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レビューアーランキング
先月(2017年4月)

エーミールさんのレビュー一覧

投稿者:エーミール

34 件中 1 件~ 15 件を表示

サブリエル 冥界の扉

2003/01/14 19:33

重厚に描き出す古王国の物語。ダークファンタジーの不思議な世界をヒロインサブリエルとともに行く。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 またまた面白いファンタジーが出た。「古王国記I」で「冥界の扉」とあって、たしかに冥界と行き来するのでダークファンタジーではあるのだが、読んでみるとそれほどダークではなく、なかなかに魅力的な不思議な世界がひろがっている。
 表紙を見た時、フィリップ・プルマンのライラの冒険シリーズ(『神秘の短剣』など)を思い出した。ストーリーもイメージとしては似ている。三部作であることも。でも、全く違う趣向や展開をみせていく。アンセルスティエールと境界の壁を隔てて存在する古王国やアブホーセンがどんなものであるかということは、ヒロイン(18歳の女子高校生)であるサブリエルにもよくわかっていないという設定で物語は進んで行く。でも、緊急事態となり、それを知らないでいることができなくなる。アブホーセンというのは、人名ではなく役職名であることや古王国の悪霊を鎮める役割をしていることなどがわかってくる。
 一部目である本書を読んで、やはり続きが読みたくなる。全体像はどうなっているのだろうかと知りたくなる。この架空の世界の不思議な重々しさ。空気の重さまで感じてしまうような細かい描写と文の運び。そして、魅力的な登場人物。人物ではないが猫のモゲットもかなり魅力的だ。
 作者ガース・ニクスは、このシリーズで数々の賞を受賞している。1部である本書は、1995年に発表されたもので、2部『Lirael』は2001年に発表され、現在は3部作の3部目『Abhorsen』を執筆中とのこと。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本もうひとりの息子

2003/05/06 17:48

アラブ人の医学生ハミッドが、イスラエルのテルアビブで下宿探しをして数々の差別を受けたあとに出会った人とは?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 イスラエルという多民族国家のなかで人口の多くを占めるユダヤ人とアラブ人の紛争は今なお続いています。なぜそうなったのか、争わないでいることはできないのか、と思っている人は沢山いるのに、紛争は簡単には解決しそうにありません。
 この物語は1960年代のイスラエルを舞台としています。原本は、10年前に書かれたものです。戦争の痛ましい傷痕は、体にだけでなく、心にも深く残っているのです。
 この物語は、イスラエルの山村からテルアビブの大学の医学部に入学したハミッドという若者を主人公としています。下宿探しをし始めてから、ユダヤ人のアラブ人差別に気がつきます。実際に何度も下宿をことわられながらもこの主人公は、もしかしたらと、人の心を信じようとするのです。そうして、その心が通じたかのようにある家ではとても親切に迎え入れられるのですが、それにはわけがあったのです。
 戦争や差別のことを物語にするのは、むずかしいことだろうと思います。大上段に構えて、戦争はいけない・差別はダメと叫ばれても、そうなのだけれど…ともう一つ納まりの悪い感じがすることがあります。人は何故争うのか、人は何故差別するのかという問いかけを繰り返していても、身近な争いですらなかなか解決することができなくて、むなしさをおぼえたりします。ところが、この物語はおだやかに心に訴えかけてきます。それでいて、何故だ? という問いかけを発信し続けています。それにこういうふうに人の心は動くのだろうかと、考えさせられもします。
 著者は、身の回りで体験したいくつかの出来事が深く心に残っていて、それをもとにこの物語を書いたのだそうです。重いテーマを読みやすくかつ心に残る物語に作り上げていて、素晴らしいと思いました。イラン戦争というこの時期だからというような本ではなくこれは人間というものを考えるという、普遍的なテーマを含む物語なのだと思います。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本鏡のなかの迷宮 1 水の女王

