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レビューアーランキング
先月(2017年6月)

ごんだぬきさんのレビュー一覧

投稿者:ごんだぬき

33 件中 1 件~ 15 件を表示

東洋文庫ガイドブック

2002/10/11 21:21

本の大海原を冒険しよう

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 東洋文庫……というと一部のマニアか学者向けというイメージが、何故かつきまとっている感がある。理由は第一に「単価が高い」、第二に「発行部数が少ない」といったところだろうか。たいていの学校の図書館にはズラリと並んでいて圧巻、壮観、快感?といったところなのだが、個人的に所蔵するとなると財力も保管場所の問題も生じてきて厄介である。いきおい、古本の世話になることも多く(言い訳するなら、絶版本も多いのです)、こよなく東洋文庫を愛する身としては苦悩ばかりが募る。
 そんな東洋文庫ファンに向けて、「これを見て飢えを癒せ」とばかりにガイドブックが発売された。嬉しくて嬉しくて端から説明やエッセイを舐めるように繰り返し読んでいたのだが……やがて、気づいた。
 絶版が多い。値段が高い。欲しいモノ全部を揃えれば、家からたたき出される(既に家中本だらけで家人の非難炸裂中)云々。欲しい欲しいと思いながら、泣く泣くガイドブックを眺め、嘆息し、遠い目をし、思いを馳せる。
 行く先は図書の大海。果てしなき知識の宝庫。
 「飢え」は癒されるどころかいや増すばかり。
 しかし、とここで頭を冷やして考えてみる。知識への飽くなき憧れと欲望は、決して悪いものではない。コツコツお金をためて集めていくのも楽しみの一つ。
 そして、何より世の中にはこんなに多くの興味深い書物が出版されているのだ、と思うだけでも幸せではないか。東洋の素晴らしさ、知識の奥深さ、先達(研究者の方々)の有りがたさ……しみじみ、じっくり味わうことができる。
 だから、今宵もガイドブックを眺めつつ眠りの大海へ漕ぎ出そう。
 素晴らしき知識の大海原へ。

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紙の本月の裏側

2002/08/16 19:31

誰が侵入者なのか?

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 読み終えて、切なくなった。名作「地球最後の男」や「呪われた町」などを
思い出した。かつて「ピープル」シリーズへのオマージュとして、泣くほど
素晴らしい名作を執筆された恩田陸氏だが、今回もやはり一筋縄ではいかなかった。
 立場を替えれば「誰」が「侵入者」なのか。「誰」が平和を乱しているのか。
 それは見方によって、見事に反転する。まるでフィルムのネガのように。
 それでいて、ひたひたと忍び寄る静かな恐怖。恐怖であるはずなのに、押し寄せてくるのは不思議な安堵感。交錯する自身の、今までの人生、想い。
 自分は自分なのか……。
 自我の確立は何歳になろうとも、非常に複雑で難解だ。
 この小説は一見、侵略モノテーマに見えながら、その実、深く深く「人間」を描いている。思春期の若者だけではなく、あらゆる世代にも共通するであろう、「孤独」と「疎外感」。そして「共同意識」。
 日本人による日本人社会を描いた作品とも言えるかもしれない。
 アメリカ人にはこの静かな情趣を描くのは、ちょっと難しいかもしれない。
 
 小野不由美氏の「屍鬼」と比べて読むと、それぞれの作品の違いが見えてきて、とても面白く感じた。「似て非なるもの」である。ただし、どちらも素晴らしい作品だという共通点を除けば。

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紙の本怪奇礼讃

2004/08/09 21:49

正統派怪奇小説

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 内臓が飛び出したり、血しぶきが飛ぶスプラッタ・ホラーも嫌いではない。だが、毎回そういったものばかり読んでいると、食傷気味になるのも確かである。こってりしたステーキばかり食べていれば、あっさりした和食が恋しくなるように。
 上質のテラー(ホラーにあらず)傑作集である。短いものばかりで読みやすいが、軽く読み流すにはあまりにも惜しい。一文字一文字丁寧に味わい、読み終えた後の余韻まで楽しみたい。
 イギリスの一昔前の怪奇小説は、かくもムードに満ちた、ひそやかなる恐怖を描いていたのか。
 M・R・ジェイムズがお好きな方なら、迷わず買って損はないだろう。今後もこういった良書(良翻訳)がもっともっと出版されてほしい。

