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成瀬 洋一郎さんのレビュー一覧

投稿者:成瀬 洋一郎

179 件中 1 件~ 15 件を表示

『時に午後三時十五分過ぎ生き残った者以外はひとり残らず死んでしまったのである……』

14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 幕末から明治維新にかけて活躍した風雲児たちの姿を描く大河歴史ギャグ漫画。
 歴史というのは、単に年号や人名を暗記したからといって面白くなるものではありません。さまざまな人物や事件の相関関係から全体像や大きな流れが見いだせるから面白くなるのです。そしてこの『風雲児たち』はギャグマンガの体裁をとりながら、真っ正面から歴史の面白さを教えてくれる名著です。
 物事には原因があるから結果が生じます。原因の究明を疎かにして、結果だけを論じても無意味なんです。そして「明治維新」を結果とするなら、原因は「関ヶ原の戦い」にあたると解釈したみなもと太郎は、幕末の風雲児たちを描くために、いきなり関ヶ原の合戦にまで歴史をさかのぼりました。そして、結局何十巻も費やして、やっと坂本龍馬が活躍し始めたところで話が終わってしまうことになります。
 別に話が冗長というわけでもなければ、横にそれたわけでもありません。すべてのエピソードは、たとえば山内一豊の妻も、薩摩藩の琉球征服も、時代錯誤の高山彦九郎の旅も、大黒屋光太夫のロシア漂流も、杉田玄白や前野良沢らによる解体新書の翻訳も、早すぎた天才・平賀源内の生涯も、水戸黄門の漫遊記も、シーボルトの追放も、すべて明治維新という「結果」を指し示しており、どれも幕末の風雲児たちを語るためには不可欠のエピソードなのです。「明治維新」という日本の大事件を描くためには、そこまで掘り下げ、相互に関連づけないと語り尽くせないのです。

 僕がこの本を初めて読んだのはコミック・トム版で、小学校のときでした。学級文庫に誰かが出たばかりの1巻を持ち込んだらしく、他のマンガには五月蠅かった先生もこれには何も言いませんでした。たぶん教育用歴史マンガとして認識したのでしょうね。当時、子供がギャグマンガとして読んでも面白かったし、島津の正面退却には興奮させられ、日本史って面白いんだと子供心に刻みつけられました。
 それからほぼ四半世紀。今、大人の視点であらためて読んでみると、その斬新な切り口や解釈がマンガの枠を超えていることに驚かされます。中でも印象的だったのが田沼意次と松平定信の章です。
 今でこそ重商主義の優れた政治家とされることもある田沼意次も、かつては賄賂役人の代名詞であり、潔癖な松平定信にとっての敵役にすぎず、ドラマや小説に登場する田沼親子は紋切り型の悪の黒幕として描かれがちでした。けれども当時、既にみなもと太郎は、彼を「幕府の財政を立て直すために、国際的な視野で経済改革を推し進める政治家」として描写していました。しかし有能な補佐役であった息子・意知は抵抗勢力の陰謀によって暗殺され、意次もまた失脚し、経済改革が中途で挫折することによって明治維新へ向かって歴史の針が進むことになります。
 今は出版社が代わり、「幕末編」としてリイド社の『コミック乱』で連載も再出発しましたが、無事にクライマックスの五稜郭の戦いを読める日が来ることを願っています。とりあえず25年待ちました。もう25年くらい待てるでしょう。

