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レビューアーランキング
先月(2017年6月)

KON太さんのレビュー一覧

投稿者:KON太

32 件中 1 件~ 15 件を表示

心地よい眠りを僕にもたらすもの

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「僕」が主人公の22編のクールな短編集。
透明感があって、ドロドロしてなくて、人も死なないけれど、ちょっと不思議で、少しだけドキドキして、最後にあれっていうオチもある作品たちである。
「僕」は気づく。毎日同じ時間に家の前を通るハイヒールの足音。それは決まって「僕」の家の前を通りすぎてから道の反対側へ渡って、もと来たほうへ戻っていく。途中で郵便局に立ち寄ったり、雑貨屋で立ち止まったりしながら…(表題作)
牧場主にとって「フロッピー」とは何かおいしいもの、と認識されてしまうようなパタゴニアの田舎町で、それを探す羽目になった「僕」。自転車で5時間かかる電器屋へ向かう途中に、一人の娘と知り合って…(パタゴニアで買えなかったもの)
こういう本は一気に読んでしまうのではなくて、眠る前、布団に入ったひとときに、1日1篇ずつゆっくり味わいながら読んでほしい。
そうして読み終わったあとは目をつぶって、じんわりと余韻を感じながら、心地よい眠りに入っていける小説である。

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紙の本延長戦に入りました

2002/10/03 23:01

わき腹をチョンチョンと突かれています

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 今、この本を読んでいる途中だけど、とてもおもしろくって誰かに伝えたくてたまんなくなったので、こうやって書評を書いています。
 幻冬舎のPR誌「星星峡(せいせいきょう)」2002年9月号に載っていた書評を見て、面白そうだなあと思って買ってみたんだけど、これ予想以上におもしろいっすよ。
 内容的にはユーモアエッセイという部類のスポーツ系に入るんでしょうけど、読んでいるとエッセイというよりも目の前に登場人物がでてきてプレーしているような、そんな物語的要素もあるんじゃないかなぁ。
 それもこれも、この著者の奥田英朗(おくだひでお)が、エッセイの中にちょくちょく想像をまじえて話を続けているってところが原因だな。
 登場人物がどんなプレーをするかというと、例えば……

 初めてサッカーを観戦するというアメリカのジャーナリストが、「PK戦は理解しがたい」と言う。よく聞いてみると、延長戦までがんばって戦った両チームが、あんなジャンケンのような方法で勝者を決めてしまうのが、不思議でしょうがないらしい。
 それを聞いた奥田英朗、これが野球だったらどうだろうと想像をふくらます。
 「言われてみればそうだ。例えばベースボールにおいて、『延長12回を戦ったけど決着がつかなかったのでこれからホームラン競争をして決めまーす』などということになったら観客は黙っていないだろう」。
 そしてこの後、さらに想像がふくらんで、伝統の巨人・阪神戦の優勝を決めるホームラン競争がはじまる。

 わたしはわき腹が弱点なんですけどね、この本はそんなわたしの笑いのツボを突いてくるんですよね。あ、ダメだって、そこはダメ、っていうところをチョンチョンと突かれてしまって、でも、それが逆に快感にかわったりして、もう一度突いてぇ、なんて頼んだりして。
 ああ、もうガマンできない! 続きを読まさせていただきます。

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紙の本モルグ街の殺人事件 改版

2000/11/14 21:16

圧倒!!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 5つの短編は2つに分けられる。ミステリーとホラーとにである。
 しろうと探偵デュパンの名推理が披露される「モルグ街の殺人事件」、「マリー・ロジェの怪事件」、「盗まれた手紙」の3編がミステリー(推理)小説にあたる。
 与えられた条件を余すことなく活用して、唯一求められる真実をつきとめるといういわば現代ミステリーの原則を、この作者エドガー・アラン・ポーが確立したことは言うまでもないだろう。
 そうなのだ。あのシャーロック・ホームズも、ポアロも、メグレ警部も、明智小五郎も、ポーが1841年に「モルグ街の殺人事件」を書いたのがすべての始まりなのである。
 ご存知のとおり、怪盗ルパンのモデルだって、江戸川乱歩のペンネームだって、ポーがこの世に現れなかったらその存在はあり得なかったであろう。
 一方、精神世界の奥深くをがっしりとつかまれるような「落穴と振子」と「早すぎる埋葬」の2編がホラー小説である。
 逃げるすべを失われた吸い込まれるような絶望感に、心と体にのしかかる死への圧迫感が加わり、読む者すべてがめまいと息苦しさに襲われる。
 もう、ここで読むのを止めようと思いながらも、それでも最後に救われるのを望みながら、次々とページを繰り続けてしまうだろうことが想像される。
 そして、いずれも深い心理描写に圧倒されるのだ。
 それはまるで、何もかも見透かれているかのように…。

