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先月(2017年8月)

森谷志津子さんのレビュー一覧

投稿者:森谷志津子

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本ロンドン・デイズ

2000/09/16 14:16

数々の異文化体験エッセイを読んだが、欧米一辺倒党にも日本万歳党にも、どちらにも入党していない、初めての体験記だ。外国に興味のあるすべての人へ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 演劇ファンでもない、鴻上ファンでもない私が、この本で鴻上ファンになりました。イギリスの演劇学校に留学して、と聞くと、演劇人向け、のような気がしてしまうが、これは海外留学を目指すすべての人に読んでもらいたい本だ。
 『ドン・キホーテのロンドン』も同じ演劇学校滞在中の週刊誌の連載をまとめたものだが、これは同時進行で書いているのと、週刊誌連載のため、軽く読みやすく仕上がっている。『ロンドン・デイズ』は、この留学を振り返って書いた書き下ろし。そこには、後からのゆっくりと醸し出される思索や感慨も書かれている。もうちょっと重い、かつ考えさせる本になっている。
 これまでの海外体験は旅行者の視点や、学者(学識者であり、あまり生活経験はない人達)の視点で書かれていることが多かった。そして結局「欧米万歳」党か、「日本万歳」国粋党になってしまう。
 鴻上氏の本は、日本人がじっくり1年間、腰を据えて留学した記録としては、史上初、と言っていいほど、欧米一辺倒でもなく、国粋主義的でもなく、バランスの取れた価値観を持った著者による留学記、と言える。イギリスの学校でも、良い人もいれば、嫌なヤツもいる。とても良い友人もできたが、どうしても友達になれない人もいた。
 そんなこと当たり前!と思うけど、現地で友人の一人もできないで帰国して、「留学経験有り」なんて威張っている人の多いこと。
 鴻上氏が人の心のことをじっくり考えている演出家だからなのか、40歳近くなってから留学したからなのか?生活体験が豊富にあるからなのか、よく理由はわからない。
 しかし、こうした普通の市民の感覚があり、なおかつ人の心の奥底まで知りたい、という飽くなき欲求もあり、そして、自分の考え、体験を表現する力もある、この著者による、留学記を読めたことを幸せに思う。

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