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レビューアーランキング
先月(2017年6月)

ネジさんのレビュー一覧

投稿者:ネジ

8 件中 1 件~ 8 件を表示

紙の本おいしい水

2002/08/20 00:16

その先の物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『そしてお姫様は王子様と結婚し、幸せに暮らしましたとさ……。』
 大概のお伽話はそこで終わってしまう。
 本書は結婚という言わば『物語のハッピーエンド』の先にある世界で生きる女性達の日常(=現代の既婚女性そのもの)を描いた作品である。

 主人公の弥生は夫と幼稚園に通う娘との三人暮らし。家庭ではよき妻・よき母として、またマンションの中ではよき隣人として住人達と接してきた。しかしその一方で結婚をして以来、個人として社会との接点を失ったことに常に不安を感じていた。そこでもう一度仕事を持ちたい、と彼女はタウン誌のライターの面接に応募する。仕事を持ち、いつしか精神的にも自立した彼女が選んだパートナーは誰なのか。
 細やかな心理描写が読者との世界の隙間を埋めて行き、読み手はいつしか『自分ならどうするだろう』と考え始める。
 物語は弥生を中心に同じマンションに住む同世代の夫婦たち、そして仕事を通して出会った人々とのやりとりを交えて進んでいく。
 最後に弥生が出した答えとは?
 もちろんその先にはまた新しい物語が待っている。

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紙の本湾岸ラプソディ

2001/01/26 01:04

岐路、そして決断。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「湾岸ラプソディ」のストーリーを一言で要約するなら「北大の学生とラーメン屋の人妻が東京に駆け落ちする物語」、ふたりのひたむきな姿を描いた恋愛小説、ともいえるだろう。しかし最後まで読み終わると、主人公のひとりである大学生・俊介の青春を描いた小説なのかもしれない、と思えてくる。
 彼はこの作品の中で何度も岐路に立たされる。時にはやり過ごし、時にはただ流され、しかし最後にはどうしても自らの力で決断を下さなければならない出来事と向かい合うことになる。
 小説の中で、ふたりの未来は語られていない。しかし読者はそこに彼らが力強く歩いていく後ろ姿をはっきりと思い浮かべることができるのだ。
 登場人物ひとりひとりの心の動きとその背景が細やかに描かれているおかげで、作品は小説以上のリアリティと存在感を持って心の中に残る。読み応え十分の一冊である。

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紙の本リセット

2000/12/01 00:36

見届けなければならないリアリティ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 主人公の女子校生・菜々は学校ではイジメにあい、家庭では「女」をむき出しにして接してくる母や、母親の恋人を嫌悪し、心を閉ざしている。
 中学時代の友人・雅也は菜々をストーキングし、執拗に携帯電話にメールを送り続ける。彼は何もできない自分を持て余しながら家に引きこもり、憤りの矛先を母親に向ける。

 この作品は彼らの心の動きを追うばかりでなく、傷ついた彼らを前にした大人たちの姿も平等な視点から描かれており、それが物語に奥行きと深みを持たせている。
 作品中には痛々しい場面が多い。会ったばかりの男性に体を売る菜々の姿や、ドラッグに溺れるイジメグループの少女、雅也が母親にぶつける遠慮のない苛立ちと憎しみ、それは醜くもあり、そしてなによりも痛々しい。そこには目を逸らしたくなるような、しかし見届けなければならないリアリティが存在している。作家の誠実さが伝わる物語の巧みな構成が、登場人物それぞれの「リセット」へ向けたラストへと一気に引っ張っていく。

