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高杉親知さんのレビュー一覧

投稿者:高杉親知

28 件中 1 件~ 15 件を表示

柳田国男も喜ぶだろう

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

愉快で知的で、言語地理学の最高の入門書ではないだろうか。1990 年、「探偵! ナイトスクープ」のプロデューサーだった松本修は、番組内で関西の「アホ」と関東の「バカ」の境界を探ったことから日本全国の方言調査をすることになる。そこから導かれたのは、かつて柳田国男が「蝸牛考」で日本語に導入した、古形が周辺に残るという方言周圏論だった。一時期、過小評価されていた方言周圏論だが、本書で示された「アホ」、「バカ」等の分布はこれに見事に当てはまり、素晴らしいと言う他はない。結論の特番が日本民間放送連盟最優秀賞を受賞したのも納得だ。
最近の言語学者は文法中心で、あまり語源の探求をしない。しかし言語学の素人である氏はテレビ業界の強みを生かし、視聴者から情報を募ったり、アンケートを全国の教育委員会に送ったりして、日本方言学会で発表するほどの結論を得た。
周圏論以外にも、沖縄の「フリムン」の語源が「触れ者」ではなく「惚れ者」であることを証明したところや、「バカ」の語源の俗説を打ち破るところが読み応えがある。「バカ」は「馬鹿」でも「莫迦」でもなく、もっと教養と美意識に裏打ちされた表現だったのだ。本書で確認して欲しい。

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先を読むとはこういうことだ

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エマニュエル・トッドの魅力は、その射程の長さにある。本書をアメリカ批判と単純に受け止めるのは、それに賛成であれ反対であれ、誤りである。本書はアメリカの覇権が数十年以内に消滅すると予測するが、決してここ数十年にのみ通じる理論ではない。

特に興味深いのは、家族制度が社会を規定するという考えだ。例えば子供の内のただ一人が家督を相続する直系家族は、世界的には少数派であり、日本、韓国、ドイツ、ユダヤ等に見られるだけである。この家族制では世代が垂直的であり、兄弟は平等ではない。それが社会に反映されると序列や血統や継承にこだわる国家が生まれる。日独の奇妙な連帯感はここに由来するのだ。一方、兄弟が平等で結婚後も父に従う外婚制共同体家族は、強大な権力者と平等な平民からなる国家を生む。この家族制があるのはロシアや東欧や中国であり、共産主義が勝利した領域と一致する。

アメリカはしばしばローマ帝国になぞらえられるが、その社会が決してローマ的ではないことをトッドは証明する。アングロサクソンの絶対核家族では、親子、兄弟は独立的であり、遺産分配は遺言で決まる。社会は自由と差異を尊ぶ。一方、ローマ帝国を受け継ぐフランスとスペインは平等主義核家族であり、親子は独立的だが、兄弟は平等で、遺産は均分される。社会理念は自由と平等である。アメリカ独立とフランス革命の決定的な違いは、前者が自由だけを、後者が自由と平等を掲げていたことにある。ところが民族を超えた真の帝国を築くには人間の平等が不可欠である。平等を信じないアメリカは、民族にこだわらなかったローマ帝国にはなり得ないのだ。その証拠がアメリカでの白人・黒人間の結婚率の低さだ。ハリウッド映画を見ても分かるように、アメリカの白人と黒人は結婚しないどころか、恋愛すらしない。アメリカ黒人女性の内、白人と結婚するのは 2.3% に過ぎない。異常に低いこの値は、黒人が隔離されており、「人種のるつぼ」や「移民の国」というプロパガンダとは裏腹に、アメリカこそが世界の人種差別の中心であることを示す。そもそも国勢調査で人種を調べる異常な国なのだ。アメリカ人はせいぜい敵を作って身内の平等を実現するのが限界である。白人の平等は、先住民と黒人を排斥することで実現した。一方、ユダヤ人を受け入れた反作用でアラブ人を敵視するようになった。このような差異主義は世界には通用しない。