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紙の本戦争は女の顔をしていない

2008/08/20 13:45

「真実というのは我々が憧れているものだ。こうでありたいと願うものなのだ」

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 大きな戦争というものは、それだけで社会構造を変革してしまいます。
 それは通常社会の担い手とされている成人男性の多くが戦場へ赴くことになり、工場や公共交通機関など、それによって欠員が生じたシステムをそれまで員数外扱いされていた人々が埋めることになるからです。こうして「男女平等」「マイノリティの権利向上」といった方面に波及するわけですが、ソ連の場合、国土が戦場となった第2次世界大戦においては、100万人以上の女性が兵士として戦場にいました。
 アメリカやイギリスなどでも女性ばかりの部隊はありましたが、通信員であり、輸送員であり、前線に出るということはありませんでした。しかし、ソ連の場合は前線に投入されることも多く、女性による航空機部隊の存在などは有名でしたが、今までその具体的な姿についてはあまり知られていませんでした。
 この本は、著者がおこなってきたインタビューの記録が、ペレストロイカからソ連崩壊、そしてロシア誕生という流れの中で刊行できるようになったもので、検閲官によって削除されたものや、著者自身の判断によって一度は削除されたものまで含めて完成させたものです。
 面談の対象となった女性たちの職種は、運転手、看護婦、給食係といった非戦闘要員から、狙撃手、戦車兵、高射砲部隊といった実戦部隊までさまざまです。全体的には医療や通信関係の職種が目立ちますが、戦闘員としても男性と肩を並べて戦っていた様子がうかがい知れます。
 けれども、社会主義国といえども男性社会であったのですね。
 男と同じように志願し戦い、敵を殺し、仲間や恋人の死を看取った彼女たちも、戦後はむしろ不遇であったようです。アメリカのように女性の社会進出が進んだのとはむしろ逆に、旧態依然の家族制度の中に押し込めようとするか、あるいは「男だらけの世界に潜り込んだふしだらな女」「人殺し」として排斥されることも少なくなかったとインタビューから知ることができます。
 「女性が見た最前線」という視点の証言は貴重であり、たいへん興味深く読むことができました。

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紙の本クジラの彼

2007/04/06 00:14

「舌は予定に入ってないッ!!」

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 6本の激甘なラブストーリーを収録した短編集。紆余曲折はあっても悲恋はありません。ただ、これが普通の恋愛小説とは違うのは、すべて物語が自衛官を中心に進んでいるということと、そのうち3本は同じ著者が過去に書いている怪獣小説(だと僕は思っている)『空の中』と『海の底』という2作品の後日談になっているということ。
 でも、『空の中』と『海の底』の番外編かどうかなんてことは、まったく気にならず、ただ見覚えのある登場人物の姿に読んでいてにやりと微笑むくらいなので、2作が未読な人も気にする必要はありません。
 遠距離恋愛にヤキモキする潜水艦乗りと恋人たちの物語『クジラの彼』と『有能な彼女』は正当派の恋愛もの。次世代軍用機と男子トイレをめぐる『ロールアウト』は、現実でもちゃんと配慮してもらえると良いですねという話。『国防レンアイ』は怖いけど可愛くて、身も蓋もないけれどそこが良い!という話。『脱柵エレジー』はその名の通り、逃亡したところでその先には何も待っていないよという哀歌でちょっと切なく、求めているものは柵の向こうにはないんだよ……というちょっと良い話。『ファイターパイロットの君』は女性パイロットとその家族の物語。なんか意地っ張りなやりとりに笑えます。
 精一杯がんばっている、男の子と女の子の物語の数々。自衛隊のことは詳しくないとか興味がないという人でも、普通に「特定の職場に関わる人たちの恋物語」ということで、商社とか病院とかの話と同じように読めばいいと思います。

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紙の本一鬼夜行

2010/07/15 11:07

「文明開化だか何だか知らぬが、そんなことで俺達がいなくなると考えるのは底の浅い人間ならではだ」

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 江戸幕府から明治政府へと移行して5年。
 文明開化の世の中でもオバケは出る。獣だって住処を奪われれば人里に降りてくるのだから、妖怪だって今までいたものがいなくなるわけではない。
 小春は百鬼夜行からこぼれ落ち、迷子になった小鬼。その小春に居候されてしまうのが、妖怪より怖いと言われる古道具屋の喜蔵。この2人がなんの因果か、次々と起こる妖怪騒動に巻き込まれていくというか巻き起こすというか。小野不由美の『東亰異聞』よりはユーモアがあってほんわりしていて、宮部みゆきの『霊験お初捕物控』あたりの時代小説と比較すると妖が前面に出ている……そんな雰囲気の話です。
 人づきあいが悪く、いつも不機嫌そうな喜蔵と、簡単に迷子になるような新米の鬼のくせに、なぜか周囲の妖怪たちには顔の利く小春。この2人のかけあいというかやりとりが面白く、もはや喜蔵がツンデレにしか見えないのです。

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紙の本紫色のクオリア

2009/07/22 22:02

『物語はいつからはじまるのだろうか?』

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ガクちゃんが廊下で鉢合わせてして一緒に転んだ毬井ゆかりは紫色の瞳を持った中学生。彼女の秘密は、自分以外の人間がロボットに見えるということだ。
 嘘っぽいと思いつつ適当に話を合わせているうちに、ゆかりには本当に人間とロボットの区別がついていないとガクちゃんにも分かり始めたのだが……。

