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  3. ちゃぼさんのレビュー一覧

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先月(2017年2月)

ちゃぼさんのレビュー一覧

投稿者:ちゃぼ

24 件中 1 件~ 15 件を表示

生誕

2001/02/22 23:50

今が“旬”の作家

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 芥川賞作家・松村栄子の作品である。芥川賞を受賞した『至高聖所(アバトーン)』は『どこかにあるはず』の至高なる場所を求める人間の物語だったが、本書は人間と社会の関りを見つめ直した作品となっている。
 例外もいるし異論もあろうが、私自身の感触としては、純文学作家はデビューから年を経るごとにパワーダウンしていくものであり、一番活きがいいのはデビュー直後であって、その後は枯れていくだけ、という印象が強い。エンターティメント系の作家はデビュー直後よりもデビューから十年を少し越えたあたりが“旬”であるのに対して、純文学系の作家は若さが売りなのだ。好きな作家が半ば自滅に近い形で書けなくなっていくのを見ているのは、とても辛い。
 だが、松村栄子は希有なる例外である。彼女の作品を追いかけていると、正に年を経るごとに“練れて”きており、デビュー作の『僕はかぐや姫』からその勢いは衰えることを知らず、芥川賞受賞作の『至高聖所(アバトーン)』、そして本書『生誕』へ至っている。この『至高聖所(アバトーン)』から『生誕』あたりが正に彼女の“旬”であり、一番オイシいところなのだ。
 そして、彼女はこれからも作家としてさらに例外に属する第二第三の“旬”を見せてくれるのか?
 松村栄子は間違いなく、二十世紀末から二十一世紀初頭にかけて注目されるべき作家の一人である。

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エンディミオンの覚醒

2001/02/20 01:40

人類世界の夜明け

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 旧連邦のテテュス河を下る旅の果て、アイネイアーとエンディミオン、アンドロイドのベティックは、古き地球、オールドアースに辿り着く。季節は過ぎ去り、何年かの後、アイネイアーは再び冒険の旅を宣言する。アイネイアーの予言に従い、再びテテュス河を下り領事の宇宙船を発見したエンディミオンは、アイネイアーの待つ惑星《天山》へと向かった。だがアイネイアーとエンディミオンを待ち受けていたのは、とても哀しい運命だった。
 前編《エンディミオン》に続き、本書をもって一連のハイペリオン・シリーズはついに終結する。長い長い物語の終結にふさわしく、本書ではいよいよ全ての謎が明らかにされ、涙なしには読めないクライマックスの後、物語は大団円を迎える。そして、詩人マーティン・サイリナース、フィドマーン・カッサード大佐、レイチェル・ワイントラウブ、《聖樹の真の声》ヘット・マスティーン、ルナール・ホイト神父、ポール・デュレ神父といった懐かしい面々も登場し、人類世界の夜明けが描かれるのだ。『ハイペリオンは泣ける』という評判を聞いて前シリーズ『ハイペリオン』(上・下)と『ハイペリオンの没落』を手に取った人、本当に泣けるのはこの壮大な四部作の最終章、本書《エンディミオンの覚醒》なのだ。

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紙の本〈骨牌使い〉の鏡

2001/02/20 01:36

これぞファンタジー!

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 商業都市ハイ・キセレスの骨牌使いアトリは時折、奇妙な夢を見る。それはいつも暗い夜にアトリの上に訪れ、涙を流す。それは、これから始まることの予兆に過ぎなかった。花の祭の日、アトリは〈斥候館〉でロナーと名乗る流れ者の剣士と出会う。彼を占ったアトリが見たのは、死と破滅を意味する骨牌〈月の鎌〉だった。果たして、ロナーと名乗るこの男は何物なのだろうか? やがてアトリの、運命に翻弄される旅が始まる。
 実力派のファンタジー作家・五代ゆうの描く、一大叙事詩である。この作品はどこか創世神話的な趣を持ち、そして切ない。タロットにも似た十二枚の『骨牌』と呼ばれるカード、反逆した『逆位』の骨牌、見ず、聞かず、語られない禁断の『十三』。そんなガジェットやタイトルの示す通り、物語は『骨牌』を中心として巡る。
 タロットカードの連なりは、運命を摸した寓話の旅でもある。《魔術師》に始まり、《恋》を知り《運命》の変転や《死》を体験し、やがて変容の旅は天空の果てへと続く。本書も同じく寓話的な物語であり、その行き着く先は骨牌の一枚である《円環》の象徴する、《巡り行く世界》なのだ。
 私は常々『国産ファンタジーは何か物足りない』と思っていたが、そんなことはなかった。本書はまさしく、ファンタジーの王道を行く作品なのである。