アメリカ経済が略奪的であり資本流入を必要としていることは、トッドを待つまでもなく明らかである。双子の赤字、製造業の衰退、貧富の差の拡大、企業の不正の横行など、アメリカ経済崩壊の予兆は、見る者には見えている。本書が最近のフランス外交の基本となり、ドイツがアメリカから離反したのは、何ら不思議ではない。分かっていないのは日本だけなのだ。

現在のアラブ地域の暴力化は、近代化に伴う発作だとトッドは言う。ヨーロッパで宗教戦争が起きたのは近代の直前だった。長い目で見れば、世界は民主制と非暴力に向かっている。アラブ地域では識字率が上がり、少子化が進みつつある。ところがアメリカはアラブ人を受け入れる理念も意志も持たない。この状況下でアメリカ国債を買い続け、また大量破壊兵器もアルカイダとの関係も無かったイラクに自衛隊を送るのは、失敗どころか狂気である。しかし日本は単に先が読めないだけなのだろう。1976 年、トッドが 20 年以内のソ連崩壊を予測したことを忘れてはなるまい。当時、ソ連の更なる発展を疑う者はいなかったが、トッドは乳児死亡率の上昇を見て、社会の劣化が始まったことを見抜いたのだ。そして今、アメリカ黒人の乳児死亡率は上昇に転じている。残り時間はあまり無い。アメリカは帝国幻想にしがみついて自壊の道を選んだ。日本にとって本当の危険はアメリカ衰退に巻き込まれることであり、存在しない悪の枢軸と戦うことではない。

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豊かな育児のために

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

内容豊富で読みがいがある育児書だ。育児書を一冊買うならこれが良いだろう。

 近年は育児もファッション化して、商業主義的な育児雑誌が増えつつある。広告主である企業と密着している本が多く、また子育てに対する総合的な視点に欠けているため、くだらない記事が少なくない。そんな折り、この「ベビーブック」を書店で見付け、その科学的・総合的でありながら子育ての楽しさに気付かせてくれる優しさに大いに感銘を受けた。著者の小児科医ウィリアム・シアーズと看護婦マーサ・シアーズは八人の子(内一人は障害児、別の一人は養子)を育て上げた夫婦であり、実際の育児の経験に基づいているので信頼できる。本書の重要な点は、アメリカで書かれたにもかかわらず、当地で主流の子育て法を強く批判し、親子の触れあいによる信頼関係を重視していることだ。日本では添い寝をするのは常識だが、アメリカでは少数派で、大半は赤ちゃんを別室のベビーベッドに押し込んでしまう。アメリカ人はこれを子供の独立心を養うのに良いと思っているのだが、実際には子は段々と親に否定的な感情を持つようになる。シアーズ夫妻はこれを批判し、親子の信頼関係が失われるため子供はますます泣くようになると警告する。一方、父親の役割の重要性や子育ての大変さもきちんと書かれており、単純な母性礼賛が多い日本の従来の育児書とは一線を画す。また、何故母乳が良いかを良く説明してあり、母親が母乳育児と仕事を両立させる方法も書いてある。

 私たち夫婦も、実際にこの本に影響を受けて親子の絆作りに精を出し、妻の復職後は保育園で冷凍母乳を飲ませてもらった。そのせいか、娘はほとんど病気もしないですくすくと育っている。娘が大分大きくなった今でも、本書を読み返すと何か新しい発見がある。

 訳の監修は NHK の育児番組に出演している小児科医榊原洋一である。翻訳はこなれているが、少し残念なのは本書のキーワードである attachment parenting を単に「アタッチメント・ペアレンティング」としていることである。全然ピンと来ない言葉なので、親子の絆とか、触れあいという言葉を使うべきだったと思う。

 あと子供の発育は一人一人異なるので、平均的な発育の表と自分の子を比べて一喜一憂しないようにしたい。

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豊かな育児のために

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 内容豊富で読みがいがある育児書だ。育児書を一冊買うならこれが良いだろう。

