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きむかずさんのレビュー一覧

投稿者:きむかず

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紙の本光さす故郷へ

2000/08/04 09:01

「この夏、高校生・大学生に薦めたい一冊」

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 たいへん失礼な話だが評者は一読して、若干だがある種の「もの足りなさ」を感じた。それが生々しい描写や、地図など資料類の不足であるのか、あるいは本自体の「厚さ」であるのかは、判然とはしなかったのだが。

 だが改めて読み返したとき、それは私の読み取る力の不足と、感覚の鈍さによるものだと気づき自責したと同時に、実は意図されたものなのではないか、という気がしてきた。


 この本の作りは、さりげない。ともすれば、さっと読み終えて、それで終わってしまうかもしれない。

 だが今私は、これほどまでに作り手(著者や編集者を含むスタッフ)の心に想いをはせることができる本に、出会ったことがないという気さえする。

 著者は出版社のインターネット関連の部署に勤務し、それこそ膨大な量の裏づけ資料を提示することもできたはずである。実際、巻末には10を超える参考文献名が掲げられており、著者が事実の裏づけを求めて、資料を集めたであろうことは容易に想像できる。だが、一部引用はあるものの、それらをあえて積極的に使おうとはしていない。

 これまでわが国の戦争について書かれた本の多くは、事実を伝えようとする思いのあまり、少々力が入りすぎていたのではないかと思う。それが決して悪いことだとは思わないし、このような見方が失礼だとも思う。だが若い人に拒絶反応を起こさせていたのではないかと、
自分自身の経験を振り返って思うのである。

 本書は、筆者が大伯母に聞いた話を伝えている。さりげなく語り始められた身内の記憶を、どうしたら人に、自分の身内の話のように構えずに読んでもらえるか。どうすれば「自分とは関係のない遠い世界」と思われずに、感じてもらえるか。この本の作り手たちは、そこに最大限の力を注いでいると思う。

「そうか、そんなことがあったのか」。
「そう遠くない自分たちの祖父母の時代、多くの日本人がこのような目に遭っていたのか」。
「戦争というのは、ただ単に人が殺し合うのではないのだな」

 すべては、そこから始まる。

 そして、私はこの本を「よい教科書」として例えたい。

 最近の教科書をきちんと検証したわけではないのでやや恐縮ではあるが、メディア等で見聞きする最近の教科書は、いかに生徒の興味を引くか、効率よく学習ができるかに心血を注いでいると思われる。親しみやすい表紙、豊富な図表、これでもかというくらいの親切丁寧な資料…これはあくまで想像であるし、当然といえば当然の話かもしれない。

 だが、いくら多くの高価な食材を盛り合わせた料理でも、食欲がなければ食べる気にはならないのと同じで、必要なのは料理の中心となる、もともとの素材が持つ魅力を出しきって、食欲を引き出すことにあるのではないだろうか。よい教科書は、読むほどに理解が進み、さらに詳しく知りたくなって自らを勉強に駆り立てる。

 評者は、この本の「もの足りなさ」ゆえ、「もっとよく知りたい」と思う読後感が残った。それこそが、著者が最初に大伯母から話を聞いた時の、気持ちそのものだったのではないだろうか。


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