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鏡の影

2000/12/19 23:26

華やかに狂える錬金術師

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 六人兄弟の末っ子ヨハネスは奇妙な考えに取り憑かれていた。『全世界を変えるには、ある一点だけを変えれば充分である』と。レヴニッツの聖堂参事会の一員である叔父の元に転がり込んだヨハネスは、叔父の本を読み漁り、レヴニッツの司教からラテン語や数学の手ほどきを受ける。叔父が自らの生命を絶った後は大学で神学・哲学・医学を学び、ローマでヘブライ語で書かれた写本に出会いかつての夢を思い出す。『世界の一点を変える』ことを。
 1991年のデビュー作『バルタザールの遍歴』以来、現代日本文学が失ってしまった力強い筆致で数々の作品を世に送り出した佐藤亜紀の作品である。一度は第三作として新潮社より出版されたものの、事情もあって絶版となり入手不可能な状態だったが、ビレッジセンター出版局より再刊された。サドやチェスタトン、ナボコフやヒルデスハイマーといった伝説的な作家をこよなく愛する著者の冴えに冴えた語り口はこの作品でも健在だ。
 史実や歴史的な背景を徹底的に掘り起こし、特異な着想を加味してストーリーを編み上げる教養と技量に裏打ちされた手腕は、この著者の全作品に共通して光る特色だ。この作品の舞台となっている中世ヨーロッパ、『バルタザールの遍歴』に描かれた今世紀初頭のウィーン、『戦争の法』の戦後高度成長期の日本、『モンティニーの狼男爵』のフランス、『1809』のナポレオンの時代など、歴史、特に西洋史に多少なりとも知識のある読者は感嘆せずにはいられない。その自らの好みの赴くままにまかせながら一流の文学に仕立てあげる力量は、読者の心に長く記憶されるに違いない。

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紙の本アルケミスト 夢を旅した少年

2000/12/19 22:26

夢への賛歌

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 アンダルシアの平原で羊飼いをしている少年サンチャゴはとある夢を見る。それは、子供がサンチャゴの手を引いてエジプトのピラミッドへ行き、『あなたがここに来れば隠された宝物を発見できる』と言う夢だった。サンチャゴはその夢を信じて、ジプシーの占い師やセイラムの王様に導かれ、エジプトへ旅立つ。
 いつから人は夢を見なくなったのだろう。可能性と『前兆』は全ての人に訪れる。何かを強く望めば宇宙の全てがそれを実現するべく助けてくれる。そんなことを、人はいつから一笑に付すようになってしまったのだろうか。誰もが自らの可能性と限界をわきまえ、自らの許された領分だけで生きてゆく、そんな世界は哀しい。何かを望むこと、何かを信じること、それが出来なくなった人間はもっと哀しい。
 主人公のサンチャゴは様々な『前兆』を見て、人生の意味を学び、強く望むことで宇宙の全てを味方につける。つづられる言葉のひとつひとつは力強く、真理に満ち、読者を励ましてくれる。読み終えた時、『夢は諦めるべきではない』ときっと信じることができる、夢への賛歌だ。

