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  3. 山村まひろさんのレビュー一覧

山村まひろさんのレビュー一覧

投稿者:山村まひろ

338 件中 1 件~ 15 件を表示

SFで、ファンタジーで、冒険小説であり、青春モノでもあり・・・

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この表紙と「あの夏、ぼくらは無人島で…。眩しい海、広がる空。永遠の時間の中で流れ続ける音楽。合宿に訪れた光が丘中学校吹奏楽部の少年たちを待つ、壮大な運命とは?」という紹介文から、どんな物語を想像しますか?
 私は、まさかこんな展開が待っているとは思っていませんでした。
********************************************
 唯一の住人が保養所の管理人夫婦という神主島へ、夏休みの合宿にやってきた中学生30人と教師1人。そしてボランティアの大学生、社会人が数名。
 島にやってきて数日後、島を覆うオーロラと闇。
 島は400年の時をさかのぼり、島原の乱の直前、江戸時代初期へとタイムスリップしてしまったのだ。
 キリシタン弾圧に疫病の流行。
 現代人である彼らは島の外に出ることもかなわず、島でのサバイバル生活を余儀なくされる。
 彼らは無事に生き延び、未来へと命をつなぐことができるのか?
********************************************
 管理人夫妻と地元の郷土史研究家は、これから起こるであろう史実と島の歴史を、前もって知ることができたため、島には万全の対策が立てられています。
 管理人夫妻は医師と看護婦の資格を持ち、風力発電装置に図書館の膨大な資料。サーバーにはさまざまな知識がキャッシュとしてのこされ、田畑に果樹園、鶏舎やヤギの準備までが整えられています。
 とは言え、必要最低限のものしかなく、日々消費してゆけば、いずれは尽きてしまうのが目に見えているため、ボランティアとして参加していた元自衛隊員の栗栖、志藤の指揮のもと、自給自足の生活がスタートします。
 このあたりのサバイバルな生活がなかなか読み応えがあっておもしろかったです。
 400年の時をめぐる物語ではありますが、全体の8割以上は最初の1年間を描いており、彼らが最初の1年間をいかに乗り切ったのか、という物語です。
 作者は、日本冒険作家クラブの幹事を長年務めて来られた上、この3月まで放映されていたドラマ『神はサイコロを振らない』の原作者でもあるので、サバイバルな冒険モノとしても、時間テーマモノのSFファンタジーとしても、また青春モノとしても読めるという、2倍も3倍も楽しめる内容になっています。
 吹奏楽部の部員たちは音楽でつながり、嬉しいときにも悲しいときにも彼らには音楽がある、という設定なので、全編、音楽に満ち満ちています。
 章題も曲名で統一されているので、吹奏楽好きの人にもオススメです。
 中学生たちが江戸時代へタイムスリップし、その時代に生きて、やがて彼らの子や孫が江戸の町にとけこんでゆき、受け継がれた命がやがて彼らを生み出す・・・・と考えると、彼らは自分自身の祖先であり、子孫である、という不思議な存在ということになります。
 わあ、わからなくなってきたぞ・・・・。
 読み終わったあともう一度最初のページに戻り、何度もページを繰り、いきつ戻りつしながら、読み直してしまいました。
 無限に続く時間のループを思うと、本当に不思議ですねぇ・・・・。

