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先月(2017年6月)

KASHIBAさんのレビュー一覧

投稿者:KASHIBA

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本夜陰譚

2002/03/28 21:17

ふろむ・ざ・だーく・さいど

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日本推理作家協会賞受賞第1作。広済堂・カッパの異形シリーズ他の書き下ろしアンソロジーに収録されたホラーを中心に編まれた「闇」の作品集。「永遠の森」が軌道上の美の楽・園を舞台にした柔らかなSunny Sideの作品集であったのに対し、こちらは飽くまでも、Dark Sideの勅撰呪歌集。そこが、街角であれ、住いであれ、水辺であれ、座敷であれ、オフィスであれ、舞台であれ、吹雪の中であれ、湯煙の向こうであれ、人の在るところ、夜の帳は密かに降り、その奥へ迷える魂を包み込む。果して、古来、太陽であった筈の「おんな」たちは、「誰が悪いのでもない」という自省と諦観の底から呻きと溜め息をもらす。その居場所を「陰」という。その時間を「夜」という。肉温の扉の向こうから作者のB面が騙る九つの夜の詩。そのほの昏さは、読者を選び、癒しを笑う。以下、ミニコメ。

 「夜陰譚」無機質に憧れちりちりと刻む夢。変化の果てに分相応の報い。滅びすら許されない紛い物の心。美の残酷、無垢なる嗜虐。夜の果てに明るい地獄。飛べない女を覆う、救いようのないダークファンタジー。痛たたた。
 「つぐない」ふとした同情心に歯車の狂った親切が襲いかかる。虐げられ歪められたココロが取材というの名の卑しい好奇心を呑み込み暴走する。女ストーカーの闇を活写した日常系ホラー。これはスガヒロエの「黒い家」。結構、楽しんで書いてそうなのが怖い。
 「蟷螂の月」魚臭いバイストンウエルの上に、漆黒は鎌形に切り取られる。嗤う月、蟷螂の血族が嵌まる水辺の狂気。女陰に巣食う自我は、弁護側の証人。体温を纏った水の魔の、これも救われないモノローグ。
 「贈り物」恋人からの贈り物は人魚の鱗。そして夜毎訪れる品定めの囁き。選ばれる悦びに浸った女は、封印を逆転する。ラスト1頁の予想を裏切る展開が凄い。貪欲さでオンナに勝る生き物はいない。たとえ想像の中でさえ。
 「和服継承」艶。和装佳人の一人語りは、色狂いの伯母の記憶を再生する。着物に秘められた色欲の引き金。抑圧が解放に転じる一瞬、心と肉襞は飛翔する。和服を愛する作者ならではのエロチズム。抑えた筆で、匂い立つエロスを余すところなく描いた文句なしの傑作。ごちそうさまでした。よろしおあがりやす。
 「白い手」仕事で育まれた女同士の友情。創作の楽神をかき立てた手は、堕天使の翼へと変容する。働く女性の応援歌が、ウエディングベルの下で一転、白い闇に包まれる。堂々たる小説。語りはこうありたい。
 「桜湯道成寺」若い頃から囲われ者だった主人公が、一瞬の春に狂い咲く。嫉妬の焔、舞台の桜。鐘に恨みは数々ござる、花のほかにはまつばかり。放たれた思いは母の囁きに消えにける。桜色の騙し絵。お見事でございます。
 「雪音」ネットの自然食販売で実績を上げる孤独な女経営者が都会の雪を重たげに見つめる時、髪の長い女は現われる。しんとした雪音に封じ込められた心の軋み。浄化の刻は静謐に溶ける。ややステロタイプながらも純粋故に心を歪ませ、視野狭窄の中であがく主人公の描写が巧み。クライマックスは無音の音を聞かせる魔術師スガヒロエの面目躍如たるものがある。
 「美人の湯」どこにでもある「美人の湯」で、どこにでもいる「美人」が笑う。ほらほら、そこに作者が立っている。底意地の悪いボーナストラック。独白の明るさが、全編を覆う闇を落す心地の良い上がり湯、といった風情の小品。

