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松本楽志さんのレビュー一覧

投稿者:松本楽志

5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本細工は流々

2000/07/28 17:26

機械トリックに花束を

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 おなじみの探偵であるトビーとジョージの二人組による本格ミステリ。「猿来たりなば」「自殺の殺人」に続く第3弾である。そもそもの発表順とは違う順序で紹介が進んでいる作家だから、シリーズ順に読む必要は全くない。
 相変わらず見事なのは登場人物の造形である。これでもかといわんばかりにキャラクタの性格を際だたせているのだが、それは単に物語の厚みを増しているだけではなく、そこに手がかりを隠しているのである。この手腕は見事としか言いようがない。
 そして、その独特なキャラクタの中に埋没した「謎」は、このシリーズの持ち味のとおり、一見愚鈍なジョージによって解決へと導かれるのである。この作品では「事実」ではなく「犯人は何を事実だと思っているか」が重要なポイントとなっている。盲点をつく解決に読者はしてやられたと思うに違いない。
 ところで、個人的にこの作品で面白かったのは、古典ミステリに頻出する、いわゆる「機械トリック」が登場するにも関わらず、それらが単なる舞台装飾に使われている点である。探偵役たちもこの奇妙な状態にはじめは戸惑うものの、さほど重視することがなく、物語は展開していってしまう。あげくのはてに……と、これ以上はネタばらしになるので止めておこう。とにかく、今まで、古典ミステリにおいて花形だった機械トリック、実に惨めな扱いを受けているのであった。

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紙の本パワー・オフ

2000/07/26 10:50

説明の上手さ、展開の巧みさ

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 井上夢人は「説明上手」である。この作品、コンピュータの基礎的な知識がないと話が成立しないのだが、登場人物に全くの素人を用意し、その素人に別の登場人物が懇切丁寧に必要な知識を解説するシーンを差し挟むことによって、知識がない読者にも楽しめる作品にしあがっているのだ。いくら説明シーンがあるからといってその説明が下手だったり、あるいは物語から浮き上がってしまっていれば意味がないが、その点もまったく問題がない。作者は最低限の知識を読者に与えつつ、物語を展開させる。そこに無理は全く感じられないのである。そして、その知識を下敷きにした展開も刺激的で、ページを繰る手が止められない。ドリルが手のひらに突き刺さるという衝撃的なシーンで始まるこの物語だが、作者の計算が隅々まで張り巡らされた作品であると言えよう。

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紙の本蛇を踏む

2000/07/19 16:03

満たされた世界

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 たとえば表題作。蛇を踏んだ。蛇は母になって私のアパートで暮らし始めた……。女性の一人称なのに、物語は淡々とつづられる。主人公の感情は蛇という小さな穴から、ひたひたと漏れている。流れ出した内面が、この世界を形作っているから、蛇が母親になったということ自体を主人公はなんとなく受け入れてしまう。
 世界と同化した、主体。それは続く「消える」にも見られる。「消える」では、冒頭の「このごろよく消える」という一文から、すでに世界が語り手で満たされてしまっていことがわかる。奇妙なルールにしばられたマンション、その世界においては「消える」ことなど、たいした意味を持たない。
 「惜夜記」ではついに世界はバラバラに分裂し、「夜」を主題とした断章が語られる。しかし、その世界にはやはり語り手の内面そのものが満ちている。
 川上弘美のうまさは、われわれ読者の居る世界にそれが似ているかどうかに関わらず、作られた世界にまったく揺らぎがないことだ。満たされた世界は、どこまでいっても語り手である。だから読んでいて安心できるのである。

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紙の本少年たちの密室

2000/10/28 20:23

周到な謎解きと現実問題との距離感

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 タイトルの〈密室〉という言葉は閉鎖状況を示しているだけであり、いわゆる不可能犯罪の意味ではない。大地震で地下駐車場に閉じこめられた少年たちとその担任教師、そこで起きた殺人……これは、実に周到に作られたミステリである。

 謎のキモである〈被害者を殺すことができた人間は誰か?〉を見つけだす検証部分はなかなかに面白い。ここから、〈暗闇でどうして被害者の位置が分かったのか?〉〈被害者が犯人が近づくのに気づかなかった/あるいは気づいていたとして、抵抗しなかったのはなぜか?〉という分割された謎が提示される。この謎を支えるのがシチュエーションの周到さである。一例を挙げれば、光の存在として、カメラのフラッシュやライターなどが、検証に使われるのだが、これらはミステリ的ロジックの検証過程のために無理矢理持ち出されたものではなく、それらを登場人物が持っている理由がちゃんとあるのだ。実にうまい。

 さらに、閉じこめられた六人の性格や人間関係がミステリの謎にうまく作用している部分も評価に値する。これら登場人物の性格は「いじめ問題」を扱ううえでも必要なピースであるがゆえに、ミステリ的な謎−解決の関係の大きな目くらましになっている。このあたり、とても新人の2作目とは思えない書きぶりで、純粋に感心した。

 ロジックを積み上げて真相に至る、というよりも周到に設定されたある一つの事実に気がつくかどうか、というタイプの謎解きなので、その真相に至る部分に検証過程で見せたような、シチュエーションからロジックとして導かれる展開がそこに絡めてあるとなお良かったのだが、これは贅沢というものかも知れない。

 ただ、テーマでもある「いじめ」について、作者が本当に「いじめ」について読者に考えさせたいのだったら、作品として成功と言っていいのかどうか。書評子自身が「いじめ」についての書籍を読んだことがないせいかも知れないが、取り上げ方に中途半端な印象を受けた。本当にそちらにウェイトを起きたいなら、その事件が起こった社会背景や死んでいったものたちの気持ちなどの描写が弱いし、〈謎のために奉仕するシチュエーションの周到さ〉が「現実問題としてのいじめ」を考えさえるには、逆に不自然に思えてしまったのである。もっとも、このあたり読者のバランス感覚との相性の問題なのかも知れないが。

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紙の本マザーグースは殺人鵞鳥

2000/07/19 16:38

鵞鳥が歌う理由

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 英国のわらべ歌であるマザーグース(正確にはナーサリーライム)は、イギリス人の生活に深く関わっており、慣用句や決り文句など、その由来を歌にもつ言い回しは非常に多い。そして、当然のようにその歌自体を主題に掲げたミステリもまた多い。
 なぜ、ミステリにたびたび使われるかというと、マザーグースのもつ不条理さ、がその理由であろう。言葉遊びの結果、不条理に羅列された文章に、なんらかの意味を与え、物語の主題に用いる手法は、一見無関係な手がかりから真相を作り出すミステリの構造と相似であるように思えるのである。
 そんなマザーグースミステリとその周辺にまつわるエッセイがこの本には収められている。マニアだけあって、普通に読めばマザーグースと関係あるとは気がつかないミステリも紹介されており、実に楽しい。未読の本が読みたくなるだけではなく、一度読んだ本でも再読したくなるに違いない。
 さすがに、マザーグースだけだと、枚数が足りなかったようで、後半にはミステリにおける住宅事情なんかも併録されているのだが、こちらは軽すぎてやや食い足りない感じはするものの、コラムニストとして、ミステリマニアとして、の山口雅也の語りは十分楽しめるエッセイ集である。

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