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先月(2017年8月)

ともさんさんのレビュー一覧

投稿者:ともさん

3 件中 1 件~ 3 件を表示

下り坂の時代における科学技術者の生き方を考える

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本は面白い。月刊誌に連載したエッセーの集成のため、話題がやや広がりすぎる印象もあるが、規格外な元東大教授であるこの著者が常日頃から持っている問題意識のあり方がよく分かる。
 得意の話題であるバイオテクノロジーの話題や科学研究のあり方にかんする議論ももちろん面白いが、読んだ中でもっとも衝撃を受けたのは、「科学者になれ、とすすめることができるか」から「文部大臣になった同僚・有馬朗人への手紙」までの3編だった。ここでは、いわゆる『理系離れ』の問題を扱っている。今や、製造業の歯車として科学技術者を必要とする産業界が、理工系学生の減少を憂い、子供たちを理科好きにしよう、といったキャンペーンを教育界を巻き込んですすめている。
 しかし工学部で長らく教授をしてきた著者は、自らの同僚や後輩・弟子たちの生き方や処遇をみて、それがいかにナンセンスで欺瞞的かを指摘する。「現在の企業では40歳を過ぎた技術者はいらない」「技術者の定年後の生活はきびしい」「会社の中で生き抜くには技術者ではなく、会社人間にならなければならないと、みんなが骨身にしみて知っている」ということを具体的なエピソードをあげて示していく部分はきびしい迫力に満ちている。
 日本人の英語に関する3編もなかなか示唆に富んでいる。とくに英語的な「ロジカル」であることと日本語のなかで「論理的」であることの違いを説明した最後の「新文章読本」は役に立つ。
 この本には、この著者には珍しく個人的な過去の出来事や追想がところどころに書かれている。とくに少年時代の満州の話は印象が深い。「下り坂」の時代を生きている日本人に対し、「個人として生きるにはどうすべきか」を考え提案する著者の思想には、こうした自らの困難な経験が点景のようにちりばめられ、奥行きをつくっているのだと思う。

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紙の本神の子どもたちはみな踊る

2001/01/16 23:34

作者の転換点を示す傑作

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 このすぐれた連作小説は、前作「スプートニクの恋人」に比べるとはっきりと進歩ないし変化のあとが見て取れる。文体からは過剰だった形容詞や比喩の贅肉が落ちて、すっきり読みやすくなっている。叙述はすべて三人称だ。
 最初の「UFOが釧路に降りる」を読んだ時点では、例によって大事な女性(配偶者)が謎の理由で失踪を遂げ、そのかわりに奇妙な女性二人組と遭遇するという、いつものパターンが展開されていて「またかよ」と思わずにはいられなかった。しかし、妻とはあっさり正式に離婚してしまうし、新しい女性とは「結合できない」ので、これまでの小説とは明瞭に異なり、失われた自分の半身を探す物語とは切れていることがわかる。かわりに提示されるのは、TVニュースで映し出された地震後の惨状のような、日常の奥底に内包された亀裂の断面である。
 それにつづく別々の5つの物語はそれぞれ独自の不思議な後味を残す。どの話の中でも地震は遠くに起きた・しかし自分にかすかに関係するはずの破壊や危機の象徴である。暗示的なシンボルが説明抜きで投げ出され、物語がまさに始まりそうな予感を見せるところで唐突に終了してしまうという点では、村上春樹の短編はまるで日本の昔話のようでもある。
 また、最後の「蜂蜜パイ」では珍しく作者の分身を思わせる小説家が登場する(西宮出身で早稲田大学出身という固有名詞が語られる)。プロットはある意味で陳腐な三角関係で、なおかつ結末も、この作者にしては例外的なほど妙に甘い。しかし、小説の中に別の童話のストーリー生成が劇中劇のごとくからんで、対位法的な効果を生むテクニックなどは非常にうまい。
 この作者にとって、「ねじまき鳥クロニクル」はある意味で、それまで膨張しつづけた『物語』の到達点だったと思われる。その後、「アンダーグラウンド」や「約束された場所」などのジャーナリスティックな仕事を通して、社会との“コミットメント”の位置づけと小説への結び付けを模索していたにちがいない。
 個人的には、「アイロンのある風景」「タイランド」「かえるくん、東京を救う」が気に入った。短編小説として、いずれも文章・ストーリーともに見事な出来映えである上に、通して読んだときの明暗・緩急の交替が、良い音楽のリズムのような快感を与えてくれる点が素晴らしい。傑作だと思う。

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紙の本飛ぶ教室

2001/01/27 23:32

小説の価値をそこなう翻訳

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 有名な少年小説で、期待して読んだ。たしかに悪くない。前書きも、結末も、この作家の真情と信条にあふれていてとても素敵だ。しかし、何だこの翻訳は! とてもまともな現代語ではない、いや、日本語にすらなっていない。「それより彼は、手紙をひらくときは、舞台げいこがすんでから、寄宿舎の庭を歩くか、人気のないピアノ室にいって、一人になりたいと思いました。」これが東大名誉教授で独文学者の書く文章だろうか。少年達の会話もひどいし、そもそもかなと漢字の使い分けもひどく鈍感だ。本来はとても面白い小説のはずなのだが、この翻訳のせいで、かなり持ち味がそこなわれてしまった。読むにしても、この講談社青い鳥文庫版は決して選んではいけない。

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