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先月(2017年6月)

マツモトユカコさんのレビュー一覧

投稿者:マツモトユカコ

9 件中 1 件~ 9 件を表示

キンジー・ミルホーンの世界を徹底研究し俯瞰する白眉の書!

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 すばらしく優れた研究書である。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀評論・評伝賞受賞作品。

 スー・グラフトン執筆のハードボイルド・シリーズ主人公、カリフォルニア州サンタ・テレサ在住・根っからの都会っ子女性探偵キンジー・ミルホーン。1982年に『アリバイのA』で登場して以来現在(※注)に至るまで人気は衰えない。等身大で自然な魅力が彼女にはあるのだ。毅然として自立心旺盛、自由と孤独を愛し、誠実で不器用でユーモアを持ち合わせ嘘つきでのぞき魔で弱虫(犬嫌い・予防注射嫌い)で、仕事ぶりは几帳面でこつこつと記入したインデックス・カードを眺めて真っ正面から取り組み、きれい好き掃除好きでピーナッツバターとピクルスのサンドイッチ(どんな味だ?)が好物でだいたいいつもタートルネックにジーンズにテニスシューズかブーツ、髪は爪切りばさみで自分で切ってしまう、などなど。そんな複雑多岐なんだけれどごく普通でそこらにいそうなちょっと素敵な女性キンジーのすべてを研究しつくした、初の本格評論。スー・グラフトンも全面的に協力している。
(※注)本書は1997年に刊行、したがって『アリバイのA』から1996年『悪意のM』までが取り上げられている。

 著者二人はコロンビア州サウス・キャロライナ大学の教授で、コーフマンは国際法とジェンダー政治学専門の政治科学者、ケイはシェイクスピアを研究する英文学教授(本書・著者紹介より)。キンジー・シリーズのファンでありながら狭く深くなりがちな愛情に溺れず、詳細で丁寧な学究指向の一冊になっている。その俯瞰的な内容は作品・作家論を超え、文学作品と作家との関係、社会とある作品との関係、女性・人間の生き方を実は論じているのであった。 

▼内容
序文/1 キンジーの生涯/2 キンジーの性格/3 キンジーの日常生活/4 キンジーの個人的な人間関係/5 活躍の舞台/6 探偵としてのキンジー/7 社会的および政治的問題/8 正義は可能か?/9 グラフトン、キンジーを語る/10 グラフトンの文体/11 探偵小説の発展におけるグラフトンの位置づけ。各章終わりにキンジー名言集も。

上記書評初出香雪雑記帳

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紙の本地を這う虫

2001/06/25 01:25

市井の一隅に生きる普通の人たち美しい、実に美しい逸品

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 「愁訴の花」「巡り逢う人びと」「父が来た道」「地を這う虫」の四篇による短篇連作集。文庫化に当たって元の単行本(1993年12月発行『地を這う虫』)を全面改稿し、四篇をもって再構築。いずれも退職した元刑事が主人公の話となっています。

 以前、単行本『地を這う虫』を読んだときにはあまりピンと来ていませんでした。それはわたしが今よりもっと若かった(笑)からかもしれませんが。 今回、改めて文庫で読んでその印象が一変しました。

 地味ながらも深い人間洞察、独特のカタルシスと泥沼、滋味あふれる一文一文。短篇なのにその文章サイズ以上に広がる世界。読後に渺々と残る余韻。隅々まで磨き抜かれた逸品となっており、本当にすばらしかったのです。掌の上で温もりのある光を放っている魂の玉のよう。短いながらも高村節炸裂。高村薫のエッセンスをぎゅっと閉じこめてあって、一口一口が至福のときでした。 ※上記書評初出香雪雑記帳

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紙の本わが心臓の痛み

2001/06/24 20:21

繊細なプロット、デリケートな感覚と叙情。ミステリとしても高水準の傑作

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 1998年のアンソニー賞、マカヴィティ賞、フランス推理小説大賞を受賞。