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先生!話が脱線しています

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ハカセ&サイバラコンビの第5弾。理科、社会、算数、国語と4教科が終わってしまったので、今度は「総合学習」の時間です。
 よく社会科の先生あたりがしてくれた思い出がありますが、「この前、どこどこを歩いていたら、こんなことがあってね……」から始まる雑談は、実際の授業よりもずっとおもしろくて、いつまでも聞いていたいと思っていました。雑談が終わって、「おっと、もうこんな時間だ。さあ、教科書を開いて」なんて先生が言うと、「えー」と生徒から声が上がるような、そんな授業もあったでしょう。
 そういういわゆる脱線をする先生というのは、けっこう生徒に人気があって、この先生の授業だけは真面目にノートを取っていたりして、テストの成績も良かったという人も多いはず。
 この「飛びすぎる教室」は、そんな話好きの先生の脱線部分ばかりを集めたような本になっています。食べ物の話や、幽霊の話や、天使や旅行や宇宙の話まで、様々なことがらをわかりやすく語りかけてくれます。
 タイトルの「飛びすぎる教室」は、ケストナーの名著「飛ぶ教室」からとったそうです。あちこち話が飛びすぎるという意味もこめて。

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紙の本バールのようなもの

2002/07/23 12:06

落語に通ずるおもしろ小説集

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 あなたはご存知だろうか。バールのようなもの。ニュースでよく耳にするであろう謎の物体。
「本日未明、××市△△町の宝石店に何者かが忍び込み、中に置いてあった貴金属類、時価数千万円相当が盗まれました。入口のシャッターが【バールのようなもの】でこじ開けられた形跡があり、犯人はここから侵入したものとみられています」
 バールのようなものは、絶対にバールではない。例えば、鬼のような顔、と言ったときのその顔は鬼なのだろうか、いや、違うであろう。たくあんのような味、と言った場合のその食べ物はたくあんなのか、いや、たくあんではない他の何かであろう。すなわち、ニュースのアナウンサーが言う【バールのようなもの】とは、バールとは違う他の何かである。そう考えて男は【バールのようなもの】を探して街をふらつく。

 あなたはご存知だろうか。みどりの窓口。JRの主要な駅には必ずあるという不思議な空間。
 無愛想な顔をして機械的に仕事をこなす駅員がいて、列に並びながらイライラと自分の順番が来るのを待つ客。やっと自分の番になったと思ったら、そっけない駅員から「満席です」と冷たくあしらわれる。
 そんな様子を2時間もじっと見ていた男(清水義範)がこの小説を書いた。

 以上の2編は、立川志の輔の落語にもなっている話。他10編、あわせて12編のユーモアあふれる短編をどうぞ心ゆくまでご堪能ください。

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ヒトの生態がわかる本

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ユーモア短編集です。
 表題作は、動物を紹介するクイズ形式のテレビ番組で、1週間に1回ぐらいはたいていどこかの局で放映されているもののパロディーです。しかも、今週の特集が「ヒト」だというのだから、読む前から期待がふくらむでしょう。確かに「ヒト」も動物には違いないんだから、実際の番組でも取り上げてみたらおもしろいと思うんですが…「さあ、ヒトはどのように交尾するのでしょうか。次の4つの中からお答えください」なんて問題が出たりして。「では、正解のVTRです」…無理ですね、テレビ番組では。だからこそ、清水義範は小説にしてくれました。読む前から想像するだけでおもしろい。
 「鉄板社文庫・解説目録」は、形態からして小説ではありません。よく本屋さんの文庫の棚の端っこにぶら下がっている文庫の目録、あの段組がそのまんまで57冊の本を紹介しています。タイトルとほんの短い紹介文で次から次へと笑わせてくれます。
 普通の小説に飽き足らなくなったヒトはこの本をゼヒ!!

