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がくしさんのレビュー一覧

投稿者:がくし

6 件中 1 件~ 6 件を表示

執拗などんでん返しに翻弄される

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 たとえば戦前くらい昔の小説になると、もう別の世界を舞台にした小説であるかのような気になって楽しく読むことが出来るのだが、昭和の後期くらい時代が近い小説だと、言葉や生活習慣が微妙に違うことに妙な感覚を憶えてしまうことがよくある。この作品で言えば、女性の言葉遣いとかも、いま書かれたものとして読むと相当ヘンである。そう考えると、この時期の小説はもともとハンデを背負っているといえなくない。しかし、それを差し引いてもこの作品はきわめて面白い。
 保険会社の創始者の孫、連続放火事件を追う刑事、非番の日だというのに恋人の元を抜け出しこっそりとパトロールに回る消防士。三つの視点で物語は語られる作品だが、とにかくめまぐるしい。互いに探り合う三人の駆け引き、そして、過去の画家焼死事件がそれに絡んで実にトリッキーな展開を見せる。
 そして、ラストのどんでん返し——、かなりページが残っている状態で物語が終わりそうになったかと思うとさらに裏が現れてくる。中には無理のある展開もあるが、この中にあってはあまり気にならず、一気に読まされてしまう。これは、加点法で評価した方が面白いタイプのミステリだ。
 元版は1984年とそれほど古いものではないが、すでに絶版になって、今回の扶桑社文庫昭和ミステリ秘宝シリーズとして、初めて文庫化されたことになる。良い作品が埋もれるのには、たいした時間を必要としないのだろう。この作品を掘り起こして、再評価の機会を与えてくれた日下三蔵氏に感謝したいと思う。

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紙の本岡山女

2001/03/06 15:58

死者のもつ「壮絶な生」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 タミエは菓子製造を営んでいた宮一の妾だったが、あるとき、宮一が正気を失い、日本刀で彼女の左目をえぐり出す。それ以来、見えない左目は微かな霊力をタミエに与えた。妾という仕事を失ったタミエに、両親は霊視をさせるようになる。彼女のもとには、死者の気配を携えて生者たちが訪れる——。
 この設定がふるっている。タミエは決して宮一を憎んでおらず、ときに宮一を恐れ、ときに、愛おしく思う。宮一もまた、彼女の左の闇のなかで何を考えて潜んでいるのか、わからない。それでも、タミエは死者よりも、生者のほうを怖がりながら、霊視をしなくてはならない。すべてを見透かす能力があるわけではなく、時には何も見えず、時には間違いさえもする。この曖昧な語り手の設定は実に上手い。
 タミエは万能者ではないが故に、死者のもつ「壮絶な生」をそのまま受け止めてしまう。これがこの物語の紬出す、恐ろしさである。死んでなおこの世界にしがみつこうとするその想いが、なによりも恐ろしいのである。舞台となった激動の時代、なにかへ執着しようとして散っていった人間達の残した気配が、作品を読み終えてなお我々の周りを彷徨っている気がしてならない。

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紙の本かめくん

2001/03/06 16:28

かめくんはどこへ消えた?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 かめくんはかめくんではない。
 こんな事を書くと、かめくんがかめくんであると思っている人に叱られてしまうかも知れないが、かめくんは我々がそれを読んでしまった時点かめくんではないのだから、仕方がないのである。
 かめくんというのは北野勇作が、この物語の中で主人公として選んでくれたカメ型ヒューマノイド、通称レプリカメだ。彼はこのレプリカメにかめくんと名前を付けた。
 これが、かわはらくんだったとしたらどうなる?
 かめくんはかわはらくんではない。
 当たり前だ。
 レプリカワハラなど、この作品には登場しない。
 北野勇作の名付けたところのかめくんは、もちろん、レプリカワカミのかわかみくんでもないし、レプリカマイタチのかまいたちくんでもない。
 つまり。
 究極的には、かめくんはかめくんでさえ、ありえない。
 これは当然なのだ。
 かめくんは世界なのである。
 甲羅そのものでありながら、その構造ひとつひとつに無数に存在する。
 それがかめくんだ。
 かめくんはかめくんである、と書くことにより作られる世界こそが、かめくんである。
 だから、かめくんはかめくんではない。
 しかしまあ、この小説は、そんなことを知らなくても面白く読めるのだから、別にどうでもいいではないか。

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紙の本真珠の首飾り

2001/03/06 15:47

中国真珠装飾具殺人事件

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 毎回のことではあるが、中国の役職がいくつか登場し、人間の上下関係がよく分からなくて、混乱してしまった。とくに今回は皇室が出てくるのもあって、システムが最後までわからないままだった。
 とはいえ、引き込まれたら一気に読ませる。「複数の陰謀が交錯して展開がまったく読めない」という筋運びと、関連する些細な登場人物たちまでがいきいきと描かれているところなど、これまでに紹介された作者の作品の備えた魅力が十分に発揮されている。
 落としどころは予想の範囲ではあるけれども、それまでの道行きで読ませるタイプの作品である。それだけに「真珠の首飾り」の隠し場所という(一発ネタめいた)謎ときには嬉しくなってしまった。
 不満を言えば、解説にも書かれているように、シリーズキャラクターであるディー判事の部下たちが登場しないところだろうか。ディー判事が一人で突き進んでいくのは、それはそれで痛快ではあるのだけど。

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紙の本怪の標本

2001/03/06 15:32

不安をかき立てる怪談の手触り

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 怪談とは、我々の言葉の狭間から産まれて、我々の意識の底で、育つ。頭の片隅で、怪異は怪異として育ち、我々は無意識のうちに、それを「語らされる」のだ。
 『怪の標本』で、作者が「語らされた」怪談は、あるときは実話怪談の形を取り、あるときは、きわめて人工的な創作怪談の形を取る。どれも、描かれている事象ひとつは極めて地味である。しかし、それを福澤徹三が語ると、行間からは我々の気持ちを不安にさせる香りが立ち上ってくる。これは福澤徹三が怪異のかたちをちゃんと見極めているからにほかならない。
 とりつかれたように怪異が口をつく「怪の標本」。分断された情景が音によって接続される「雨音」。狂気が現実を浸食し、ついに怪異を生み出すその直前で止められる「受刑者」。予定調和を斧でざっくり切り落とす「四十九日」。電脳の中に息づく生臭い怪異を引きずり出す「訪問者」。
 乾いた文章が怪異を生きながらえさせ、我々の脳にその種を植え付けてくる。それは我々の恐怖を糧に、ゆっくりと成長を始めるだろう。そして、我々はやっと気付くだろう。この福澤徹三という男がきわめて危険な作家なのだということを。

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紙の本黒い仏

2001/01/29 17:30

作者の器用さが裏目に出た作品

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 最近の流行だろうか、異種配合のミステリである。
 しかし、非常に雑な作品であると思う。方向性自体は認められなくはない。異種のネタの使い方そのものにはセンスが感じられる。
 しかし、どちらの部分もきわめて書き急いだ感が拭えないのである。主に「アリバイ崩し」が謎解きの主体になり、捨て石としてのトリックも面白いのだが、そのトリックがその後の展開を支えるだけの重みを持っていないように思えるのだ。
 かといって、配合される別の要素にしてみても、どうも書き込みが足りないように思えてしまう。
 このアンバランスさが無ければ快作になった作品であると思うのだ。どうも、作者の器用さが裏目に出てしまったようである。

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