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  3. mamin13さんのレビュー一覧

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    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

mamin13さんのレビュー一覧

投稿者:mamin13

31 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本妖女サイベルの呼び声

2001/01/27 01:03

サイベルの心の変化が痛いほど伝わってきます

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 世間から隔絶された山の中で伝説の魔獣たちと静かに暮らしてきた美しい魔女サイベル。
 日々、まだ見ぬ大空遥かを飛翔するライラレンを呼び寄せる静寂の毎日にある日異変が起こる。
 ある日、若者が連れてきた赤ん坊によりサイベルの閉ざされた心にひとつの光が差し込まれる。静かな山にこれまで知る由もなかった戸惑いと愛情を残し、若者は戦へと旅立って行った……
 長い間、人との交わりを避けてきたサイベルもやがて女性としての愛、怒り、憎しみを知り苛酷な運命に巻き込まれる。
 これはハヤカワFT(ファンタジ−)文庫の記念すべき第1刊目に選ばれた作品です。
 いかにも「ファンタジー」な設定ながらサイベルの人間としての心の変化、憤りが見事に描かれている感動作品!
 冒頭の魔術師の息子ミクが人里離れたエルド山へ向かい、やがて長い時を経て美少女サイベルの孤独の生活に到るまでのくだり、このたった数ページで完全に惹き込まれます。
 恐ろしいほど巧みなこの導入部分は多くの人の高い評価を受けています。
 世界幻想文学大賞受賞! まさに納得!
 幻想的で切ない伝説の獣たち、穏やかで賢く美しい魔女サイベル! 自信を持ってお薦めできる傑作ファンタジーです!

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紙の本我らが影の声

2001/03/23 02:37

お見事!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 兄は15歳のとき鉄道事故で亡くなった。いや、ほんとは事故では…。兄の死を引きずりながらもウィーンで順調に作家生活を送るジョゼフ・レノックス。ウィーンでは映画好きのテイト夫妻という素晴らしい親友もでき満ち足りた毎日を送っていた。そう、まさに幸せな日々だった…。

 ホラー+ファンタジー+普通の小説…なんて書いただけではこの人の作品は言い表せない気がします。「今回はちょっと恐そうだぞ!」と思いながら読み、後半は「あ〜、こんな感じで終わりなのね〜」なんて思っていたけれどそれは大きな間違いでした。
 恐いといっても視覚的に恐いとか恐い場面がどうのとかじゃないんです。精神的に「ザワッ!」とくる感じ…。なによりも読み終えたあともずっと残る戦慄がたまりません!
 一味違う違うショックを味わいたい方、読みやすくてページ数も少ないのでぜひ読んでみてほしい!絶妙な伏線と衝撃的な結末に一緒に驚きましょう。

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愛しすぎた男

2001/01/17 05:07

サスペンスというよりも悲しい恋愛の物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 紡績会社の技術主任、デイビッド・ケルシー。下宿の隣人からも崇拝される真面目な彼に、もうひとつの誰も知らない生活があった。2年もの間、熱愛するアナベルと、毎週末とある一軒家で秘密の幸せな空間を過ごしていたのだ。しかしそれは彼の報われない夢が見させる悲しい仮想世界。現実のアナベルはすでに夫を持ち彼に見向きもしてくれない。やがてデイビッドの孤独ながらも幸せな仮想生活までもが破綻し始める……。
 自分が愛する女性を病的なまでに追い求める、いわばストーカーの話で、終始このデイビッド側からの視点で描かれている。自分では全く正気だと思っているのだが、はたから見れば充分精神を病んだ「ゆがんだ愛」の心理、行動が展開されてゆく。ただ、登場してくる女性陣があまりいい女とはいえず、かなりデイビッドに荷担しながら読み耽ってしまった。彼が思いをよせているアナベルは美人な他に長所は見受けられず、どちらかというと優柔不断で軽いイメージが鼻につく。もうひとりデイビッドに思いをよせるエフィは、彼の一番犯されたくないプライバシーにずかずか踏み込んでくるうざったい存在。やっていることは自己中心的でまわりのことなど眼中にないデイビッドだが、「ほっといてくれ〜!」という彼の憤りは理解できる……。
 サスペンスの要素は乏しいが、「愛しすぎた男」という邦題がまさにピッタリなこの作品!
 なんと40年も前に刊行されていたとは思えない、今の社会となんら変わりなく違和感のないテーマ。悲しい「ゆがんだ愛」の物語としてかなりハマって読みました!

