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  3. 竹井庭水さんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年6月)

竹井庭水さんのレビュー一覧

投稿者:竹井庭水

57 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本クール・キャンデー

2000/11/30 17:57

夏の暑さから一瞬で冬の寒さへ。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 若竹七海に思春期を書かせたらいけませんね(誉め言葉)。世の中に斜に構え、それでいて無防備で傷つきやすい。思わず説教したくなるくらいです。

 14歳の誕生日と夏休み初日を明日に控えた中学生・渚。そんな折り、ストーカーに襲われ重態だった兄嫁が他界し、同時刻にそのストーカーも交通事故で変死。しかもその容疑者として兄・良輔が警察にマークされてしまう。動機十分・アリバイなしの良輔。渚は兄貴の無実を証明し、人生最悪の夏から抜け出せるのか?

 150枚にしては登場人物が15人以上出てきて大騒ぎなんですが、その一人一人をこうやって思い出せるほど印象付けに成功してるのがすごいなぁ。それぞれを印象的なセリフや行動で色分けしてるうちに、田舎町の閉鎖性が浮かび上がってきてみたり。事件の手がかりを与える任務しかない登場人物でも、駒扱いせずに物語内に巧く取りこんでる。宮部みゆき『火車』に通じるかも、というのは言い過ぎか。

 それにしてもこのラストはすごい。たった1ページでサプライズ、たった2行でネガ反転。近年希に見る刹那のどんでん返し、目をしっかり開けて見るべし。おすすめです。

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紙の本ラッシュライフ

2003/02/15 22:29

スクランブル人間交差点

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「夜が好きなんだ」と泥棒は今日も盗みに入った。「救われたい」と青年は信者になった。「あの女のせいだ」と女は不倫相手の妻を殺すことにした。「働きたいんです」と無職の中年は肩を落とした。「金で買えないものはない」と画商はふんぞり返った。泥棒が失態をおかし、青年が神の解体を知り、不倫カップルが車で人を轢き、中年が老犬と拳銃を手に入れ、画商が新幹線に乗ったとき、物語は急速に動き始める。

五つの人生が本人の知らぬところで交錯して干渉して邪魔して手助けして陥れて癒してと、大混乱の人生狂想曲。これに「バラバラ死体が元通りにくっついて歩きだす」という都市伝説が現実になったりしてなんかして、もうエンタテイメント満載。ラストでは全体を包む大仕掛けも明かされて、おなかいっぱいでご馳走様です。

中盤にかけては徐々に絡んでくる程度なんだけど、実は伏線がそこかしこに張られているのが凄い。「この人達絡んでますよー」と見せつけるんではなく、そこで絡んでいたのか!と後で気づかせることで全体像を一気に浮かばせる。この辺が同じ多重人生交錯もの恩田陸『ドミノ』とは違う感じ。巧みな言葉回しでそれぞれの人生も深く面白く描かれているし、これはナイス! 十人十色の人生模様を照らすのはたった一つの太陽。日はまた昇り繰り返していく。

【初出:イノミス】

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紙の本ドミノ

2001/09/15 02:11

オー、マイ、ガーッ!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 その保険会社員は一億円の契約が迫りピリピリしていた、その親子は崖っぷちでオーディションに挑んでいた、その学生達はミステリ連幹事長の椅子を争っていた、その老人は東京駅で道に迷っていた、その男達は東京を爆破しようとしていた…。テンパって駆け回る28人が入り乱れもつれあい、東京駅はパニック状態に…!

 一気読み。めちゃくちゃオモロイ! (絶叫)。関係ないはずの人々が、出会ったり別れたり荷物取り違えたりで干渉しあって、どんどん収拾がつかなくなっていくのが楽しすぎます。紙袋などの小道具や、「8」の字をした東京駅の構造の使い方、なにより28人(!)の見事な書き分けと、見所盛りだくさん。映像化大所望のこれぞドタバタエンターテイメント。倒れるドミノは止まらない、オーマイガッァー!

