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TABASAさんのレビュー一覧

投稿者:TABASA

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紙の本マイがいた夏

2004/07/13 20:00

忘れられない、あの夏…。

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 『冬の入江』を読んで、マッツ・ヴォール氏の大ファンになった。
待つこと4年半。待望の翻訳2作目がついに出た!
今度は夏か…、とはやる心を抑えつつページを開いた。そして、一気に読んだ。
 読み終えたあと、しばらくぼーっとしてしまうくらい、物語の世界にすっかりひきこまれてしまった。
舞台は1950年代後半のスウェーデン、ゴットランド島の小さないなか町。
その夏、ハリーは12歳。親友のハッセは、13歳になったばかり。
二人は、夏の始まりとともに転校してきた美少女マイに、一瞬のうちに心をうばわれる。
 以来、それまで何事も先を行くハッセに対し、負けを受け入れつづけてきていた不器用なハリーは、「ほしいものに手をのばすときは、踏み台にするものが必要だ」と考えるようになっていく。
 こだわりのない親友同士だったハリーとハッセは、マイを間にはさみつつもあやういバランスをなんとか保とうとするが、マイの興味が次第にハッセに向かうようになり…。
 夜の公園でダンスを踊り、外国船の逃亡者をかくまい、先生にうっぷんばらしのいたずらをし、海辺でマイに泳ぎを教え、そして、たった一度きりの「マイがいた夏」が、悲しい終わりを迎えることになる。
思春期には、たった一秒が、まるで永遠のように長く感じることがあるものだ。
 この物語は、思春期の入り口に立った少年たちと少女の濃密な時間を、とてもていねいに描いている。
 主人公ハリーの一人称の語りで物語は進行するが、感情を抑えつつ、情景やしぐさのひとつひとつが映像的で繊細につづられていて、読者はいつのまにか彼らに同化し、いっしょにマイに恋してしまう。
 先生のえこひいきに本気で反抗したり、うわさ話に興じる大人の心無い言葉に傷ついたり、未来に漠然とした不安を抱いたりしながら、気づかない間にみんな大人になっていく。
 自分勝手だったあの頃をなぞりたい人にも、今まさにその只中にいる人にも、このハリーの甘くせつない物語を読んでほしい。

(TABASA<図書館の学校・児童書選書委員会>)

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