サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. hikaruさんのレビュー一覧

hikaruさんのレビュー一覧

投稿者:hikaru

1 件中 1 件~ 1 件を表示

ロマンティシズムの破産

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 なぜか、自虐的な立場に陥ってしまう人たちがいる。それらの人たちは、そうすればはっきり不幸な目に遭うと分かっているのに、そちらを選択してしまうのである。

 本書の主張を乱暴に要約するならば、「彼ら」は、将来現れるかもしれない未知の危険性をおそれているのである。しかし、彼らは具現化しない危険性を待ち続ける状態に耐えられるほど強くない。そのため、とりあえず目先に存在している不幸とそのまま慣れ親しんでしまったり、場合によっては、あえて、目先の不幸を選択してしまうという戦略をとるのである。

 これは、周囲から見ればあきらかに非合理的だ。しかし、本人にしてみれば、とりあえず具体的な不幸があるので、未知の不幸が軽減されたような気になり、安心できるらしい。「人間は何も欲しないよりも、まだしも、「無」を欲する」というニーチェの箴言が思い出される。

 また、この「小さな不幸」には、劇的な雰囲気が伴うことが多い。要するに、「何もない」状態に耐えられないので、何か、ドラマティックな味付けが欲しくなるというわけである。

 この行為は、株式売買などで行われる「損切り」を想像させる。株価が下落して売れば損をする状態であるにもかかわらず、損失を確定させるためにあえて売ってしまうという行為である。しかし彼らの行動は、そこまでクリアな論理に基づいているわけではない。どちらかといえば、明確な論理や表現が欠けているため、しばしば魔術的思考とでもいうべき妄想や固定観念に陥っている場合が多い。

 文学論的に考えるなら、これはロマンティシズムの破産ということができるだろう。現実の社会には、いわばポストモダン的な、乾いた意味空間が広がっている。「物語」を求めようにも、すがることのできる大枠が存在しない。しかし、大半の人間にはそのような物語が必要なのである。

 こういった「弱い」人間が、その空虚感に何らかの形で触れてしまった結果の例が、ここに示されているといえるだろう。

筆者は、都立松沢病院の医長である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

1 件中 1 件~ 1 件を表示