 近年は育児もファッション化して、商業主義的な育児雑誌が増えつつある。広告主である企業と密着している本が多く、また子育てに対する総合的な視点に欠けているため、くだらない記事が少なくない。そんな折り、この「ベビーブック」を書店で見付け、その科学的・総合的でありながら子育ての楽しさに気付かせてくれる優しさに大いに感銘を受けた。著者の小児科医ウィリアム・シアーズと看護婦マーサ・シアーズは八人の子(内一人は障害児、別の一人は養子)を育て上げた夫婦であり、実際の育児の経験に基づいているので信頼できる。本書の重要な点は、アメリカで書かれたにもかかわらず、当地で主流の子育て法を強く批判し、親子の触れあいによる信頼関係を重視していることだ。日本では添い寝をするのは常識だが、アメリカでは少数派で、大半は赤ちゃんを別室のベビーベッドに押し込んでしまう。アメリカ人はこれを子供の独立心を養うのに良いと思っているのだが、実際には子は段々と親に否定的な感情を持つようになる。シアーズ夫妻はこれを批判し、親子の信頼関係が失われるため子供はますます泣くようになると警告する。一方、父親の役割の重要性や子育ての大変さもきちんと書かれており、単純な母性礼賛が多い日本の従来の育児書とは一線を画す。また、何故母乳が良いかを良く説明してあり、母親が母乳育児と仕事を両立させる方法も書いてある。

 私たち夫婦も、実際にこの本に影響を受けて親子の絆作りに精を出し、妻の復職後は保育園で冷凍母乳を飲ませてもらった。そのせいか、娘はほとんど病気もしないですくすくと育っている。娘が大分大きくなった今でも、本書を読み返すと何か新しい発見がある。

 訳の監修は NHK の育児番組に出演している小児科医榊原洋一である。翻訳はこなれているが、少し残念なのは本書のキーワードである attachment parenting を単に「アタッチメント・ペアレンティング」としていることである。全然ピンと来ない言葉なので、親子の絆とか、触れあいという言葉を使うべきだったと思う。

 あと子供の発育は一人一人異なるので、平均的な発育の表と自分の子を比べて一喜一憂しないようにしたい。

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龍の真相

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 龍は中国文化で最重要の神話的存在であり、皇帝の象徴であった。果たして龍のイメージはどこから来たのだろうか。「ワニと龍」は古代中国の隠された文化史を生物学・気象学の視点で解き明かす非常にわくわくさせる本だ。著者はワニの専門家で、書名が示すとおり、龍とは古代中国に生息していたマチカネワニ(学名 Toyotamaphimeia machikanensis)だったのである。気候が温暖な頃の生息地の北限は漢水だったらしい。約三千年前に気候が寒冷化した時に、黄河を中心とする当時の中国文明の領域から消え去ったため、その真の姿が忘れられて神話化され、人々の想像力をかき立てる存在となったのだ。本書によれば、その後再び温暖化した時にワニが戻ってきたが、既に龍を神獣としていた古代中国人は、ワニを新たに蛟と名付けたという。再び寒冷化して消え去ると、蛟もまた神獣となった。マチカネワニは最終的に明代に絶滅したらしい。

 字書を繰ると確かに古代中国の生態系は現代と異なっていたことが分かる。例えば古代中国では象狩りが行われていたことが知られている。またこれは私も気付いていたのだが、古代中国にはサイも住んでいた。ただし現在の犀という字ではなく、凹の下に儿という字(読みはジ)で表されていた。このように字の交代があることは、古代中国の気候変動を表している。古代中国文化を探るのは今まで文献や遺物を調べるのが従来の手法だったが、それらでは分からない真実をこのように生物学が出せるとは想像していなかった。実りある成果を是非読んで欲しい。