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メイン・ディッシュ

2001/03/07 18:24

木の葉は森の中に、手がかりは皿の上に

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 この本読むと腹減ります。料理がテーマになってる連作短編なんですが、これが旨そうなのなんの。立ち上る湯気、口当たりと食感、そして脳まで広がる旨み…。まさに五感で描かれた凝りに凝った料理と、凝りに凝ったプロット。こんなお話。

 劇団「紅神楽」は推理劇が売りの小劇団。しかし今度の舞台、脚本家の小杉が煮詰まって、なかなか脚本があがらない。設定はできてるのに動機付けで悩んでるらしい。そこで景気づけに看板女優・紅林ユリエの家で大宴会。ユリエの“同居人”通称ミケさんは凄腕の料理上手。旨い料理を作りながら、小杉の悩みの種をどんどん解きほぐして…。(ステレイジ・テイスト:他九篇)

 ユリエとミケさんが織り成す日常の謎。それと同時に進むは大学時代の仲間の死を追う男。二つが入り乱れてやがて…という連作短編を十分生かしきっているプロット。思わぬ繋がりと思わぬ逆転、過去と現在の友情愛情を織り交ぜて、ラストへ突き進むさまはまさにエキサイティング。両手を挙げて構成勝ち。なんて巧みな。

 もう一つセールスポイントを挙げると、謎が全て料理に隠されているという点。カレー、ラーメン、駅弁、ビール、チャーハンなどなど、大事な鍵は全部この中。この使い方が新鮮。一つ一つの食材がすばらしい変化を起こして料理となる。10篇の短編が織り成す作品、食してみませんか?

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紙の本MAZE

2001/02/19 15:07

出口が見たいから、僕らは迷い続ける。

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 ブルーとホワイトのストライプ、文字が浮かび上がる仕掛け。とにかく装丁がカッコイイのなんの。こんなの誰が作ったんだ、と見てみれば、紋様作製:泡坂妻夫の文字。こんなところでコラボレーションしてるとは。

 「BUSH」「WALL」「HOLE」「DOOR」の4章から成る構成は、ミステリ・ホラー・SFと変幻自在。読めども読めども出口が見えない、まさにプロットの迷路。閉鎖空間のルール作りに長けているのはさすが恩田陸。理詰めの部分はもっともらしく、ホラーの部分は恐ろしく。どのパーツもクオリティが高くて引き込まれっぱなし。あっという間の244P。

 納得できない個所もあれど、疑問を吹き飛ばさんばかりのどんでん返しの連続も高評価。この先の見えないプロットは、不慣れな街をさ迷っている時のあの一種の面白さと似ているのかも。2000年に8冊も本を出した恩田陸の集大成。白と青の世界の中で作者と読者の頭脳戦。迷い込んだら、出られない。

(初出:いのミス)

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サイトデザイン三段跳び

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 既存のHPのデザインを大改造してクールにしてしまおう、という大胆なWebデザイン本がこれ。どこにでも転がってそうな個人ページがはっと目を引くデザインに!とにかくその変貌ぶりには舌を巻くばかり。

 全部で15のサイトをトップページ、構造、写真、ショップの構成などのそれぞれ別の要素に着目して改造していきます。改造の手順の解説にはフォトレタッチや画像の加工(主にPhotoshopを使用)、テーブルタグの組み方やナビゲーション方法の説明もあり、「うちのサイトもこんな感じにしたいけど、どうやったらいいのかわからない」という悩みに完全対応といった形です。

 一冊がデザインの基本、レイアウト、大改造の3つのパートに別れており、まさにWebデザインのホップ・ステップ・ジャンプ。着地する頃には自分のページを変えたくてうずうずすること請け合いです。

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騙し絵の檻

2001/01/22 21:04

推理マシーンvs質問マシーン

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 帯には「戦後の本格ミステリのベストスリーに入るほどの傑作である」という森英俊の弁。解説では法月綸太郎が褒めちぎりまくり。そして日本語訳は『猿来たりなば』などを手がけた中村有希。なんて気になる本なんでしょう。

 16年の服役を終え、仮釈放されたビル・ホルト。不倫相手の女性と私立探偵を殺害した罪での投獄だったが、しかし彼は無実だった。自分を罠に嵌めたやつは誰なのか。容疑者は5人。手がかりは当時の記録と曖昧な証言だけ。復讐の鬼と化す彼の元に、無実を信じていた元記者の女性が訪れた。