 うえお久光は巧い作家だと思います。キャラが活き活きとしていて軽妙な言葉のやりとりが心地良いというだけでなく、しっかり面白い「物語」が紡げるということ。ただ、著作の大半がライトノベルの長編シリーズなので、いきなり読み始めるには辛いかもしれません。ですから、この作品のように1巻ですっきり完結している作品は貴重な入門書かもしれません。
 けれども単純に「面白いライトノベル作家の入門書」と言い切るには少しばかりやっかいな作品でもあります。本の帯には「少し不思議な日常系ストーリー」とか書いてありましたが、これが「少し不思議」ならテッド・チャンだって「ちょっと不思議」です。少女たちの友情の物語であり、世界の可能性を足蹴にする探索の物語であり、魔法少女の冒険活劇であり、シュレーディンガーの観測問題に正面から挑んだ平行世界テーマSFの快作と二転三転していくのですから。
 でも、この一癖も二癖もあって容易に先の展開を読ませないまま一気に読ませてしまうのがうえお久光の巧さであり、この作品でうえお久光を知るのだとしたら、それは幸せなことではないでしょうか。

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神様のパラドックス

2008/07/03 22:52

「ただの適当やない。やるだけやって、その先を適当にやるんや。最初から適当なのとは違う」

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ごく普通の大学や企業から物語が始まり、それがやがて「宇宙」とか「救世主」を創るという、とんでもなく破天荒なプロジェクトに発展していくというのが、機本伸司が得意とするパターン。マッドサイエンティストの怪しげな実験室ではなく、環境の整った最先端の研究施設の中で、傍目には怪しい実験が繰り広げられます。
 今回の『神様のパラドックス』も直球ど真ん中で来ました。
 宇宙、救世主と来たら、もう次は神様を創るしかありません!

 アプラDT社の研究者・小佐薙は崖っぷちに立っていた。
 なんとか開発に成功した光解析型量子コンピュータ“久遠”は、世界トップクラスと自負する性能だったが、量子コンピュータの世界は、さまざまな方式のシステムが試行錯誤しつつ鎬を削っている世界。全長40m、翼幅30mの全翼飛行機を本体とし、計算可能時間は弾道飛行中に無重量状態になる30秒しか無いというアプラDT社のコンピュータは、運用の困難からいまだリースの問い合わせ1つない状況だった。
 数千億の予算を投入したプロジェクトではあったが、このままでは銀行からも株主からも総スカンを食うこと必至であり、早急に結果を出せなければプロジェクトからの全面撤退というのが役員会の結論だった。
 ところが、営業活動で立ち寄った母校の学園祭で、占い同好会のブースを覗いたことから、小佐薙は1つのアイデアを思いつく。何万年もかかる計算が瞬時にできる量子コンピュータで占いコンテンツを始めたら事業としてなんとかなるのではなかろうか?

 もちろん、ならないのである。
 さらにピンチである。
「この難局を乗り切るには、神さんを作るしかない」
 小佐薙が開き直ったとも血迷ったとも取れるプロジェクトに周囲を巻き込んでいくのに、さほどの時間はかからなかった……。

 面白かったです。1作ごとに読みやすくなっているかな。
 冒頭、学園祭のシーンから一転して「量子コンピュータ」についての解説が延々と続くので、量子コンピュータについて概論を頭に入れたい人はともかく、自分としては「まったく分からんなあ」という展開だったのだけれど、そこでメインキャラクターの1人である直美に救われました。
……直美には、量子コンピュータの説明はほとんど分からなかった……
 そうか、分からなくて良いんだ!
 そう思ったら気楽になって、後はクライマックスの嵐の洋上シーンまで一気呵成に読み進んでしまいました。神様を「定義」するところから始めて、人の抱えている根本的な悩みであるとか、量子型コンピュータの通訳に投入されたノイマン型AIの葛藤とかまで網羅したプロジェクトXという雰囲気かな。
 この作品はタイトルが似ている『神様のパズル』のスピンオフ作品という位置づけのようですが、確かにパズルの登場人物もパズルのように隠されていて、それも読み終えての楽しみです。