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紙の本いろはのかるた奉行

2006/02/01 22:14

子どもだけじゃなく、おばちゃん、おっちゃんにもオススメしたい爆笑絵本!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ここのところ、各地でワークショップにライブ紙芝居に、と大活躍の長谷川義史さんの爆笑絵本。
 「いぬもあるけば ぼうにあたる」「はなよりだんご」など、誰もが耳にしたことのある古典かるたの紹介と、それぞれにちなんだ新作かるたの両方が楽しめる、2倍、3倍、楽しいかるた絵本です。
 かるたを紹介してくれる「かるた奉行」のおしゃべりも、長谷川さんの描く、独特のやんちゃな絵も、めちゃめちゃおもろい!
 子どもも面白いやろけど、私は、ぜひ、長谷川さんと同年代(1961年生まれやそうです)の、関西のおばちゃんにオススメしたい!
 なにしろ「うそからでたまこと」のとなりの「うたもうたう ふじたまこと」とか、「げいは みをたすける」のとなりの「けいは みいをたすける」なんて、そこらへんのお子ちゃまごときには理解不能の笑いだもの。
 「オッサン(あら、どないしよう、先生をオッサンよばわりしてしまいましたワ)、何を考えとるねん!」と思わず突っ込んでしまうような強引な新作かるたも続出で、いろは48文字、たっぷり楽しめて、爆笑&脱力は必至。
 顔をしかめてんと、こんな楽しい絵本で気分転換、どないですか?
うたたね通信社 にも遊びに来てね

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紙の本約束

2004/10/16 00:46

涙腺の弱い人は、外では読まないでね。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 大笑いしちゃうので外で読めない本、というのがあるけれど、これは「大泣きしてしまうかもしれないから、外では読めない本」と言えるでしょう。
 涙腺の弱い人は、絶対ダメです。
 おうちでこっそり読んで、一人で、好きなだけ泣いてください。
 泣いたあと、立ち上がって歩いていく主人公たちと一緒に、しっかり生きて行きましょう。

 「バック トゥ ライフ」をテーマにした連作で、ある意味、一種のファンタジーかもしれません。
 さまざまな苦しい状況、辛い人生に陥った人々が再生し、再び、止まっていた時間が動き出す…という物語なわけなので、実際には、もっともっと辛くて苦しいだろし、現実には救いなんてないことがほとんどでしょう。

 そういう現実からすると、これらの作品は「甘い」かもしれません。
 でも、私は現実が重い分、フィクションの世界では「救い」があって欲しい、と思うタイプの人間です。
 物語の中だけでも、甘く、美しく、存在して欲しい、と思っています。

 いろんな苦しいこと、辛いことがあっても、立ち上がって進んでゆく。
 未来には、ささやかだけど「普通のしあわせ」が、きっとある。
 本を読んでいる間だけでも、そう信じていたいから。


 石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』のファンの人より、『1ポンドの悲しみ』や『スローグッドバイ』を読んで「好き」と思ってる人にオススメかも。

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紙の本夜のピクニック

2004/10/16 00:33

歩く、歩く、歩く……いつか、読み手も一緒になって。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。
 どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。 

 甲田貴子と西脇融(とおる)は、異母きょうだい。遠く離れて暮らしていたはずの2人は、同じ高校に入学し、3年で同じクラスになってしまう。 
 
 北高では、修学旅行代わりの鍛錬歩行祭が毎年ある。
 1200人の全校生徒が、80キロの行程を朝の8時から翌朝の8時まで、夜中に数時間の仮眠をはさんで、一日がかりで歩きとおすというものだ。
 前半はクラス毎に、そして後半は自由歩行になっているため、仲の良い者どうしで語らいながら、高校時代の思い出創りに励む。

 今年も、また夜間歩行の日がやってきた。
 貴子と融にとって、高校生活最後の夜間歩行。
 きょうだいがいると知って嬉しかったという貴子。一方、悪びれもせず、好き勝手している甲田母娘に憎しみを覚える融。
 同じクラスになりながら、ひとことも言葉を交わしたことがない2人は、行き違う心を抱えたまま、何も知らないクラスメートたちに囲まれて、歩く。歩く。歩く。

 静かで落ち着いている戸田忍。
 老舗の和菓子屋の娘で和風美人の遊佐美和子。
 クリティカルな毒舌女、後藤梨香。
 ひょうひょうとした梶谷千秋。
 お調子者の高見光一郎。
 融にアタック中の内堀亮子。
 そして、半年前両親とともにアメリカへ渡ったため、歩行祭に参加できなかった榊杏奈。

 歩き続けるクラスメートたちを、ただただ丁寧に描いた物語。
 「いまどきの高校生」という言葉がもたらすイメージとは違う、ある意味、古いタイプの十代の雰囲気が、なんだかせつなくて、読んでいると胸がいっぱいになる。
 私にもあったっけか…こんな学生生活?