 本書の後半はワニに関する話で、龍とは関係ない。ワニの分類の話になったり、著者の子供時代の話になったりと一貫性が無いが、なかなか面白い。

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紙の本理想の国語辞典

2001/06/02 00:06

日本語の感性を研ぎ澄ます

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 国語辞典をひいて歯痒い思いをしたことは無いだろうか。語義を述べるだけで類義語との関係が不明確だったり、多義語の意味を列挙するだけで本質が分からず散漫だったりすることがある。本書はそんな国語辞典を批判し、真に役立つ辞書とは何かを探求した素晴らしい本である。

 例えば接頭辞の「本」と「当」の違いは何だろうか。「本校」と「当校」は一見同じような気がする。だが、「本校の生徒に告ぐ」、「当校は部外者の立ち入りを禁じます」という文の違い、あるいは「本人」と「当人」の違いを考察することで、著者・国広哲弥氏は両者の相違点を巧妙にあぶり出す。「本」を使う時は話者の視点が内部にあるのに対し、「当」を使う時は外部にあるのだ。この違いが、「本日」と「当日」の違いも生み出す。今日という日を内部から見るのが「本日」であるのに対し、注目する日を外部から見るのが「当日」なのだ。

 読めば必ず日本語の感性が鋭くなる良書である。将来、この書の成果を生かした辞書が現れることを切に願う。

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紙の本現代英語正誤辞典

2001/04/03 18:49

英語を正確に知る

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 この本は実に素晴らしい。チョムスキーの生成文法を元にした、現代英語の文法書だ。英語の勉強にはかなり力を入れているにも関わらず、この本を読むと私がまだ全然英語を知らないということに気付く。生成文法では、文法は禁止規則の集まりだと言えるので、この本にはやたらと誤文の例が出ていて役に立つ。全部で800ページ以上あり、4ページ平均4つの文法が出ているので、その量には圧倒される。しかし非常に有用なので、英語を学ぶ人には強くこの本を薦める。
 今更チョムスキーか、という意見があるかもしれないが、生成文法は長らく英語を基盤に発展してきたため、英語を説明する切れの良さは他の理論では得られないだろう。

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日本語

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 思考には言語が必要だ。この自明の事実が、現代フェミニズムの前に立ちはだかる巨大な壁だ。言語を用いて思考する以上、言語は思考を規定し、制限し、無意識の慣習へと導こうとする。それに気付かない限り、真に自由な思考は有り得ない。まず壁が存在することを知らねば、それを乗り越えることは全く不可能である。

 例えば「女医」という単語を考えてみよう。それに対応する「男医」が無いのは何故だろうか。「女流作家」の場合も同様に、「男流作家」とは言わない。つまり医者も作家も男が本流であり、女は亜流だと宣言しているのだ。「女医」という言葉を使う人に悪意は無いだろうが、暗黙の内に女性は例外的存在だと見なしているのだ。それは言語が話者の思考に侵入して植え付ける差別意識である。恐ろしいではないか。

 本書はそのような注意していて初めてひっかかる表現を新聞上で見付け、何故それが差別的なのか、及びその代替表現を考察した書である。著者らの志は高いが、口調は軽やかで押し付けがましくなく、我々の思考を絡め取る言語の呪縛をそっと解き放ってくれる。思考の更なる自由を得るために、今、日本語を見直す時が来ている。

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紙の本ビジョナリーカンパニー 1 時代を超える生存の原則