2003/09/02 19:55

人魚が泳ぎ、羽根のある石ライオンが飛びまわる水の都ヴェネチア。水の女王と光の王のかかわりは?地獄の死者とは何?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 人魚が泳ぎ、石のライオンが動きまわる、といってもそんなこともあったかもしれないと思えるのがヴェネチアというところだ。まさにこの物語は架空のものなのだけれど、現実のヴェネチアの地名や様子を描いているし、雰囲気がストーリーにぴったりとあっているので、ヴェネチアに実際にあったことのように思えるほどだ。いつも岸に打ち付ける水の音がしていてちょっとかげりのある雰囲気の石だたみの街。
 孤児院からガラス工房の弟子として連れてこられた2人の少女。一人は盲目だったけれど親方に鏡の目をもらって見えるようになる。もう一人のメルレは、水の女王にふれたことがあるつまり赤ん坊のとき溺れ死ぬところを救いあげられたらしい。この一巻は、メルレが元泥棒の少年ゼラフィンと知り合って、エジプトの密使と貴族議員の密会の場を見てしまい、水の女王を助けるために大活躍するところまでで終わっている。そのほか地獄の死者や光の王なども登場するが、どういう関係なのかどこに力を及ぼしているのかよくわからない。水の女王もどういうものなのか今の段階ではわからない。
 なんとも不思議な雰囲気が、月明かりが水にきらめいている運河の薄くらい感じとぴったりで、ヴェネチアを舞台に選んだ作者のセンスのよさに感心するばかりだ。人魚もディズニーの描く美しい人魚などと違って口が大きく開くし、するどい歯がならんでいるというようなグロテスクな感じを持たせていていかにもダークファンタジーの雰囲気をつくりあげている。
 工房の職人の不思議な話が続くのかと思ったら、メルレとゼラフィンの出会いからあっという間に華々しく展開して、水の女王とは? ヴェネチアはどうなる? という大きな問題の方へと目を向けさせられた。三部作というが、本当に続きが読みたい。待ち遠しい!

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本血族の物語 上

2003/08/05 18:36

20万年前のアフリカを舞台に、神話のような昔話を折り込みながら人類の始源の生活を描いた壮大な物語。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 人類の遠い祖先は、500万〜600万年前にサルとの共通の祖先から分かれ、百数十万年前にアフリカ以外の地域に広がっていったのだそうだ。さらに、現代人の祖先となる人々はやはり十数万年前にまたアフリカから他の地域に広がっていったのだという。ちょうど、6月12日付でイギリスの科学誌ネイチャーにこれまで見つかったものの中では最古の16万年前の現代人の祖先の化石がエチオピアで見つかったという発表があった、という記事が日経新聞(6月12日)に載っていた。発見は1997年で、日米などの国際共同チームによるもので、場所はエチオピアの首都アディスアベバ北東のヘルト村という。
 こうした発見や研究が進む中で、この作品に出合うと興奮してしまう。「物語のほとんどは、わたしが想像でつくりあげました。」と著者は書いているのだが、読んでいくと、物語の中に生きた人間の姿が浮かび上がってくる。食べること住むこと着ること、火や道具をつかいこなすこと、言葉を話すこと。生活の知恵を伝え合いながら工夫を重ねていった様子が目のまえに浮かんでくる。それでいて生活の様子の描写だけでなく、<月のタカ>族の生き残りの子どもたちを中心に置いた構成とストーリー展開が面白く、グイグイと引き付けられていく。さらに、神話のような言い伝えの昔話を間にはさみ込んだ構成は、最初はまどろっこしいようではあったが、次第に地のストーリーを補強し一体となって独特の重厚な文学的雰囲気を作り上げている。

 タイトルの「血族の物語」は、原題ではTHE KIN。「血族」より「種族」といった方がなじむような気がしたが、読み進むうちに、「種族」では意味にずれがあることがわかった。やはり「血族」というしかないのだろう。
 この著者の他の作品も重厚で印象深いものが多い。近未来を描いた『エヴァが目ざめるとき』(徳間書店)もある意味で人類の新しい始まりを予言するような作品で興味深かったが、今回の作品で現代人の祖先の始源「エヴァ」へとさかのぼっているところがまた面白い。今回はまだ上巻がでたところだが、下巻で新しい<月のタカ>族がどう生きていくのか、下巻が出るのが待ち遠しい。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本ホー

2003/07/22 18:55

問題から目をそらさず、でもユーモアは忘れず。元気が出る本です。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ソフトカバーのカラフルな、それでいてすっきりとした本。スマートで可愛らしい。そう、本の中身もそんな感じ。このタイトルは、フクロウの鳴き声をあらわすというけれど他にも「やじって追い出す」とか「警笛を鳴らす」とかいう意味もあって、そういう意味も掛けているのではないかと思う。会話がユーモア(皮肉も含めて)たっぷりで、登場人物がかなり奇妙。乱暴でわがまま勝手ないじめっこは、まあよくいるタイプ。だけど、自転車のタイヤを歯でかみきっちゃう女の子はスゴイ、生まれて初めて付き合う女の子がこういう子だったら人生感が変わるかもしれない。でも主人公の中学生の男の子ロイは、今時こんな落ち着いた家庭があるかなと思うくらい健全な(?)家庭の、前向きな考え方をする一人息子。よくよく考えると、結構クラシックなムードの作品かもしれない。