 巧い。どの箇所を紹介してもそれだけでこれから読む人の楽しみを削いでしまいそうな気がするほどで、ある意味「完璧」に近い小説といえるだろう。ポスト・ネオ・ハードボイルド・ミステリ。ラブロマンスもきちんと織り込まれていて、その点でもまさに堂々たる「ハードボイルド」的である。繊細なプロット、デリケートな感覚と叙情といったマイクル・コナリーの持ち味も遺憾なく発揮されているし、ミステリとしても高水準。意外さに驚くものの実にフェアな謎解きは、このところやや技に走っていたコナリーには珍しく(?)真正面からぶつかってくる感じで、読んでいて胸が締め付けられるようだった。

 マイクル・コナリーの小説にわたしが感じる魅力は、染み入るような孤独感と心の痛み、人間への尊厳と愛を尊ぶ姿勢、深く重い絶望、それでも「まっとう」であることを選ぶ心のありよう、闘う姿勢、などである。ページをめくるごとに、しみじみと美しく、透明感をたたえた世界が丁寧にさりげなく構築されていく。それになんといっても筆がたつぶん、余計なことを考える必要なく安心して作品世界に没頭したまま読み進むことが出来る。正統で端正で柔らか、深い味わいを堪能した。傑作である。 ※上記書評初出香雪雑記帳

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東欧見聞記として、若者の旅日記として。

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1979年6月から7月にかけての東欧見聞記。イタリアからユーゴスラビアに入り、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、チェコスロバキアとまわってドイツ・ベルリンに出て北欧に抜けるまでの41日間、作者33歳、リュックサック背負ってのきままなひとり旅で、日々の出来事を詳細に「旅行ノート」に書き留めていた。それを本にまとめたものであるから、当時のまだベルリンの壁があり、東欧諸国は鉄のカーテンの中の社会主義国だったころの空気をダイレクトに一旅行者の視点から楽しめる。旅の途上の関心事の記述が特に詳しい。交通手段のこと(汽車、バスの乗り方etc.)、ツーリストのためのインフォメーションのこと(おおむね社会主義国的な硬直したサービスで、事前予約クーポン発行の団体旅行はOKだが個人旅行にはめっぽう冷たい)、旅行代理店、通貨と両替のこと、食べ物、酒、ホテル。国民性や市民生活。東欧はやはりトルコの影響が何事も強いのだなあとか(トルココーヒー、挽肉料理…)。と、東欧本来のユーゴ各都市・サラエボやドゥブロブニクなどの内戦前の描写からはとうてい、あのようなことが将来起こるとは想起し得ない。もはや大いに事情が変わっている20年以上前の旅行記だが当時の記録としても、またある若者の旅日記としても、面白かった。

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歌を詠み名物を食べ土産物を買い込み…溌剌として楽しく元気に旅する五十路女

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 天保十二年(1841)正月、筑前の商家の内儀・小田宅子ら、仲の良い歌仲間女四人は旅立った。五ヶ月、百四十四日、八百里。お伊勢サンに善光寺サン、お江戸…。歌を詠み名物を食べ土産物を買い込み(買い込んだ物はときおり飛脚屋で家に送ればいいのだ!)溌剌として楽しく元気に旅する五十路女。その旅路をおセイさんをナビゲーターにたっぷりとたどる。

 そのたどり方がなんとも、心楽しい。おセイさんは「東路日記」を読み解いて、我々の前に宅子さん久子さんおちくさんおぜんさん(後者二人は氏名不詳ゆえ仮名)、お供で荷物持ちの下男三人—彼らにも田辺聖子サンはちゃんと四十エモン、三十平、ハタ吉と名を与え、ところどころで活躍させている—を九州弁でよみがえらせ、よみがえらせてはそこにとろかしこんだ地の文章でおセイさん自ら筑前へ、善光寺サンへ…とあちらへこちらへ行き、机上地図をたどって史料をたどって、そして宅子さんと同時代びとである江戸後期の人々が書き記した紀行文や明治時代の外国人女性がものした見聞記等と比べ読むことでより多層的重層的な視界と視座を確保する…などなど、果てしなく旅は深まりわれわれは宅子さんたちやおセイさんとともに物知りになれる。江戸時代の、筑前という地方でありながら殷賑の地に住まう裕福な庶民の旅行記を楽しめるとともに、天保年間とその前後の日本の風俗地勢・文化や、明治へと続く社会情勢を知ることが出来るのである(このあたりのスタイルは司馬遼太郎に通じている)。