 いつの間にか、登場人物のひとりになって、一緒に歩いている気分になってくる。
 足にマメをつくり、片足をひきずりながら…。

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まあくんすきだよ

2004/07/14 23:48

ともだちのひとことが、まあくんを変えた!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1年生のまあくんは、からだは大きいけれど、弱くて、体育がニガテ。
 クラスの男の子からちょっかいを出されて、泣いてしまうことも…。

 クラスにうまくとけこめないまあくんを、入院中のお父さんはとても心配しています。

 ある日、クラスで席替えをすることになったのですが、みんなは「好きな人と座りたい」と言い出します。
 先生は「好きな人がいない人は、並ぶ人がいなくなるよ」と言いましたが、みんなは納得しません。
 それで、とにかくやってみることになったのですが…まあくんが一人、残ってしまいました。

 そのとき、先生は、そして子どもたちは!?

 *************************

 写真絵本です。
 著者が実際に担当したクラスの様子なのでしょうか。

 私も、子どものころは友達ができにくい性質で、似たような状況に陥ったことがあります。
「気の合った友達どうしで班を作る」ということになって、私を含めた3人が余ってしまいました。
 結局、そのときは余った3人で班を作ったんだと思います。
 きちんと覚えていないのは「私には友達がいない」「誰にも必要とされていない」という事実があまりに悲しくて、忘れてしまいたかったからかもしれません。

 おとなになってからも、子供会行事の中で班決めをしたときに、集まった子どもたちの中で、似たようなことが起こったりもしています。
 私はその現場に居なかったのですが、話を聞いただけで胸が痛くなりました。
 
 この絵本のように、うまく行く現実ばかりではありません。
 けれど、この本の中のまあくんが、クラスの友達の影響でどんどん変わっていけたことを、心から嬉しく思います。
 できるものなら、今、この瞬間にも「友達がいない」と苦しんでいる子どもたち全てに、いつか心からの友達ができることを祈って…。



  うたたね通信社 にもお越しくださいね。

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そして、警官は奔る

2004/05/16 04:08

何が正しく、何が間違っているのか。そして武本はどう生きて行くのか。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 『それでも、警官は微笑(わら)う』に続く、武本・潮崎シリーズ第2弾

 閑静な住宅地の一角「一人暮らしの隣家宅のどこからともなく女の子の泣き声が聞こえる」という主婦の届出から、歯科医の三鷹が少女を監禁していたことが判明。

 少女は母親の手から三鷹に売られて監禁されていたことがわかり、三鷹の自宅から押収されたビデオから大掛かりな人身売買組織の存在が疑われる。
 やがて事件は殺人事件へと…。

 国際組織犯罪特別捜査隊から移動になって3ヶ月の武本は、警視庁蒲田署刑事課強行犯係で、異端視される和田とコンビを組まされ事件を追うことに…。

 不法滞在外国人。戸籍を持たない子どもたち。
 生活安全課の刑事・小菅から「羽川のぞみに会え」と教えられた武本。

 そこでは、のぞみと小児科医の辻岡がひっそりと、不法滞在の母親から生まれた戸籍を持たない子供たちを預かるための託児所を開いていた。
 違法であるその行為を見守り、見逃している小菅。

「犯人には自分の犯した罪の重さ、自分の愚かさを嘆かせ、知らしめる。犯人を壊し、苦難と絶望に満ちた人生に変えてやる」と言い切る冷徹な和田と、署内でも有名な温情派の小菅。

 警察官はどうあるべきなのか。何が正しく、何が間違っているのか。そして自分はどう生きて行くのか。
 武本と潮崎は、それぞれのスタンスから事件に関わりながら、真相に迫ってゆくことに…。

 人身売買を罰する法律はないのだそうです。昔ならともかく、今もないなんて…。

 テーマも重いですが、本自体もボリュームがあり文字通り「重い」です。

 でも、どこまでもまっすぐな武本と、彼を「先輩」と呼び慕う潮崎の素直さが、読んでいて気持ちがよく、いつまでも読んでいたいと思いました。

「マンガみたいなキャラクター」という声もありますがドラマ「踊る大走査線」が好きだった人には、かなり面白く読めるのでは?