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華麗な翻訳文体は必見の価値あり

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 正直、定価が高かったので購入には随分と悩んだ。しかし以前から欲しくてたまらなかった作品である。挿絵も素晴らしい。原文主義(なるべく翻訳に頼らない)という妙なこだわりもあり、本屋の書棚を何度も往復してしまった。意を決して文に目を通してみると……即決で購入していた。
 というのも、理由がある。翻訳モノの善し悪しは当然ながら、翻訳者において決定される。須永氏の他の書物も持っている身としては信頼してはいるものの、やはり江戸時代のこの面白さ、如何に現代語訳されているのかがネックであった。結論はいたって単純。心配ご無用、よけいな杞憂であった。
 何よりも素直に嬉しかったのが、翻訳の文体である。まるまる「今風」の現代語訳にはなっておらず、非常に流麗且つ雰囲気のある文章で、訳しておられるのだ。そのため江戸時代のこの種の文学の雰囲気をより生き生きと描き出しており、読者としてもついつい自分がそのまま原文を読んでいるかのような錯覚まで覚えてしまうという特典つき。いやはや、我が購入に一点の悔いなし、と読み終えて叫んでしまった。勿論、本書の内容も非常に面白くわくわくさせられたのだが。
 古典文学好きだけではなく、文楽や歌舞伎など古典芸能好きにもお勧め。むろん、幻想系がご趣味の方にも。
 日本語の美しさを再認識させられた一冊である。

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時代の流れ、ホラーの流れ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 bk1から届いたその日のうちに徹夜して読んでしまった。連載中も毎回全てに目を通していたのだが、改めてこうして通して読むと壮観である。
 「ホラー」というものの流れが、そして「ホラー」に対する世間の意識変化、書き手、読み手たち。全てが一望できる。何よりも心強いのは、筆者の一貫した、揺らぐことのない信念である。安請け合いもなければ、ヨイショもない。時には絶賛あり、時には厳しい言葉あり、時には疑問を提示し、時には苦言を呈する。
 だからこそ、一読者として批評家としての筆者に信頼を置くことができよう。
 無論、読者の感想が筆者と一致する必要はない。筆者の発言によって生じた議論さえ、ホラー活性化の一手段であるかのように思うのは、私のうがちすぎなのだろうか?
 

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鏡の国の孫悟空 西遊補

2002/08/11 20:42

理知的な幻想文学

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 素晴らしい小説が翻訳された。原文は非常に難解で、種種雑多で博学な知識が所狭しと散りばめられている。それだけでも読み解くにはつらいのに、作者はわざと意図的に複雑な構造を作り上げている。あたかも「迷宮」のように。まるで、読者に「どうだ、俺の考えていることが全部分かるか」と謎かけをしているかの如き作品である。
 それだけに、日本語訳がここまで読みやすく楽しく身近になるとは、正直想像できなかった。一読して驚愕した。初心者には優しく、普通に楽しめるように、またマニア?には納得のいくように、時にはニヤリとさせることのできる内容。
 惜しむらくは東洋文庫だけに、もっと注釈を多くつけてほしかった。そうすれば、興味ある読者に対してもっともっと親切になったのではないだろうか。何気ない一文に見えるそこかしこに、深い洞察と博い知識が秘められているのだから、ぜひともそれらを注釈として紹介してほしかった。返す返すも残念である。
 もし再版することがあれば、その辺り、考慮していただけないでしょうかね、平凡社さん?

