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広報部長さんのレビュー一覧

投稿者:広報部長

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日本W杯の原点がここにある。

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 98年のW杯時、書店という書店に溢れんばかりのW杯関連書誌が並んだ。しかしその中に、開催後2年を経た今でも尚「読める」内容のものが一体何冊あるだろうか。出場国や対戦表、その時“旬”だった選手のクローズアップ等々が関の山ではないだろうか。

 その点、この『6月の軌跡』。著者が出場選手や監督ばかりか、いわゆる裏方的存在の同行コックや栄養士、広報とあらゆる「現場の肉声」が拾われている。もちろん3戦当日のみならず、代表の全日程を密着取材された著者ならではこそ得られた「温度差のない真実」である。

 当時3戦連敗した日本代表への評価はどのメディアも辛辣なものだった。レギュラー落ちした選手の途中帰国などもあって特にマスコミが騒ぎ立てた。…結果、出場選手は何も語らなくなった。その貝と化した選手他の口をW杯開催後半年に渡る取材により開かせたのが著者なのだが…原稿を読んでいくと面白いことに気付く。

 それまで語らなかった選手達は、ともすると「語れなかった」状態にあったことが見て取れる。この心境をどのように表現すればよいか戸惑っているといったところか。そんな彼らが、著者増島みどりとのインタビューを通して徐々に自分の考えをまとめていく姿が浮き彫りになっているのである。例えば、北澤。途中帰国の思いを最初は批判めいた言葉で語りつつも、話すことで感情が落ち着いてきたのか、次頁では結局良い経験だったという感謝のコメントが登場する。実に生々しい肉声である。
この著作はそういう意味では、インタビューを受けた39名にとって自己のな記録となるだろうと同時に自己の発見でもあることだろう。また、その事実は他の38名には新鮮な真実であるはずである。

 ともかく、これが日本の記念すべきW杯初出場の貴重なる資料であることは否めない。今後いかに日本代表チームが強くなろうが、いかに選手育成技術が進化しようが、日本のW杯原点はここにある。初出場時の弱点と功績、全てがこの一冊の本に詰まっている。いわば今後に向けての課題や進化のきっかけがこの中にはある。サッカーファンにはもちろん、未来の日本サッカー界にとってかけがえのない<遺産>ではないか。

 何年経っても「読める」W杯本。いや、日本代表が世界舞台で益々活躍する今だからこそじっくり読みたい文献として、広くすべての方々にオススメします。

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