  読書日記 もよろしく。

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紙の本LAST

2004/02/11 21:44

描かれた物語のその先をは…

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「新境地を期待させる連作集」やそうです。

 さまざまな意味での「LAST」を描いた物語をまとめた作品集で、文字通り死に際を意味する“最期”も含めた7作収録。

 石田作品を読むと、ひとつひとつの文章の美しさみたいなものをいつも感じます。
 広告会社勤務という経歴のせいなのかな?

 何度も読み返したくなるのは、きっとその文章の美しさの成せる技という気がします。
 そして「ラスト」でありながら、物語のその先の先を、思い描かずにはいられない魅力があります。
 切り取られ、描かれた物語のその先にも、また別の物語が腕を広げて待ち受けているような気がするから。


◆ラストライド
サラ金からの借金も相当にふくらんだ小さな製本工場。
取引先の倒産、発注先をしぼるリストラなどで、ここ数週間は仕事もとだえ、万策尽きた社長の修二。
自己破産さえ許さないというローン会社に債権を買い取られ、修二は決断を迫られる。
残された時間は24時間。死ぬか、逃げるか。妻は、娘はどうなる?

◆ラストジョブ
夫が失業。高額のマンションのローンに四苦八苦する妻。
カードローンの残金はふくらみ、わずかなパート収入は焼け石に水。毎日の食費にも事欠く始末。
携帯電話の出会い系サイトのメッセージを読みながら、真弓は…。

◆ラストコール
法律改正と時代の流れ出、街から姿を消し去る寸前のテレクラへ、最後に様子をのぞいておこうと入店した和之。
電話の相手は二十歳のメグミ。15歳のときからテレクラで相手を探して200人以上もの男とつきあってきた、という彼女。
崩壊した家庭、思春期の肥満、残酷ないじめ…そんな過去を持つメグミが、最後に明かした仰天の告白とは!?

◆ラストホーム
大学を出てから二十年近く、数年おきにいさかいを起こしては職場を変わってきた聡。
ついに新しい仕事が見つからない日が訪れた。部屋代も払えず、サラ金の借金もかさみ、ついにホームレスに。
しかし、ホームレスにも縄張りがあり、厳しい現実が…。


 その他『ラストドロー』『ラストシュート』『ラストバトル』。
『小説現代』掲載の作品に書下ろしを加えた全7編収録。


  うたたね通信社にも遊びに来てね。

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紙の本光り降る音

2003/03/19 02:14

静かな夜の森にふりそそぐ、音楽のきらめき

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 子ども向けの絵本が並ぶコーナーの一隅で、この本を見つけたとき、思わず「わあ、かわいい」と口にしていました。
 シンプルなイラストの描かれた白いカバーに、上品な桃色の腰巻が掛かっていました。
 明らかに大人向けのその絵本を、迷わず手にとった私は、作者の名前に目をとめ、一瞬「え?」。
 かんの ゆうこ・文、東儀 秀樹・絵。

 東儀秀樹…って、あの、雅楽の?
 そう、あの、東儀さんだったのです。
 いろんな才能をお持ちの方だなあ、と以前から思っていましたが、なんと今度は絵本の挿絵! 

