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先月(2017年8月)

フィンさんのレビュー一覧

投稿者:フィン

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本スキップ

2001/03/07 20:48

ふたつの「スキップ」

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この小説のタイトルである「スキップ」ということばから、連想される意味は二つ。
 VTRで言うところの早送り。そして、軽快なステップ。この作品を含む連作シリーズが「時と人」という主題を掲げている事からすると、前者が本来のタイトルの意味なのだろう。
 しかし、読了後に改めてタイトルを見たとき感じた気持ち。それはまぎれもなく後者の「スキップ」だった。

 70年代初頭、17歳だった主人公は、ふとしたきっかけで「心」だけが25年後、40歳で教師になっていた自分に「スキップ」してしまう。外見は40歳だが、中身は17歳。彼女を取り巻くのは20世紀末の「未来世界」。25年間という時間のギャップがもたらす、主人公の違和感による笑い、ノスタルジィを随所に織り込みながらも、この物語は単なる時間旅行モノに終わってはいない。

 この物語の主題は、17歳の心をもった教師と18歳の心と体を持った生徒たちとの交流を描くことにある。教師が生徒と同じ心理、同じ目線で接するコトで、見えてくる様々な悩み、葛藤。作者はこれを感受性豊かな主人公の心情を通して鮮やかに描き出している。
 おそらく作者は、この学園物語を描くため、17歳の心を持つ教師を描きたいがために、「スキップ」という仕掛けを用意したのだろう。そしてそれが見事に物語として結実している。

 主人公と、クラスの皆が一緒になって踏む「スキップ」のステップ。その軽快な足音が聞こえてくるような作品である。

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紙の本左手に告げるなかれ

2001/06/11 22:53

推理小説「らしい」が…

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いかにも推理小説らしい推理小説。
 ただ、「らしさ」が鼻につく余り、読み進める動機が、物語を楽しむことよりも謎解きの答を探すことに集中してしまった。まるで、解けなかった問題の答を知るために、回答欄の解説を読んでる気分。そういう意味では、やや作業的な気分で読み進めることになってしまった。

 なんといっても、主人公の女性が事件に首をつっこむ動機にやや無理を感じる。自分の不倫相手の奥さんを殺した男を探す、では…。しかもその奥さんの性格が、かなりイヤな感じときた。普通、主人公の立場にしてみれば、こんな事件には首つっこまんだろう。巻き込まれ型ならともかく、放っておけば害はないのに、自ら首を突っ込んでいってるんだもの。作中で何度か主人公がその「理由」について語るシーンがあるが、どうにも腑に落ちず。結局、主人公の動機に対する「なぜ?」は最後まで抜けなかった。

 また、せっかく主人公を保安士(万引き専門の警備員みたいなものか)という珍しい職業に設定しているにもかかわらず、どうもそれが話の中では生かされていないように感じた。これが、只の主婦でも、雑誌記者でも、それほどプロットに大きな影響は出なかったろう。単に「こういう職業があります」的な紹介にとどまっているのが、変に肩すかしを食らったと言う印象。

 そして、終盤の展開のまずさが何より痛い。序盤はまだ「奥さん殺しの犯人探し」という目的に添って主人公が行動しているので、構図としてはわかりやすいのだが、後半になると、その他の複数の事件が絡みあうようになり、それぞれの事件の繋がりが見えにくくなってくる。これは「複雑な背景を読み解く」という楽しさともちょっと違う。どうも作者の「意外な展開を用意したい」という意図が透けて見えるようで、読んでていい気分ではなかった。

 乱歩賞受賞作ということで結構期待していたところはあるんだけど、ちょっと裏切られた格好になってしまったな。作品の構造的な欠陥が多いだけに、ここをこうすれば良くなった、というポイントも示しにくい、困ったちゃんな作品だった。

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