 小田宅子さんは俳優・高倉健さんの五代前の人。旅の終わりから十年後、旅行記『東路日記』を脱稿。明治三年(1870)二月二十九日、八十二歳で亡くなった。旅に出たときには宅子さんは五十三、そもそも旅を思いつき宅子さんを誘った久子さんは五十一。二人は裕福な商家の女あるじで、家業にいそしみ、家を富ませ、一息つける年になって伊藤常足先生という師匠について歌をはじめ学問をし、いよいよ少しばかり肩の荷を下ろせる五十代になって旅を思い立ち旅立てたのである、だからこその味のある旅ができ、仲間と単独行動をとったり一緒になったりと最後までいさかいなく仲良く過ごせるのだ、とおセイさんは繰り返し書く。「人生中堅のしっかりした」(p.233)オトナ、「堅実な社会人の節度」(同)を持っているから、一世一代の旅へのはずみ心で旅を楽しみながらも、ゆとりある振る舞いをし、落ち着いて思い切った行動がとれるのだ、と。

 …とこのへんが、まったく田辺聖子さんの作品の醍醐味。人生は悲しいこと辛いことがたくさんある(宅子さんたちもまた例外ではない)。苦労もある。働かねばならない。それでも、若い時期を往き過ぎてオトナとなると、それらを自分の糧にすることが出来て、なんやしらん、人と人生とをおもろがって生きられるようになる、というか度量広いそういう大人になりましょうという感じかもしれない。「人」を好もしく思い、人生の襞、みたいなもんをしんみりとさめざめと深いところまで味わえるようになる。心地よさにうっとりし、機嫌良く—自分を機嫌良くいさせることが出来るようになるのも、また大人であり、デキるオトナのたしなみである—過ごし、道理をわきまえ、何かの時には相手を優しく思い慮る男、女。オトナになるとは自分の好きなことを発見し、自ら自覚して(それがポイントだ)自分の人生を楽しもうという姿勢で生きられるようになること。…と口で言うのは簡単で、まあナンギやけれどかくあれかし、というところかな…。そんなことをおセイさんは作品を通してふわふわと甘やかに教えてくれる。

 文中で触れられている裂(きれ)の写真をあしらった上に透明なカバーをかけ旅姿を映した装幀、実に渋く、洒落ている。上記書評初出:香雪雑記帳

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おいしそう!食べてみたい!読んでみたい!

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 「検屍官」シリーズでお馴染み、ヴァージニア州検屍局長ケイ・スカーペッタは料理が好き。いつもとてもおいしそうなものを作ったり食べたり。いったいどんな料理を食べているのだろう?とても気になります。そんな「お気に入りの主人公は何を食べている?」という興味を中心にミステリーを読み、実際に作ってしまった! のが本書。「20冊のミステリーから20皿のおいしい料理」が想像再現されています。

 1つのミステリー作品について、まず見開き2ページで取り上げる料理そのほか食べ物が出てくるシーンを中心に主人公を紹介。次の2ページで料理のカラー写真とレシピ紹介ならびに作品の簡単な紹介、といった、4ページ構成。

 さて、ケイのひと皿は20皿のトップで登場。パトリシア・コーンウェル『遺留品』より[赤ピーマンと粗びき肉のパスタ]…『遺留品』P.199〜でマリーノとの夕食のために作っている料理、ル・パパデーレ・デル・カンタンザインです。ああ、おいしそう。そして、あ、これなら自分で作れそうだ!

 他には、◆スー・グラフトン『裁きのJ』より、キンジー・ミルホーンが作る「あつあつ玉子のサンドイッチ」◆サラ・パレツキー『レディ・ハートブレイク』『バーニング・シーズン』よりそれぞれ、V.I.ウォーショースキーが作る「フリッタータ」「ビーフの赤ワイン風味」◆ジョナサン・ケラーマン『デヴィルズ・ワルツ』より、アレックスとマイロが食べる「南国風ピザ」◆デボラ・クロンビー『警視の隣人』より、キンケイド警視とジェマ巡査部長が食べる「チーズとピクルスのサンドイッチ」◆アガサ・クリスティー『スリーピング・マーダー』より、ミス・マープルが食べる「正統派ミルクティー&スコーン」、などが取り上げられています。