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精霊海流

2004/04/06 18:34

心が穏やかになる癒しの世界

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 還ってきた最愛のシリーズに、思わず本屋で歓喜の叫びを上げそうになってしまった。
 早見氏の文章は繊細で美しく、そして切ない。中でも、この水淵季里シリーズは特に美しい。著者の愛情を一身に受けているかの如く、素晴らしいまでに輝いているように感じられてならない。
 主人公の「異質」であるが故の苦しみ、哀しみ、疎外感。どこか現実味を持たない、「精霊」のような彼女の心は、あまりに脆くて繊細だ。にもかかわらず、彼女の芯は強く、折れそうでいて決して折れない。その強さは「他人のため」だけに用いられる……というのが、読んでいて胸を締め付けられる。
 彼女を信じ、愛し、守る周囲の人々(神も含む)の優しさは無条件の好意だ。それらすべてが絡み合って、静かな感動を導いていく。
 今回は著書が永住した沖縄が半分の舞台となる。沖縄に魅せられた著者ならではの描き方が、また心地よい。沖縄の空気、におい、息づかいが伝わってくるのだ。豊かな沖縄、悲劇を秘めた沖縄、そこで繰り広げられる友情。のほほんとした沖縄の人々の、あたたかくて広い心に癒されるのは、我々が忘れたものを思い出させてくれるからかもしれない。
 一文字一文字が愛おしく、一頁一頁進むのが嬉しくもあり惜しくもあった。読後、疲れていた心が凪いだ海のように穏やかな気持ちに包まれていた。

 読んでない人は、ぜひ。

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紙の本美亜へ贈る真珠

2003/08/28 23:35

愛は時を超越する

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 SFというと、ハードなものからソフトなものまで様々だが、この小説は
そのどちらをも兼ね備えている。SF的な設定はハードであり、通のSFファン
に薦めても何ら恥じることはない。だが同時に、SFに全く興味のない人間
にも、薦めて損はない。何故なら、叙情的で美しいも切ない、素晴らしい
恋愛小説でもあるからだ。

 時間SFは多くの場合、恋愛が関わってくる。この小説に収められた短編も
全てが時間SFと恋愛でくくられる。しかし、骨格が同じであっても、アイデア
もシチュエーションも物語も、どれもが異なっていて、決して飽きることは
ない。むしろ、いかに差異のある物語を著者が紡いでいくのか、それを
楽しみながら読むことさえ可能である。

 正直、泣ける。
 胸に突き刺さってくる、何とも言いがたい、味わい深い恋愛小説は、
「大人」の恋愛であるようにも思える。
 時間という大きな障害があるからこそ、愛する者たちの想いは深く
切なく、哀しく、そして、美しい。
 ハッピーエンドにせよ、そうでないにせよ。
 愛にはいろいろな形があり、いろいろな結末がある。
 そのすべてが、尊く、愛おしい。

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紙の本クトゥルー神話事典 新訂

2003/01/29 16:18

クトゥルー初心者にも玄人にも

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 かつて同じタイトルのハードカバーが出版され、その際にはひどく感激したものである。当時は今ほどホラーは市民権を得ておらず、「クトゥルー、何それ?」といった扱いを受けたものだ。それだけにこのような事典が出たというのは、奇跡のように思えたものだ。
 さて、こちらは内容も刷新されてデータも増え、さらに入手しやすいよう、文庫版になっている。勿論、出版予告の時からわくわくして待ち、発売されるやいなや迷わず購入した。
 読んで感心した。
 マニアにも納得できる内容でありながら、初心者や入門者にとっても使いやすい、分かりやすい丁寧な作りになっていたからである。
 年表や作家録、作品紹介に単語辞典……まさにいたれりつくせりである。
 ただ、一つ残念なのは内容紹介の部分。作品を未読の人間が読めば、ともすれば「ネタばれ」になってしまう危険が。よほど注意して読まねばならない。
 とはいえ、最近は分厚い国産クトゥルー・アンソロジー「秘神界」なども出版され、ますますクトゥルーが一般に広まっていく(と願いたい)可能性が高く、そういった意味からも、ぜひこの事典を強く推薦したい。
 クトゥルーに興味のある人も、「クトゥルーって何?」という人も。一度は手に取り、その独特の世界観を味わってほしい。
 そして、是非とも闇の素晴らしさを、根元的な恐怖を、形容しがたい存在を、身近に感じて欲しい。

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紙の本謎のクィン氏

2003/01/23 19:09

果たしてクィン氏とは何者なのか

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アガサ・クリスティ作品で最も素晴らしいと思うものをあげよ。