 かたや復讐にために真犯人を追う推理の鬼、かたや記者の経験を生かしデータを集める質問の鬼。会話の役割がはっきり分かれてるので展開的には捻りがないんだけれども、しかしまぁこれが目が離せないのなんの。徐々に知られざる事実が浮かび上がってきて、事件が様子が千変万化。この「事実の小出し」の分量と順番が巧みだからサスペンスが続くんでしょう。

 ラストの大円団も古風ながら効果絶大。とんでもない発想の転換で真相がひっくり返る様は圧巻。そこからあっという間に解決が終わっちゃうんだけど、これはかえってそれまで持続した緊張感を読後まで持っていく作用あり。 本一冊まるごとが、読後の酩酊感に浸るための滑走路みたいな感じ。ページをめくる手、止まりません。

(初出:いのミス)

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どんでん返し何度もできる無重力

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 SF的シチュエーションで繰り広げられる論理展開はまさしく本格ミステリの血。異空間へ飛んでしまう体質を持つ宇佐見博士が主人公の短編集。

地の文が実体化する世界で起きた殺人。凶器はなく、見知らぬ男も死んでいた。「言語と密室のコンポジション」
ノアの方舟と進化論の世界。建造物の東西が逆になったのは神の奇蹟なのか。「ノアの隣」
妻を殺され、自らも重症を負った吉武博士。病床で解決に乗り出したのは別人格で…。「探偵の函」
宇佐見博士と天文学者の父を殺された娘は真相を確かめるために銀河鉄道に乗る。「アリア系銀河鉄道」
目が覚めるとそこにはウサギと4枚の小さいドア。ここから出る方法があるらしいが。「アリスのドア」

 非日常の世界を作り出して、そこの「特別ルール」内で全ての解決をつけるパターン。これがまぁどれも短編とは思えない充実度。幻想たっぷりの前代未聞なルールと謎、設定を最大限に生かした論理、スケールの大きな着想と着地点、これがうまい。このボリュームが短編に収まるだなんて。論理に納得いく・いかないよりも、その思考過程そのものがすごく新鮮です。

 その思考を補強するのが作者の博識。特に「ノアの隣」では、キリスト教で相反するはずの“ノアの方舟”と“進化論”を同じ土俵に上げ、あげく新説まで展開するサービスぶり。そんな豪腕でありながら文章はどこか品があるので、奇想だけで暴走してるわけじゃない。豪腕と上品とロジックが絶妙なバランスで立ってるんです。本格に浸った人ほどこの新世界を見て欲しい作品。

(初出:いのミス)

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紙の本Alone together

2001/01/11 16:40

水面に漂う人々は、一人で居たいと手を伸ばす。

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 前作の『MISSING』は文学とミステリの融合ということで、昨年話題になっておりました。その作者の初の長篇が本作。しかし佇まいはこの人ホントにデビュー2作目なのか、というほどの落ち着き様。

 不登校児を対象にした塾で働く柳瀬。その彼に大学教授から手紙が来た。3年前に辞めた医学部の教授からで、面識もろくにない。柳瀬に頼みがあると言う教授。その依頼とは、自分が「殺した」患者の娘を守ってくれというものだった。数日後、教授は安楽死の疑いで逮捕される。彼が黙秘し続ける動機とは?

 粗筋を紹介するのが非常に難しいのだけれど、とりあえず教授の“依頼”が中心にあって、その枝として不登校児の塾・柳瀬の特殊能力・恋人の熊谷があり、少年犯罪・家族・責任・人間関係と、この物語が内包するテーマは実に多い。事件自体は一応の解決をみるのだけど、この物語をミステリとだけ捕らえるには抵抗があるくらい。

 しかし決して穏やかな話ではないのに、なんて静かな筆運びなのか。まさに装丁通り、水面に一つ一つ石を投げ、その波紋を観察するような。この物語を説明する言葉を持っていないのがもどかしい。自分と向き合うことの意味、一人でいるための努力。今の世の中信じれるものは自分ですらないのかもしれない。そんな気持ち。全ての現代の人々に、この鋭利な物語を捧ぐ。

(初出:いのミス)

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紙の本火車

2000/10/31 18:36

今度こそ、今度こそ、

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この本絶対に一気に読んだ方がいい。間をおいてしまうとどうしても感情移入が途切れがち。しかしこの作品、性質上その辺がとても大事なんです。