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閃光の虚空(そら)の向こう

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 二十三世紀の未来、宇宙には、遺伝学者ローンの実験により創造されたローン系サイオンと呼ばれる精神感応力を持つ一族がいた。そして彼らの支配するスコーリア王圏は、宿敵たるユーブ協約圏、すなわち精神感応力者の苦痛を快楽とするアリスト階級人の帝国といつ果てるともない戦争を続けていた。美貌のスコーリア王女にしてサイボーグ戦士のソースコニーは、保養休暇のため訪れた地球連合圏のデロス星で、一人のアリスト階級人の青年と出会う。宿敵であるはずのアリスト階級人になぜか惹かれてしまうソースコニーだったが、彼こそはユーブ帝国の世継ぎであったのだ。
 ハードSFとスペースオペラの幸せな結婚——このシリーズについて、そう評した読者がいた。この《スコーリア戦史》のシリーズは、一見スペースオペラでありながら、その実はハードSFの香りを秘めている。それもそのはず、作者のキャサリン・アサロは、『恐竜は巨大隕石の落下によって滅びた』と最初に提唱した科学者グループの一人、核科学者フランク・アサロを父に持ち、本人はハーバード大学で化学物理学博士号と物理学修士号を取得し、トロント大学や『ノーベル賞製造所』とも呼ばれるマックス・プランク協会天体物理学研究所に在籍したこともある才媛なのだ。
 例えば、作中に登場する恒星間宇宙船は『反転エンジン』なる超光速駆動エンジンを装備しているという設定になっている。この『反転エンジン』は実数の質量を持つ物体に対して、その速度に対して虚数の成分を与えてやることで光速の特異点を『迂回』するというシステムなのだ。実数空間から虚数空間へと『反転』することからその名が付いているのだが、このシステムは少なくとも数学的解釈の上でならば、エネルギー保存則や因果律を無視することなく超光速飛行が可能なのである。
 ハードで、しかもスペースオペラ。こんなSFを読んだことがない人は、ぜひ一読すべきである。

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紙の本アルジャーノンに花束を

2001/01/03 13:37

《知恵》という名の果実

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 知的障害を抱えた心優しき青年チャーリーは、知能が飛躍的に増大するという大脳手術の被険体となることを持ちかけられる。「利口になりたい」と願っていた彼はその手術を受けることを承諾し、医師の指示で日記を付け始めた。手術後、チャーリーの知的レベルは日増しに伸び続け、ついには彼を執刀した教授をも凌駕するようになるのだった。しかし、チャーリーは孤独を感じていた。彼の友人は、同じ手術を受けた鼠のアルジャーノンだけ。やがてアルジャーノンと共に教授の元を脱走したチャーリーは、アルジャーノンと新しい生活を始める。だがチャーリーとアルジャーノンには哀しい運命が用意されていた……
 この作品は当初、SF作品として日本に紹介された。初めの頃は日本での読者もそれほど多いものではなく、SFファンの間でこそバイブルとして親しまれてはいたものの、一般への知名度はそれほどのものではなかった。作者のダニエル・キイスはこの作品に続いて『24人のビリー・ミリガン』『ビリー・ミリガンと23の棺』という実在の多重人格者を扱ったノンフィクションを書き、それが日本に紹介されて少し経つと、何のきっかけか『アルジャーノンに花束を』が突然ブレイクしたのだ。
 この作品は主人公チャーリーの書く日記文学である。まだ知的障害を抱えたままのチャーリーが書き始める日記は、初めのうちこそたどたどしいものの、やがて日を追うごとにしっかりとした文章になってゆく。「利口になった」と喜んでいたチャーリーだったが、やがて彼はそれまで見えていなかったもの、あるいは見たくなかったものを否応なく目にするようになり、友人達を失ってゆく。チャーリーが知能と引き換えにしたのは彼の優しさだったのだろうか? 人間にとって、知恵の果実はやはり悪魔の誘惑だったのだろうか?
 絶頂を迎えたチャーリーの知能は、今度は逆の方向へ、つまり退化へと進む。たどたどしくなってゆく彼の日記は、何だかとても切ない。ようやく手に入れた知能という宝が指の隙間からこぼれ落ちてゆくようで、それを食い止めることも、再びその手にすくい取ることもできなくて、しかしその事実を受け入れているチャーリーの姿は、我々に何かとても大切なことを教えてくれているようだ。知能を奪われたチャーリーはそれまでの自分が失ってしまっていたもの、無垢な純真さを再び取り戻し、また以前の生活へと帰ってゆく。
「アルジャーノンのおはかにはなをあげてください」
 それが、彼の日記に残された最後の言葉だった。

