スギモト@Loudさんのレビュー一覧
投稿者:スギモト@Loud
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紙の本闇よ、我が手を取りたまえ
2000/07/15 01:17
「紛れもない大傑作」はウソじゃない!
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アマゾン・コムで★★★★★(最高評価)が乱れ飛んだ、という前作『スコッチに涙を託して』。『このミス2000年版』でも、次点に入っていた、シリーズ1作目を読んだ感想は、「ふ〜ん…」て感じ。 暗い過去、重い現実を背負った主人公、ウイットに富んだ会話に比喩を多用する洒落た文体、と、まあ、出来こそ水準をクリアしているものの、”傷つきやすさを軽口で覆う”とよく言われるネオ・ハードボイルドのお約束を踏まえただけ、と言えなくもない。
悪いとこもないけど、飛び抜けていいとこもないかな? ハードボイルド・ファンは読むだろうけど、あえて人に勧めるまでもないか、というのが正直な感想でした。 スタイルがスタイルのままで終わっている、という印象がありました。
ところがどっこい、このシリーズ2作目、『闇よ〜』を読んでビックリ。前作ではただの設定だった主人公の背景がプロットと有機的に連携して、第一級のエンターテイメントとして仕上がっています。 ネタバレになるので、あまり多くは語れませんが、 特筆すべきは、主人公パトリックとパートナーのアンジーが幼なじみ、という設定が、 まさにこのプロットでこそ生きる!という重要な位置づけになっていること。 過去と現在が複雑に絡み合う、怒濤のストーリー展開で読者を引きつけてやみません。 ボストンの貧困地区出身で、多くが新しい土地に抜け出していく中、あえて故郷に踏みとどまった”幼なじみたち”というのが、シリーズ通しての魅力として確立された感があります。
この設定あってこそ!という強烈な印象。
可能性こそ感じさせても、平凡な印象だった前作から一転、頭ひとつ飛び出してます。
大化けした、といっても過言ではないでしょう。
オールタイムベストにだって入れちゃうよ!というくらい、久々のスマッシュ・ヒット!
オススメです!
書評サイトやってる、札幌の書店員です。
商売敵…(笑)
Loud Minority
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