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先月(2017年6月)

DORAさんのレビュー一覧

投稿者:DORA

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本影が行く ホラーSF傑作選

2001/03/31 16:09

未知なるものに相まみえた人々の、緊張、迷い、恐怖

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ホラーと聞くと、血がドバッ、骨がグシャッ、みたいな、いかにも痛そうな、正視に耐えないような描写をついつい連想してしまいがち。だが、この短編集で中心になる恐怖感とは、肉体を破壊されるものではなく、心理的なものだ。それも、いまだかつて誰も目にしたことのない存在と相まみえたときにわき上がる感情——未知なるものへの恐怖だ。

 たとえばジョン・W・キャンベル・ジュニアによる表題作では、南極で探検隊員が発見したエイリアンを蘇生する。ところがこの怪物が自分と異なる生物に乗り移って同化するという性質を持っている。それが逃げ出したため、隊員たちが「隣にいる自分のよく知っている仲間はすでにエイリアンと同化しているのではないか」とパニックに陥る。怪物自体の描写はたしかにグロいが、それよりもこの隊員たちの緊張感のほうが真に迫って見えるのだ。

 ほかにもフリッツ・ライバーの「歴戦の勇士」、キース・ロバーツの「ボールターのカナリア」のような、正体を全然捉えられないけれど何かが確かにそこにいる、というぞくぞくする感覚が味わえる話がいい。また、ジャック・ヴァンスの「五つの月が昇るとき」では、異星の幻想的な光景に迷わされるような男の見る幻が魅惑的で、ホラーというより幻想小説か。しかしやはり真打ちは巻末のブライアン・オールディス「唾の樹」。19世紀英国の田舎に現れた異星人を倒そうと孤軍奮闘する青年を描いた物語で、ここに出てくる異星人が家畜を襲う方法というのがどう首をひねっても想像しがたい。ぜひ読んでみて。

 また、各篇の翻訳の調子にも目を見張る。たとえば「唾の樹」ではイギリスらしく格調高くもったいぶった文体、クーンツ作品では現代的な狂った若造のしゃべりらしくスピーディーなキレのいい文、C・A・スミスではおどろおどろな文、というふうに、原著者の持ち味を生かしたそれぞれの文体で読めるのだ。これらの作品のセレクトをし、一人で全作を訳したというのだから、編訳者にはひたすら敬服する。

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奇癖の奥に隠されたストイックな精神

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 この本の特徴といえば、とにかく独創性に満ちた語り。主人公ライオネルが重度の神経系疾患であるトゥーレット症候群患者であるということで、会話は唐突にジョークが挟まれたり連想ゲームのようになってしまったり、いきなり罵倒が入ってしまったりして寸断される。また意味のない数字にこだわってしまったり、目の前の人をちょっとたたいてみたくてしょうがなかったりする。こんな奇癖が物語のあいだじゅう続く。これは書店へ行って立ち読みでもしてみるとわかるが、会話がむちゃくちゃヘンなのだ。その「ヘンさ」になじめない人が手に取ってしまったら、途中で放り出してしまうかもしれない。それもしかたないと思う。そのくらい癖のある表現手法ではある。

 ただ、これに眉をひそめないでほしい。こうした奇癖は表面に現れるだけのことで、その下のライオネルの精神そのものが奇妙なわけではないのだ。一人称で語られる地の部分は至って思慮深くひたむきでストイックで、時に哲学的であったりする。そのギャップに気づくと、トゥーレットの症状がなんだかとても魅力あるものに感じられてくるから不思議だ。

 ライオネルのボスが殺されるところから始まって、死の謎をつきとめようとライオネルが調査にあたることになり、物語が進んでゆく。ニューヨークはブルックリン、その街中で助けもなく、トゥーレット症をおさえつつ、真相をたどってゆけるのか。なぜかゼンドー(禅堂のこと)が登場したりして、妙に無国籍、無彩色なイメージが全体にただよっている。

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紙の本アマンダ

2001/03/31 15:58

スピーディーな逃走と追跡の物語

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 『真夜中の死線』などで評判の実力派作家クラヴァン。この作品はとにかく逃走と追跡の連続だ。

 ニューヨークに暮らす黒人ジャズマン、ルーニー。ある夜、彼が出会った女、キャロル。キャロルをつけ回す不審な男たち。というのが前半のに登場する人物のトライアングルで、結局なぜだかわからないうちにルーニーは不審な男たちから追われるはめになってしまう。ところが、この追跡劇の中心にいるのは、キャロルの娘でたった五歳の少女、アマンダなのだ。彼女はどうして追われなければならないのだろう。

 とにかく場面の転換が息もつかせぬという感じで、かぶりつきで読んでしまう。謎解きを期待して読んでしまうと、肝心の謎の部分がちょっと現実離れしている感があるので異論があるかもしれないが、この話はそれよりもぐいぐいと引っ張られるスピード感をこそ存分に味わいたい。

 また、それぞれのキャラクターがとてもいい。特に娘を追跡者の手に渡すまいとあらゆる知恵を振り絞り、間一髪のところで逃げ続け、追う暗殺者の側が舌を巻くほどのキャロルの行動力と勇気にはとにかく感嘆。この追跡と逃走のゲームの果て、ラストシーンでは思わず涙がこみ上げてくることは確実だろう。各章のタイトルにはジャズナンバーが使われていて、ジャズファンなら楽しめるだろう。『スターダスト』の出てくるシーンが美しく印象に残る。

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