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人間は笑う葦である

2001/03/10 10:34

息ぬきにアタマのおそーじ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 困るんだなあ、こういう本は。せっかくここまでまっとうに生きてきて、しっかり締めたはずの頭のネジが、この本を読んでるとどんどんゆるんでいく。
 電車の中でニヤニヤしている自分がいて、周りの人に変な人だと思われるから笑うのはやめようという冷静なわたしがいて、それでもどうしてもニヤニヤは止められなくて、読み進めるうちに笑い声まで出そうになって、それをがんばってこらえる。これはつらいですよ。
 ツボを突いてくるんだね。わたしの笑いのツボを、これでもかっていうぐらい。もう堪忍してやぁー、と思っていても、容赦なく畳みかけてくるんだ。緩んだネジが頭からぽろりぽろりと落ちていってしまう。
 意表を突いて、哲学的で、奥さんが怖くて、ピアノが下手で…、何がどう面白いということなんて、言葉で説明なんかできないし、したっておもしろくないからしないけど、ただ無心にこみあげてきてしまう。
 頭を分解して掃除したいひとにオススメですが、電車の中で読むのはオススメできません!

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紙の本大探検記 遙か幻のモンデルカ

2002/07/25 21:06

著者ですら冒険をした錯覚に

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 できるならば、ここに嘘を書きたい。
 著者の清水義範は体力派の作家でありまして、世界の秘境を飛び回り、各地で雄大なる自然と格闘をしている、まさに冒険家としての人生を歩んでいる、先日もアフリカの奥地で瀕死の危機に直面しながらも見事に生還し、その模様を語った冒険記「サバンナの太陽」を刊行したばかりである、なんて。
 この本を読んで思いっきり騙されてみるのがいい。清水義範っていう人はものすごい探検をしているんだなあ、って思って読んでみるといい。本当は、スポーツとは無縁の、ほら吹き作家だなんてことは、この際知らなくていい。椎名誠の隣にこの本が置いてあったんで間違って買ってしまったとしたら、そんな幸せなことはない。
 モンデルカ、とはネス湖のネッシーのような幻の怪獣の名前である。南米のアマゾン奥地に生息するというそのモンデルカを捜す冒険を、ハラハラドキドキしながら味わってもらいたい。そして、世界を征服したような高揚した気分になれば、たとえ書いてあることが嘘であってもいいんじゃないでしょうか。

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紙の本私は作中の人物である

2002/07/21 13:26

小説の限界、あるいは離れ小島?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「私は踏みつぶされてぺしゃんこにひからびたミミズである」から始まる表題作「私は作中の人物である」をはじめとして、10編のユニークな小説を揃えた短編集。
 ぱらぱらっとページをめくってみればすぐわかるこのユニークさ。それをこの書評で伝えるのは至難のわざ。エイ、ヤ、とおいしいところを引っこ抜いてご覧あれ!

パラパラパラ……
「今、あんぽんたんを空揚げにしてます」(魚の名前)
「とろくっせゃあこと言わんといてちょ」(どえりゃあ婿さ)
パラパラパラ……
「入院生活は2ヶ月ですんだ」(全国まずいものマップ)
「畦倉商事株式会社鴨居市水田町寮クイズです」(重箱の隅)
「岩もてガッツンコ アー ソレソレ」(保毛田岩の由来)
パラパラパラ……
「いきり禅スる衾棒を大きく豕いた蟲の入口に苙てた」(文字化けの悦楽)
「お世辞を言ったって嬶アは貸さねえよ」(とねちり)
「頭転(ズッテーン)と去るは引っ栗蛙」(船が州を上へ行く)
「夫は白44と、下辺の家事問題をツメる」(観戦記)
パラパラリ。

 ともかく、小説の限界に挑戦したことは間違いない。小説の空間というものが仮にあるとしたら、その空間の右と左と前と後と上と下にぐいーっと押し広げて、その端っこにできた隙間に、この小説たちは位置づけられるものだと言えそうである。
 この本に拒絶反応を起こさなかったら、あなたは頭のやわらかい人間であると認定されるでしょう(誰に?)。

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紙の本秘湯中の秘湯

2002/07/14 18:24

笑える短編集だ!(断言)

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 もし、どこか秘湯に行ってくつろぎたいなあ、と思ってこの本を買おうか考えているのなら、どうか買うのはやめてください。なぜなら…

