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    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

大笹吉雄さんのレビュー一覧

投稿者:大笹吉雄

1 件中 1 件~ 1 件を表示

大衆演劇の異色のスターと劇団の魅力をいろいろな角度から探り、かくて大衆演劇の歴史を追うドキュメント

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 本書は「下町の玉三郎」というキャッチフレーズで知られ、最近はNHKテレビの『ふるさと劇場』の司会者として全国的な認知度を高めた俳優の梅沢富美男と、その兄の武生が主宰している劇団の、人気の秘密を探ったドキュメントである。
 梅沢劇団の作る舞台は、いわゆる大衆演劇といわれる分野に区分けされる。歌舞伎座や帝国劇場など、大劇場で公演される舞台とは違って、旅から旅への巡演を主とし、比較的小さな劇場で、庶民を対象にして見せる小規模の劇団の作る舞台を大衆演劇と呼んでいる。
 これはあくまでもとりあえずの定義で、大衆演劇のきちっとした規定はとてもしにくい。吉本新喜劇も、大劇場での演歌歌手の芝居も、宝塚歌劇や文化勲章を受けた森繁久弥の舞台も、大衆演劇と言えば大衆演劇だからである。だからここで言う「大衆演劇」とは、「旅芝居」のことだと言った方がわかりやすいだろう。が、この表現が差別的なにおいを持っているので、それを避けるために「旅芝居」のことを慣習的に大衆演劇と言っている。
 さて、そういう意味での大衆演劇に関する著作は、多くはない。その意味で本書は異色だが、実は梅沢劇団も異色の劇団なのである。
 かつてはれっきとした大衆演劇の一座だったが、今では明治座その他の大劇場でも公演し、常に超満員の観客を集める。つまり、現在は一個の独立した堂々たる劇団で、現代のエンターテイメントの一翼をになっている。本書はさまざまな角度から、「旅芝居」の一座がなぜこういう劇団に急成長したかを追求している。章立てと内容は以下のごとし。
 小沢昭一と富美男の対談では芝居の魅力、ことに演劇的な「毒」のそれを語る。
 富美男に対する武生のオマージュ。
 武生に対する富美男のオマージュ。
 道又力の梅沢武生劇団の小伝と劇団メンバーの紹介。
 渡辺昭夫の大衆演劇の解説。
 土屋俊介の梅沢武生劇団論。
 武生と五人の演劇評論家による座談会。
 小椋佳らのエッセイ。
 代表的な脚本とショーの再録。
 こういう文章を通してうかがえるのは、中心的な俳優である富美男に三枚目と美貌の女形を兼ねさせ、俳優の歌謡ショーという新しい形式を編み出した武生の演出家としての、また、プロデューサーとしての目配りの的確さである。こういう武生の語録がある。
「われわれの仕事というのは、過去も未来もない、今だけなんですよ。今受けなきゃ未来は来ません」
「お客さんをたっぷり満足させちゃいけないんですよ。なんだか物足りないなあ、というくらいがいい。そうしたら、また来てくれる」
 長いキャリアがもたらした味のある言葉だ。 (bk1ブックナビゲーター:大笹吉雄/演劇評論家・大阪芸術大学教授)

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