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三中信宏さんのレビュー一覧

投稿者:三中信宏

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紙の本イヴの卵 卵子と精子と前成説

2003/04/19 23:13

3世紀前にタイムスリップさせてくれる生物学史本

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 著者の傑出した筆力の賜物だろう。生物学史なんか古臭いと思いこんでいる読者は、本書を手にして考えを改めるにちがいない。発生生物学史の片隅で何世紀にもわたってその息吹を絶やさなかった学説——「前成説」のみをテーマとする本書は、その専門的内容にもかかわらず、まるで小説のように登場人物とプロットを楽しめる。

 個体発生における前成説は「すべての生ける存在は、ロシア人形のように先祖の体の内部にあらかじめ出来上がって」(p.17)いると主張し、発生の過程で新しく構造がつくられていくとみなす後成説と鋭く対立した。教科書的には、前成説は後成説に敗北を喫して消え去ったことになっている。しかし、著者は通説に抗して、生殖と発生に関するわれわれの知見を大幅に前進させた「前成説論者たちに心から感謝しなくてはならない」(p.314)という。そして、この持論を展開するために、3世紀前にまでさかのぼる一次資料の掘り起こしを行なった。

 前成説 vs 後成説は、本書の内容全体が含まれる大きな対立図式である。しかし、本書の中心テーマは、前成説の派内で繰り広げられた、より先鋭な対立である「精子派」vs「卵子派」の論争がどのように繰り広げられていったかに置かれている。おおもとは「イヴ」だったのかそれとも「アダム」だったのか——前成説内のこの対立について、著者は学問的のみならず宗教的・文化的・社会的次元にまで論議の幅を拡大している。

 過去のある生物学論争の全体像を復元した本書は、当時の科学を取り巻いた要因を次々に俎上にあげ、前成説が派の内外でいかなるバイアスにさらされてきたか、そして現代の生物学史がそれらの歴史的バイアスを介して前成説論争に対するどれほど誤ったイメージを抱くにいたったかを示した。現代から過去を遠目に見るのではなく、タイムスリップして当時に身を置いてはじめてその意味が理解できる歴史的事象があることに気づかされた。

(三中信宏/農業環境技術研究所主任研究官)

【目次】
はじめに 5
プロローグ:知る勇気 15
1.イヴのすべて 29
2.アダムのすべて 75
3.風は目に見えない 114
4.前途有望なモンスター 143
5.パンツをはいたカエルたち 188
6.Hのつく言葉 215
7.天球の音楽 246
8.魔法の数字 277
エピローグ:結局決着はつかないのか 305
訳者あとがき 315
原註 [323-347]
参考文献 [348-365]
文献索引 [366-371] 
人名索引 [372-381]

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