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先月(2017年2月)

たけみさんのレビュー一覧

投稿者:たけみ

11 件中 1 件~ 11 件を表示

A2Z

2001/09/11 00:45

素敵な自己愛

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 雑誌のインタビューで、本書について山田詠美さんが「今度はまっとうな純文学を書く」という主旨のことをおっしゃっていたので、いつ出るのかなーと思っていたのですが、ついに出ました!

 なんと言っても主人公がかっこいいです。 恋愛にうつつを抜かしつつ、仕事には情熱を持ってとりくむ。 周囲には自分に共感してくれる同僚、友達がいて、しかも自分をただありのままで愛する夫を持つ。女性の理想じゃないですか!

 しかしやはりそこは山田詠美さんで、今の状況を純粋に楽しむことや自分を愛することには独特のやり方を持っていて、それをいやみなく読者に感じさせるあたりは洗練されていて、かつ読者を肯かせてしまうような普遍性があるなあ、と思います。

 どの世代のどんな人も楽しいことが好きで、その楽しさはやはり自分を愛していることが大前提。 自分を正しく愛することのできる環境も、自分を愛し且つよく知っていないと得ることはできない。

 山田詠美さんの作品は、そんな当然のことを改めて感じさせてくれます。

 この小説の中で、主人公夏美の恋人である成生が夏美のことを「待たない振りして待ってる。でも、嬉しいのは、待っていない時に、夏美が不意打ちかけてやってくること。だから、なるべく待たないように努力してる。〜」(引用)というくだりがありますが、このフレーズには私は参りました。

 その通り。 恋は不意打ちの連続で、習慣に又は義務になったときには消えている、儚いものである。そして恋はやはり不意打ちであるが故に、永遠には続かない。

 この作品の終わりには、作者の愛(あえて結婚とは言わないですが)に対する感覚が記されていると思います。

 読み終わった後に、自分はどうだろうと思ってしまう作品です。

 また、珍しく著者の文筆業に対する考え方を作品上で感じられると言う意味でも、興味深い作品です。

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紙の本今日の芸術 時代を創造するものは誰か

2001/09/11 00:19

芸術の捉え方

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 画家、彫刻家などとして知られる「芸術は爆発」の岡本太郎氏の本。

 この本で岡本氏は、意外にも(失礼!)非常に明解かつ論理的に、そしてやっぱり情熱的にいきいきと、芸術について語っています。 その芸術をとりまく偏見や状況を、絵画史、日本の文化、そして日本の美術教育など非常に多方向から分析していて、その洞察力の鋭さはやはり常人のものではないなと感じます。

 岡本氏は様々な言葉で芸術を定義していますが、誤解を恐れずに意訳すれば「万人に共通の根源的な生きる喜び、怖さなどの感動を突きつけられるもの」というようなことなのでしょう。

 絵画だけに限らず、音楽、文学など表現の産物には、その裏に必ず表現者の感動があります。 その表現の産物が「芸術」となるには、様々なくくり−「人種」「性別」「時代」「文化」などを超えて、その感動が見るもの聞くものを精神的に高揚させる(それが共感でも反感であったとしても)ものであることが必要条件だと私も思います。

 様々なくくりを超えた感動、すなわち芸術に出会ったとき、私達は自分をとりまく「くくり」を突きつけられ、「くくり」について考えさせられ、そしてその「くくり」から解放されるチャンスを芸術からもらう。 それは、つまり1生命体としての、1個人として自由になること。これが、岡本氏の言うところの芸術が「自分自身の人間形成、精神の確立」(岡本氏の言葉の引用)たるゆえんでしょう。

 岡本氏は万人に共通した感動を表現するには具象より抽象、というようなことを本書中で述べていますが、他の著書を読むとどうやらその後「具象の要素を取り入れた抽象」に進んだ模様です(「痛ましき腕」という作品がその初めのよう。この絵は衝撃的です)。抽象と具象という二面性が人間が持つ混沌・矛盾をまさに表しているということでしょうか。

 この本をきっかけに、私は岡本氏関連の本・情報を興味を持って見始めていますが、知れば知るほど岡本氏は思わず惚れてしまいそうになるくらい、自由で魅力的で器がでかい!と感じさせる人物です。 もうご本人は亡くなられましたが、生前に岡本氏にお会いした男性も女性もその魅力にノックアウトされてしまったのではないかしら。

 本質的なものに触れることの少ない、また触れなくても生きていける現在に、1950年代に書かれたこの著書を読むともっといっぱい感動しなくちゃ! と身の引き締まる思いがします。

 本職は何かと問われたときに「人間」と言い切れる、見事に確立された岡本氏の価値観にはしびれます。

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恋愛と生活のかたち

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 これは軽いタイトルであるのに内容は重厚。 嬉しい裏切りで、お勧めの一冊です!

