マヒロさんのレビュー一覧
投稿者:マヒロ
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紙の本ごんぎつね
2001/03/25 05:02
罪と償い
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とにかく泣けました。小学校の国語の授業でも習った記憶がありますが、大人になってから改めて読み直すと凄く切なかったです。
一度犯してしまった罪は、永遠に償われることはないのだろうか……。読み終え、そんなことを思いました。自分の想いは簡単には相手に伝わらないし、また、自分も相手の気持ちに気付いてあげられない。そしてやっと気が付いた時には、もう遅い……。うまく言えませんが、そのような永遠に回り続ける人生の縮図のようなものを、この作品の中に見た気がしました。ごんを撃ってしまった兵十は、その後、どんな気持ちで生きていったのかと思うと胸が苦しくなります。
また、黒井健さんの柔らかく繊細な絵が、お話とマッチしていて余計に涙を誘うのです。切ないけれど何度も読み返してみたくなる絵本です。
紙の本裏庭
2001/08/21 22:53
傷は大事に育てる
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自然と治っていく傷もあれば、そうでない傷もあります。特に心の傷は治りにくいものです。そういう傷は心の奥へ奥へと追いやってしまいがちですが、きちんと処置しなければ変に傷跡を残してしまうことになるかもしれないということに、改めて気付かされました。
主人公の照美は両親にとって自分はいらない子なんじゃないかと傷つき、母親の幸江もまた自分の母親(照美の祖母)に愛されなかったという心の傷を持っていて、傷は母親から娘へと連鎖反応のように続いています。父親もまた別の傷を持っていて、家族みんながそれぞれに心を痛めているのにお互いの痛みが分からない……。この物語は、照美の「裏庭」の世界での様々な試練の旅を通して、「自分」と「家庭」の再建をする家族の姿が描かれているように思えました。
そして、現在・過去、現実・裏庭、日本・英国と、作品を作り上げている世界構造が多重で、奥行きを感じる作品でした。児童文学にはあまり見られないような、現実の厳しさや痛み、ドキッとするような怖い描写もあります。なぜか子供に隠しがちな大人(親)の心の弱い部分までも堂々と書かれているところも作品の魅力だと思います。
家の庭と書いて「家庭」なんですよね。植物の一つ一つが庭を造るように、家族の一人一人が造るものが家庭。素敵なことを教わりました。そして、自分の傷ときちんと向き合うこと、傷は大事に育てることの大切さも。
紙の本手ぶくろを買いに
2002/02/18 16:21
雪の冷たさと心の温かさが伝わってくる
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雪の中、子狐が町の帽子屋さんへ手袋を買いに行くかわいいお話ですが、読み終えた時にどうしても笑顔にはなれません。それは、一番最後にあるお母さん狐のつぶやきがとても印象的だからかもしれません。なぜかドキっとさせられる言葉です。
それから首を捻ってしまう箇所があります。お母さん狐が子狐だけを町に行かせたシーンです。お母さん狐は昔、友達と町へ行ってとんだ目にあったことを思い出し、怖くて行きたくないので子狐だけを行かせます。どうして、そんな危険な場所に可愛い息子を一人で行かせたのでしょうか? いくら考えても私には分かりません。子供の成長(自立)のために、危険かもしれないけれど経験させようという母親としての気持ちなのかなとも思いますが、それにしてはやっぱり危険過ぎるんじゃ…と思ってしまいます。それは私が親になったことがないから分からないだけで、母親ってそういうものなのでしょうか。
何かすっきりとしない思いが残るものの、やっぱり何度も読み返したくなる素敵な絵本です。
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