春の海さんのレビュー一覧
投稿者:春の海
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2002/06/01 16:33
すぐれた入門書
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広大かつ複雑な分野の全体像を何となくわかったような気にさせてしまう名著として、岩波新書の「現象学」があげられるが、本書もこれに類する好著である。「場の量子論」という、量子力学や相対論の背景知識が必要となる精緻な分野の全体像を「わかったような気」にさせてくれる。
このような分野を解説するには、理系特有の数式の煩雑な展開にどうしても頼らざるをえないものと思われていたが、これを中学生程度の基本的な知識とやさしい言葉の積み重ねによって理解させ、なんとなく「わかったような気」にさせながら最後まで読ませてしまう。
もちろん、本当は「全くわかっていない」のとほとんど同じなのだが、専門の教科書を開いて、細かい数式の展開をおうのに手一杯となって、全体の概念が全くわからないようなありがちな結末に較べれば、学問の包括的イメージが得られるだけでもいくらかマシである。
しかし、本書を読んで興味をおぼえられた方は、専門書を読んであえなく挫折するか、それを乗り越えて斯道の専門家レベルにでもなる以外に残された余地がないことを考えれば、私たちのような専門外の人間がこのような敷居の高いややこしい分野を理解するにあたって、このあたりがほぼ理想的な妥協点なのではないかと思う。
紙の本黄金の華の秘密
2002/04/28 15:59
ユングのお薦め!
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自分は東洋文化の専門ではありませんが、おそらく中国における禅と道教との融合した精神文化の産物であり、具体的な瞑想の実践方法が述べられています。禅の瞑想指導との違いは、単に方法(座禅)のみを与える禅とは異なり、具体的な瞑想内容と結果として得られる瞑想体験をはっきり示していることです(しかし、後者の方法論の場合、目先の結果がモチベーションとされがちであり、あえてその愚を排斥する方法論が大乗の禅でもあるわけで、最終的に得られる精神状態はおそらく禅と同じものだと思われます。というより、究極では禅もタオもお互いを排斥しないはずですので)。ユングはこの瞑想をアニマ=アニムスの融合ととらえていたようですが、多分に自ら実践し追体験した内容を背景としているようです。あとは、露伴の努力論にある「気をもって心を率いるなかれ、心をもって気を率いよ、心をもって神を率いるなかれ、神をもって心を率いよ」の「神」ってなんだろう、とか思っていたのですが、この系統の書物を読むと何となくイメージできるようになるかもしれません。
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