 キリスト教発祥以前の女性崇拝の考え方から、キリスト教が説いてきたイブとマリアという矛盾する女性観を丁寧に考察しています。 同時に現代のフランスでの男女関係に対するスタンスを、フランス特有の宮廷文化を考察することにより解明しようという、至って学問的な一冊です。

 現在、西洋では男女もしくは同性のカップルが日本より色々な形態で認められています。 しかし、この本いわく、キリスト教では生殖目的以外の性行為は基本的に良くないものとされているのです(その考え方の背景はこの本を読んでみてください) 。

 西洋圏、特にフランスが、こんなにも厳しいキリスト教の結婚観を有しているとは、無知な私はこの本を読んで初めて知りました。 こんな考え方の西洋人から見たら、日本は性のモラルが無いと言われても仕方ないのかもしれません。

 私の知る限り、日本にはセックスを子供を産むためだけにしかしてはいけない, という考え方はないはずです。あえて似たような考え方と言うのであれば、婚前交渉がおおっぴらには認められていない点などでしょうか。でもこれも現在ではあってないような思想になりつつあるかもしれません。

 また、この本を読んだ女性はフランスに生まれたかった! と思うのではないでしょうか。 結婚してないカップルでも夫婦と同様の権利が法律で認められていることもそうなのですが、人々の意識上でも結婚はしなきゃいけないもの、ひとつ屋根の下に暮らさなきゃいけない、などという概念がフランス人の意識の根幹にはないようです。

 この本を読んで、「長く愛しあう」×「子供がいる」=「結婚して一つの空間で一緒に暮らす」という方程式について改めて考え直してみませんか?

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大人が作り出す簡易な小社会

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 斎藤さんの作品は文学小説、雑誌など紙ベースのメディアに関してのものであることが多いので、「アニメ・特撮・伝記のヒロイン像」という副題を見て少し意外な感じがしました。 読んでみると、大好きな軽妙な語り口はそのままで、嬉しい限りです。

 アニメの国が「男の子の国」(例:宇宙戦艦ヤマト、ガンダムなど)と「女の子の国」(例:リボンの騎士、セーラームーンなど)とに分かれていると論じ、そのアニメの国と伝記の国の構造が、「紅一点の国」である点で似ていると述べています。

 紅一点というのは数もそうであるが、質的な紅一点とは「ひとりだけ選ばれて男性社会の仲間に入れてもらえた特別な女性」のことである。 このようなことを念頭に、アニメ・特撮・伝記のヒロイン像を論じたのがこの本です。

 いかに女性が認められるためには(例えそれがアニメの中であっても)数々の条件が(男性から)要求されていたかが、この本を読むと良く分かります(しかもこれは万国共通のようです)。

 またアニメの国は男の視聴者のためのものであり、その国での女性の描き方は画一的である、という主旨の指摘は的を射ていると思います。子供心に、金持ちの娘やどこかのお姫様や魔法が使える女の子ばかりがヒロインであり、かつ出演している女の子の数が異様に少ないアニメの国に疑問をもたなかったでしょうか?(しかも設定ではみんな美少女か美女である)。

 実社会ではさすがに紅一点状態はありえないでしょうが、アニメも伝記もある意味実社会で生きている人が作っている物である以上、そのような思想が背景にあることは間違いないでしょう。

 子供の頃に影響された価値観というのは消えないものです。 こういうアニメの思想に現代人がどっぷり漬かっている事は、よくよく考えると恐ろしいことですー。

 アニメ全てがそうだというわけではないのですが、著者の筆力に思わず納得させられてしまいます。

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実りを待つ季節

2001/09/11 00:31

過去と現在をむすぶもの

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 今回はファッションに関しての本ではなく、ご自身の少女時代の記憶やご両親など家族との関係を感受性豊かに描いた、エッセイ的短編集です。

 誰しも幼少の頃は家族の影響を強く受けます。 また成長すると性格面や学業面など色々な面で自分に向けられた親の期待と自分の本来の性質との乖離を感じ、家族そのものから確固とした理由もなく遠ざかりたくなるものでしょう。
 
 著者が25歳の際に著者の父親が亡くなってしまわれたことにより、今まで反発してきたことや父親を理解してあげられなかったことに対する後悔をことさら感じてしまう。その感情を40代になり家族をもった著者がつづる文章には、思わず涙してしまいます。