「秘湯中の秘湯」という短編で紹介されている温泉は、ちょっとやそっとのことじゃ行くことができないんです。たとえば、北海道にあるといわれている“骨壺温泉”は、土畑川(どたばたがわ)の支流にあって薬栗谷(くすぐりだに)から3時間も登ったところにあるんですから。
「取扱説明書」という短編で説明しているのは、「パララッパの高速立体ミュトレーション」の使い方です。5回続けて言って舌をかまないようにしてください。
「アンケート結果分析」で分析しているのは、株式会社タイデンのトイレ芳香剤「ビックリポン」についてのアンケート結果です。ダサイ商品名です。売れるわけがありません。
「結婚したい女性・百三の条件」と言われて、103個もつくれますか? 主人公の砂川与一は、「34 雪女でないこと」などを含めて103個つくってみるからすごいです。
「ジャポン大衆シャンソン史」は、…あ、これを5回続けて言えばいいのか。さっきその手は使っちゃったなあ…。ともかく、日本の歌をフランス語に訳したものを、もう一度日本語に訳しなおしたという設定の小説です。戦後の「リンゴの唄」から光GENJIの「パラダイス銀河」まで36曲が翻訳されています。清水先生お疲れ様でした。

 そういうわけで、どこへも行かずに家でくつろぎたいなあ、と思っている人には、ぜひとも買っておくことをオススメできる本です。

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紙の本国語入試問題必勝法

2002/07/14 01:48

だからこれは小説なんだってばさぁ

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 言わずもがなの清水義範の代表作である本書は、「吉川英治文学新人賞」を受賞した作品でもある。いわゆる短編集で、「国語入試問題必勝法」は7編ある作品のうちのひとつである。その「国語〜」については、ほかの書評を読んでもらうことにして、ここでは、他の6つの短編を紹介しよう。

「猿蟹合戦とは何か」は、軽妙洒脱の文章でとりこにさせてくれる丸谷才一氏の「忠臣藏とは何か」のパロディである。独特の「さういふものぢゃないだらうか…」というような古い文体なのにとても柔らか味のある文章は、誰でもすぐに真似したくなるものだが、清水氏はこの文体で猿蟹合戦を見事に説いてしまうところがすごい。

「時代食堂の特別料理」は、心にじんわりくるハートフルストーリー。裏道を入った人気のない通りにたたずむ一軒の古びた「時代食堂」。そこで出される特別料理は、その昔ながらの味とともに食べた人のかつての記憶をよみがえらせて、懐かしいあの頃の気分にさせてくれる不思議なものだった。

「靄の中の終章」は、ボケ老人が主人公の恐ろしくもやるせない話。自分が奇妙な行動をとっていることに気づかない老人は、最終的には意識が混濁して薄暗いもやの中で終焉を迎える…。

「ブガロンチョのルノワール風マルケロ酒煮」は、ミニ情報満載の料理の作り方(レシピ)の小説。愉快におしゃべりしているうちに、おいしそうな料理が出来上がっていく料理番組のようなもので、一度作ってみたくなるほどだ。しかし、材料は架空の珍品ばかりだから、食材屋さんに行って「ブガロンチョをください」と言うと恥をかくことになる。

「いわゆるひとつのトータル的長嶋節」は、エッセイ風の長嶋茂雄論。解説者としての長嶋の言動を他の解説者との対比で際立たせる。また、もしも長嶋茂雄が学校の先生だったら、ワイドショーのコメンテーターだったら、と空想して、彼が言いそうなことが書いてあるからおもしろい。

「人間の風景」は、4人の老人が書いた素人のリレー小説を、作家のはしくれが読んでいるという設定の小説である。元八百屋の青木さんは書くのに困り、元警察官の佐藤さんは供述調書風になってしまい、元新聞記者の新美さんはやっぱり新聞記事のようになってしまう。これぞ、パスティーシュ(文体模倣)小説家の真価発揮というところだ。

 そんなバラエティ豊かな作品たち。清水義範の入門編に最適である。そして、どれもこれも小説なんだってことをどうぞお忘れなく。

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日本って幸せな国だなぁとあらためて思う

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 テレビで何回かは見た顔である。数学者という肩書きがあることは聞いていたし、ジャグリングという大道芸をやっているのも見たことがあった。それから、日本語を流暢に話すし、他にも何ヶ国語かをしゃべれるというのも知っていた。けれど、そこまでだ。テレビにちょっとだけ映るだけでは知りえない本当のピーター・フランクルが、この本を読んでよくわかった。
 東欧のハンガリーで生まれた彼が、共産主義の世界でどう考え、どう生きてきたのか。ユダヤ人としての彼の苦悩とそれをとりまく人々の対応。さらには、数学といかにして付き合ってきたか、そして、11カ国語をどのようにして話せるようになってきたのか。
 無知なボクとしては、ひとつひとつ心に響くことばかり。わずか数十年前のことなのに、東欧では思ったことが言えなかったり、人種による差別を受けたりしていたのかと。いや、今でもどこでもあるのだろうけれど、東西冷戦時代が終わり、ベルリンの壁が崩壊していった歴史が、この本でようやく実感できた気がする。
 そんな歴史も、モヤを通してぼーっと見ているような日本では、なんだか遠い国の悲惨な話でしかないんだけれど、苦難の道のりを経て、日本で活躍するピーター・フランクルにとっては、日本はとても居心地のいい国と感じているに違いない。そう考えて、あらためてボクは、何気なく暮らしているこの日本が、他の国から見たら幸せな国だなぁとそう気づいたのであった。