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紙の本五人姉妹

2002/03/28 21:14

SF魂、参る!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 書き下ろし作1編を含む最新SF短篇集。実に「SF、SF」したスガヒロエ・ワールドが満喫できる1冊。ダークサイドの「夜陰譚」とセットで読めば、これで貴方もスガヒロエ通。以下、ミニコメ。

 「五人姉妹」表題作。とある製薬会社が人体実験を美談に演出する陰で、一人の娘と彼女の胎(はら)違いのクローン姉妹4人とが出会い、語らい、悟り、別れる。神に挑む壮大な実験を家族のドラマに封じ込めた逸品。父への愛という胎盤が繋ぐ魂の煉獄に涙する。
 「ホールド・ミー・タイト」書き下ろし作品。VRテーマのキャリア・ウーマン純愛物語。一瞬、女性誌にでも書かれた作品かと見紛う「ロンバケ」もの。一途で今更恋愛に本気になれないと思っているマドモワゼル・トランタン、おせっかいなバーテン、そして、ちょっとボンヤリとしたデュラックの海のように広い年下の後輩。これぞ、勝利の方程式。
 「KAIGOの夜」<大患>後の脱管理世界の断章。<介護されるロボット>という発想の妙で引き付け、最後に払い腰をかけるアイデア・ストーリー。クライマックスの独白の詠唱は、ひたすら怖い。
 「お代は見てのお帰り」「偉大なる父」をもってしまった息子は、自分の息子に何を伝えるのか? 博物館惑星が、計算された笑いと狂騒と驚愕のアンサンブルで満たされる時、選択は迫られる。芸人科学者という設定の勝利。一種のリドル・ストーリーではあるが、答は出ている。だから、胸キュンが募る。どこまでもイタリア映画の猥雑さを纏った異色作。
 「夜を駆けるドギー」人類にとって最古で最良の友が科学の力で再現される時、一人の悪意は都市伝説となってささやかな<愛情>を蹂躪していく。覆面の下から誇りをかけて無音の闘いに挑むサイバー・エリート。静謐な電網を熱い魂は駆け、個とシステムの卑しき企みは、友情の前に崩れ去る。スガヒロエ、ネットおたくに挑戦! 巧い、巧すぎる。プラモデル、コミケとおたく道の極北を作中で極めてきた作者が<2ちゃんねる>の世界を活写しつつ、友情と友愛の物語をものにした。
 「秋祭り」進化した農法、進化した作物、そして進化しない人間。記号化された歓喜と喧騒の中を、一番大切なものを求め女は走る。「いのり」は「みのり」。里の秋。一本気で古風な日本農業SF。ちょっと、翻訳してアメリカ人の感想を聞いてみたい。
 「賎の小田巻」大衆演劇の女形に殉じた老役者の意地。残酷な時が仕掛ける老醜の罠。父の魂が、人ならざるものものの手により甦る夜、息子の目に映る人の誇りと芸の華。昔を今になすよしもがな。これは凄い。このまま「博物館惑星」ものに仕立てる事ができる芸術テーマSF。レトロと科学の融合、父と子の葛藤、緊張感溢れる展開、これは21世紀の「鬼の詩」。傑作。
 「箱の中の猫」近くて遠い、遠すぎる彼。軌道のどこかで、ゆっくりと心は試され、歪んだ時空に、恋人たちは流転する。猫は生きているか? 愛は生きているか? 非SF読者向けに諄諄とSF的恋愛を語ったある愛の詩。なんとも強烈に「2001夜物語」の世界。
 「子供の領分」閉ざされた空間、限られた配役、単調な毎日、アイデンティティーを求める少年の心は内なる声に導かれ、寒い朝に驚愕は敵とともに訪れる。ああ、僕は役に立つ人間なのだろうか? 「学者」「女王」「大佐」「バレリーナ」多彩で極端な性格の子供たちが印象的な「成長小説」。かつて子供だった大人にとって、とても痛い作品。最後の一文も決まっている。

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