 その昔、楽器というものがまだなかったころ。静かな静かな森の奥に、きこえない音をきく耳をもった、ふしぎな白うさぎが住んでいました。
 星の秘密のこぼれる音。花の想いのひらく音。風の心のゆれる音…。
 ある夜、きらきら降りそそぐ光とともに、一羽の鳳凰が舞い降りて…。

 雅楽の楽器である「笙」は「鳳笙」とも呼ばれるそうです。
 この物語は、笙という楽器の誕生の物語であり、大切な人を幸せにしてあげたい、と想う気持ちそのものを描いた絵本でもあります。

 とっても素敵な、小さな絵本。
 大切な人にプレゼントしたくなる一冊。

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紙の本きりのなかで

2003/03/02 03:28

どうなるんだ〜〜〜!?

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『あらしのよるに』のシリーズ4巻。

 あらしの夜に、暗闇で出会ってともだちになったヤギのメイとオオカミのガブ。
 今回は、きれいな月を見せてやりたい、と思ったガブのさそいを受けて、メイはオオカミたちのなわばりのすぐそばの「おか」までやってくるのですが、他のオオカミたちに見つかってしまって、大騒ぎ。

 うまそうなヤギがいた! と探しまわるガブの仲間たち。
 食べられちゃったら大変! とメイを逃がそうとするガブ。

 大あわての2匹をおおいかくすように霧がやさしくあたりをつつみ……という物語。
 まるでロミオとジュリエット。
 5巻、6巻はどうなるんだろう?

 まとめて読みたい衝動に駆られながらも、1冊ずつ読み進む私。
 どうなるんだ〜〜!!

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瑠璃の契り

2005/02/21 23:57

冬の狐に、またもや危機が!?

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 魑魅魍魎が跋扈する古美術・骨董の世界に生きる「冬狐堂」こと女旗師・宇佐見陶子の活躍を描く、古美術ミステリー・シリーズの最新刊。

 『狐罠』、 『狐闇』、『緋友禅』、と、次々に陶子を襲う罠や策略。

 今回は、曰くつきの和人形に込められた人形師の「真実」を描いた『倣雛心中』。
 陶子たちが画学生時代に発行した、早世した同窓生のための追悼画集を利用した陰謀を描いた『苦い狐』。
 九州より持ち帰った瑠璃ガラスの切子碗と、カメラマンの横尾硝子の過去を描く『瑠璃の契り』。
 かつて夫であったプロフェサーDの失踪と「生き人形」の秘密を描いた『黒髪のクピド』。
 失明の危険のある眼病を患い、目利きにも支障をきたしながらも、つきすすむ陶子を描いた4編収録。


 雅蘭堂の越名集治はもちろん、博多でカクテルがウリの屋台を出す根岸の他、池尻大橋のバーや、三軒茶屋のビア・バーなど、あいかわらず、他のシリーズの、あんな人や、こんな人が、ゲスト出演していたりして、北森ファンは、思わずニンマリしてしまうはず。

 アクが強すぎて毒気でへこたれそうになることもありますが、個性豊かな登場人物たちの織り成すかけひきのドラマを、アナタもぜひ、ご堪能ください。


  
  うたたね通信社 にもお越しくださいね。

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二つの旅の終わりに

2004/06/17 01:54

50年の時を隔てて語られる2つの物語が、やがてひとつに…

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 英国カーネギー賞、米国プリンツ賞を受賞。

 物語は、1944年9月、ドイツ軍に占領されたオランダに、イギリスの落下傘部隊が舞い降りた日からの数ヶ月を、19歳のヘールトラウの手記として、また、それから50年の時を隔てたオランダでの出来事を、青年・ジェイコブの視点で、それぞれ、交互に描く形で進んで行きます。

 50年の時をつなぐのは、ヘールトラウ。
 オランダ戦線でドイツと戦い、イギリスに帰ることなく亡くなったジェイコブと同じ名を持つの祖父。
 そして、祖父が亡くなったときに居合わせたヘールトラウは、いまや病に倒れ、死んで行こうとしていました。
 最後の最後に、どうしてもジェイコブの妻であったセアラに会いたいと願ったヘールトラウでしたが、セアラもまた年老いて入院中の身。しかたなく、孫のジェイコブが代理でオランダはアムステルダムの町へやってきたのでした。