2001/05/21 22:15

安易な市場主義を克服する理想主義

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 長く存在し続ける企業の秘密は何だろうか。ずっと利益を出し続けることは言うまでもないが、それは必要条件であって十分条件ではない。また、同じ環境で同じ時期に創業されたにもかかわらず、一部の企業だけが長く成功する理由は何だろうか。本書は、それを多数の実際の企業を比較することで明らかにする労作だ。
 我々現代人が市場資本主義の中で生きているのは明らかだ。そして近年、日本の不況と共に市場万能主義の隆盛が著しい。しかし本書で明かされるように、市場で生き続ける強い企業の目は市場ではなく自らが打ち立てた理想に向いているのである。例えばソニーを考えてみよう。ソニーが創業された時、創業者達は利益率や投資効率を考えていたのではなかった。日本製品の低価格・低品質という悪印象を払拭し、優れた製品を作ることで戦後日本を復興させようとする高い理想こそが、ソニーの人々を突き動かし、現在我々が知る世界企業を生み出したのである。
 現在の不況は戦後の廃墟に比べれば大したことは無いのに、当時の方が夢があったように見える。だからこそ、資本主義の成功の根底には人々に訴えるべき高い理想があるという本書の発見を、もっと人々に知らせたい。ただ時流の波に乗ろうとするなら流されるだけだ。必要なのは波を突き抜ける強い理想なのだ。それは個人でも企業でも変わらない。本書は低迷する経済の中にあってもなお理想を失わない新しい日本人に是非読んで欲しい本である。

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日本語特殊論から抜け出そう

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 日本語を特殊だと考える日本人は多い。しかしそのような人々は日本語を英語や他のヨーロッパ語と比較しているのであり、世界の様々な言語と比較しているわけではない。最近アジアの言語に対する関心が高まっているとはいえ、まだまだ欧米崇拝的な語学が幅を利かせている。しかし世界の言語は日本人が想像するより遥かに多様で、その中では日本語が特殊だとはとても言えないのだ。
 この本は数多くの言語から興味深い例を取り上げ、読み進むうちに素朴な日本語感は必ず打ち破られるだろう。一方、英語を標準的な言語と考える人は多いが、英語の文法は世界的にも珍しいものを含むと知れば、英語が難しいと感じるのは無理ないと分かるだろう。幅広い視野を持つために、是非読むべき本である。

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紙の本従軍慰安婦

2001/04/03 18:45

「従軍慰安婦」問題を見極めるために

14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 男性社会の日本において、従軍慰安婦問題は受けて立たなければならない問題だ。最近は従軍慰安婦問題を消し去ろうとする論陣が多く、従軍慰安婦が軍の強制連行であったか否かが現在焦点となっている。この本によれば軍が連行したという証拠は多くはないがゼロではない。インドネシアのオランダ人少女を複数連行し慰安婦として働かせていたことで、1948年バタビアでのオランダ軍事法廷で11人の日本人が死刑を含む有罪判決を受けているのだ。なお、これは被害者がヨーロッパ人であったため綿密な調査が行われたが、アジア人への被害は連合国が追及することはなかった。これが現在もなお慰安婦問題が解決しない原因だ。
 そもそも、強制連行でなくても軍が慰安婦斡旋業者から慰安婦を「調達」していたのは事実であり、軍自体が慰安所を運営していたのも事実であるので、それを軍の強制連行の有無という問題に矮小化するのはおかしいのではないか? 慰安婦斡旋業者にだまされて連れてこられたという証言をする被害者の女性は少なくなく、また軍はそのような状況を黙認していたのだから強制連行だけにこだわるのは間違いだ。
 この本で知って驚いたのは、元産経新聞社長・フジテレビ社長の鹿内信隆や元首相の中曽根康弘が、慰安所を作る勉強をしただの実際に作ったなどと楽しげに思い出話をしていることだ。

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経営者こそ査定されよ

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

成果主義が給与削減のための方便であるのは周知の事実だ。成果主義を導入して、社員の給与合計が増えた会社など一つもない。これだけでも社員のことを考えてのことではないと分かる。だが成果主義の本当の問題はそこにあるのではない。未来傾斜原理に反するから、成果主義は有害なのである。未来傾斜原理とは、現在だけでなく未来も大切にするということだ。成果主義を導入する最近の経営者は、そもそもなぜ人が集まって仕事をするのか知らないのだろうか。人々が協力すれば、一人一人より大きな力を出せるからこそ協力するのである。そして今協力するには、未来でも協力し合っていることが確信できなければならない。裏切られる可能性があるところで協力はできない。成果主義を導入し、終身雇用を否定するのは、社員が一時不調になれば切り捨てるというのと同じだ。そんな会社で、全力で働きたい、長期的視点で働きたいと思うだろうか。適当に給料分だけ働いて、機を見て転職したい思うのが普通だ。長期的な信頼こそが、社員にも会社にも有益なのだ。

