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レビューアーランキング
先月(2017年8月)

とわさんのレビュー一覧

投稿者:とわ

8 件中 1 件~ 8 件を表示

ふかかいないきもの

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「蟲」…。見える者と見えない者のある,ヒトとは在り方の異なる生命。
限りなく原始の生命に近いそれらは時にヒトに災いをなすこともあるが,彼らとて皆,ただそれぞれがあるようにあるだけ。
逃れらるものからは,知恵あるヒトが逃れればいい。蟲師とは,はるか古来からその術を探してきた者達のこと。
これは「蟲」と「ヒト」との世をつなぐ隻眼の蟲師・ギンコの物語。

時に切なく時に背筋が寒くなる,時代背景すら判然としない画風も,お話も超独特。でもかっこいいSFちっくな話じゃありません。いちばん近いのは「遠野物語」でしょうか。本書で描かれているのは、「蟲」の話ではありますが、同時に「ヒトが抱える業(ごう)」の話でもあるような気がします。

現在第三巻まで出ていますが、三巻を読んで第一巻を見直してみるとまた感慨深いものがあると思いますので、ぜひどうぞ。ちなみにギンコは「銀蟲」と書くのです。

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紙の本屍鬼 上巻

2000/12/02 00:16

やさしい恐怖

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 ハードカバーしかなかったころに買いました。上下巻あわせて5000円近く。ためらった結果、上巻だけ買ったのがいけませんでした。
 夜中に読み始めたものの、もう一気読み。揚げ句明け方までまんじりともできず…開店を待って、書店へ走ったものでした。トイレに行くのが怖いと感じたのは、久しぶりのことでした。

 ものすごく怖いのですが、とても切ないお話です。最も愛する者たちが、その姿、その声のまま、自分を連れに来たら…あなたならどうしますか? 彼らを拒むだけでなく、『殺せ』と言われたら?

 悪いことは言いません。お読みになるなら、必ず上下巻そろえてお買い求めください。ページを開いたら…もう、後戻りできませんよ。

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疾風怒涛コミック!!

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 もともと中国文学好きで、安能務版(講談社刊)は高校時代すでに読んでましたが、フジリュー版『封神演義』は、まさに目からウロコ! 安能版のお気楽な太公望を、さらに破天荒かつ究極の能天気に仕立て上げ、『封神ワールド』をあっというまに若者の間に広めたのは、ひとえにこの人でありましょう。
 何より驚いたのは、類のないデザインセンスでした。とうてい『マトモでない』キャラ達を、度肝を抜くイメージで描き出す。ましてあの膨大な数の宝貝(パオペエ)、そしてスープーシャンをはじめとする幻獣達…安能版にも具体的な記述なんかないのに、どうやってあんなもの考えついたんでしょうねえ? 一番笑えるのが申公豹、どう見てもあの人の格好は変(笑)。それに趙公明、雲霄三姉妹…ええ、何も言いますまい。  
 さて、たくさんの人々が出てきますが、みんなとっても魅力的で、とにかく憎めないキャラばかり。ある時は究極能天気、またある時はどシリアス、その緩急は素晴らしく、最後まで目がはなせません。ラストは安能版とは違いますが、太公望らしく、いい意味で予想を裏切ってくれます。
 『百聞は一見に如かず』の価値アリ。ぜひ完読してください!!

 おまけ…太公望の服装(伏義になる前の)、よく見ると胸元に『飛熊(ひしょう)』のネームプレートが描かれていることがあります。飛熊とは太公望の号。ちなみに彼、姓は姜(きょう)、名は尚(しょう)、字は子牙(しが)といい、封神計画発動時72歳ということになっています(作中で時々年寄り呼ばわりされてるのはそのせいです)。こんなところにもフジリューさん、凝ってたんですね。

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死者を診て『生』を知る

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 くれぐれもお間違えなきよう。本書は自殺マニュアルではありませぬ。
 同名の本を集英社が文庫化しました。オドロオドロしいか、怖いもの見たさの印象が強い法医学の世界ですが、これでより多くの方に、気軽に触れていただけるかと思います。

 柳田先生は、この世界の第一人者。書家としてもつとに御高名で、私も一度お会いしたことがあるのですが、大変に穏やかで、やさしい方なのです。
 『日本は死んだあとはどうでもいい国なのである』とはまさに名言。
 現代の日本では、死んだ『モノ』はあっという間に視界から片づけられてしまいます。『不浄の死』からあまりにも隔絶された『清潔な』世界では、人々は自らの生への現実感を喪失し、他人の死に対してきわめて無頓着になるのです。そもそも『死』を見たことがないから『殺してみたかった』などという阿呆なことをほざき、揚げ句実行する馬鹿者が出てくるのでしょう。
 物言わぬ死者に向かい続けてこられた先生。「どうか、どうか自殺は思いとどまっていただきたい」と語っておられます。私も同感です。どうか、殺さないで----不幸な死に方をしないで。
 本書を読んだ皆さまが、『いのち』を大事にしてくださるよう、祈ってやみません。

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紙の本大人袋 7巻セット

2000/11/08 12:20

笑いのツボをすりつぶせ!?