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淳之介さんのこと

2003/04/24 01:43

「まり子印」のファインダー

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「淳之介さんのこと」には昭和を彩った歌手・女優であり、また養護施設「ねむの木学園」を設立した宮城まり子というひとりの女性から見た作家・吉行淳之介が描かれている。本文の言葉を拝借するならば「まり子印の淳之介さん」である。表札を同じくする家に住み、長い間パートナーとして、病気がちで、その反面奔放でもあった吉行氏の身体と心の揺れを支えてきた著者の視線はいつも温かい。
 本書の中に「空気」という章があり、当時ふたりの間に交わされた、日常的な会話の一部が紹介されている。
 執筆中でも「たまにはそばににていい」と許しを受けた著者が、執筆の邪魔をしないよう空気の如く自然な存在になろうと苦心する。ところが「じっとしていると気になるから本でも読んでいなさい」と言われ本を読み出すと「一生懸命なにかを読んでいると気になるから、軽いものを読んでいてくれ」と言われる。週刊誌を読み始めると「パラパラ音をさせるナ」と吉行氏の注文は多い。それでもなんとか「空気」になろうと努力する。その姿は健気で愛らしく、どこか寂しげだ。
 一方で強く静かに見守らねばならなかった出来事も多い。特に、吉行氏が肝臓癌宣告を受けた後の著者の心は、病と医療に対する憤りと悲しみで満ちている。

 ところで、本書を読むならば必ずもう一冊読まねばならない本がある。それは吉行氏の第二の愛人であった大塚英子の「『暗室』のなかで」。こちらの本の中には大塚英子の視点で描かれた吉行氏がいる。同じ出来事を通しても、映される彼の姿はまったく異なったものであるのが興味深い。
 どちらが本物の吉行淳之介なのかと考える時、どちらも真実でありどちらも偽物であるように思える。また読者的な立場、第三者の目で彼がふたりの女を傍観しているかのようにも思える。
 それぞれのファインダーで覗かれた自分を信じさせた、もうひとりの吉行氏の孤独はある意味では非常に贅沢なものである。

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紙の本マラケシュ心中

2003/01/05 23:33

異国の地を彷徨う激しい恋の物語

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 人妻である泉に恋をした歌人・緒川絢彦(アヤヒコ)は、男性名で恋の歌を読んではいるが、実は性別は女性であり、また同性愛者でもあった。抗いながらも絢彦との激しい恋に溺れていく泉は、歌会「涙の谷」に参加し、初めて絢彦が女性の歌人である事を知る。
ふたりは禁断の恋を少しでも長く引き延ばそうとモスクワからマラケシュまで逃避行の旅に出る。しかしその途中、二人を引き裂く出来事が起こり、絢彦と泉は離ればなれになってしまう。

 愛する気持ちが強い分、一度猜疑心を持った後に湧き出てくる憎しみは、むき出しの感情そのもので読者を切なくさせる。
 同性愛者であることにも勿論苦悩はつきまとう、しかしこの作品で主人公が最も恐れているのは愛した相手が恩師であり歌壇の重鎮である小川薫風氏の妻であるということだった。絢彦は愛情の激しさから次第に恩師の死を願うようになっていく。その恐ろしくも一途な絢彦という人間の情熱が逞しく、そして痛々しく読み手の心に染みる。
 後半、絢彦は泉の裏切りを許せず彼女に罰を与える。そして自らの命も危険に晒す旅に出ていく。しかしこの物語の最後に待っているのは紛れもないハッピーエンドなのである。現実ならばあり得ないだろうと誰もが思う筈だ。だが、中山可穂という作家はまるで祈りを込めるように最後にふたりを幸せにしてくれる。これは著者の作品に一貫して言えることであるが、艱難辛苦を乗り越えてきた主人公に対する労いとエールのように最後には救いの一瞬が待っているのだ。
 それがどんなに都合の良い幕切れであるとしても、ハッピーエンドを作り出すことが小説の役割のひとつであるのだということをこの物語は思い出させてくれた。
 温かい希望を含んだ読後感をこの作品で味わって欲しい。