経済学的に言っても、需要不足の不景気に苦しむ今の日本で、成果主義と給与格差を導入するのは正気の沙汰ではない。収入格差が広がれば需要が衰えるというのは経済学の常識である。年収 500 万円の人 10 人がいたら、パソコンが 10 台売れるだろう。しかし年収 200 万円の人 9 人と年収 3200 万円の人 1 人がいたら、パソコンは 1 台しか売れない。売れるのは安い食料品と、役に立たない高級品だけである。成り金にあこがれ、格差を当然視する今の日本人は、自分の首を絞めていることに気付いていない。アメリカ経済の活力に目がくらんだのかもしれないが、アメリカは格差を減らせばもっと良い国になるということを忘れている。

だが、本書を手放しで礼賛するわけにもいかない。信頼を裏切る者の存在に触れていないからだ。それは終身雇用を隠れ蓑にして未来傾斜原理に反することをする者たちである。例えば社員を酷使して報いない会社、女性差別する会社、失敗の責任をとらない役員、部下を育てない管理職などがそうだ。成果主義を批判するのは正しい。だからといって年功制が必ずしも良いわけではない。人々が協力するのに必要なのは長期的な信頼であって、それを破壊するものは何であれ悪なのだ。駄目な会社は成果主義にしたところで駄目だが、もしどうしても成果主義を導入したいなら、まず経営陣に適用するべきだ。

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紙の本はじめてのドイツ語

2006/03/29 12:01

ドイツ語はSOVなのだ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ドイツ語の本質的な語順が、日本語と同じ SOV (主語-目的語-動詞) であって英語のような SVO (主語-動詞-目的語) でないことを Emmon Bach が示したのは、実に 1962 年のことである。しかし今なお日本のドイツ語教育でこの重要な発見が生かされているとは言い難い。教科書の出だしから ”Ich studiere Deutsch” などと、ドイツ語の語順が英語に似ている印象を与えている。本当は、語順からすれば、ドイツ語は英語より遙かに日本人に親しみやすいはずなのだ。下手に英語の語順に惑わされるより、最初から日本語との共通性を言うほうがずっと良い。

本書はドイツ語の入門書でありながらきちんと語順を SOV だと説明しているので、ドイツ語の論理がはっきりと見えるに違いない。ドイツ語のいわゆる枠構造や分離動詞を不思議に思うことはないだろう。学習者にはとても有用だ。ただ著者は、SOV 説のほうが優勢だ、くらいの弱気な書き方をしているが、読者は SOV 説を頭に叩き込んでしまうと良い。

例えば、以下の日本語の文を、ほぼそのままの語順でドイツ語に直してみる。

私は 今日 無事に 家に 着く
ich heute gut zu Hause an kommen
私は 明日 無事に 家に 着くだろう
ich morgen gut zu Hause an kommen werden
私は 昨日 無事に 家に 着いた
ich gestern gut zu Hause an gekommen sein

日本語とドイツ語はどちらも SOV だから、この段階では語順を変えないで良い。次にドイツ語は V2 (動詞第二位) なので、最後の動詞を正しい活用形にして 2 番目に移動する。これにより、以下の正しい文が得られる。
Ich komme heute gut zu Hause an.
Ich werde morgen gut zu Hause ankommen.
Ich bin gestern gut zu Hause angekommen.