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紙の本たったひとつの冴えたやりかた

2001/01/03 13:35

この小説を読み終わる前にハンカチが欲しくならなかったら、あなたは人間ではない。

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 十六歳の少女コーティー・キャスは誕生日にプレゼントされた宇宙船を改造し、たった一人で外宇宙へ飛び出した。《リフト》を越えて冷凍睡眠から目を覚ましたところで、彼女は行方不明の難破船からのメッセージを受け取ることになる。記録されていたのはエイリアンとのファースト・コンタクトについての不可解な報告。だがコーティーはそのエイリアン、シロベーンと出会い、やがてメッセージの意味を知ることになる。元気いっぱいの少女コーティー・キャスと心優しき異星人シロベーンが《消えた植民地》で見たものとは……
 批評家に『この小説を読み終わる前にハンカチが欲しくならなかったら、あなたは人間ではない』と言わしめた表題作『たったひとつの冴えたやりかた』他二編を収めた作品集。正に、これを読んで泣けなかったら自分の人間としての資格を疑った方がいい。これはむしろ、日本人の心の琴線に触れる物語なのだ。
 作者のジェイムズ・ティプトリー・ジュニアは長い間覆面作家のままであり、本名はおろか男性なのか女性なのかさえ知られてはいなかった。やがてそれは作者本人の口から明らかにされることになるのだが、衝撃はそれだけではなかった。
 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、本名アリス・シェルドン夫人は、本書が日本で刊行される少し前の1987年5月のある朝、弁護士に電話をかけて後事を託した後に、病気で寝たきりになっていた最愛の夫ハンティントン・シェルダンを射殺、同じベッドの上で自らの頭を撃ち抜いて亡くなった。夫は失明の上にアルツハイマー症の兆しがあり、彼女自身の患っていた心臓病も悪化していた。彼女は七十一歳、夫は八十四歳であった。警察の発表によると、かねてから二人の間には自殺の取り決めがあったという。戦後ヨーロッパの瓦礫の中で結婚し、四十年以上もの間愛によって結ばれてきた二人の、それが最期だった。
 この作品集にはそんな作者のノスタルジーが満ちている。ヒューゴー賞やネビュラ賞を獲った作品が収録された『愛はさだめ、さだめは死』のように実験的野心的な『いわゆるSF』ではないものの、郷愁と優しさに満ちあふれた世界がこの本には広がっているのだ。
 それにしても、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアほどの作家になっても、日本では未訳が多い。先ごろ早川書房から『故郷から10000光年』と『星ぼしの荒野から』が出版されたものの、ティプトリーの未訳の名作はまだまだあるのだ。
 ところで、この『たったひとつの冴えたやりかた』を読んでティプトリーに『目覚めて』しまったあなたに次にお薦めできるのは、『星ぼしの荒野から』である。『たったひとつの冴えたやりかた』を「つまらん」と吐き捨てる(けしからん)私の知人も『星ぼしの荒野から』に収録された『おお、わが姉妹よ、光満つるその顔よ!』を絶賛していたのだ。私自身としてはやはり『たったひとつの冴えたやりかた』を上位に置きながらも、『星ぼしの荒野から』に収録された作品からは『スロー・ミュージック』や『たおやかな狂える手に』をお薦めしたい。

