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akiyamaさんのレビュー一覧

投稿者:akiyama

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紙の本ルール

2002/04/21 12:17

人の集団を支えるもの

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 『ルール』の舞台は、終戦間近のフィリピンの戦場である。ただし、作者が焦点をあてているのは「個人」。戦時中の小説を進んで読むことがない私でもページをめくる手が止まらなかったのは、過酷な時代を生きた人たちが持つ価値観が、どのように変化しどこに辿り着くのか、その人間性から目がはなせなかったからである。

 輸送任務のためルソン島山岳地帯を行軍する一小隊の日本軍将兵。ゲリラの奇襲で本隊からはぐれた三人は、やがて弾薬や食糧が尽き果てる事態に陥り、飢餓線上をも彷徨する。すでに傷病に苦しむ彼らの前に、追い討ちをかける極限情況である。多くの手記を参考に執筆された作者であるから、作中の描写は事実からかけ離れたものではないのであろう。とはいうものの、暖衣飽食の時代に生まれた私にとっては、想像を絶する凄まじい光景がそこにあった。

 小隊の軍曹が口にする「惨め」という言葉の響きには、当時の名誉ある道(敵弾による死)を断たれかけている者の絶望的な虚脱感が表れていた。戦傷の痛みを上回る胸の内の痛みや無念さが、あまりにも悲しく伝わってくるひと言である。そんな絶望の極致においてもなお、彼らは戦わなければならなかった。人間性を失わずに生きるための「ルール」と。

 本書は、識見ある作者の眼差しにより、透徹した文体で徐々に読み手の心を揺さぶっていく。毅然たる精神で最後まで己を貫いた三人の日本兵。彼らが互いに助け合う姿には胸を打たれる。水面下では、やりきれない哀哭が響き渡る。その声音が文面から伝播し、こらえきれずにむせび泣いた。
 全身に波打つ余韻は、読んだ者だけに与えられる特権である。有意義な読書の時を与えてくれた作者に、心底感謝をした。

 著者の作品を手にとったことが無い人にも、作家 古処誠二が紡ぎだす独特の世界を、ぜひとも味わっていただきたい。魂がふるえる人間ドラマを。

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