 ……かつて友人にそう尋ねられた時、私は一も二もなくこの
「クィン氏」をあげていた。
 もちろん、謎ときが中心の短編集である。しかし、この作品の
特徴は実は謎解きではない。一番の中心は、タイトルそのままの、
「謎の人物であるクィン氏」である。
 彼はどこからともなく主人公で、探偵役である男の前に現れる。
クィン氏が現れる条件はほぼ決まっている。
 未解決事件があったとき。かつてその事件にまつわる死者がいた
場合。
 何よりも不思議なのは、クィン氏がどこから現れてどこへ去って
いくのか、ということ。
 時には断崖絶壁の切り立った場所から不意に現れ、不意に消失する。
海へ向かった足跡だけを残して。
 更に彼は「当事者しか知り得ない」事実を知っている。そう、まるで
死者から伝言を受けたかのように。
 クィン氏の存在は神秘的で、全てが謎に包まれている。
 一つだけはっきりしているのは、彼は、現在も生きている人々が
何らかの未解決事件によって苦しんでいるのを救いに現れる、という
ことだけだ。
 まさに、生と死の狭間にたゆとう存在として。
 
 ミステリファンの友人の間では、あまり話題にならないこの作品だが、
私は何よりも好きである。幻想的なだけでなく、ミステリとしても
楽しめ、なおかつ短い枚数の中で人間の心情をくっきりと浮き彫りに
描いている。素晴らしい作品だと思う。
 もっともっと紹介され、もっともっと読まれてもよい作品だと思うの
だが……。 

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緻密な考証から見るお岩さん伝承

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 単純に子供の頃から「お岩さん」伝承に興味があった。怖くて哀しくて、「女性」であるがゆえの悲劇。それが、どのような伝承から始まり、普遍化していったか、伝説化していったかが、一流の研究者の手によって見事にひもとかれている。
 第一章「女はなぜ幽霊になるのか」では、非常に新鮮な観点から描かれており、まさに目から鱗が落ちる心境。それを発端として、お岩さんと伊右衛門の関係、そのほかの人物たちにまで細やかな視点で変化を描いていく。
 そうか、彼らはこのような理由で、このような背景を持って存在し、今も現代に生き残ってきたのか。説得力のある証拠が次々と並べられ、比較されていく。
 筆記文学の観点と劇曲の観点、さらには噂としての観点からの論述はこなれていて、とても読みやすく興味深い。
 日本という国になぜ「お岩さん」が登場し、今も存在しつづけているのか。
 この本を読めばきっとそれが理解できるだろう。
 ちなみに最後に京極夏彦氏の「嗤う伊右衛門」に対する記述もあり、それもまた学者からの視点として楽しい趣向である。
 私個人は「小兵」の存在に強烈に惹きつけられた。なぜなら、著者の言葉を借りれば「忠義、あるいは敵討という絶対命題に最後まで執着する」人物だからである。伊右衛門が不義不忠の士ならば、彼に殺されお岩と共に張り付けられ殺害される小仏小兵。彼は「私怨」を越えた「モラル」を守る男である。凄絶な復讐劇に彩られながらも、惨殺された被害者の一人小兵だけは復讐に加担しない。それは何故か……。というのも、実は本書にきちんと記されている。
 とにかく謎解きみたいで、知的好奇心刺激されまくりの素晴らしい一冊です。

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紙の本椿山課長の七日間

2002/09/24 18:15

無償の癒し

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 新聞連載時、毎日一番最初に読むほど大好きだった、心優しい小説がやっと一冊になった。家族全員ではまり、毎日「明日はどうなるのかな」と話し合うほどで、しょっちゅう涙させられた作品である。
 主役級の三人にかぎらず、出てくる人々はみんな「優しい」。夫を裏切った妻も、その不倫相手ですら「良心の呵責」に号泣する。無垢な子供たちの友情、夫婦の情、疑似親子の深い義理人情……、そのどれもが胸をつく。
 勿論、あまりにも「いい人」すぎるきらいは否めない。善人すぎる、うまくいきすぎる、いろいろな反論もあるだろう。けれど、作者はそれら全てを見越した上で、おそらくは「無償の愛」「無償の癒し」を意図したのではないだろうか。
 だからこそ、これほどまでに胸に迫る、痛くて切なくて優しくて暖かい、いい話が誕生したのだ。普段読書すると、無意識に「お気に入り」「感情移入する」キャラができてくるものなのだが、この作品に限っては、誰もが平等に感情移入できてしまった。どの人にもある「生きる」「生きてきた」証。
 私は生きている、それだけで、これほどまでに有り難いのだと実感した。
 ただ、どうしても納得できなかったのは、ラスト。あそこまで善人で一本気で素晴らしい、椿山課長の父親が、どうして……。冥界のお役所に殴り込みに行きたい。けれど、爽やかな彼ら二人の背中らは、きっと、単純なハッピーエンドでは得られない、多くの考えることを教えてくれているのかもしれない。
 老若男女問わず、あらゆる世代に読んで欲しい一冊。
 とりあえず、私は友人と祖父母にプレゼントします。

