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先月(2017年4月)

穂高 嶺二(文筆業)さんのレビュー一覧

投稿者:穂高 嶺二(文筆業)

8 件中 1 件~ 8 件を表示

紙の本吾輩は猫である 改版

2003/06/08 09:57

読む前に猫を飼おう

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この作品を読むと、漱石は猫が本当に好きだったんだなと思う。猫を飼ったことの無い人には、本当の意味でこの作品の理解は出来ないのでないだろうか? 江藤淳をはじめとして、漱石の作品の評論家は掃いて捨てるほどいるけれども、彼等・彼女等が猫を飼ったことがあるかどうかはその評論が妥当かどうかを決める重要なファクターであろう。主人公の猫が子供の寝床にもぐり込んで一所に寝ているところを、子供が「猫が来た猫が来た」、といって夜中でも何でも大きな声で泣き出して、目を覚まして飛び出して来た主人に物差しで尻ぺたを叩かれた場面など、この動物の行動がよく描かれているし、飼ってみるとそれがよく分かるのである。最後に猫が死んでしまうような終わり方になっているのが気に食わない点であるが、個人的にはきっとこの後で主人かおさんに助けられたのだろうと信じている。

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「続明暗」も読めるようにして欲しい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「続明暗」でデビューした水村美苗の第二作。著者は最近、7年ぶりの小説「本格小説」を上梓した。「美苗」とその姉の「奈苗」がアメリカに「追放」された二十周年にあたる12月13日の一日が描かれ、これまでのニューヨーク近郊での「美苗」一家の出来事の回想が挿入される。日本近代文学「私小説」の伝統にそって、「美苗」は気分が塞ぐ日々を送っている。「ここでは我々は東洋人としか見られず、所詮二等市民でしかない」という諦めに似た思い。
 水村美苗の作品はどれも考え抜かれた構成を持っている。寡作だが、出した三編全てが全く異なった実験的な狙いを持っており、最近のチープなベストセラーと違うのはもちろんのこと、日本の現代の小説の流れとは全く異質の作品群である。それ故に、というべきか、「続明暗」で、芸術選奨新人賞、「私小説 from left to right」で野間文芸新人賞、「本格小説」で読売文学賞、と百発百中!であるにもかかわらずどれもベストセラーになっている訳では無さそうで、2003年1月に買った本書の新潮文庫版では「平成10年(1998年)10月1日発行 第一刷」とあり、この4年間で増刷はされていないようだ。さらに、作者のデビュー作であり文壇に衝撃を与えた「続明暗」は、単行本も新潮文庫版も2003年2月2日現在で入手できなくなっているのはあまりにひどい! あまり売れる本でないのは分かるけれども、このような重要な作品は赤字を出しても読者が読めるようにしておくのが出版社の良心というものではないだろうか?

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単純な生活

2003/06/12 12:26

ほっとする時間を与えてくれる

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

高校の国語の教科書に「子供の墓」(講談社文芸文庫「千年 あの夏」収録)が載っていて、阿部昭を知ったのはそれが最初である。ゆっくりとした時の流れが感じられる作品で、ゆるやかな風が吹き込むよく晴れた春の午後の気だるい教室にマッチしていた。本書は本文が400ページもあるが、そんな大部な作品であることを全く感じさせず、読了後、もっと読みたかったのに、と思わずにはいられない。実際、最初に読み終わったときは、また最初からもう一度読み直し、また数日間楽しんだ。内容は、それほど起伏の無い作家の日常で、飼っている猫の消息とか散歩で見つけた家鴨の話など、筋を追って先がどうなるのか気になる、という類いの本では無い。では、なぜどんどん読み進められるのか? 一言でいうと、この作家の文章自体を読むのが心地よいのである。今、このように文章で読ませる作家がいるだろうか? 作者は1989年に54歳の若さで急逝され、本書にも作者の体の具合のことがところどころに書かれているのに心痛む。寝る前に少しずつ読むのがいいと思う。