 私も今年で25歳ですが、ひとまわりも上の年代である両親が日々抱いている感情に対しては恐らく全くといっていいほど理解していないでしょう。ましてや子供である自分に対して両親が抱く感情などは理解しようもありません(子供もいないですし)。
 
 でも理解していようといなかろうと、今の自分の背後には両親や兄弟との交流や影響があり、それを好きであろうと嫌いであろうと切って捨てることはできないものなんだなあ、それであれば大事にするほうが幸せだよなあ、などということをこの本を読んで感じます。誰しも家族に複雑な思いを持っているんだと感じる本でした。

 また著者が自分自身に対して「生意気で気が強い」と思っているという点も、その著作から日々の生活を楽しむ繊細な感性をもった人であるという印象を著者に対して持っていた私からすると驚きでした。でも、著者の「気の強さ」は自分の価値観や好みをかたくなに守ってしまうということであって、その価値観に基づいて色々なことに感性が働くのですから、気が強いということと感受性が豊かということは矛盾しないのかもしれませんね。

 過去を踏まえて現在を満たしていく、という意味で「現在」が実りを待つ季節なのかな、とも思いました。

 著者の文章力の確かさや著者の背景など、色々な面を垣間見ることのできる一冊です。

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他者認識と自己確立

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 著者がいうケンカとは当然言葉のケンカ、すなわち『議論』です。

 女性タレントである著者は、テレビで議論していると次第に本題からずれ、いずれ「女はだまれ」「結婚してからしゃべれ」など女性に対する誹謗中傷が主な子供のケンカの様相を呈すことに、疑問と苛立ちを覚えています。その状況を打破するために、ジェンダー論・フェミニズムの大家である上野千鶴子教授に議論の構成を学びに行く。その勉強の成果のレポートとして著者が書いたものが本書です。

 誰かと話をしている最中、ふと気付くといつの間にか自分自身に対する批判ではなく、「独身女性」「今時の若者」などという分類そのものに対する批判を浴びせられた経験は誰にでもあると思います。その度に、「それは今話してることと全然関係なーい」と思い苛立ちを感じる人も多いでしょう(私?)。
 その一方で、「やっぱりピンクって女の子っぽい色なのかな」など特に理由もなく社会に蔓延している価値観に揺れる事もあるでしょう(私?)。 そんな人はこの本を読むと、同感と納得の嵐に襲われることでしょう(特に女性) 。

 社会の中で、人間は色々な見方をされるし、色々な見方をするものです。 その「見方」の一つに「性別」というものさしがあります。これは生物学的な違いですが、社会的にはその違いに付加価値を持たせる場合が多いような気がします。

 一つの事柄にもいろいろな側面があることを知る、一つの事柄に対して他の人がどのように感じているかを知る。たとえそれが自分にとって「エイリアン」であろうとも。

 「オリジナルは自分1人では存在し得ない」と本書にありますが、著者は「フェミニズム」を勉強することを通じ、慰安婦問題・家長制度・女性の美の価値についてなど、「女性」というくくりだけに対する社会的な評価が行われている事柄に対してどのような見解があるかなど、様々な理論・見解をまず知る。

 そしてその理論・見解の言葉を通じて、その理論・見解が女性に対する『思想』『固定概念』『決め付け』を女性に押し付けたものでないかを検証する。その思想が自分の持つ思想とどのように違うか、なぜ違うかを自分に問いかけ自己批判し、知ることにより、自分自身の「オリジナリティ」がはっきりとしてくると述べています。

 自分のオリジナリティがはっきりと分かったときに人は本当の意味で様々な価値観から自由になれるものなんだろうなと思っている私は、この本を読んで「社会学勉強したーい」などと浅はかに思ってしまいました。

 この本は著者が「言葉は感動をもたらす。学問は感動の宝庫だ」と語るようになるまでの過程が、生き生きと描かれている本です。学問って楽しいものだ、と私も思います。

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紙の本白保

2000/09/08 10:57

自然との共存

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これは沖縄県石垣島の白保海岸のサンゴ礁、そして白保に住む人々の言葉を綴った写真集(文庫サイズ)です。
白保に生きる人々は白保の海を台所のように、そして人生を映し出す鏡のようにして生きています。
写真ももちろん素晴らしいのですが、白保の人々の言葉を見ていると生活って、生きていくことって、本当はシンプルなんだなあと思いほっとします。
でも、もちろんシンプルに生きていく人にはシンプルに生きていく人なりの悩みもあるんだろうなとも思い、こんな素晴らしい土地に生きている人にもストレスがあるのだから、東京というストレスの多い地域に生きている私が色々悩むのも当たり前だ、という気(気のせい)にさせてくれるヒーリング効果もあります(?)。