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青春の一瞬のきらめき、硝子細工のような脆さ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 あまりに繊細な小説で、読んだ時はくらくらして、呼吸困難になりそうだった。息をとめて読んでいた。呼吸すらこの小説の繊細な美しさを損なうような気がしていたからだと思う。
 触れると粉々になりそうな、そんな微妙なぎりぎりの美しさ、脆く儚いが故の強さ、優しさ。
 私の拙い文ではとても表現できない。下手に表現しようとしても、この作品の持つ繊細さを傷つけるだけなような気がしてならないからだ。
 もっと若い時期に、悩める思春期にこの小説に出会っていたら、私は一も二もなくはまっていたに違いない。主人公に、そして彼女を取り巻く人々に、それはそれは感情移入していただろう。
 珠玉の一冊。

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紙の本中国小説史入門

2002/08/11 21:35

初心者にも独学できる入門書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 まず、著者が竹田先生ということだけで、迷わず手に取った一冊。先生のご著書は何冊が拝読していて、どれもとても分かりやすく興味深かったからである。
 さて、本書は「中国小説」について非常に平易に、かみ砕いて説明されている。それぞれの時代の特徴から、有名作品の一部を抜粋して翻訳し、それらの内容に関して歴史的、思想的、文学的価値などを説明している。「中国小説って何?」という人でも、大学生の基本知識としても、容易に独学できる細部にまで心配りされた本であり、教科書としても使用できるようになっている。有名な中国小説を読まなくとも、この一冊に目を通しただけで大体のことは把握できてしまうようになっている。もちろん、興味を持った人たちが独自に読み進めることができるように、多くの参考文献が挙げられており、これもまた嬉しい附録である。後ろには索引や年表までついており、親切なことこの上もない。
 ただ問題は唐代伝奇までであること。後は非常にざっとしか述べられていない。個人的には、宋代、明代、清代…と非常に面白い小説が多いと思うので、これらの時代についても記述していただきたかった。
 続編?の予定はないのだろうか。心より期待する次第。
 

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当事者しか知り得ない歴史的資料

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中国に長く存在しつづけた宦官。清朝で最後となった宦官の、
最後の生き残りである主人公の記憶を辿りながら本書は
タイトル通りの「秘聞」を語っていく。内部で生活していた人物、
それも宦官独特の生活でなければ分からない数々は、現在は
失われたものだけに、非常に興味深く資料性も高い。
 ただ、監訳者あとがきにもあるように、原書はもっと複雑で
分量も多いらしい。日本語訳はかなり取捨選択されているらしく、
「あーッ、訳されていない部分に、どんな内容がっ」と気になって
しまう。宦官の世界は特殊であるが故に、こういった資料性の
ある書物が翻訳出版されることは、非常に喜ばしい。それだけに、
二冊とか三冊とか分冊で全訳できなかったのか、と残念に思って
しまう。
 とはいえ、この一冊だけでも充分に面白い。どんな食べ物か、
どんなトイレなのか、といった宮中の生活から、清朝崩壊後の
宦官たちの苦難の日々、満州王朝(中国では「偽満州」と呼ばれる)
での宦官の生活など、当事者以外では知り得ない情報が満載で
ある。
 歴史上、中国において宦官の果たした役割は非常に大きい。
王朝を滅ぼすこともあれば、鄭和や司馬遷などの文化人、武人も
多い。宦官抜きにして中国の歴史は語れない。中国に興味のある
方にはぜひともお勧めしたい一冊である。

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