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紙の本明暗 改版

2003/05/28 12:11

大江版「続明暗」のあらすじ付き

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 漱石「明暗」は各出版社から文庫版が出版されている。「表紙のデザインが気に入ったから」、とか、「他の漱石の作品も○○文庫でそろえているので」、とか、選択の理由はいくつかあろうが、特にこれという理由もなく、どれを買おうか迷っている方があれば断然岩波文庫版をお薦めしたい。
 岩波文庫版の最大の売りは、何と言っても大江健三郎氏の解説が付いていることである。大江氏は、漱石の作品、特にこの「明暗」がお好きなようで、「新しい文学のために」(岩波新書)中でも、文学の基本的な方法としての「異化」を説明する素材として用いている。本文庫の解説では、「明暗」の「構造」や登場する事物のシンボリズムを手がかりとして、その終末部がかなり詳細に推理されている。「明暗」の続編を推理した作家・評論家はたくさんいて、中でも水村美苗氏の「続明暗」が有名だが、水村版「続明暗」とこの大江版「続明暗」を読み比べるのも楽しい。ちなみに水村版「続明暗」は、漱石の晦渋かつゆっくりしたテンポの作品の続編としては「面白すぎる」という難があると思うが、どうだろうか?

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不運の裏にある原因

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書では、先の戦争の帰趨を決した6つの戦いにおける失敗が分析され、それらの失敗へと導いた日本軍の組織が解析されている。どの戦いも分析も興味深いが、特にミッドウェー海戦の分析は出色だと思う。本海戦の敗因は不運が重なったことにあると、多くの戦史物、特に戦争を情緒的に扱った本には書かれいる。しかし、本書では、作戦目的の二重性が存在し、そのどちらに優先順位あるのかを南雲艦隊司令官が考慮せず、また山本連合艦隊司令長官もその意図を徹底する努力を怠ったというより本質的な原因が、その不運の裏に横たわっていたということが、冷静な筆致で分析されている。こうしたことは、本書執筆陣のような軍事専門家には広く知られたことなのかも知れないが、私は目を開かれる思いがした。

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小僧の神様・城の崎にて 改版

2003/06/22 11:25

エゴイスティックな真実

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志賀直哉の第二期の短編十八編を収める。「城の崎にて」「赤西蠣太」「小僧の神様」等は、教科書にもよく掲載されている直哉の代表的な短編であるが、この集の最後の四編は、四十代の直哉が二十歳ほどの祇園の茶屋の仲居と不倫関係になり、結果として招いた火宅の日々の記録である。これらは、ある意味で、人間のエゴイズムの良いサンプルであるが、決して読後感爽快とは言いかねる。しかし、志賀直哉の文豪たる由縁は、このような作品にも、刃のような表現が潜められている点にある。「女には彼の妻では疾の昔失われた新鮮な果物の味があった。それから子供の息吹と同じ匂いのする息吹があった。北国の海で捕れる蟹の鋏の中の肉があった」。なんと残酷な真実!

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なぜ日本は没落するか

2002/07/07 06:05

「教育を受けた年代による人口の分裂」という新しい切り口

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 森嶋通夫の「イギリスと日本」「学校・学歴・人生」等ユニークな切り口の日本社会分析の書は、私の愛読書である。本書でも、「教育を受けた年代による人口の分裂」という新しい切り口で、日本人の精神・金融・産業・教育等、日本社会を規定している種々の要素を分析しており、たいへん興味深く読了した。しかし、読み終えて思うのは、果たしてこの「教育を受けた時代」という軸だけでこのような広範な問題を取り扱えるのだろうか、という疑問である。実際、著者の種々の主張に論理的な一貫性があるのか否かはたいへん疑問であって、本書前半で鮮やかに提出された「教育を受けた年代による人口の分裂」という軸が次第に色褪せていき、議論が分裂しているような印象を持った。とはいえ、「沖縄独立」や「東北アジア共同体」等示唆に富む主張が随所にあり、「考えるヒント」としてはたいへん優れた本だと思う。

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紙の本一九三四年冬−乱歩

2003/06/21 11:53

二つの小説のせめぎあい

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何と言っても、この小説の特質は、この小説の中に、主人公乱歩が書いていることになっているもう一つの小説「梔子姫」が入っていることである。この二つの小説が相互作用することで、摩訶不思議な物語空間が現れている。久世光彦氏の小説を読むのはこれが初めてだが、その知的な構成にたいへん感銘を受けた。ただ、一点惜しむらくは、作中で重要な小道具として使われているエドガー・アラン・ポー作詞の「アナベル・リー」という曲の楽譜が載っているのだが、章末に「小林亜星氏作曲」とあり、折角ここまで作り上げて来た一九三四年の作品世界がぶちこわしになってしまっていることである。恐らく確認しないまま楽譜を掲載したため、クレームがついてこんなことになったのだろう。他は全編作者の細部へのこだわりに驚かされるだけに、とても残念である。

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