 ある時期から問題のある家庭を扱った作品が多くなって、そのどうしようもなさは問題解決などというなまやさしいことではなくて、それでも生きて行かなきゃいけないんだというような、やりきれないムードの作品が多くなったように思う。大人にも解決できないような問題が子どもたちの生活に大きく影響してきている現実はあるけれど、子どもの未来に救いがないような作品を子どもに与えるのは、悲しい。どうにかして、問題にたちむかっていく、そのエネルギーを子どもたちには持ち続けてもらいたいものだ。
 そういう意味では、この物語はうまくいきすぎかもしれない。一種のおとぎばなしといえるだろう。でも、そういう物語が、今、求められているのではないだろうか。元気がでるような物語が欲しい。それに、ピッタリのストーリーなのだ。
 この作家はコラムニストとしてもミステリー作家としても有名な人。はじめてのYA向けの作品で「姪や甥、義理の息子たちに安心して手渡せる本を書きたかった」というのも執筆の1つの動機なのだとか。
 2003年度ニューベリー賞のオナー賞、そして全米書店員がえらんだ「いちばんお気に入りの本」になり、発売3ヶ月で25万部も売れて全米ベストセラー作品となった。読後感の良い、さわやかな本だ。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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聖なる鎖の絆

2003/06/17 19:39

エンジェル・アカデミーへようこそ。天使のための全寮制の学校はとても素敵なところですよ。

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 幽霊になったり、よみがえってきたりというストーリーがこのごろよくあるのですが、これは、天使のお話です。それも、とても現代的な天使の物語です。
 主人公の少女メルは、13歳の誕生日のすぐあとに交通事故にあってこの世を去り、天使の学校エンジェル・アカデミーに入ってしまいます。それはもう自然にすいこまれてしまったかのように、エンジェル・アカデミーの生徒になっていたのです。なぜわたしが天使なの? わたしは死んだのよね? とメルは不思議でたまらないのですが、まわりはそんなことおかまいなし。ここはやっぱり学校なのかしら? みんな着てるものがすごく素敵だし、食べ物はおいしいし、お買いものも自由に出来るし、寄宿学校にいるみたいな気分。ローラという素敵な女の子と友達になったし、だんだん誰かのためになることをしたいという気持ちになってきました。りっぱな天使にならなくちゃ。
 ティーンの天国というのはこういう感じかな? とすると小さい子の天国とかおばさんの天国とかおじさんの天国とかはどんな感じなのかな? などといらぬことを考えてしまうのですが、シリーズの1巻なので、他の状況はでてこないのでしょうか。
 学園物の天国天使版といったところです。主人公メルは、バカ真面目ではないし失敗もする等身大の描かれ方ですが、時空をこえて活動して天使の任務こなしていくというストーリーのエンターテイメントファンタジーです。読みやすくて楽しめるということだからでしょうか、本国イギリスではすでに第6巻まで出ています。メルはりっぱな天使になるのでしょうか? それともドジばっかりしている天使でしょうか? 読むときっとメルのファンになってしまいますよ。

★★★

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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古代ローマを舞台に繰り広げられる冒険ミステリーシリーズの第一弾。ヒロイン、フラビア・ジェミナの謎解きが冴える。

