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先月(2017年6月)

エルブライトさんのレビュー一覧

投稿者:エルブライト

1 件中 1 件~ 1 件を表示

組織のために個が犠牲になる不条理なやくざ社会

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本を読んでの一番の驚きは、著者がヒットマンという言葉から連想するにはるか対極にある、我々堅気と寸分違わぬ、人間であることだ。極道キャリア1年足らず、しかも拳銃を使ったこともない人間が、運命のいたずらとはいえ、ヒットマンに指名されるとは、いかなる小説家であっても描けない、まさに真実のやくざ社会の汚い欲望の犠牲ではないのか。吉野某という組幹部の個人的恨みによって、この事件は起こったわけであるが、組織の命令には絶対服従、そして組織を守るために多くの個が犠牲になるやくざ社会の不条理さによって吉野自身も消されてしまう。トカゲの尻尾切りのような、仕打ちには、いきどおりのない怒りを覚える。トップが責任をとらぬこの国の腐った政官業と同じではないか、これでは。強きをくじき弱きを助けるのが任侠道ではないのか。もはや任侠道などは存在せず、表社会の便利屋と化してしまったのか、やくざは。
 書き物としての面白味も十分あった。 著者の人間としての暖かみ、人を思いやる気持ちが伝わってきた。 またヒットマンに指名されて実行にいたるまでの描写は、できれば逃げたいけれどうらぎることができない心の葛藤が、素直に描かれており共感すら覚えた。
 自分が属していた組織からも、命をねらわれかねぬ状況において、よくぞ生き延び真実を語ってくれた著者の勇気に拍手を送りたい。そして犯した罪をつぐなって、新たな人生を自分自身のために生きることを願わずにはおれない。

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