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先月(2017年4月)

薬理学の宣伝家さんのレビュー一覧

投稿者:薬理学の宣伝家

1 件中 1 件~ 1 件を表示

太古からの細胞や生物が解決しなければならない生存を賭けた営みを、スフィンクスの謎かけのように読者に提示して、思いがけない展開と答えを用意してくれる知的に刺激される生命科学へのいざない。

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 よい問題設定とその解こそが科学の進歩に寄与することができるといわれている。それ故、謎とその解へのプロセスは科学的精神の骨格である。初学の人や若手研究者はまずどんな謎があるのかを知らなければならない。この本は題名の通りに謎に満ちたテーマ設定で、着眼点が新しく時には意表を衝くような展開をしており、思わずどんな答が用意されているのかと、先を追って読んで行きたくなる。そして、カルシウムシグナリングやイオンチャネル・トランスポーターに影響する薬物・毒物を薬理学教科書や生物学・生命科学教科書とは異なった切り口で接することができて楽しく有益であった。

 本書は6章からなり、カルシウム・シグナルの謎、トランスポーター、非選択的陽イオン、カリウム、カルシウム、ナトリウムチャネルの順で、太古からの細胞や生物が解決しなければならない生存を賭けた営みを進化の流れで追う順番と構成になっている。生命現象に携わるもの、そして生命とその歴史にに興味を持つもならば、誰でも地球の歴史、化学進化、分子進化、生物進化のそれぞれの研究の動向に注意をはらう必要があることをあらためて思い起こさせる。本書の冒頭に引用されている、集団遺伝学で有名なドブジャンスキーの言葉は、誰もがかみしめなければならない言葉であろう。

 スフィンクスの謎かけのように、例えば、「生命が誕生したとき、最初に必要であったのは核酸や蛋白質の拡散バリアとしての細胞膜であった。しかし、この膜には水や基質や老廃物を通す機能も必要であったはずである。最初のトランスポーターはどのようなものであっただろうか?」や、「すべての細胞はカルシウム濃度を低く保っている。これはカルシウムが生命体にとって猛毒であるためと説明されている。しかし、カルシウムは本当に猛毒であろうか?」と問われて、それぞれの識者は自分なりの考えを持っているはずであるが、この書ではどのように解かれているか、さらにはアポトーシスまで展開されているさまは、それこそ読んでのお楽しみである。
 エントロピー増大にあらがうものとして細胞膜が生じたばかりでなく、生命維持機構に必須の選択透過性をその細胞膜は獲得した。「そして、ポンプ膜からチャネル膜への変換が、エネルギー膜から情報膜へのパラダイムシフトを実現した。」と述べてあるところでは、うなずくとともに思わず考え込んでしまう。
 また、常に大きな世界に眼を向けよと、警告している文章もある。「生命の進化は生息の場である地球環境の変遷と切り離せない。めざましい深化を遂げている地球の歴史変遷に関する研究がここで述べた我々が今想定している生物学の常識を覆す可能性もあるだろう。」
 そして、著者の一人が以下のように挑発している。「以上、謎解きで話を進めてきたけれど、どうだったかな?私なりの答に納得のいかない点も多いと思うが、もっとスマートな解答は君たちにまかせよう。」

 2色刷りでコントラストもしっかりしている図が計83枚、表は12もある。価格は広く多くの方に読んでもらいたいとの意思の表れであろう。囲み記事やフットノートも充実していて、教科書や辞書で間に合わないことも解説され、理解を助けている。他の章の内容とともに照らし合わせて用語に注意しながら読者が考えれば、現代生物学の主要な論点とその研究成果がおのずと概観でき、生命科学や関連領域にとって重要な細胞膜機能やシグナルの見方が身に付くようになっている。「生物学の面白さ」を知るという意味でよい企画・実演とごちそうのあるシンポジウム(饗宴)のぜいたくさを味わえること請け合いである。
(日本薬理学会誌115: 59 (2000) 書評より 文責:東北大学医学部分子薬理学 教授 柳澤輝行)

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