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まさに大人の童話集

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「シンデレラ」「白雪姫」「眠り姫」「美女と野獣」「白鳥の湖」「ハーメルンの笛吹き」 などのグリム童話をモチーフに編まれた、美しく妖しく残酷な9つの物語からなる傑作短編集。モチーフに…とはいえ、そこはタニス・リー。物語の舞台も中世ヨーロッパだけでなく、紀元前のアジアからスカンジナビア地方、そして未来の地球まで多種多様。全てが完全にタニス・リーの世界に仕上がっています。
 「ダーク・ファンタジー界の女王」の名にふさわしい、独創的で美しい色彩を放つ、かなりひねりの効いた再話に仕上がっています。おお!この話をこういう風にしてしまうか…!と感嘆しながら、リーの幻想世界にどっぷりと浸ってください。

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紙の本ファラオの墓 1

2001/01/31 02:41

巻が進むごとに感動が増す…

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 舞台は戦乱の古代エジプト。強大な力をもつウルジナ国の蛇王・スネフェルに祖国を滅ぼされ、屈辱に生きなければならない若く美しいエステーリアの王子サリオキス。心に固く復讐を誓い果敢に宿命の敵に挑むのだが…。苛酷な運命に巻き込まれた人々の激しい愛と戦いの日々を描く感動大作!

 少女漫画だとあなどるなかれ! 昔のマンガは奥が深いのだ! 子供時代に読んだものが今、続々と文庫になっている今日この頃。ようするにこれも再読なんだけど、大人になってから改めて読むとまた違った角度で楽しめ、再度ぞくぞくしながら読み耽ってしまった…。お気に入りはスネフェルの残虐さの中に見え隠れする孤独な哀しみと、激しい愛と憎悪に満ちたゆがんだ眼差し。そして、心は苦悩に満ち、体は絶えず傷を負っている、強く儚げなサリオキスの美しさ!
 この若い二人にからまった残酷な運命のいたずらがドラマの軸となり、悲しく、激しい感動の物語を作り上げていく。これは古代エジプトを舞台とはしているが、全て架空の物語で出てくる王子も金髪青い眼…。けれどまあ、そんなことは気にせずに冒険活劇として読むも良し、恋愛物として感動するもよし、単純にエンターテイメントとして存分に楽しむことをお薦めします!!

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薔薇の荘園

2001/01/17 05:19

やっと復刊してくれた!見逃すにはもったいない良質ファンタジー!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 歴史上の史実、伝説をベースに編まれた神話ファンタジーの傑作!出版はハヤカワSF文庫になっているが、これは初版当時ハヤカワFT(ファンタジー)文庫がまだなかった為でもうちょっと遅い出版なら間違いなくFT文庫に収録された作品(SFだと思って買わないように!)。
 つい最近まで絶版で入手困難だったが 「読んでみたいハヤカワ文庫の名作」 の第3位に選ばれ、やっと復刊の日の目をみた傑作中編集である!

「火の鳥はどこに」
 舞台は紀元前8世紀のローマ。ローマ建国の伝説的な主役として有名な双子の兄弟、ロムルスとレムスが主人公として登場する。物語を語るのは牧羊神(ファウニ族)のシルウァン。愛らしいこの半人半獣のシルウァンや美しい木の精霊など幻想と史実が融合された詩的な作品。

「ヴァシチ」
 古代ペルシャを舞台に幽鬼(ジン)の疑いをかけられ国を追放される女王と小人の不思議な物語が展開される。闇と光の戦いをモチーフにしたアラビアの幻想世界が描かれている。

「薔薇の荘園」
 13世紀初頭のイギリス。十字軍に憧れるふたりの少年が森で出会った少女を天使と思い込み、導かれるように聖地までの旅に赴く。不思議な深い森の中には恐ろしいマンドレイク族(食人鬼)が生息している。傷を負い、たどり着いたのは美しい薔薇が一面に咲き誇る「薔薇の荘園」であった………。

どの作品もそれぞれに魅力がありかなりの良質ファンタジー!
少しドキリとさせられた表題作の「薔薇の荘園」が私の一番のお気に入り♪

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紙の本何かが道をやってくる

2001/01/17 05:02

一生忘れられない良質ファンタジー!

