジェキ!Check it!
吸血鬼といえば、黒い蝶ネクタイ、しめた紳士みたい、な男連想するけど、ルーマニア、のトランシルバニア、のドラキュラ、はまだいない世界。時は十九世紀半ばのオーストリアの領土、に収まってるポーランド、の貧しき農奴、ばっかいる貧しき村。昔もてはやされた詩人クワルスキ、は今や大きな屋敷、に籠もりくすぶる大地主。そこへ赴任してきたのは理想に燃えるヘルマン・ゲスラー。 その名はウイリアムテル、の悪代官の名に似てる、ってゆーかそのまんまだし。かつて革命の理想を謳いあげた、にも関わらずただの地主になりさがった、 クワルスキはいわばウイリアムテルになれなかった、男。だから敵対する代官の名がゲスラー、なのは皮肉がきいてますなー。
〈赤毛のはげ〉!とか言われても健気、に〈異例に属する腰の低さ〉で村人に受け入れられるゲスラーはちっともゲスじゃねー。ゲスの極み乙女。じゃねー。それは、ぱねー事なかれ主義の前任者パネーンカ、とはすげー違いでゲス。このゲスラーの高潔、さがさらに際立つ、のは狡猾、な男、村で唯一の医者に して欲の権化バルトキエヴィッツ、がいるからっす。さらに話を盛り上げる小悪人はヤン・クワルスキ。叔父貴のアダムが屋敷で詩の朗読会を開く日にあえてご禁制の、銃と弾丸をせっせーと納屋に持ち込み悪だくみ。
この村の「吸血鬼」とは屍が蘇り村人に悪さするゾンビみたいな存在。信仰が死ぬ。と迷信が蘇る。だから切る。首を切る。墓をあばいて死者をもいちど殺す。だから来る。きっと来る。「やれやれ」と首切り職人ヤレクがオノ持って来る。村に〈文明をもたらす〉と使命感に燃えてたあのゲスラーも、首切りに思いきり踏み切る。そこで理想は単なる〈郷愁〉に成り下がる。
映画の手法に通じた亜紀、が描く雪、の日の首切り、直前のシーンはとっても映画的。まるで残酷な殺戮シーンと幼な児の洗礼式が同時進行する『ゴッド・ ファーザー』みたいに、女たちが教会で祈りを捧げ、男たちが墓場で準備をすすめるシーンが交互に展開してしびれる。続く首切りシーンもまるで「見てきたみたい」に語る細部の描写もさすが亜紀の筆ぇーの冴えーのすげーうめー。オノに映る炎。棺を開けたら時の臭気。ヤレクは死体の首を持ち上げる。〈眠ってる子供にやるようにそっと〉。首の下に〈角材〉。首切 りの瞬間〈棺の底が鈍く鳴る〉音。切った後ヤレクは職人肌の床屋みたい最後チョイとずれた〈首を元に戻す〉仕上げするんだ。
でもけっきょゲスラーもクワルスキも負けていく。そこで輝くのは〈泥のように〉生きてる名も無き村人の言葉。理想とか美徳とかにゃかまってらんねー。ここがポーランドだろーとオーストリアだろーとオーストラリアだろーと知ったこっちゃねー。偉いヤツみんな余所者だ。オレらは足んなく なったら余所から盗ってくるだけぜ。
語る場を持たぬ者らの声を聴け。それが文学なんだし、ラップなんだし、そこのお前もすぐに本屋にDash!すべきだし!

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