こんな本を買うからには当然、私も白保のサンゴ礁を見ました。
白保は沖縄中の海の中でもピカイチのサンゴが残っている海です。
特にアオサンゴと言われるサンゴが群生している海は世界でも珍しい地域だそうです。

白保のシュノーケルポイントまで案内していただいた民宿のおじさんが、案内の途中で「あそこが新石垣空港の滑走路になるところだよ」と微妙な表情で紹介してくれました。

そう。現在白保の海のすぐそばの「カラ岳」陸上に新石垣空港が建設される予定なのです。

私のような観光客からすると「なんでわざわざこの美しい海に....」という思いが強く残りますが、沖縄の離島である石垣島、そして八重山諸島の中心地である石垣島からすると、主要収入源である観光収入と第一次産業の収入(農業・漁業等)をより伸ばしていくために、新石垣空港が必要であるとの意見が大半のようです。

それでも世界有数のサンゴを有する白保を守ろう!という運動は盛んであり、当初新石垣空港が白保海岸上に建設される予定であったものが何度もその建設予定地が覆されるという事態も起こっていたのでした。
サンゴが失われる大きな要因としては「オニヒトデによる侵食」と「赤土流入による死滅」があります。
現在でも、白保海岸に隣接するカラ岳陸上を削って建設する新石垣空港工事に伴うサンゴへの影響は心配されています。

本当に「新石垣空港」は必要なのでしょうか?
あの美しいサンゴを死滅させてまでも観光客は集まるのでしょうか?
あくまでも一観光客である私の疑問はつきません。

色々な側面があるため一概には言えませんが、今後の新石垣空港建設があの輝く海、そしてその中で生きている魚・サンゴ、そして白保の人々の生活の美しさを壊さないよう祈るばかりです。

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生活を通じて

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光野さんの本を買う前には、自分を批評的に見る精神的余裕が今の自分にあるかないかを考慮しないといけない。
なぜなら光野さんの本には光野さんの完結した世界があり、その本を読むと自分に足りないものを反省と共に強く意識することになるからである。

この本は、前半は光野さんがイタリアにおいて感銘を受けた女性のインテリア、後半は生活をとりまく様々なものへの光野さんの思いを記してある。
私がこの本を読んで印象に残った点は、光野さんの向上心もさることながら、光野さんの西洋趣味である。
東洋人と西洋の文化。これは今や切っても切れないものであり、珍しいことでもなんでもない。

光野さんのすごいところは、「ただイタリア人の真似をしてもだめなのだ。まずは目の前にあるイタリアの暮らしをからだで理解してみよう。わたしは、靴を履いて生活してみることを思いついた」点なのである。
さらに光野さんはタイトスカートを家の中で履き、ベルトを締める。
すると、イタリア人の家の構造からファッションから何もかもが、イタリア人の骨格・エネルギーなどイタリア人の生活様式にとって最も心地よいものであることに気付く。
さらに日本人である光野さんがそっくりその真似をしても、自分には合っていないと気付くのである。

とにかくすごい。徹底している。
「とりあえずやってみよー」精神の少ない怠惰な私はそれだけで感服してしまうのだが、そこから更に自分にあうインテリア、引いては生活の仕方を追い求める光野さん。
「あー、どうしよー。私もなんかしなきゃー」感に襲われること間違いなしの1冊である。

また、日本独特の気候・生活習慣と、それと今や切っても切れない西洋の文化とのバランス。それを、現代の私たちはどのように自分達に快適な状態で、かつ個性的に取っていくべきなのかを、考えさせられる一冊でもある。

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紙の本陰翳礼讃 改版

2001/09/10 23:53

大谷崎の鋭い分析

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 なんと今まで一冊も谷崎氏の本を読んだことがないにも関わらず、なぜか私の中で谷崎氏の作品がどろどろしてて読みにくそうという認識があり、小説ではなくエッセイめいた本作を選んだ次第です。

 この本の中にはタイトルの「陰翳礼賛」を含め6つの作品が収録されていますが、一貫して感じるのは谷崎氏の様々なことに対する新鮮な切り口と、私の「どろどろイメージ」を覆す理路整然とした文章です。 「大谷崎」と賞されるにはやはり筆力も必要なんですね(当たり前ですが)。

 特に「陰翳礼賛」での、日本人の肌・食べ物などは明かりの少ない場面で最も映えるという記述には、常々「なんでこんなに日本映画は暗いんだろう」と思っていた私にとって、なるほどーという感じでした。 ちゃんと日本映画の監督さんたちも心得ているんですね。