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 10月、万聖節の頃。街にカーニバルの一団がやってきた。数十年ぶりにやってきた「クガー・アンド・ダーク魔術団」は奇怪な者達を引き連れ、真夜中、静かにカーニバルの準備を始めだす。魔女、刺青の男、一寸法師、骸骨男……。普通のカーニバル団とはどこか異質な雰囲気が漂う。ある夜、二人の少年が、この魔術団が運んできた「回転木馬」の恐ろしい秘密を知ってしまう……。
 このお話はあらすじを書くのが非常に難しい、いろんな要素を含んだ傑作ファンタジーです!
 本の背表紙に載っていたあらすじを読んだ時は少年達の冒険ものかと軽く考え、随分と長い間読まないで置いておいたんですがこれは大きな間違いでした。全編に抒情詩的で華麗なファンタジー世界が展開され、読み初めから自分の「想像力との闘い」が始まります。
 怪異な出来事を通しての少年、というよりその父親の活躍ぶりも感動的なこの作品。
 今さらいうまでもなく名作中の名作!読んだあと頭がボーっとして何も考えられなくなるかも…。

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殺す人形

2001/01/17 04:50

これぞレンデル!

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 十六歳の誕生日を間近に控えた冬、バップは悪魔に魂を売った。
 全てはここからはじまったのか…!?顔に大きく赤黒いあざがあるため家に引きこもり、次第に精神を病んでいく姉ドリー。弟バップがのめりこむオカルト。無関心な父親。記憶障害を持つ青年ディアミット。トンネルに身をかくし、通る女性を切り刻む…。
 ようやく、これぞレンデル〜!という期待どおりの長編に出会えた!じわじわといや〜な、まさにレンデルらしい傑作サイコ心理ものである!
 周りの変化についていけず孤独なドリー、そしてディアミットの変化がそれぞれほぼ同時進行していく様子が読んでいてドキドキする。こういう、いわゆる地味な恐さが何かたまらない。
 ささいな積み重ねでエスカレートしていく狂気が恐いくらい伝わってくる。恐い……。

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女を脅した男

2001/01/17 04:47

まさに名人!傑作短編集!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この短編集を読んで、すっかりレンデルのファンになってしまった!特に11編中、7編のノンシリーズものの短編が、特にレンデルお得意のじわじわくる心理サスペンスの醍醐味がいかんなく発揮されていてゾクゾクきます!

女ともだち : 1番初めに収録されているこの作品。タイトルから多少内容を推測しながら読み進めていたけれど、まったく違う展開!まずは最初のびっくり!!

女を脅した男 : 平凡で幸せな家庭を持つ男の、たったひとつの趣味は女を脅すこと。これがこの男にとって最高の気晴らしで、実に迷惑な話なんだけど、なぜか読んでいるうちにその心理が理解でき、この男の喜びが伝わってきて一緒にゾクゾクしてしまう…不思議。

時計は苛む : 画廊で見つけた美しい時計に心を奪われてしまった老女のお話。だがその時計は、すでに売約済みで手に入れることがかなわないと知り…。老女の心の変化と時間を刻む時計の音が、哀しく、恐ろしくマッチして結末にみちびいていく…。

愛の女神 : 自分の夫は頭脳明晰で欠点などないすばらしい人。…などと思って結婚したのなら、ずーっとそう思って過ごしたほうがおたがいに幸せ…。もしもどちらかが…。

カーテンが降りて : その出来事があったのは、彼の6歳の誕生日がすぎた春のこと。母親はいつもそのときのことを“あの恐ろしい夜”と呼んでいたが…。いろいろと考えさせられるが、他の作品とはちょっと展開の異なる比較的ソフトなストーリー。

 この他2編(どれも20ページ程の短い作品)と、ウェクスフォード警部シリーズが4編収録されていて、とても印象深く、私にとって文句のないまさに傑作短編集でした!