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断絶への航海 新装版

2010/07/21 15:47

「ほかならぬ自分が戦わなければならなくなると、戦い取る価値のあるものなんて、びっくりするくらいわずかしかないもんです」

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 宇宙の彼方の植民惑星を舞台に、「無尽蔵の資源とそれを活用する技術が与えられ、しかも過去の思想や因習に囚われない世界に放り出されたとき、人間はどのような世界を構築するのだろうか」という思考実験をおこなった作品で、ホーガンがたびたびテーマとした、保守的で硬直しきった組織と自由闊達な人々との対立を背景に、かろうじて理解可能な程度に異質な思考をする文明と接触した顛末を描いた長編。
 旧世界ではダメ人間とレッテルを貼られたような人々が新世界に適応して活き活きと動き出す姿と、旧世界のエリートが空回りする姿を笑い飛ばしながら、文明(価値観)の対立、教育の重要性、社会秩序と統治機構などについて考えていくハードSFアクション。
 『星を継ぐもの』や『未来の二つの顔』といった代表作には劣るものの、好きなホーガン作品の1つです。

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紙の本三匹のおっさん 1

2009/03/18 21:04

「何か何気にすごい暴言を聞いたような気がする……」

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 還暦になってもまだまだ元気なおっさん3匹が、暇つぶしに始めたのは町内限定の正義の味方だった!……という『三匹のおっさん』は痛快ご町内活劇。
 おっさんたちが挑む事件は痴漢あり詐欺あり動物虐待ありと、大事件ではないけれど事件の当事者にとっては切実な問題です。3人は誰もすごい超人ではない普通の人なので限界はあって、決して世界全部を救えるわけでもないけれど、それでも自分たちの身の回りの人たちくらいは守ってやろうと頑張る姿がいかにも有川浩の作品という感じなので、今までの作品が好きな人なら期待して問題なし。
 イラストに、じーばーマンガで定評のある須藤真澄をもってきたのも大正解。須藤真澄のあのゆるやかなテンポでありながら元気の良いお年寄りが走り回る作品が好きな人ならこちらもお薦め。
 さらに、おっさんおばさんばかりでラブコメ分が欠乏するのではと心配するむきには、おっさんたちの身内の高校生たちがこれまた甘酸っぱくも第三者から見れば滑稽なやりとりを繰り広げてくれるので心配なし。この2人、祐希と早苗もおっさんたちの自警団活動に巻き込まれていきますが、その中でそれぞれが我が身を振り返り、過去の過ちを過ちと認めながら前に進もうとする姿は応援したくなります。
 疲れたときに気軽に読んで元気をもらう1冊です。

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図解第三帝国

2008/05/29 19:48

戦史からオカルトまで

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1933年から1945年のドイツにおける組織・人物・歴史を解説するというコンセプトでまとめられた図解。
 とにかく要人たちの略伝からスペイン内戦の経緯、果ては南極の秘密基地説まで、むちゃくちゃ広くカバーし、かといってその内容もおざなりにならず、必要最低限のポイントを押さえてありますし、地図や写真、図表類も豊富です。また、「ナチスがUFOを作っていた」というような珍説奇説についても、概要を紹介するだけでなく、誰が言い出し、誰が広めたかというような関連情報まで紹介してある丁寧な作りです。
 何か第三帝国に関して調べ物したいときに使う最初のガイドといった位置づけでしょう。

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「SFってのは、『校舎の屋上から宇宙へ飛び立とうとする心』」

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1986年にスタートしたSFコミックがありました。絵は荒削りでしたが勢いがあり、その勢いで銀河系規模の大事件にまで話を広げておいて、見事に話を収束させてしまったスペースオペラの傑作『マップス』です。

 平凡な高校生・十鬼島ゲンはある日突然、女宇宙海賊リプミラやスペースパトロールの襲撃を受ける。ゲンこそ、2万年前に消えてしまった“さまよえる星人”最後の子孫であり、その身体には秘宝「風まく光」への手がかりが隠されているというのだ。この争いに、宇宙人のテクノロジー奪取を画策する米ソ諜報部が介入するに至り、ゲンはリプミラやガールフレンドの星見らとともに宇宙へと旅立つことを決意する。およそ20億種類の知的生命体によって形成された星の世界へと。
 だが彼らの行く手には銀河伝承族、全長1万5000Kmの巨大頭脳、銀河生命体究極の進化者が立ちふさがる。銀河系の文明を陰から操り、育み、そして滅ぼそうという種族の真の目的は何か。生贄砲が狙うものはなにか。銀河障壁は何のために存在するのか。そして「10匹の魔物」とは何物だというのか。
 ゲンやリプミラたちは銀河文明の存亡を賭け、リプミラ号で飛び立つ。10匹の魔物の軍団と共に……。