 また「懶惰の説」で東洋人は「物臭さ」「億劫がり」であると述べています。 私は日本人・中国人などアジアの人達の方が勤勉であると思っていましたが、読んでみると確かに東洋人には怠惰な面もあるのだ(特に衛生的にというのを私は強く感じましたが)、と思います。
 実際そういう側面は私達東洋人の生活・考え方に深く関わっているものでもあるのですから、怠惰な側面を「排除すべきなこと」と一概にはくくれないとも感じました。

 この本に収録されている作品は、西洋と東洋との文化の違いや実際の生活においてどのように影響されているかを改めて知ることができる作品ばかりです。 世相の鋭い分析もさることながら、特に西洋がいいとも東洋がいいとも言わない著者の姿勢、聡明さは素晴らしいと思います。

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昏い部屋

2001/09/11 00:08

女性のためのミステリー

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 ミネット・ウォルターズ氏の作品の特徴は、女性にフォーカスが当たっていることでしょう。 また、その女性が何らかのトラウマを持っていること、経済的には恵まれた環境にいることも特徴の一つです。

 現在、犯罪の社会的な背景にフォーカスが当たっているミステリーが多い中、彼女は全作品を通じて、犯罪の社会性よりも、女主人公の家族関係・恋愛観・結婚観など個人的な性質と犯罪事件との絡みがメインである感じを受けます。

 同じ女性を主人公にすることの多い赤川次郎氏のミステリーに登場する女性がほのぼの&あっけらかんと芯の強い女性であるのに対し、ミネット・ウォルターズ氏の描く女性は自分の精神的系譜である家系や自分を取り巻く環境と戦うストイックな女性です。

 一方、犯罪そのものの描き方、物語の展開も非常に巧みで、ついつい引き込まれて夜更かしする羽目になります。

 本作品はこれらの彼女の作品の魅力が十分に感じられる作品です。今までの3作(「氷の家」「女彫刻家」「鉄の枷」)は背景が多少古かったですが、本作は現代を背景としたもので、その分共感しやすいような気がします。様々な手がかりがちりばめられている点も今までと変わらず楽しめる作品です。

 何もかもに恵まれているように見える記憶を失った主人公、魅力的な主治医、性的に奔放な女友達、その女友達と逃げてしまう主人公の婚約者、権力をもつ父親…。

 いかにもミステリーの登場人物!! という設定をしているところ、それでいてロマンスのスパイスを忘れない女性作家ならではの娯楽性がまた良いんです。

 そして同時期に起こる2つの事件の絡み方も、関連を匂わせておきながら、どう関連しているかは最後まで読まないとなかなか(私は)わからないという、ストーリーのよさも光ります。

 個人の精神的な資質がその人独自の人間関係を生み、その人間関係から犯罪が起こる。 ミネット・ウォルターズは、ミステリーの醍醐味はその犯罪の背景にある人間であることを感じさせてくれる作家さんです。

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表現者の欲望

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 この本の副題は「文豪谷崎の『妻譲渡事件』の真相」です。 妻譲渡事件といえば文学史の教科書にも出てたなあ、でもあまりよく知らないなあ、と思ったのでなんとなく手にとって見ました(著者の評論の洞察力と語り口が好きだという理由もあります) 。

 谷崎潤一郎氏、千代夫人、佐藤春夫氏の事件を中心に、彼らをとりまく男女について興味深く描かれています。普通の人には起こりえないドラマチックな人間関係は、やはり谷崎氏の変わった(というか異常な?)性癖がそうさせるのでしょう。 美しいものを愛し、「家畜より猛獣が好き」な谷崎氏を満足させる女性はどんな人なのか、という興味からもどんどん読み進んでしまいます。

 また、この本では佐藤氏の詩心についてとても上手に描かれていると思います。 詩心のない私は、詩を読んでもなかなか作者の感情を汲み取れないのですが、この作品の中で出てくる詩は本当に心を打たれます(おそらくその詞の背景についての著者の的確な描写が私の想像力不足を補っているからでしょう…)。

 詩は言葉が少ない分論理性よりも感情が先行するんだ、ということが良く分かりました。

 谷崎氏も佐藤氏も、その形は違えど自分を表現したいという欲望を他の人よりもっており、またそれを表現する才能に恵まれていたのでしょう。

 この作品を読むと、芸術家って自分の人生に関わってくる人との交流に対してその豊かな感受性が反応して、感動して、それを誰かに訴えずにはいられなくなるんだろうなあ、と思います。 そして、やはり感情が一番揺れるのは愛する人と対しているときであり、芸術家にとって何よりその創作意欲を刺激するのは恋愛なのですね。

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