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レビューアーランキング
先月(2017年6月)

j_j_ichiさんのレビュー一覧

投稿者:j_j_ichi

4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本蜜蜂と遠雷

2017/01/21 13:45

言葉で奏でる音楽

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

言葉でこんなにも音楽を奏でられるものか

というのが、読み終えて、いや読みながら、感情を高揚させられながら、感じ続けた率直な気持ちだった。2段組500頁のボリュームにもかかわらず、物語が終わってしまうのがとても惜しかった(近しい興奮を覚えたのは、『ピアノの森』『のだめカンタービレ』そして『BECK』。全部マンガだが)。
そして、祝!直木賞!!(つーか、恩田さんまだ直木賞とってなかったんい、という感があまりにも強い)。

ピアノ・コンクールで熱戦を繰り広げるコンテスタントたちが主人公。違ったタイプの複数の天才的なピアニスト、天才的なピアニストを見守るヴァイオリニスト、世界的ピアニストの卵を発掘する審査員、コンテスタントをステージに送り出すステージ・マネージャー、調律師…彼女ら/彼らの言葉と感覚が絡み合い、積み重なって、物語の中で音楽は立体的に鳴り響く。
こうした表現が見事にエンターテイメントとして昇華しているのは、この物語の基底に音楽への敬意と畏怖、そして音楽がこの世界に存在すること、それを人間が奏でられることへの感謝と祝福が満ちているからだろう。それゆえに音楽をすることの喜びを大前提としながらも、関われば直面せざるをえない厳しさなども的確な表現でしっかりと描かれている。
ちょっとだけなのだけれども、演奏する側として楽器を触ってきた人間として、共感できる言葉がたくさんある。

例えばあるコンテスタントは、

「一流のアスリートの動きには、美しい音楽と共通するものがあるし、音楽が聞こえるように感じる時もある」

と感じ、別のコンテスタントは、

「演奏者たちの中に、その自然はあった。彼らの故郷の風景や心象風景は、脳内に、視線の先に、十本の指先に、唇に、内臓に蓄積されている。演奏しながら無意識のうちになぞっている記憶の中に、彼らの豊かな自然は存在していた」

という心地を覚え、コンクールの審査員は、

「編集、という言葉はいろいろに使えるが、こんにちの音楽家には絶対に必要なものだ。自己プロデュース能力と言い換えてもいい。どういう音楽家になりたいか、どういう音楽家としてみせたいか。そういう客観的視点を備えている音楽家だけが他と区別され、生き残ることができる」

と分析し、別の審査員は、

「オリジナリティなんて言葉、ある意味幻想なのにね。やたらとみんなが口にするのはほとんど呪縛だわね」

と溜息をつき、そして本選に残ったファイナリストは、

「目に見えず、現れてはその片端から消えていく音楽。その行為に情熱を傾け、人生を捧げ、強く情動を揺さぶられることこそ、人間に付加された、他の生き物とを隔てる、いわばちょっとした魔法のようなオプション機能なのではないか」

という1つの答えを見つけ出す。…キリがないのでこれくらいで引用はやめておく。

恩田さんの作品はこれまでいくつか読んできたけれど、今作は何というか、ある種の頂点にまでいった感がある。抽象的な文章表現も多々あるけれど、それがコンテストの展開やコンテストを巡る人間関係のドラマティックな要素を邪魔することなく、非常に良いバランスで溶け合っていて、とんでもなく読みやすい、というかグイグイ引っ張られる。
色んな場面で色んなキャラクターに感情移入して、吹き出してしまったり、泣いてしまうところもあったりした。
ということで、なんか面白え小説ないかなぁ、と思っている人も思っていない人もとりあえず最初の50頁くらいを読んでみてほしい。そしたらもうきっと最後まで読むだろうから。