 完結してから数えても10年以上。でも面白いものはいつまで経っても面白いということで、シェアード・ワールド(シェアワールド)化して複数の作家で世界設定や登場人物を共有して創作してみようという試みがおこなわれました。それがこの『マップス・シェアードワールド』です。SF界で活躍している面々が、決しておざなりな形ばかりの寄稿ではなく、マップス世界でそれぞれの得意分野にがっぷり取り組んでいます。

笹本祐一「迷子の宇宙戦艦」
新城カズマ「さよなら三角、また来てリープ」
中里融司「流星のジュディ」
古橋秀之「町からきた先生」
秋津透「ソフティカ・リップ放浪記」
重馬敬「宙へ征く船」

 派手な宇宙艦隊戦あり、田舎の学校にやってきた女教師と生徒のふれあいあり、地球生まれのサイボーグ兵士のアクションありとバラエティに富んだ内容は、原作を知らない読者にも充分楽しめるものになっています。
 さらにそれぞれの短編に長谷川裕一の扉絵が付き、カラー口絵は村枝賢一、三浦建太郎、麻宮騎亜という豪華ラインナップ。『マップス』という点を抜いてもなかなか得難い作品集です。

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紙の本ハルカ 天空の邪馬台国

2007/03/17 15:20

「たとえ救世主でなくてもいいの。戦場で倒れずに、ちゃんと私のところに戻ってきてくれれば」

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ケンカ騒ぎで停学中の張政は自宅謹慎しているのもバカらしいと、傷心旅行の資金を捻出しようと自宅の蔵をあさっていて、不思議な青銅鏡を発見する。そのとき聞こえてきた「今すぐ私のところに来て!」の声と美少女の幻影に思わず「いいけど」と応えた張政は、次の瞬間には見知らぬ土地に放り出されていた。
 闇の中にかがり火が焚かれていた。
 彼の周囲で、耳慣れぬ音楽に合わせて歌い踊るモノたちは、天狗に河童、狐に狸と異形の姿ばかり。その中にたたずむ巫女装束の女性と傍らに控えている少女。そう彼が蔵の中で見た少女だ。
 邪馬台国の卑弥呼と名乗る巫女は、集まったモノたちに宣言した。この者は張政、救世主なりと。
 現代の高校生と太古の時代に生きる少女の、時間を超えた“ボーイ・ミーツ・ガール”もの。『ゲームキューブ』『俺の屍を越えていけ』『天外魔境II』などに参加して意欲的な作品を送り出してきた桝田省治が書き上げた、「没ゲーム供養企画」小説の第二弾。
 話そのものはすごく王道。平凡な少年が別世界に召還され、英雄としての働きを期待される。そんなことできるわけないと思いつつ、状況に流されながら、新たに仲間となった者たちの協力で難関を1つずつクリアしていくうちに、真の英雄として成長していくというもの。
 そして登場するキャラクターたちが魅力的だ。張政を想い、すべての人々の平和を願い、思いつきと勢いだけで突っ走るハルカ。子煩悩なタヌキ親父の市松。全身傷だらけで凶悪な人相だけれど実は赤ん坊好きなヤマイヌ頭のフセマル。種族を越えたバカップル、お夏と正十郎。竜に化身する美姉妹、辰美と辰穂。こうした仲間が張政のもとへ集まり、共に戦い、傷ついては消えていく。彼自身はちょっといい加減なところもある、ごくごく普通の少年。ただ、戦火に蹂躙される村々の姿を目に焼きつけ、仲間と戦っていくうちに、自分は勇者じゃないけれど勇者になろうと決意する。そして血みどろの戦いの先頭に立つ張政の傍らには、常にハルカの姿があった。
 B6サイズで530頁の長編。通勤通学時に読むにはちょっとかさばるけれど、面白いからさくさく読める。でも、ちょっとエッチでグロいところもあるから、中学生以下は読んではダメだね。
 すべてひっくるめて面白かったといえる1冊です。