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最も進化したスペースオペラ

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 遠い未来、人類は三つの種に分化していた。我々現代人と変わらない『ジーン・マイナー』、遺伝子操作を受けた優秀なる人類『ジーン・メジャー』、そして流麗な宇宙船の姿をした天駆ける人類『ジーン・ライナー』である。
 バルトライナー社のジーン・ライナーで、『最速』と呼ばれた《ローヌ・バルト》の火器管制員、ジーン・メジャーのオルス・ブレイクはある日、それまでの職を解かれ先行偵察要員シェルドライバとなることを命じられた。この時代、《カーニハン機関》を搭載し超光速で宇宙を駆けるジーン・ライナーは、各星系を結ぶ定期航路で《クリッパーレース》と呼ばれるスピードレースに興じていた。目的地までの到達時間を短縮するためならば非合法手段も辞さず、進路上にある障害は全て排除し、時にはスピードを競うライバルに対しての攻撃すら加える、その《シェルブリット》任務のための要員がシェルドライバである。公にはその存在すら秘匿されているシェルドライバとなったオルスは、人型高機動戦闘兵器《シェル》を駆り、同じくシェルドライバであり元陸軍対戦車攻撃機パイロットのジーン・メジャー、ノーマ・クイックと共に任務にあたるうち、《最も進化した人類》であるジーン・ライナーの真の目的を知ることになる。
 主人公オルス・ブレイクの脇を固める登場人物も魅力的である。オルスの親友で《ローヌ・バルト》のC群管制官、ジーン・メジャーのデルビー・アイバース。《ローヌ・バルト》の宿敵であるギースシッピング社のジーン・ライナー《ベルタ・ギース》のシェルドライバ、ジーン・メジャーのレイモン・フレイ。そしてオルスの目の届かぬところからこの《ゲーム》に参加する内務省外務二課のジーン・マイナー、エマルディン・ホール……。
 『少女革命ウテナ』の幾原邦彦が『ファイブスター物語』の永野護と組んで放つ《最も進化したスペースオペラ》、この《シェルブリット》は買いだ!

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ハリントン上級宙佐、巡洋戦艦の艦長に!

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 オナー・ハリントン。マンティコア星系、惑星スフィンクス出身。マンティコア王国航宙軍上級宙佐。軽巡洋艦〈フィアレス〉艦長から重巡洋艦〈フィアレス〉艦長を経て、巡洋戦艦〈ナイキ〉艦長に着任。マーク・サーナウ宙将補指揮下の第五巡洋戦艦戦隊に所属する。バシリスク星系をヘイヴン人民共和国軍から防衛した功績によりマンティコア十字章、グレイソン星系をマサダ聖航宙軍から防衛した功績によりグレイソン星刻章を受け、さらにハリントン伯爵とロジャー国王勲爵士に叙される。マンティコア王国航宙軍の中でもトップクラスに入る有能な指揮官であり、その戦略眼、戦術能力、指揮力は群を抜く。相棒は精神交感能力を持ちセロリに目がないモリネコのニミッツ。
 『新艦長着任!』(上・下)でバシリスク星系、『グレイソン攻防戦』(上・下)でグレイソン星系に赴任したオナー・ハリントンは今回、栄光ある艦名を継ぐ新造の巡洋戦艦〈ナイキ〉艦長に着任し、マンティコア王国辺境のハンコック駐屯地に赴く。ハンコック駐屯地はマンティコア王国の友邦防衛の一大拠点であり、ヘイヴン人民共和国の侵略に対する最前線基地なのだった。ハリントン上級宙佐の指揮する巡洋戦艦〈ナイキ〉は闘将サーナウ提督率いる第五巡洋戦艦戦隊に編入され、戦隊の旗艦となる。だがハンコック駐屯地の司令官であるヤンシー・パークス次級宙将はヘイヴン人民共和国軍の侵略から友邦を防衛するため、麾下の艦隊に分散配置を命じた。かくしてハンコック駐屯地には第五巡洋戦艦戦隊のみが残されることになったが……。
 このシリーズを読み続けてきた読者にはおなじみの展開である。敵対勢力の跋扈する星系へ赴くオナー・ハリントン。そこでは敵国による本格的な侵攻が計画されており、対するこちらの味方はごくわずか。圧倒的な戦力を誇る敵に対し、星系の命運は図らずもハリントン艦長一人に託されるのだった!
 前々作、前作と読んだ方は、今作品もぜひお薦めだ。ハリントン艦長は相変わらず自らの資質と軍人としての能力に悩みつつ、それでも強大な敵に対し一矢報いてみせる。『銀河英雄伝説』にも通じるハリントン艦長の戦術と、いずれ劣らぬ優秀な部下達。この痛快さがたまらないのだ。
 何、読んでない? それはいけない。あなたはぜひ読むべきなのだ。《紅の勇者オナー・ハリントン》シリーズの著者ディヴィッド・ウェーバーは、本国アメリカでは《銀河の荒鷲シーフォート》シリーズのディヴィット・ファインタック、《マイルズ・ヴォルコシガン》シリーズのロイス・マクマスター・ビジョルドと並んで、ミリタリーSFの御三家と言われている。特に《海の男/ホーンブロワー》のような海洋冒険小説が好きな人、ミリタリーSFに目がない人は、このシリーズを読まずに自分の読書歴を語ることはできない。敵軍の猛攻にさらされ、味方が次々と戦死していく中、果たしてハリントン艦長はどうやってその危機を脱するのか?
 答えは自らの目で確かめてほしい。