従来の説明では、ankommen は分離動詞なので an を文末に移動するが、助動詞がある場合は全体を文末に移動する、そして過去分詞は通常 ge- を付けるが分離動詞の場合は -ge- を挿入する、となっていた。今までこんな説明でよく納得していたものだ。正しくは、ankommen が分離するのではなく an と kommen がくっつくのである。

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日本の製造業はよく耐えた

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

原著は 1998 年発行だが、いささかも古さを感じさせない。それどころか、アメリカの IT バブル崩壊を示唆していた著者の慧眼に驚かされる。日本でもしばらく前まで、製造業はもう古い、これからはソフトウェアとインターネットの時代だと言われていたが、それがいかに無知な意見であるか、本書を読めば分かるだろう。

日本は何もしなくても石油と食料を輸入しなければならない国である。そのためには何かを輸出せねばならない。この役を担えるのは製造業だけである。ソフトウェア、インターネット、金融、マスコミなどの第三次産業は基本的に国内産業であり、輸出は難しいのだ。アメリカですらソフトウェアの輸出量は微々たるものであり、しかも最近はインドへの外注などによる輸入が増えているので、貿易収支には全く貢献していない。つまりサービス産業は、間接的に製造業の生産性を上げる効果を除けば、国の競争力向上には役立たないのだ。加えて、製造業は大卒・高卒をまんべんなく雇用するが、ソフトウェアや金融などは主に大卒だけを雇用するので、むしろ失業率が上がり、貧富の差が拡大して社会が不安定化する。日本はまだ世界が見えているので、国内では銀行や証券会社が大きな顔をしていても、一歩外に出ればトヨタやソニーのほうが偉大であることはよく分かっている。しかしアメリカは国内しか見えていないので、一見景気の良い金融やソフトウェアに未来があるように思ってしまうのだ。そのため愚かにも製造業を衰退させてしまった。通常なら貿易赤字が生まれれば通貨が下がって自然に競争力が回復するが、製造業が衰えたアメリカはドルが下落してもすぐには輸出を増やせず、貿易赤字がさらに悪化してしまう。待ち受けているのは破産だ。

著者のフィングルトン氏は東京に長く住んでいるが、親日家とは程遠い。氏のサイト (http://www.unsustainable.org/) にある論文を読めば分かるが、氏は日本市場の閉鎖性を厳しく批判し、また日本のことを中国のような自由のない官僚国家と断じている。氏がそれでもなおアメリカ経済より日本経済のほうを評価するのは、金持ちと金融業界に牛耳られたアメリカへの強い憂慮からだ。だからこそ本書は信頼できる。浅薄な脱工業化論に踊らされて、アメリカと同じ過ちをしてはならない。貿易赤字国から学ぶとすれば、それは反面教師としてである。

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紙の本英語音声学入門

2002/02/11 00:04

歯茎後部破擦音

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 時々無機的な文章があり読みづらいかも知れないが、英語の発音を精密・的確に説明しているので大いに読む価値がある。気に入ったのは [tr] と [dr] を破擦音に分類していることだ。英語を学ぶ者なら [tr] の発音が単に [t] + [r] でないことは気付いているだろうが、類書を見ると [tr] は [t∫] に近く聞こえると書いているだけのことが多く、今一つすっきりしなかった。本書では、[tr] は歯茎後部の無声破擦音であり、音声学的には一個の音である、とはっきり書いてある。それを知らないで [t] と [r] を発音すると、どんなになめらかに両者をつないでも正しい発音とはならない。その場合、train は terrain と聞こえてしまう。むしろ train は chain に発音が近いのだが、これはもちろん歯茎後部の無声破擦音 [tr] と 歯茎・硬口蓋の無声破擦音 [t∫] とが音声学的に近いからである。その他、母音 [i(:)] と [I] の違いの説明も非常に参考になるだろう。英語の発音を向上させたい人に薦める。子供と異なり、大人は耳だけで正しい発音を憶えるのはほとんど不可能なので、是非とも本書を読んで理論的に発音を修得して欲しい。

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