 アンネ・フランクに恋するジェイコブでしたが、アンネの家を訪れショックを受け、さらに声をかけてきた「少女」が実は「少年」だったことに衝撃を受け、挙句の果てに置き引きに所持金を持ち逃げされる始末。
 言葉もうまく伝わらない旅先で、翻弄され、最悪な気分に陥いるジェイコブ。
 ヘールトラウは、彼に何を話そうとしているのでしょうか?
 交互に描かれるヘールトラウの手記で、徐々に明かされる祖父の過去と真実。


 マジメに物事を考えすぎる性質で、思ったことがすぐ顔に出てしまうジェイコブは、実の両親とは全くうまく行っておらず、祖母と暮らしている、という設定です。
 姉は父親のお気に入り。弟は母親のお気に入り。では、ジェイコブは?

 私自身も「クソマジメ」でクラスメートたちからも「先生のご機嫌取り」などと陰口を叩かれ、そのせいでイヤな想いもしてきたし、なんだかジェイコブのことが他人事とは思えない気がしました。
 この性格で損をしてる、と思うのに、どうしたって、やっぱり変えられないのです。
 そんなこんなで内にこもってしまうジェイコブの心に、ヘールトラウの語る「真実」が、さらに追い討ちをかけます。

 でも、ヘールトラウの娘のテッセル。孫のダーン。ゲイの少年・トン。戦没者墓地で出会った少女・ヒレ。置き引きにあって途方にくれるジェイコブに救いの手を差し伸べてくれたアルマ。
 さまざまな人との出会いが、ジェイコブの気持ちに光を投げかけて、ジェイコブは少しずつ、変わって行きます。
 性格が…というより、考え方にバリエーションを持てるようになった、ということなのかな、と思います。
 人は、そうやって多面的にものごとを見られるようになることで、大人になっていくのかもしれません。

 ヘールトラウ・サイドだけを見ると戦争文学のようですが、ジェイコブ・サイドがメインであることは確かで、これは青春と恋の物語でしょう。
 ミステリ好きな私には、徐々に明かされる「過去の真実」もまた興味深く、面白かったことを書き添えておきます。


  うたたね通信社 にもお越しください。

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紙の本動機

2004/05/15 17:38

読み終えたその後の物語が気になる短編集

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 日本推理作家協会賞短編賞を受賞した『動機』を含む短編集。
 著者の第二作にあたるそうです。

◆一括保管していた警察手帳30冊が金庫から消えた。一括保管を提案した貝瀬は自分の運命をかけて、手帳を持ち出した犯人を追う。タイムリミットは2日間。はたして!?(『動機』)

◆誘いをかけられ抱いた女は女子高生だった。高額な金を要求する彼女の脅迫に逆上した男は思わず女を殺してしまう。服役しシャバに戻った男のもとに、奇妙な電話がかかってくる。
「ある人間を殺して欲しい。あなたなら私の気持ちがわかるはずだ…」と。カサイと名乗るその男は何者?(『逆転の夏』)

◆「女だから」「女のクセに」とつらく当たられながらも男社会の記者たちの中で、必死に働く女性記者・真知子。そんな彼女にメジャー紙から引き抜きの声が…何故!? (『ネタ元』)

◆裁判の真っ最中。居眠りして妻の名を呼び、注目を浴びることになってしまった裁判長の安斎。再婚した若い妻・美和の名を記事に出させるわけにはいかない。あがく安斎の胸にひとつの疑惑が浮かぶ。睡眠薬…。誰が、なんのために?(『密室の人』)

 私にとっては、横山作品3作目。
 『陰の季節』『真相』と読んできて、『動機』。
 3作の中では、この短編集が一番好きかもしれない。
 どの短編もラストに余韻が漂って、読後感が良い。
  
 ミステリーであるけれど、人間ドラマに重点が置かれている。
 短編なのに、一人一人の登場人物がきちんと描きこまれていて、使い捨てられるキャラクターには、なっていないのがスゴイと思う。


  うたたね通信社 にもお越しください。

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紙の本アヒルと鴨のコインロッカー

2004/04/16 22:58

うまい!綺麗!おみごと!