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紫の砂漠

2000/12/19 22:31

ジェンダーとアイロニー

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 『真実の恋』を知るまでは性別が決定されないという世界で、禁断の地とされている砂漠の外れ、大人たちが塩を採ることで生計を立てている塩の村のシェプシは、誰よりも砂漠を眺めていることが好きな七歳の子供だった。『聞く神』の持ち物であるという光る音響版を砂漠で見つけたシェプシは、それを村の巫祝に見せ、神の元に返す約束をしていた。ある日、シェプシは砂漠からやって来た『聞く神の使い』である詩人と出会い、自分の運命が大きく転換することを知る。
 タブーを犯し砂漠を旅するシェプシは、やがて自分を見つめる数々の眼差しに気づく。砂漠を旅することでこの世界の秘密を知り、そして自分のために払われた犠牲を知った時、シェプシの心は壊れてしまうのだった。
 この作品は『ジェンダーに対する反旗』という著者お得意のテーマを掲げつつ、血縁による家族制度に対するアイロニーを示し、何よりも『人を見つめる眼差し』の大切さを説く。家族や血族の結束に対するアイロニーに対しては、アレルギーを起こす読者もいるかもしれない。だが、考えてみてほしい。家族は血の繋がりではない。人を見つめる温かい眼差し、人を思いやる愛情こそが家族を保証する唯一無二の存在であるはずだ。我々の世界では、どんな社会においても血縁による家族制度と血族による結束が正義として受けとめられている。しかし、そんな行き過ぎた家族制度が排他的な民族主義を支えているという事実に思い至れば、誰もこの世界の掲げる理想を笑うことはできなくなるだろう。

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紙の本スキップ

2001/02/22 23:52

失われた時間

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 17歳の高校生だった私は、目覚めると42歳になっていた。四半世紀を飛び越えて、いつの間にか私は《今》にいた。失われた25年はどこに行ってしまったのだろう……?
 先ごろ待望の《時と人》シリーズの第三作『リセット』が発売されたミステリー作家・北村薫の書き下ろし長編である。この『スキップ』は《時と人》シリーズの第一作にあたる。とても男性が書いたとは思えないほど女性的で瑞々しい筆致で描かれたこの物語は、時間と人との関り、巻き戻せない時の中で生きて行くことの意味を考えさせられる。
 過去は常に私たちの背後にある。振り返ればそれはそこにあり、いつでも掘り起こして眺めることができる。それは正に自分という人間の生きた証であり、連綿と続く歴史の一部にほかならない。だが、唐突にそれが無くなってしまったら? 気がつけば何十年という先の未来に自分が飛ばされてしまっていたら? 失われた空白の時間はどう贖えばいいのだろうか。
 答えはきっと、日々の時間の中にあるのだろう。いや、もしかするとそんなに単純な問題ではないのかもしれない。
 ケン・グリムウッドの『リプレイ』という作品がある。作者自身もかなり意識したというこの『リプレイ』では、主人公は同じ時間の中を繰り返し繰り返し生きる。このモチーフは同氏の作品『ターン』と同じものだが、この『スキップ』ではまったく正反対のモチーフになっている。主人公は当然あったはずの時間の中を一度も生きてはいないのだ。だが、本書『スキップ』とケン・グリムウッドの『リプレイ』、この二冊は、私には読者に対して全く同じ問いかけを発しているように思える。すなわち、一度しか与えられない時間の中をどう生きるのか、という問題だ。
 答えはどこにもない。また、どこにでもある。あなたには見えているのかもしれないし、見えていないのかもしれない。それは本書を読んで確かめてみてほしい。

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エンディミオン

2001/02/20 01:38

待望の新シリーズ!