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ドラキュラ紀元

2001/01/17 04:30

裏・吸血鬼ドラキュラ!

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 ドラキュラが支配するヴィクトリア朝のロンドンで、吸血鬼の娼婦が次々惨殺される事件が起こる。闇の諜報員、ボウルガードと美少女ヴァンパイア、ジュヌヴィエーヴが切り裂きジャックの謎を探るべく動き出した。
史実と架空をとりまぜて展開していく、裏・吸血鬼ドラキュラ。

 とにかくヴァンパイアだらけのこのお話!吸血鬼ファンには涎ものです!
 ただ、この本を数倍楽しく読むにはブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」を読んだことがある、もしくは映画などで内容は知っている、ということが大前提になります。あとは19世紀イギリスの史実、小説などの登場人物に多少の興味があるとより楽しめるでしょう。
 私も最初は登場人物の多さにビビってしまいましたが、不思議なことにある程度読み進むうち、まったく気にならなくなりサクサク読むことが出来ました(「巻末の登場人物事典」、めちゃめちゃ便利です!)。とにかく過去の小説、映画の吸血鬼が勢ぞろい!
 他にも、切り裂きジャックやジキル、モロー博士、シャーロックホームズが好きな人には思わずニヤリのシーンあり!
 とにかくいっぱい詰め詰めの長編大作でありました!

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紙の本たたり

2001/04/13 04:33

静かな恐怖

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 幽霊屋敷として知られる「丘の屋敷」を調査するため、心霊学者モンタギュー博士は3人の男女を呼び寄せここにしばらく滞在することにした。近くの住民はここのことを何も語りたがらず嫌悪するばかり…。やがてこの屋敷に起こる不思議な現象、そして過去が明るみに出る。

 ハヤカワから出ている「山荘綺談」の新訳ヴァージョン。舞台となる館がヴィクトリア朝風の広い洋館なので、本文中の<山荘>を<丘の屋敷>と変えたのは正解だと思われます。
 この「山荘綺談」は、スティーヴン・キングが自分のエッセイ集で絶賛し、また「シャイニング」に多大なる影響をあたえたという、モダンホラー界では古典的名作と呼ばれる作品です。「THE HAUNTING OF HILL HOUSE」という原題で1959年に刊行され、最近では「ホーンティング」の名で映画化されました。
 “ホラー”とひとくちで言っても、この原作は幽霊も姿を現さないし特に惨劇が起こるというわけでもありません。なんというか、ぼやーっとした精神的恐怖が味わえる、心理サスペンスを読んでいるような趣があります。
 幻想文学ならではの静かな恐怖。突然の結末にシンプルな恐怖の演出…。いつまでも心に残る恐さを味わうには最適です。

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紙の本二人がここにいる不思議

2001/04/03 12:47

程よい不思議

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『瞬きよりも速く』に引き続き2000年に邦訳、刊行された(アメリカでの出版は1988年)ブラッドベリの未訳短編集。収録作の初出は1945年の「墓石」から1987年の「ローレル・アンド・ハーディー恋愛騒動」までと40年の開きがあります。
 内容はファンタジー、ホラー、SF、そしてコミカルなものまで、相変わらずバラエティに富んだ日常と非日常の狭間を描き、ちょっとした不思議が詰まったどこかしんみりと味わい深い23編が収録されています。

 地球人の襲来を受けた火星で、初めて目にした地球の女性に恋焦がれるシーオの思いを綴った「恋心」(「火星年代記」のサイド・ストーリー)。
 列車に居合わせた幽霊を助けよう(?)と悪戦苦闘する老婦人…、「オリエント急行、北へ」。悩みを抱える息子が亡くなった両親をディナーに招く…、表題作「二人がここにいる不思議」。その他「10月はたそがれの国」でおなじみのヴァンパイア一族のコミカルなニュー・ストーリー「10月の西」などなど、少し大人のじんわりとした余韻が程よい短編集です。