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 主要登場人物は、椎名(僕)、河崎、琴美(わたし)、麗子、ドルジ(ブータン人)、そしてシッポサキマルマリ(猫)。

 現在を語る「椎名」サイドと、2年前を語る「琴美」サイドが交互に描かれていきます。

 大学入学で新しい町に引っ越して来た椎名と、同じアパートに暮らす河崎が出合い、河崎からいきなり書店強盗を持ち掛けられる椎名。
 しかも盗むのは広辞苑、たった1冊。なぜ????

 一方、琴美サイドの中心は、町に連続する「ペット殺し」。
 琴美とドルジは、たまたまペット殺しの犯人たちと接近遭遇してしまい、どんどん危険な状況に追い込まれて行きます。

 2年の時の隔たりの中で、何がどうなって河崎は書店強盗などを思いついたのか?
 現在と過去をつなぐキーパーソン・河崎。
 こんな男、実際にいたら私も琴美同様、すぐに別れただろうけど…なんだか憎めない男だよねぇ。うん、魅力的。
 伊坂さんの描くキャラクターって、どの作品も魅力的な人物がいっぱい出てきます。

 全330ページのうち、150ページくらい読み終わったころ、あ! っと閃きました。
 何がどうなってこうなったのかはわからないけど…これだけは間違いない、というこの作者のトラップ!
 あわてて、最初から読み直してみると…あぁ…なるほど、と思わず納得。
 うまい。綺麗。おみごと。

 あとは、2年間の空白を埋めるべく、どんどん読んでいくのみ。
 ラストの描き方も伊坂さんならでは、という感じがしました。
 けっしてハッピーエンドとは言えないのに、なぜか暗くはなく、むしろ明るい。
 過去の伊坂作品のキャラクターも、思わぬところに登場しているのがファンには嬉しいですよね〜。

 椎名くんがその後どうなったのか、私にはそれがちょこっとだけ気がかりです。
 いつか、他の作品で彼のその後を、こっそり描いてもらえないかな? と期待しつつ、最後のページを閉じました。


  うたたね通信社にもお越しくださいね。

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紙の本レインレイン・ボウ

2004/02/19 00:43

胸をはって歩いていこうよ!

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『月曜日の水玉模様』で主人公を務めた片桐陶子が、再び登場。
 と言っても、今回は陶子さんを含めた9人の女性たちの過去と現在を描いています。
 陶子さんが高校時代にソフトボール部のキャプテンだったことは『月曜日』にも描かれていましたが、今回はそのソフトボール部のチームメイトたちの物語。

 物語は、部員の一人だった「チーズ」こと知寿子の死から始まります。もともと心臓が弱かったという彼女が心不全で亡くなり、卒業後7年たった「今」、部員だった面々がお通夜に顔をそろえ…それぞれが過去を振り返り…。

 高校時代に付き合い始めた初恋の相手と結ばれ、結婚、出産、持ち家をゲットし、幸せに暮らす美久。

 社会人になって3年目。編集者として働く「火の玉娘」陽子。

 園児に「ふくらんでいる」と言われ、体格も性格もゆったりしている保母の佳寿美。

 家を出たい一心で看護学校に進み、外科と内科の混合病院で看護婦として勤める緑。

 仕事も決まらず、かと言って結婚にも逃げられない、中途半端なモラトリアムの生活の中で揺れる、りえ。

 新米管理栄養士として、問題のある派遣先として有名な社員食堂で働くことになった由美子。
 
 この6人に、亡くなったチーズ。
 そのチーズに金魚のフンのように付き従っていたのに、通夜にも告別式にも顔を見せなかった里穂。
 そして、陶子を加えた9人。

 7つの物語に描かれる9人の女たちは、必ずしも「堅い友情」で結ばれていたわけではなく、ある者はある者を疎ましく思っていたり、尊敬はしているけれど苦手に感じていたり、依存していたり、うらやましく思っていたり…。
 さまざまに交錯する想いを、本人の側から一人ずつ語って行き、そして、本人以外の目から見えた「人柄」をも織り交ぜ、丁寧に描かれて行きます。