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紙の本すべての見えない光

2016/12/08 01:51

この上ない詩情

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第二次世界大戦下で、フランス人の盲目の少女と、ドイツ人の少年兵との物語。究極的に短縮してしまうとそんな話なのだけれども、一読しただけではとてもくみ取れない程の豊かさと美しさを備えている。
 まず、手にしたときにはその分厚さ(500頁超)に少しびっくりすることになってしまうのだけれど、読み始めるとそれは特に気にならない。というか、読み進めるにつれて、頁数が減っていくことが惜しくなる感覚に襲われることになると思う。
 文章は本当にすみずみまで神経が行き届いて、張り巡らされている。時制の前後を含めた細かく多めに“途切れて"いる章立ては、過剰ではないけれども確かなスリリングさをもって読み手を導き、断片的な文章の並びから立ち上がる空白には、想像力を刺激する詩情が多分ににじんでいる。おそらく、「1文のコスト」はとてつもなく高い。それが500頁以上も続くのだから、それを堪能できるのは非常に幸福なことではないか。
 主役2人以外の登場人物や、ラジオ、パン、貝、宝石といった小物にも確かかつ重要な存在感と役割が与えられており、物語の立体性に寄与している。とりわけラジオに関しては、目に見えない電波がまるで2人の運命の糸として作用しているように思える。
 戦争がテーマ故、何かしらの重さや読みにくさなどを想像してしまうかもしれないけれども、そんなことはない。この世界にある確かなきらめきを捉え、それを練られた文章に昇華させて紡いだ物語からは、当然のように心が打ち震える感動を覚える。「感動」という言葉はもはや押しつけがましさを内包した陳腐なものになってしまっているきらいがあるけれど、それとは明らかに違った、淡く優しいけれども、確かに心に響く感動を覚えた。

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紙の本年月日

2016/12/24 19:29

童話であり神話であり

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み心地は限りなく童話に近いけれど、多少凄惨な表現もあるために方々で「大人向けの童話」といったニュアンスで語られていて、その通りの内容だと思う。
 語り口がかなり独特で、照りつける陽射しには重さがあり、吹き付ける風には色があったりする。そういった演出の細部が物語りを神話のように仕立て上げている。
…とか何とか言ってみたけれど、やはりこの物語の肝は老人(先じい)と盲犬(メナシ)との滋味に富むやりとりでしかない。所々の些細な所作からにじみ出る優しさを感じられ、心が動かされざるを得ない。先じいの足元にメナシが寄りそって寝る場面とかは、やはり、どうしても、昨年死んだ愛犬を想起せざるを得なくて、似た場面が出てくる度に涙目になってしまった。
 長さは中編程度で、おそらく2時間もかからずに読むことができるけれど、心に残るものはとても大きい。

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紙の本地鳴き、小鳥みたいな

2016/12/23 21:35

ささやかな清流の美味い水

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ええと、これはどんな感想を持ったと語るべきなのだろうか、というのが感想。
 “短編集”と銘打たれた帯に従うのであればこれは小説なのだろうし、文芸誌に掲載されていた文章であることも考えれば小説なのであろうと思うのだけれども、これが小説であるという先入観を持って読み始めたら、とてつもなく戸惑うことになった。
タイトルがつけられた4つの文章があるのだけれど、それぞれが緩やかにつながっていて、とりとめもないような思考と意識がこちら(=読み手)の存在をほとんど気にしないような感じで、ささやかな清流のように静かに音を立てて流れていく。その水をすくいとろうとしても、すくいとった水はすでにすくいとろうとした部分の水ではなく、すくとろうとした部分の水は既にかなり下流に流れていっている、でもすくってみた水をちょっと口に含んでみたら美味い、そんな心地。こんな感じで何を言ってるのかあんまりわからないのだけれども、本当にこの本についてはあらすじを語るのはナンセンスというか、あらすじをまとめることがほとんど不可能なので、ページをめくってもらうしかない(…と、書いているこの文章も保坂さんの文章に多分に影響を受けている気がする)。
 するすると読み進めていくことができるようなタイプの文章ではないけれど、読み終えるとなんだか不思議な余韻が残り続ける。文法的にはおそらく正しくない表現が多数出てくるのだけれど、その引っ掛かりも含めて。小説の中での自由な表現を求め、小説という枠を静かにブチ壊しにかかっているような。

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