遠縁の男性に人探しを頼まれた休職中の刑事である主人公。婚約者が突然いなくなったという。彼女の身辺を調べてみると過去に自己破産した形跡が。失踪の原因は破産なのか。しかしなぜ?そして今どこにいるのか?簡単そうに見えた事件はやがて意外な展開をむかえて…

足取りを追う過程で彼女の過去や性格が徐々に立ち上がってくる様はさすが宮部みゆき。読ませてくれます。しかしとにかくこの作品、追跡途中に接触する人が多い多い。足取りを辿っていくわけだから当然なんだけど、それでもその全員が本当に丁寧に描かれている、というのが特筆すべき点でしょう。弁護士に事務員のお姉さんに地元の青年に…一人一人にファンができてもおかしくないくらい、どんな端役にも文字数を惜しまない。その辺りがこの作品のリアリティを増す効果を与えてるんじゃなかろうか。

先へ先へとうながす話の流れ。湧き上がる謎と真相。周囲の評価が高いのもうなずけます。過去からの呪縛と未来への熱望。このラストの余韻は誰しもが初体験になるはずです。

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紙の本スクランブル

2000/09/21 08:54

混沌とした迷いはまるで卵がかきまぜられたようで。

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 80年代のマイナーな高校生群像を描いた連作短編集、といえば話は早い。ところがところが、まさかこんなに仕掛けと毒気が盛りだくさんだったなんてさすが若竹七海。解説で佐々木譲が長篇だと主張するのも肯けます。あ、この解説は先に読まないほうがより楽しめるかも。

 夏美、マナミ、飛鳥、宇佐、洋子、沢渡の文芸部員6人が主人公。彼女らが通うのは中高一貫教育の私立の女子校。高等部編入組は<アウター>と呼ばれ、スポーツ大会に異様なまでな熱がこもっており、おまけに教師も頭が固い。そんな状況を忌み嫌う言わば“異端児”な文芸部員達もさすがに驚いた。放課後にシャワールームで17歳の女性が殺されたことを知ったときには。

 6人がそれぞれ主人公を努める短編が6つ。弁当盗難、転落事故、毒物混入などの事件が起きては解決され、その後ろには背骨のように殺人事件が貫いているという形。主人公と同じく、探偵役も持ち回りでやってくるのが面白い。そしてそれに15年後の結婚式に様子が挟まれて、式の最中に一人が「わかった」なんて呟いたりして、連作短編形式を生かしきった展開に万歳。こうなるともうプロット勝ち。ページめくる手止まらず。

 しかもこれだけじゃない。主人公達が女子高生とはいえ、生意気で、毒が有って、自意識過剰なやりとりは10代を通り越した全ての人に重なる部分があるはず。アウトサイダーな彼女たちに散りばめられた青春群像。こんなに苦い気持ちになるのは何故だ。言葉に出来なかった10代の忘れ物が、活字で胸に迫って来る。回想と構想のバランスが絶妙のこの逸品。傑作!

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さぁこのトリック、手にとってごらんあれ。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 泡坂妻夫という人はなんというか、いい意味で人を脅かすためなら手段を選びませんなぁ。さすがマジシャン。その精神はこの本にも生かされております。いやむしろマジシャン精神そのものと言っていいかも。

 二代目教祖の継承問題で揺れる宗教団体”惟霊講会”。その騒動の中、事故で死んだと思われた信者達があちこちで目撃されるという事件が起きる。生きているのか死んでいるのか、はたまたこれは継承問題にどう関係するのか。成り行きでこの事件を追うことになったヨギガンジー。調べていくうちに、布教のための小冊子『しあわせの書』に興味を持ち始め…。

 物語の内容としては、どうも行き当たりばったり感が否めない。あっちに行ったらこれが起きて、こっちに行ったらこれが起きて、という具合。サプライズも用意されているけど、そのための仕込みがちょっと足りなくて物足りぬ。いつものようにめちゃめちゃに伏線が張られていたらもっと驚けたはずなんだけど、そうも出来ない理由があるのです。その理由というのが、もう一つの大仕掛け。むしろ評価すべきはこっち!