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 最近のギャグマンガは薄味ばっかでつまんな〜〜い。そんなアナタっ、そう、そこのアナタにこの一冊よっ!!
 週刊『ビッグコミックスピリッツ』に連載中の本作。ほとんど4コマなんですが、がつんとパンチ(毒?)の効いた笑いの数々。世に不条理漫画は数あれど、これほど私のツボを押しつぶす----いえ、すりつぶしてくれる作品はめったにありません。中毒度きわめて高し!
 何だかフニャフニャした、思いっきり情けないキャラクター。訳の判らない展開にめまいをおぼえながら、最後にへたり込みそうになり…気がついたらアラ不思議。肩の力が抜けちゃって、何だか元気になってるぞ? ってな感じ。何よりイヤミがないのがいいんですね。
 たとえば『ひねらない』。シドニーオリンピックで、体操選手が大技を決める。「前方不注意 出前転倒 野犬抱え込み2回転ひねり」アナタ、この瞬間を想像できますか!!!!???? また解説者の一言がふるってるんですが、それは…実物を目撃してください。
 ただし、立ち読みは御注意めされよ。思わず店頭で笑い転げて冷たい視線を浴びても一切責任はとれません…ってことで、さっそくbk1で注文しちゃいましょ!

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ほんわりほわほわ

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 人間に追われ家族を失ったときから、長い長い時をずっと一人で生きてきた、寂しい吸血鬼・グレイ。
 人の世界では生きられず、けれどその優しさの故に、人間を憎むこともできない彼を救ったのは、ある夜突然飛び込んできた、一人の少女だった----

 作者はこれがデビュー作。その鮮烈さが忘れられなかった私は、初コミックが出るまでの2年間、掲載誌(Wings)を後生大事にしていたものです。
 夜空に手を伸ばし、ティナを想うグレイ。。。空に手を伸ばすのはこの作者が好んで描くモチーフですが、本作に限らず、作者が描く登場人物達は、みんないろんな意味での『弱さ』を抱えています。
 それでも一生懸命に生きてるんですね。 守ってあげたい誰かのために、強くなりたい、と願いながら。
けっして肩ひじ張らない、穏やかなストーリー。読むたびに、『大丈夫、いいんだよ』と赦されているような気がするのです。
 ほかに、光と闇の哀しい出会いを描いた『白夜』、抱腹絶倒の『月下美人』、そしてその後のティナを描く書き下ろし『TWO YEARS AFTER』(これがまたかわいいったら!)など、珠玉の7編を収録した山田作品の入門書ともいえる本作。世の中が苦痛でたまらない、そんなあなたにぜひ読んで欲しい一冊です。 このほんわり感は、一度ふれたら忘れられないこと請け合い!!

 最後に、すべての山田作品に共通する秘密を、こっそりお教えしましょう。コミックのカバーを外してみてください…ほぉらね、これであなたも忘れられなくなったハズ!?

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紙の本ラグナロク 1 黒き獣

2000/10/27 20:17

ほんものの『強さ』

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 『私の名はラグナロク。リロイ・シュヴァルツァーの剣にして、彼の唯一無二の相棒だ』
 もの言う剣・ラグナロクは語る。
 その肉体に大いなる謎を秘めた男・リロイと、彼をめぐる人々の壮絶な生き様を----
 時にグロテスクなまでのド迫力で描かれる激闘の軌跡。心身共に、もうかわいそうなほどボロボロになりながらも、リロイは歯を食いしばっておのれの運命と闘い続ける。読者はただ、哀れみすら欲しないその不屈の瞳の行く末を、驚愕と畏怖をもって追いかけるしかないのだ…。

 単に陰惨なだけになりかねない状況を救うのは、登場人物達の、不屈の仁義とユーモア精神。第1巻から、近年まれに見る筆腕に驚嘆したものでした(これがデビュー作なんですから、まったく恐れ入ります)。圧倒的な臨場感で、難しいはずの一人称を破綻なく読ませてくれますが、何より嬉しいのは、あのテンションをキープしたまま、EXも含めてコンスタントに分厚い新刊を送りだす脅威の速筆!
 EXでは趣向を変えて、登場人物たちのサイドストーリーが描かれます。今後は徐々にリロイの過去も、ということでそれもまた一興。こちらでも伏線張りまくりなんで、ぜひ併せてどうぞ。
 題して『超格闘ファンタジー』----刮目して読め!

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静謐なる悲しみに

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 日本で出版された海外SFとしては最も有名な物語の一つではないでしょうか。長編として初出してから20年以上経た今でも、その素晴らしさは色あせることありません。むしろ、現代の科学が持つ純粋性と、危うい愚かさをリアルに描いて、私を震撼させるのです。
 読者は精神遅滞の主人公・チャーリーの日記を通して、彼の変化を追うことになります。彼とともに、あらたな世界に触れるぞくぞくするような興奮を味わうのも束の間、みずからを待ち受ける真実に気づいたとき、それは瞬時に恐怖に変わるのです。 刻々と迫る『その時』を前に、どれほど「時間を止めて」と願ったことか。しかし無情にも物語は終末にいたり、切なくも静謐な一文で幕を閉じます。
 後にキイスは『ビリー・ミリガン』に代表される多重人格者の物語を数多く発表していますが、私には、それらの原点がここにあるような気がしてなりません。チャーリーの変化は、科学の名を借りてはいますが、みずからを守るための現実逃避による(しかも他者から強制されての)人格の分裂・眠っていた天才的人格の発露・そしてあらたな人格への統合を描いているように思えるのです。
 。。。とまあ、こむずかしいことをつらつら書きましたが、結論は「まだの人はぜったい読んでね!」ってことです。

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