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紙の本影をなくした男

2001/01/31 02:55

奥深いドイツメルヘン

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 “幸運の金袋”と引き替えに自分の“影”を手放してしまった男。莫大な富を得たものの、影がないばかりに世間からひどい仕打ちを受けやがて悪魔にわが身を売った自分の愚かさを呪うようになる。この男の不思議な運命をドイツロマン派・シャミッソーがユーモラスに描いた作品。
 さすがドイツ・ロマン的文学は味があるね〜! 子供っぽい話といえばそれまでの物語の中に現実的で理解しやすい主人公の心理変化が巧みに描かれている! ……などという感動は、実は最後まで読んでみて初めて得られたた感想です……。かなり後半になるまであまりのバカバカしさに「なんで私はこんなの読んでるんだ!?」と思いながらページをめくっていたのが本当。ところが、ほんとに最後のほうでやっとこの主人公が心の中にに入ってきました! そして、もう一度初めからゆっくりと読み返すはめに……。あなたにとって“影”とはなんでしょう? 意外に考えたことないでしょう?
 ちなみにこの作者は、「移民の経歴から国籍というものに特別の想いをもち、アイデンティティのことを深く考えたからこの話を書いた……」と、後々述べているそうです。つまり影とは自分の国籍であり、自分のアイデンティティを指していたと思われます。19世紀初期のドイツのメルヘン、おとぎ話はちょっと〜、という人は読むのをやめたほうが無難でしょう〜。しかしファンタジ−が好きな人にはお薦めできます。
 特に最後に載っている友人からの手紙……涙ものです!

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魔猫

2001/01/17 04:57

「猫」という言葉からあなたは何を連想しますか?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ヘルキャットと腕利きの殺し屋の不思議な闘いを描く、スティーヴン・キングの「猫と殺し屋」。現実ではなくホログラム映像の中の猫と意思の疎通をかわす自閉症の少年の悲劇、ナンシー・クレスの「マリーゴールド・アウトレット」。暴力、貧困、心を病み、孤独の中に生きる少年と猫との固い絆、ジョエル・レインの「セーラ」。時は中世、魔女狩りから逃れた魂に闇の猫が語りかける4つの寓話、タニス・リーの「顔には花、足には刺」。他13作品。
 「17匹の猫が誘う妖しい闇の世界 / 恐怖のアンソロジー」と題された、猫にまつわる短編17話をおさめたアンソロジー集。
 表紙は恐いが中身はたいして恐い話ではない。猫が何かをしでかすというよりも、人間の孤独、狂気、病、嫉妬、不安を題材にした、主役はあくまでも人間の内面のことである。
 それを冷ややかに見つめている猫達が恐怖でもあり、また心の支えともなりえるという、まさに多種多様の猫のイメージが描かれている。
 大の猫好きの人は大の犬好きの私よりもよりいっそう気持ちを入れて読むことが出来ることでしょう。猫好きの人には特にお薦め!

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紙の本リオノーラの肖像

2001/04/07 23:59

重厚ながらも読みやすいサスペンス

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 イギリスのハンプシャーにある閑静な館で育ったリオノーラ。
 母も父も亡くなり、意地の悪い義理の祖母達と過ごした暗い半生。不可解な館の住人の態度、謎に満ちた多くの出来事に幼いころから疑問を持ち続けていたリオノーラに、ある日全てを語る男が現れる…。自分の知らなかった出生の秘密から、館にまつわる悲しみと憎しみの歴史を突き止めたリオノーラ…。自らの娘にその長い長い歴史と悲しい物語をゆっくりと語り始める…。

 謎と嘘が小気味よく網羅され、全く飽きることなく読めました。語り部がリオノーラだけでなく違う人物に移ってゆくところも違和感が無く絶妙です。
 年老いた70歳のリオノーラが自分の半生を語り始める前半部から、今度は出生の秘密、自分の生まれる前の母の物語にまで遡るので、話としてはとても長いんですが、いろいろな要素が詰まっている為ページをめくる手も次第に早くなっていく、そんな小説でした。ただどうしても無理矢理な展開、それに向けてのちょっと突っ込みたくなるような描写も2、3ありましたが、これだけ読ませてくれれば充分でしょう。
 反戦主義のメッセージ色の濃い、サスペンスタッチの歴史物語という感じ。ラストまで目が離せない巧みに入り組んだ謎がおもしろかったです。

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