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紙の本取り扱い注意

2001/01/03 10:45

夏の日の危険な出来事

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「取り扱い注意」、一体何が? 
 そう、主人公は自分との関係の果てに結婚を望む女にそのレッテルを貼り付ける。
  しかし実際には、この本の登場人物には全て「取り扱い注意」の札を持たせてよい。
 女の体を「飴のように蕩かす」才能を持った主人公、彼に「強盗を一緒にやろう」と持ちかけてくる実の叔父、叔父の愛するロリータである小学生の少女、さらに主人公を取りまくエキセントリックな女たち。
 小説の中の彼らは実にやりたい放題である。しかし著者のクールな文体が作品をキレよく仕上げている。小説の所々で用いられるアルファベットの並べ替えゲーム「スクラブル」から飛び出すキーワードは物語のヒントとして提示される。
 「まっとう」なレールから飛び出した「取り扱い注意」人物たちの人生は危険で、そしてとても魅力的なのである。

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紙の本アルケミスト 愛蔵版

2003/03/03 00:25

すでに書かれている…マクトゥーブ

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 本書は教訓に満ちている、というよりも教訓の為に書かれた物語である。

 主人公の羊飼いの少年サンチャゴは予言的夢に導かれ、ピラミッドのそばに眠る宝物を見つけるため旅立つ。彼は運命の前兆を注意深く拾い集めながら冒険を続け、その間に様々な人物達との出会いを経験する。月を見るように夢を遠くに眺めながら暮らすクリスタル商人、主人公に愛をもたらす少女、そして運命のとば口まで彼を誘導する錬金術師。特に錬金術師(=アルケミスト)との旅で彼は自分の心との出会いをも果たす。
 ひたすらに耳を澄まし、真実のみを訴え続ける自らの心の声を聞くこと、恐れずにその言葉に従うことが「すでに書かれている」運命の場所にたどり着くための方法であると錬金術師は説く。
「たとえおまえが心の言うことを聞かなかった振りをしても、それはおまえの中にいつもいて、おまえが人生や世界をどう考えているか、くり返し言い続けるものだ」。
 アルケミストが金属を純化するように自らの心を純化し、新しい運命へ向けて一歩を踏み出す勇気の目映さをこの作品は教えてくれる。

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カタクナな孤独

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『僕のなかの壊れていない部分』は物語の中で一度壊れかける。
しかし傷は自らを修復し、まるで何もなかったかのように彼の中で生き残り続ける。

 29歳の誕生日を迎えたばかりの主人公・直人は何人かの女性と付き合いながらそのいずれにも心を捕らわれずに暮らしている。彼の心にあいた埋められない穴ごと彼を包み込もうとする枝里子、硬質な肉体関係だけを必要とする大西夫人、一人息子の存在をきっかけに仲を深めたシングルマザーの朋美。どの女性も直人に対し優しい眼差しを向けては爪を立てられ、論破され、報われずにいる。
 そんな彼の人間関係に対する不器用さには、彼そのものとも言い換えられる大きな孤独が影響していた。出版社に勤務している彼の元々の就職動機は収入の高さひとつに絞られていた。大病を患っている母親の治療代と妹の学費を工面するためだ。しかし彼はそんな母親に幼い頃捨てられかけた記憶と、その後、母の男性遍歴に振り回された上に貧困な生活を強いられる、という苦い思い出を持っていたのだ。

 孤独は他によって覚えさせられるものではなく、個人の中に誰しもが生まれながらにして備えている感覚だということを本書から再認識させられた。孤独をどの程度認識するか、その量で個人の孤独感は変化する。彼の不安や孤独が幼い頃のトラウマに起因しているのは確かだ。しかしそれがまったく解されることなく、また解されることを許さない彼自身のあり方は、生まれながらに持った性質のせいなのかもしれないとさえ思わせる。
 一度溶解の気配を見せ、それでも立ち直った『壊れない部分』は更に強固になり、彼に注がれる他人の情は色もない澱のように彼の中に溜まる。そして吐息によって簡単に吹き飛ばされてしまうのだ。
 読後に憤りと寂しさを感じた物語であった。

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