 一応、日常の謎を描くミステリなので「謎」がちりばめられていますが、どっちかというと謎の部分より「女たちの物語」という感じがしました。
 これは『月曜日』と通じる部分ではないかと思うのですが、なんのかんの言ってもいまだに社会は「男中心」で回っていることとか「無神経な男たち」のこととか、やっぱり女性が読むと、思わぬところで「そうなんだよ!」と感じる部分がたくさん描かれているような気がします。

 専業主婦でいることを多少後ろめたく感じる美久。
 通夜の席から夫にかけた電話のあと、わかってもらえない気持ちをもどかしく思い、涙する美久。
 遊んでばかりいる兄の学費のせいで、勉強ができたのに進学をあきらめねばならなかった緑。
 
 せつない気持ちでいっぱいになるけど、でも胸はって、前を向いて歩いて行く。雨の降ったあとにかかる虹のような、そんな物語。

 ちょこっとだけですが『月曜日』の登場人物たちも登場しています。この作品だけでも十分に堪能できますが、ぜひ、合わせてお読みになることをお薦めします。



うたたね通信社にも遊びに来てね。

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紙の本百人一酒

2004/01/22 23:58

お酒を飲みながら、ゆっくり読むのもいいかもね

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 歌人の俵万智さんが朝日新聞の夕刊に連載していた、お酒にまつわるエッセイをまとめたもの。

 ワタクシ、実は万智さんの本を読むのは初めてでした(^^;)。
 あの有名な『サラダ記念日』でさえ、きちんと全部は目を通していないので、ホントのホントの初めての万智さんです。
 ただ、この連載が新聞に掲載されていたころ、しばらく我が家は朝日新聞を購読していて、何度かエッセイを読んでいたことと、あと「お酒にまつわるエッセイ」ということで、実は勤務先(日本酒のメーカー勤務なの♪)のお酒が紹介された回があるんですよね。
 社内回覧で掲載されたエッセイのコピーが回ってきたりもして…で、今回、とにかく全部読んでみよう! ということになりました。

 3歳の時、親戚が集まった中で皆に夏みかん酒を勧められ、あっちで一口、こっちで一口と呑んでるうちに酔っ払っちゃったハナシから始まり、泡盛、焼酎、日本酒、紹興酒、地ビール、貴腐ワイン、ウイスキー、ドン・ペリ、ロマネ・コンティ、シャトルリューズ、椰子酒、などなど。
 お酒をあまり飲まない私には想像もつかないようなお酒がゾロゾロ登場します。
 一緒に召し上がる酒の肴も豪華で、特色のあるバーや酒屋さんもたくさん紹介されていて、これはお酒の好きな人にはたまらない1冊なのでは?

 お酒の味も歌人の万智さんならではの表現で描かれ、時には短歌もまじえつつ…ということで、お酒を飲みながら、ゆっくり読むのもいいかもね♪

 あと、前からカウンターの中で働いてみたかった、という万智さんのゴールデン街でのアルバイトの日々を綴ったエッセイもあり、笑えるのが、このアルバイトの帰りに他の店で飲んじゃうから、バイト代はあっさり飲み代に消えてしまって赤字になっちゃうんだそうです。
 それでも、カウンターの中にいて、お客さん達とあれこれ話すのが楽しくてアルバイトを続けているのだとか。
 趣味でカウンター嬢。
 究極の酒の愉しみかも。

 
  うたたね通信社にて読書日記、書いてます。

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