 料理紹介以外の作品紹介についてもとてもしっかりした好感の持てる内容で、読書欲・食欲・料理欲、これらすべてを刺激してもらいました。装丁・デザイン・写真も美しく、素敵な本です。 ※上記書評初出香雪雑記帳

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紙の本ブラック・ハート 下

2001/06/24 19:52

寂寞感の中に強さ弱さ優しさ、正義への熱い心が脈打っている美しい小説

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 ハリー・ボッシュシリーズ3作目。ロサンジェルス、ハリウッドが舞台。それならではの数々の出来事…。“ドールメイカー”事件と呼ばれる連続異常殺人事件の容疑者(のちにアパートメントから犯人であることを結論づける動かしがたい証拠が発見される)を逮捕時にやむなく射殺してしまったヒエロニムス(ハリー)・ボッシュ刑事は、4年後に容疑者の遺族から無実の人間を射殺した不当暴力行為…要は「間違った行動をした」という廉で訴えられる。
 
 リーガル・サスペンス、警察小説、サイコ・サスペンス、そしてハードボイルド、これらの要素が見事に溶け合っており読んでいて楽しめる(このような悲惨な内容を『楽しんで』しまう自分はどこかやはり心に闇があるのか…といった問題はさておき)。寂寞感の中に強さ弱さ優しさ、正義への熱い心が脈打っており、美しい。 ※上記書評初出香雪雑記帳

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紙の本アウトローのO

2001/06/24 19:36

キンジーの姿がどんどん見えてくる

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 キンジーの最初の(元)夫、ミッキー・マグルーダーが切ない。今回は彼のことが話題の中心になっているのに、作者は、キンジーは、徹頭徹尾彼本人をしゃべらせることはしない。過去の彼もすべて回想・伝聞として語られる。生きながらにして既に影が薄くなっている人間の儚さと悲しさ。また逆に、人間はその場に存在しなくとも、誰かの心を占め続け影響力を持ち続けることが出来る、ということ。

 いつもながらの味。キンジーの端正さ枯淡さ、きちんと生活する姿勢、自律への緊張感。その反面の独り身の気楽な暮らしの描写も好きだ。そのくせジャンクフードが好きなところなど実にかわいらしい。等身大な、自然な心地よさが全編にわたって流れている。そんな彼女に心惹かれる。シリーズも作を追うごとにキンジーの姿がどんどん見えてくる。これまでには二番目の(元)夫・ろくでもない美男子ダニエルは登場してた。最初の(元)夫ミッキーはこれまたすごい男だ。面白かった。 ※上記書評初出香雪雑記帳

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紙の本ぐりとぐらの1ねんかん

2001/01/20 18:47

しあわせの玉手箱

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 たとえば、1がつ。暖かそうなお帽子をかぶり、ボンボンがついた長い縞縞マフラーをひとむすび、ふっくらコート、に、ながぐつ姿のぐり(は、青い服装)と、ぐら(赤い服装)。ほほえみを交わしながら雪景色の森を行きます。ふたりの後ろにはきちんと雪かきがしてある小さなおうちと、ほうきがたてかけてある雪だるまが見えています。小鳥二羽が二人のお見送り。雪の重みで木の枝がしなり、赤い実のなっている小さな木はすっぽり埋もれており雪の季節の厳しさを感じます。

 たとえば、10がつ。おへやのなかで、椅子や床に座って、ぐりぐらと、うさぎさんりすさんたちお友達みなで熱心にご本を読んでいます。お部屋にはどんぐりやくり、すすき、クルミがそこここに。植木鉢のお花が美しく咲き、ベンチの上にはいつものとんがり帽子がふたつ、そっと置いてあります。床にはお絵かきしかけの画用紙に書きかけのノートがちらばって…。

 一ヶ月ごとが見開きになっていて、その季節にあった絵とおはなしが書いてある。ぐりとぐらたちの小さな指や足先、しなやかなしっぽの先、一木一草、とにかく全てが愛おしい。子供時代にかかせないのは素朴でおいしくて楽しい食べ物。キャンプや部屋遊びをしている絵には、ぐりとぐらの傍らにちゃんとそんなおやつや食べ物が描かれてる。それなんともいえず、良い。生活の美しさと楽しみ。つまり、幸せとはこういうことか、と。玉手箱のような絵本。

当感想は香雪雑記帳ブックレビュー]におさめています。

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