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ぺとぺとさんV

2005/12/22 17:24

「すんごくでっかい!」

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 国語、数学、英語に音楽、水泳、身体測定、年越しの祭事にこたつでテレビ……。大晦日の展望台で振舞酒を楽しみながら天を渡る歳取りさんを眺めたり、テレビショッピングで対決したりと、今回もなかなかにぎやかなお話です。
 妖怪が「特定種族」として区別されつつも社会の一員として暮らしている現代日本を舞台とした物語、『ぺとぺとさん』の5冊目です。今回は雑誌に連載されていた作品に、書き下ろしのコラムや書き足しが加わった短編集。さまざまな妖怪や人間を喜びも悩みもひっくるめて描くには、短編集という形がベストなような気がします。今までの長編では、「このキャラをもっとじっくり描写して欲しいんだがなあ」という不満が、いつも少しありました。でも短編という形で日常の1シーンを切り取ることで、いつも以上にいきいきとしたキャラクターたちが暴れ回ることができました。
 この巻だけ読んでも話は通じます。まだ、このシリーズを読んでいない人が、手始めに読むには最適ではないでしょうか。

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紙の本はたらく魔王さま!

2011/02/12 09:17

「魔王サタン! 何故あなたが幡ヶ谷のマグロナルドでバイトしているの!」

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ありがちなファンタジー世界にて、勇者との戦いに敗れ、異世界へと逃れた魔王サタンと腹心の悪魔大元帥。彼らがたどり着いたのは現代日本の東京。そして、魔力のほとんどを失ってしまった彼らは、魔力復活の手段を探ると共に、日々の糧を稼がなければならないことに……。

 六畳一間の安アパートで捲土重来を期する魔王主従の、地に足をつけた生活ぶりがステキです。その貧乏生活のリアルさとか、どんなにいがみ合っていても最低限の礼儀を忘れない魔王と勇者の会話とか、みんなマジメにやっているのにどこかかみ合わないところから生まれる小市民的な笑いが、『聖☆おにいさん』が好きな人などにお薦めしたいポイントです。

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「運命がわたしを思考させる。わたしの思考が運命を選択していく」

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 積極的に死ぬつもりはないけれど、誰かが心中相手を探しているなら付き合って死んでも良いと思っていた高校生が、インターネットの自殺志願者の掲示板で知り合った相手と心中すべく大晦日の街に出た。ところが携帯電話が盗まれたことから、遺言めいたメールが発信されてしまい、それはカーボンコピーされて瞬く間に広がっていく。

 大晦日の東京を舞台に、死のうとする者と制止しようとする者、総勢15人の17歳の少年少女が右往左往する24時間の物語。
 さまざまな登場人物が入れ替り立ち替り自分の視点で語る物語のパッチワークです。制止する側にも真剣に止めようとする者もいれば面白半分の者もいるし、止めるふりをして自殺させようとする者もいて、その切り替わりの激しさが慣れないと読みづらいけれど、一度波に乗ってしまえばけっこう面白いのです。
 登場人物のほとんどが互いに面識が無く、連絡手段は携帯電話とインターネットだけという特殊な状況での「安楽椅子ミステリー」という視点もあるし、不安定な思春期を描いた「青春群像小説」とも読めるし、クライムノベルやドタバタ活劇といえないこともありません。
 このごった煮的な物語が、どう転がるのか。肝心の心中相手の正体が不明なだけに、先の展開が読めないところが楽しみです。

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愛とカルシウム

2008/11/21 09:54

「錯覚だ。あたしはもう死んでいる。死んでなきゃヘンだ」

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 間もなく19歳の誕生日を迎えようという藤島環は、身体が石化していく難病HDS。介護施設しおかぜ荘で暮らしているが、回復する見込みのない自分の身体に環は見切りをつけ、できるだけ他人と関わらないようにしながら毎日を過ごしている。

 「元気をだしたいひとへおくる、青春小説」というあおり文句で、双葉社のWEBマガジンで連載していた小説が1冊にまとまりました。
 連載していたときは「どこを読むと元気が出るんだ?」と思うくらい、未来の見えない18歳の少女の達観と葛藤が伝わってくる話でした。身体は少しずつ動かなくなっていくだけで回復しそうにない。家族の負担にもなりたくないし、制度が変わってこの介護施設もいつまで続くか判らない。
 でも、あらためてまとめ読みすると「ああ、見方を変えれば世界も変わって見えるんだな」ということで、少しは元気をもらえたかなと思います。きっかけは、ちょっとしたこと。本当はスズメでなくてもかまわなかったかもしれない。でも、今にも死にそうなスズメが環の部屋に居座ったことから、環の世界が少しだけ変わります。
 どんな風に変わっていくのか、ほんの少しずつの変化に気をつけて読んでいくと、ほんの少しずつだけ元気がもらえます。
 そんな本です。

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