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 古代ローマを舞台とし、フラビア・ジェミナという名前の少女を主人公とした謎解き冒険物語。古代ローマの少女といっても、今とそんなにかけ離れた人物像ではなく、むしろ等身大という感じだ。隣の家の男の子や浮浪児ルーカスや、ストーリーが進んで行くごとに友達が増えていく。シリーズ第一弾だから紹介していくという意味もあるだろう。
 人の心は昔も今もそんなに変わらないのだが、町の作りや生活習慣など、古代ローマはこんなふうだったのか、と思わせるところがあって面白い。いわゆるローマ風呂といわれるものが町の中にあって入りにいく様子なども出ている。信仰のことも少し出てきている。中心の筋は謎解きなのだけれど、ヒロインであるフラビアの好奇心とともに冒険しているような活動的な気持ちにさせてくれるストーリー展開だ。
 あまり、大人っぽくなく、それでいて探偵になったように謎解きをしていく楽しさがあって、とっつきやすく面白いと思う。ただ、内容がせっかくとっつきやすいのに、表紙や装丁の最近のファンタジー的な物々しさはどうなのだろうか。中身より大人っぽく見えて手に取りにくいのではないだろうか。それとも、昨今のファンタジーブームにのって、似たような装丁のもののほうが手にとるのだろうか。
 ともかく、とても楽しめる一冊で、勿論一冊づつストーリーは完結しているので一冊でも楽しめるが、2弾以降も期待して待っていていいと思う。著者はすでにこのシリーズを7冊目まで書き上げているのだとか。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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この通りには特別な人々が住んでいるわけではない。でも、ここで起こる事件はドラマよりも「濃い」んだ。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ニューヨークのマンハッタン145番通り、ハーレムの街角を舞台にした短編集。これは、その貧しいスラム街で起こった事件をリアルに描いた短篇を連作風にまとめてあるのだが、読み終わると一篇一篇の力強さとそこに登場してくる人々の強烈な個性に圧倒されてしまう。その力強さと強烈な個性が、「濃さ」や「熱さ」を感じさせるのだろうと思う。この作家は、そういう人や空気まで描き出す筆力を持っているのだ。
 事件といっても、警官がかかわるものばかりではない。街の名物老人のことや不思議な出来事、日常の幸不幸占いのようなこと、恋、パーティーとどこにでもおこりそうなことも描かれている。でもやはり「濃い」のである。この味わいは、特別だ。
 YA向きの企画ということで、装丁も大人っぽくスマートだ。内容と装丁がよくあっていて、好感が持てる。ジャズが聞こえてきそうな感じだ。
 スマートで個性的な一冊。ぜひ、この雰囲気を味わってもらいたい。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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光をはこぶ娘

2003/02/04 18:28

O.R.メリングのケルトファンタジーシリーズ第5弾。アイルランドの森の妖精の国へ、いざ!

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 この作品の主人公は、11歳の少女ダーナ。父親と二人でアイルランドの森の近くで暮らしている。母親は、ダーナが3歳の時に行方がわからなくなってしまった。父親も愛する妻が突然いなくなってしまったことで心に痛手を負っている。ダーナも母親の失踪は、自分のせいではないかと気にしている。
 二人の住んでいる森の近くに<低地の谷>といわれている場所があり、古い時代の城壁も残り、自然保護の対象になっている。それなのに、そこに道路を通すことが許可され、木々が切り倒され、それに対して反対運動がおこっていた。環境保護戦士たちがそのあたりで寝泊まりし、二人はそういう人達とも知り合いだった。
 ダーナは森の中で妖精の貴婦人に出会う。妖精国の女王からルーフ王へのことづてを届けてほしいといわれる。やりとげれば、母親をみつけるという願いをかなえてくれるというのだ。ダーナはそれを信じて妖精の国へと冒険の旅にでる。
 今回はこれまでの四作よりは、主人公の年齢が若いので母親を探す旅になっていて、これまでとは少し違う雰囲気になっている。ケルトのファンタジーで華麗なる妖精達の世界がでてくる点は、今回も前の作品と同じであるが。そして『夏の王』に出てきた双子の妹オナーが、妖精国の美しい貴婦人として今回姿を見せている。
 物語の最初の方では、ごくふつうの女の子であったダーナの個人的な悩みが、妖精国の問題とからみ、環境問題とからみ、最後にはきれいにまとまっていくあたり、ストーリー展開が見事である。おまけに次回作がカナダを舞台にすることへの足がかりもしっかり作ってしまっている。
 ケルトのファンタジーという雰囲気を作りつつ、こちらの世界とからんだストーリーを次々と作りあげ、さらに前作ともからませつつ物語を作っていくこの作家の手腕はなかなかに素晴らしい。ぐいぐいひき込まれてしまう面白さだ。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本ユウキ

