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岡谷公二さんのレビュー一覧

投稿者:岡谷公二

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紙の本半島と列島・接点の探究

2003/02/21 18:28

名著『帰化人』以来、古代における朝鮮半島と日本列島の関係の深さを論じ続けてきた碩学の新たな論集

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『上田正昭著作集』刊行以後の、つまりここ数年の間にあちこちの雑誌や新聞に発表された論文、エッセイを一冊にまとめたもの。勿論「半島」とは朝鮮半島であり、「列島」とは日本列島である。表題の通り、ほとんどすべての文章が、陰に陽に、朝鮮半島と日本、とりわけ古代日本との関係を論じている。
 著者は、名著『帰化人』(一九六五 中公新書)によって、律令制成立以前の、まだ国家の体をなしていない日本列島に半島から渡ってきた人々を帰化人と呼んであやしまない従来の史観に真向から刃向った人として知られる。それ以後著者は、作家の金達寿氏や司馬遼太郎氏らとともに、日本の中の朝鮮文化の発掘につとめ、大きな業績をあげてきた。現在、人々が帰化人という言葉を安易に使わなくなったこと、古代日本文化の主たる部分を半島から渡ってきた人々が担っていたという事実が、多くの人々の共有する常識になりつつあることは、著者らの功績であろう。
 高松塚古墳やキトラ古墳、飛島京跡苑池遺構などの発掘、明日香村酒船石遺跡における亀形石の発見など、最近の発掘、発見は、著者の立場を一層強固なものにしている。高松塚古墳とキトラ古墳の壁画が高句麗の壁画と深いかかわりを持ち、その大きな影響を受けていることは疑いようがないし、亀形石や苑池は、著者の主張するように、半島から渡来した道教の信仰と明かに結びついているからであり、これらの壁画や石造物の作者が渡来人であった可能性も大きいからである。
 道教といえば、「古代飛鳥の七夕信仰」という一文の中の、天照大神の神格の中に織女神の信仰が重層しているという著者の指摘は興味深い。
 しかし朝鮮半島を蔑視する從来の史観が、学界においていかに根深いものであったかを「石上神宮と七支刀」という論文が明かにしてくれる。これは一九七一年に雑誌「日本のなかの朝鮮文化」に出たもので、本書の中で一つだけ飛び抜けて発表年が古い。
 百済王が倭王に献上したとされる石上神宮の有名な国宝七支刀に刻まれた銘文は、その解釈をめぐって論争をひきおこし、新聞種にもなったが、著者は、銘文の中に倭王の名が記されているという新説を支持する。ところがその説の主唱者は、当時の東アジアの国際関係においては、相手の君主の名を国書に記すのは、相手が自分より下位にある場合に限るから、百済がそんなことをするはずがなく、七支刀は、百済の宗主国である東晋の皇帝が、百済を介して倭王に贈ったものとするのである。これは、百済をあくまで倭の下に置こうとする「日本書紀」以来の偏見が、いかに日本人の歴史観を歪めてきたかを示す典型的な例であろう。
 日本中心の史観を排する著者は、同時に中史中心の史観も排する。そして出雲や北ツ海(日本海)の文化を、大和との関係からではなく、もっとグローバルな、西アジア全体の視点から見直すこともまた提唱している。 (bk1ブックナビゲーター:岡谷公二/評論家)

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