villosaさんのレビュー一覧
投稿者:villosa
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2017/06/11 17:43
西表島を通して自然の厳しさと雄大な美しさを感じさせられる本!
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
イリオモテヤマネコの研究者であり,青春を西表島に賭けた安間繁樹博士だからこそ著わすことができた本です。西表島の自然やそこに息づく文化があり,それらに愛情を注ぐ著者の姿を感じます。
自身がフィールドに出ることで,自然の息吹を感じ,野生動物に逢う。そこから探究心が生まれ,研究・学問へと深みを帯びることを知っている著者は,今も西表島を隈なく歩き,記録を残している。安間氏が歩いた行程を記す詳細な地図が本文と共に掲載されている。実際に歩いた人でなければ書けないコメント(たとえば,「大浜から南風見田の浜」の地図には,「干潮時,ギシャーマ石あたりから南風見田の浜まではリーフ上を歩くと非常に楽で時間も短縮できる。しかし,満潮近くなると南風見田の浜の前は深くなる。潮の具合を観ながら歩くことが基本だが,ナイヌ浜あたりで岸に戻った方が無難」等)が,多く書かれている。情報量の多さに驚かされると共に,安全に西表島を歩くための知恵をもらうことができる。
一般的な観光ではなく,西表島の自然を全身で感じたい人にとって,座右の銘になることは間違いない。島の横断時の服装,持ち物,野営についてのことはもちろんだが,それぞれの持ち物の重量(10グラム単位で表記。山歩きで不要な物は持って行かない,必要な物でも必要以上に持てばザックが重くなり,行程がキツくなるのだ)や,干潮時刻の算出法まで記されている! 安間氏が自身の安全を大切にしていることが分かると共に,同士として西表島の自然に触れようとする人の安全を祈っていることが分かる。
また,本書は現在の西表島についてのみ記しているのではない。安間氏の青春時代に撮りためた写真が多く掲載されている。さらに,安間氏は,笹森儀助の著書に著わされている西表島をも見据えている。笹森儀助は,1893(明治26)年に沖縄群島から先島諸島への旅をした。明治時代の国税調査のようなデータとともに,笹森が道中遭遇した出来事,風習,自然景観なども取り上げられている。120年を超えて,西表島の,あるいはそこに住む人々の,変化あるいは変わらないことを感じ取ることができる本である。
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