2003/08/14 12:01

小学6年生になったケイタがこれまで仲良くなった転校生の名はいつもユウキだった。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 小学校6年生の男の子ケイタが主人公。読む前は、ユウキという子が主人公の話なのかなと思っていたのだけれど…。内容は、この年齢の、それも男の子にしてはちょっと感傷的かなと思う。でも、この時期の子どもは案外大人っぽかったりするのだが。転校生の名前が字は違ってもいつもユウキというのは面白い設定だ。そして、今度の転校生もそうかなと思ったら、男女2人の転校生のうち長い髪の女の子がユウキと言う名前だった。女の子というので動揺してしまうケイタ。どうなっていくのかと読んでいて引き込まれてしまう。
 このユウキという女の子も面白い子だった。不思議なところがあったのだ。
 ストーリーの面白さを考える気持ちと現実の子どもを描こうとする気持ちが作者の中で分離しかけたような気配が少し見える。それが、ケイタを感傷的な感じに見せたり、期待を大きくさせすぎた感じもあって、後半の展開がむずかしかったかなという気も多少感じさせる。が、それでもかなり面白い作品だと思う。
 転校してくる側と、転校生を迎える側の気持ちというのも描かれていて、体験のある人はそうそう! と思うし、体験の無い人にもそういうことなのか、とわかってもらえそうだ。
 作者のこれまでの作品は平安朝ファンタジーだったが、今回の現代の子どもを描いた作品も、主人公の年齢以上に大人っぽく思えたが、面白かった。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本川の少年

2003/08/26 20:22

川にあらわれる謎に満ちた少年の正体は?孫娘と最愛のおじいちゃんとの別れを描く。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ジェスはおじいちゃんが大好きな女の子。夏のある日おじいちゃんが倒れた。おじいちゃんは、どうしても故郷に行きたいといって病院から無理に退院してしまう。おじいちゃんの最後の願いをかなえるために、家族はおじいちゃんが子ども時代をすごした川の流れる故郷にコテッジを借りて滞在する。おじいちゃんの最後の望みは「川の少年」と題した絵を描き上げることだった。
 読み始めたときは、ついこの主人公のジェスのことを「川の少年」だと思ってしまった。
 でもジェスは15歳の水泳の得意な女の子。読み進むうちに「川の少年」って何? だれ? という思いが強くなっていく。作者はたぶんそうなるように考えて書いていったのだろう。そして読み進むごとにジェスの気持ちに自分の気持ちがそっていくような気がした。
 この作品で作者は、1998年のカーネギー賞を受賞。読み終わって、物語の中に登場した人たちの気持ちが響きあっているような感じがしばらく残っていた。
 その一方で、ジェスがこんなにもおじいちゃんが好きであることに、圧倒されてしまった。こういう例は実際にもあるだろうけれど。だからこそ、こんなにも感動的な別れがあって、ジェスの心の成長もあるのだろうけれど、程度が強くはないだろうか。 
 死と別れということを扱いながら、そこに成長と希望を感じさせてくれるこうした児童文学は、ある時期から少なくなってしまっていたので、この作品の登場はとても嬉しい。川の少年の存在が謎めいていてミステリーっぽく大人っぽく、YA向きともいえる作品だ。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本アーサーとミニモイたち

2003/08/14 11:33

「グラン・ブルー」「ニキータ」など有名なフランスを代表する映画監督の初めての小説、冒険ファンタジーです。

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 アーサーという10歳の男の子が主人公。フランスの田舎町にある祖父母の家にひきとられて暮らしているのですが、祖父は四年前に行方不明になってしまっています。そのため、いろいろなものの支払いが遅れがちになり、庭付きのその家からもうすぐ追い出されてしまいそうになっています。おじいちゃんが大好きだったアーサーは、おじいちゃんから不思議なことを聞いていました。それは、ミニモイという体長2ミリくらいの小さな種族がいるということです。夏休み中にアーサーは10歳の誕生日を迎えました。おじいちゃんの書斎はアーサーのお気に入りの場所ですが、その日にそこでおじいちゃんからのメッセージを本の中からみつけます。それには、地下に住むミニモイ族の国への行き方がかいてあったのです。アーサーの冒険が始まります。冒険が始まるとアーサーは大活躍。だから、アーサーという名前だったのねと言いたくなる場面もでてきます。
 2005年映画化決定とのことです。カバーのイラストがそのまま動き出しそうなくらい活き活きしていますが、この絵がアニメになるのでしょうか。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本魔法がいっぱい