 文中で「41字詰め15行組みの文庫本」と説明されているがこの本『しあわせの書』そのまんまなんですね。そしてこの233pの本全体に仕掛けられたサプライズといったら!この仕掛けのために内容の自由度が減っているような気がするのだけれど、それを補ってあまりある驚きが用意されています。これほど人に結末を言いたくなる本もないです。あぁ、言いたい…。言ってしまいたい…。

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紙の本夏と花火と私の死体

2001/09/15 02:12

若い才能に食われたひと時。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 私の名前は五月。九歳の夏休み、私は死んだ。友達の弥生ちゃんに木の上から突き落とされて。弥生ちゃんは兄の健くんと私の死体を隠そうとするのだけど、大人たちも私を捜しはじめて…。

 と、いうふうにこの物語は「死体の一人称」。死をきっかけに登場人物が神の視点に舞い上がるのがなんとも奇妙。その淡々とした語り口とのんびりとした田園風景、そして死体を扱うにはあまりにドライな感情の兄妹というミスマッチが読者の居心地を悪くするのに大成功。

 タイトな展開にハラハラし、ラストは普段なら想像の範囲内のはずなのに驚いてしまって、これは作品世界に引き込まれすぎて考えも及ばなかったのかなぁとため息。執筆時作者は16歳。若い才能に食われたひと時。

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紙の本Mouse

2001/02/21 17:55

六感を巡り巡るマスカレードは脳を抜け地を駆ける

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 こんな設定。河口に浮かんだ廃虚島“ネバーランド”。そこは18歳以下の子供しか住めない島。彼らは腰に接続した“カクテルボード”からドラッグを大量摂取するため、“マウス”と呼ばれていた。常にトリップしている状態では、幻想と現実、主観と客観が入り乱れ、言葉が相手をバッドトリップに「落とす」武器となる。このトリップが最高に刺激的!短編5つを繋げた連作短編。

 とにかく何もかもぶっとんじゃっててオモロイのなんの。音は画像になり、言葉は実体になり、意識は共有物となり、それらがテンポ良く絡み付いて読ませる読ませる。まさにイメージの洪水です。視覚的でありながら映像化不可能。こういうのは未知の領域なのでもう新鮮。

 しかし溢れるイメージのみに頼るわけではなく、薬漬け少年少女の暮らしぶりや地盤沈下を起こした島の環境、薬の入荷ルート等、「現実」部分もちゃんと触れらるのがミソ。島の内外の視点から“ネバーランド”を書くことで、読者が物語についていけるような「想像力の補完」ができているのでは。ぶっとびすぎてもついていけなきゃしょうがない。

 とにもかくにも、異世界を堪能させてもらいました。SFに慣れない人でもこれはいけるのでは。五感が錯綜する描写は一読をオススメ。BGMはUnderworldあたりで。

(初出:いのミス)

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紙の本光と影の誘惑

2001/01/11 17:10

悪魔の微笑み、天使の怒り

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 中編4つを収めた作品集。適度な長さなので描写もしっかり書き込まれてるし、テンションも最後までキープされたまま。作者の力がいかんなく発揮されてます。

誘拐犯からの要求は、見知らぬ家の子供を誘拐することだった。 「長く孤独な誘拐」
両脇にはペンギンと白熊の檻。前後には客。犯人はどこへ消えた。 「二十四羽の目撃者」
競馬場で知り合った二人が計画した銀行強盗。二人が抱える闇とは。 「光と影の誘惑」
父親の葬式で初めて聞いた姉の存在。両親の過去に何が起った。 「我が母の教えたまいし歌」

 確かな力を感じさせる作品が集まっていて、クオリティが高いなぁというのが第一印象。「長く〜」での身代金受け渡しのスリルや、「二十四羽〜」の軽快なタッチ、そして表題作「光と影の誘惑」に仕掛けられた企みの大胆さ。着想から少しずつ確実に積み上げて完成品まで近づけた感じ。決して奇をてらわず、真正面から物を作る職人のようなスタンスがクオリティへ繋がってるんでしょう。

 で、もう一つ特筆すべきは登場人物。子供を誘拐されたり、家計が苦しかったり、彼女を妊娠させてしまったり、それぞれどこか追いつめられた人々なんですよ。逃げ場がないという焦り、道を奪った者への憎悪、現状打破への情念。これらの黒い感情が、ホントにドロドロに書かれてるんですな。これがあんまり救いがなく描かれまくるので、読了後の印象がちょっと悪いんだけど、言い換えればそれだけ筆力があるということ。確かな技がここにあります。

(初出:いのミス)

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