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 32世紀。《テクノコア》と共に連邦が消滅してから三百年余りが過ぎ、宇宙は連邦に代わってカトリック教会の支配する世界となっていた。辺境の惑星ハイペリオンに住む青年ロール・エンディミオンは、無実の罪により即決裁判で死刑を宣告され処刑されたはずが、とある城塞で目を覚ます。その城塞、廃都エンディミオンに住んでいたのは、教会により禁書とされた『詩編』の作者にして伝説の巡礼の一人、詩人マーティン・サイリナースだった。驚きもさめやらぬエンディミオンは、詩人からある使命を託される。それは、《時間の墓標》を使ってもうじき過去からこの時代にやって来る、ブローン・レイミアの娘アイネイアーを守り導いてやってほしいというものだった。同じ頃、教会では教皇ユリウス十四世の命により、アイネイアーを捕獲する作戦が始動していた。
 前作『ハイペリオン』(上・下)『ハイペリオンの没落』が終わっても、謎は多々残った。新シリーズ二部作である、本書《エンディミオン》と続編《エンディミオンの覚醒》では、それらの謎が明らかにされる。もっとも、謎が解明されるのは主に続編の《エンディミオンの覚醒》の方で、本書はプロローグ的な色彩が濃い。青年エンディミオンと少女アイネイアーの出会い、その後に続く冒険の数々。だが、これらのエピソードは物語において重要な伏線になっている。面白さは当社比二倍、前作《ハイペリオン》《ハイペリオンの没落》を読んだ人は、ぜひ読まねばなるまい!

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紙の本ターン

2001/02/12 12:12

二人称小説の読み方

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 『スキップ』に続く、《時と人》シリーズの第二作である。本作品は以前に、直木賞の候補作にまでなった。残念ながらその時は『直木賞該当作なし』ということで決着してしまったのだが、この作品の先進性とレベルの高さはうかがい知る事ができる。ちなみにその時に候補作だった他の作品には、後に『柔らかな頬』で直木賞を受賞することになる桐野夏生の『アウト』や、日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『バガージマヌパナス』の著者・池上永一の『風車祭(カジマヤー)』などがあった。
 北村薫には『円紫師匠と私』のシリーズや、前作の『スキップ』など、一人称の作品が多い(覆面作家シリーズは一人称に見えるが、実際には「私は〜」という文章は出てこない。そこがまた素晴らしい)。だが、この作品は珍しくも何と二人称で語られるのだ。三人称の間違いではない。君は〜 という書き方には初めのうちこそ面食らってしまう読者も多いかもしれないが、読み進めるうち、その書き方こそがこの作品世界を構築するかけがえのない要素の一つである事に気がつくだろう。

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星虫

2001/02/02 08:49

夢は続く……

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 宇宙飛行士を夢見る氷室友美は高校生。いつかスペースシャトルのパイロットになる事を目指し、自主訓練に励む日々を送っていた。夏休みの最後の夜、友美は空からいく筋もの光が降ってくるという幻想的な光景を目にする。星虫と呼ばれるその光の一筋一筋は、人間の額に吸着して宿主の感覚を増幅させる能力を備える宇宙生物だった。人々はそんな星虫の存在に夢中になるが、やがて星虫が驚くべき変化を始めた時……
 本作品は第一回日本ファンタジーノベル大賞で最終選考まで残った作品のうちの一作である。ちなみにこの時の大賞には『後宮小説』が、優秀賞には『宇宙のみなもとの滝』がそれぞれ選ばれている。これらの作品をお読みになったことがある方ならわかるように、日本ファンタジーノベル大賞は非常にレベルの高い新人賞なのである。その最終選考まで残った! それだけで何か期待させられるものがあるではないか。
 『星虫』から『鵺姫真話』『イーシャの舟』と続く一連のシリーズのコンセプトは明解、『夢は諦めてはならない』である。これだけ聞けば、お寒い内容を想像してしまう人もいるだろう。だが、岩本隆雄だけは違うのだと言いたい。岩本隆雄はそこらの作家モドキとは違うのだ。
 本作は新潮文庫から1990年に出版されたが後に絶版となり入手不可能な状態が長らく続いていたが、ネットでのファンの地道な活動の成果か、2000年に朝日ソノラマから再刊され今こうして読む事ができる。本当に良い作品はやはり埋もれたままにはならないのだ。

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