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紙の本茶色い部屋の謎

2001/09/16 21:20

ミステリーファンに贈る超贋作派ミステリー

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 ユーモアミステリーの短編10篇と、ホラー、SFの短編をそれぞれ1篇ずつ加えた「お読み得」な一冊。
 表題作は、古今東西の名作ミステリーに登場するあの名探偵たちが一同に集結(?)して、茶色い部屋で起きた密室殺人の解決に挑む。ところが、みんな雰囲気だけが似ているだけで、推理のほうは全然はかどらない。清水流の笑える設定がにくらしい。
 「また盗まれた手紙」は、ミステリーの元祖・エドガー・アラン・ポーの名作「盗まれた手紙」のパロディ。今回はどこに手紙が隠されているのか。ポーに負けず劣らずのアイデアに感嘆するか、破笑するか…。
 「幽霊探偵と全裸美女」も設定はユニークだ。三途の川の手前で探偵事務所を開いている探偵に、殺人事件に巻き込まれた全裸の美女が、どうして殺されたのかわからない、と依頼に来る話。死神をワトソン役に加えて、下界へと事件の真相を探りに行く。
 清水義範が10年にわたって書き連ねた珍品を集めた作品たち。これを読まずしてミステリーは語れない!?

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紙の本ザ・対決

2001/08/14 17:44

笑いっこなしの真剣勝負

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いや、笑ってしまいました。だいたい設定からしておかしいですよ。桃太郎と金太郎にどうやって優劣をつけるっていうんですか。コーヒーと茶の対決の勝敗はどうやって決めるんだろうって、目次を見た時点から不思議に思いますよ。
 そのオープニングを飾るのが、ソクラテスvs.釈迦。荘厳な音楽が響きそうな雰囲気の中で、視界が世界を飛翔する場面は、なんだか身の引きしまるような感じがしてたんですけどね。それが最後の最後で見事に落とされましたよ。肩から力が抜けました。わたしはこういうの好きです。
 ラーメンvs.カレーは、一転して生活感あふれる設定。おせち料理にも飽きたころの正月の4日に、どっちを食べようかともめる夫婦の話。うーん、自分ならどっちだろう、と夫婦の言い分を読みながら楽しく悩める好試合。
 大岡越前守vs.遠山の金さんは時代劇対決。前半は緻密な時代考証をしつつ、二人のひととなりをまじめに解説しているものの、後半になれば、やっぱりそこは清水義範。出ますよ、三方一両損と桜吹雪が。
 いやいや、でも笑いすぎないように。対決する本人たちにしてみれば、雌雄を決する大舞台なんですから…。でも、笑える。

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紙の本だれも知らない小さな国

2001/03/10 10:43

だれにも教えちゃいけないないしょの話

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 みんなは、そんなやつなんかいない、って言うんだけど、ボクは知っているんだ。
 そいつは、とてもすばしっこくて、ふつうの人には見えないんだ。でも、そっと小川のそばのフキの葉っぱをめくってみると、さささっとうごく黒いかげが見えることがある。それが、コロボックルっていう小人なんだ。
 こぼしさま、ってボクは呼んでいる。「おきあがりこぼし」のこぼしさ。「小法師」って書くんだって村のおばあちゃんが教えてくれた。
 こぼしさまは、自分たちを守ってくれる味方を探していたんだ。そして、その味方にボクが選ばれたってわけさ。なぜボクかというと、ボクは欲がなくて、やさしくて、口がかたいからさ。こぼしさまは小さいから、悪い人間につかまってしまったら、おもしろがって人間の見せものになってしまう。だから、そういう人から守ってくれる味方として、ボクはえらばれたのさ。
 あ、いけない。こぼしさまのことをしゃべってはいけなかったんだ。
 このことは、ほかの人には言わないでね。ぜったいないしょにしておいてね。
 こぼしさまとボクと君だけのひみつだからね。

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