2003/06/17 19:50

大魔法使いクレストマンシーシリーズの外伝で、短編が4篇収められています。

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 クレストマンシーというのは役職名で、魔法が悪用されないように使い方を監督し、悪用されているとわかったら、時空を超えてかけつける大魔法使いのことです。クレストマンシーになれる魔法使いは、10年に1人しか生まれないといわれていて、強力な魔力を持ち、9つの命を持つ大魔法使いです。助けを求めて「クレストマンシー!」と呼ばれると時空を超えてかけつけるのですが、呼ばれた時に着ているかっこうのまま移動してしまうので、ときにはパジャマ、ときにはひどく古風な衣装、ときにはおしゃれでパリっとしたスタイルということになるという、この作家のいたずらっぽいしかけに笑ってしまいます。
 このシリーズは、すでに4冊(『魔法使いはだれだ』『クリストファーの魔法の旅』『魔女と暮らせば』『トニーノの歌う魔法』)がでていますが、今回は外伝で、「妖術使いの運命の車」「キャットとトニーノの魂泥棒」「キャロル・オニールの百番目の夢」「見えないドラゴンにきけ」の短編4篇が収められています。
 この作家は緻密な構成の作品が多く、さっと読めるというものではないのですが、独特の複雑なトリックのあるファンタジーやパラレルワールドを書いていて、読み終わると豊かな世界の中でたっぷりと楽しませてもらったという満足感を感じます。それにいたずらっぽいユーモアもあって、細かいところまで行き届いた感じのする物語が多いのです。
 この作者の『魔法使いハウルと火の悪魔』(徳間書店)をスタジオジブリの宮崎駿監督がアニメ化するというので、それも話題になっています。
 短編とはいえ、ダイアナ・ウィン・ジョーンズらしさがいっぱいの4篇で、それぞれにたっぷりと楽しめます。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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紙の本アースシーの風

2003/05/20 20:00

ついに出た!あのゲド戦記第5巻が、第4巻から11年を経て出版されました。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ゲド戦記の第4巻には、「最後の書」という副題がついていました。それから10年あまりを経て、第5巻が出ると知った時は驚きましたが、同時に第4巻が出たことで湧き上がってしまった疑問の答えが得られるのではないかという期待も持ちました。
 無数の島々からなるアースーシー。羊飼いの少年ゲドはたぐい稀な能力を持っていることがわかり、ロークの魔法学院で魔法の修行をすることになります。ゲドは、修行を積み、並外れた魔法の力を持つ魔法使いとなります。その力強い成長と魔法の魅力で第3巻までは、圧倒的な迫力を持った物語として多くの人々に強い印象を与えてきました。そして、かなりの年月を経て第4巻が出版され、そこで描かれたその後のゲドの生き方やストーリーに対しての意見は賛否両論でした。そして、今回この第5巻が出たのですが。
 主人公の大賢人ゲドは70歳となり、妻のテナーと養女テハヌーと共にひっそりと暮らしています。魔法の力を失ってしまったゲドですが、この巻では、やはり思索を重ねた者の持つ落ち着きを感じさせます。それは、作者にも言えることで、この物語にこの長い年月を経て考えつづけてきた作者の思索の積み重ねを感じるのです。第3巻まででも、物語として楽しむには充分すぎるくらいなのですが、第4巻・第5巻があることで、ロークの魔法学院がなぜ生まれたのか、テハヌーは何者なのか、生きるということの様々な意味、愛の様々なあり様、死後の世界、竜と人間のかかわり、自由と支配、異文化、言葉が通じることの意味、夢、知識や魔法の意味、などが説明されていて、なるほどと思うと同時にそこからまた様々に考えさせられます。生きて行くのに本当に必要な大事なものは何かということも。作者は、最初から哲学的な命題を掲げて書き始めたわけではないのでしょう。けれども、ここまできてみると、児童書のジャンルをこえた重厚な思索の書になっているといえるのではないでしょうか。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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クジラのウォルドーはマッコウクジラです。世界の海で大冒険します。

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 かわいらしいけれど、勇気のある、年若いクジラウォルドーの物語です。短編が3篇入っています。お月さまの話と北極に行く話とココナツ島の魔女の話です。どの話の中でもウォルドーは大活躍します。
 幼年向きかなとも思うけれど、もう少し上のグレードでも楽しめそうです。甘い話になりそうなところをおさえてあって、面白く読めます。作家は、もと船乗りだったのだそうです。海がいきいきと素敵に描かれています。挿絵がよくあっているし、魅力的な絵で物語をひきたてています。
 この位のグレードの本は最近良いものが少ないような気がしますが、この本は、読みやすく面白いので、おすすめしたい本です。

(エーミール/図書館の学校・児童書選書委員会)

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