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先月(2017年5月)

上原子正利さんのレビュー一覧

投稿者:上原子正利

1 件中 1 件~ 1 件を表示

社会統計との正しい接し方を理解するために

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「米国で銃によって殺される子供の数は、1950年以来、年ごとに倍増している」。本書冒頭で紹介されるこの文は、1995年に発表された実際の論文からの引用だ。
 ひどい話である。
 もちろん、ひどいのは銃問題ではない。1年で2倍が45年続くという、どう考えてもありえない主張だ。しかも、著者がこの文を初めて見たのは、その論文ではなく、その論文を引用した学位論文計画書だという。これから博士号を取得しようとする大学院生がこの文を引用したのである。

 この話は教訓に富んでいるので、もう少し詳しく見てみる。この文は、1994年のある報告書の次の文を元にしている。「1年間に米国で銃で殺される子供の数は、1950年以来倍増している」。これなら驚く事もない。この数の変化の意味を調べる価値はあるだろう。
 ところが、これを写し間違えた論文の著者は、まったく意味のない「突然変異統計」を生み出してしまった。そして、この無意味な文が、専門雑誌に論文として掲載されてしまう。雑誌編集者はこれを掲載することで、多くの人に誤った知識を提供する。その被害者の1人が件の大学院生だ。その研究計画書が本書の著者の目に触れたことで、彼は新たな加害者とならずにすんだだろう。この件で重要なのは、誤った知識を与えた方も受け取った方も、何も自覚していないという点だ。

 このような話の中で、もし誰も数字の妥当性をチェックしなければ、もしその話が社会に広まれば、もし政治的な意図で数字を歪める人物が存在すれば、何が起きるだろう。いや、「もし」ではない。実際にあることのようだ。
 本書は、社会統計との正しい接し方をまとめたわかりやすい本である。適切に使えば強力な武器となり、間違えて使えば簡単に人の判断を誤らせるこの道具を、盲信せず、避け過ぎもせず、正しく理解するための有能なガイドだ。文章は平易で、分量も適切、挙げられている例もおもしろい。一般教養として価値の高い本だろう。

(上原子 正利/bk1科学書レビュアー、km_bk1@mail.goo.ne.jp)

【目次】
はじめに——最悪の社会統計

1 社会統計の重要性
社会統計の台頭/社会問題をつくりだす/数字オンチの受け手としての一般大衆/組織慣行と公式統計/統計を社会的産物として考える/本書の構想

2 ソフトファクト——おかしな統計の根源
当て推量/定義/計測/標本抽出/よい統計の特徴

3 突然変異統計——数字をおかしくする方法
一般化——初歩的な種類の誤り (疑わしい定義、不適当な計測、まずい標本)/変換——統計の意味を変える/混乱——複雑な統計をねじ曲げる/複合的な誤り——おかしい統計の連鎖をつくりだす/突然変異統計の根源

4 リンゴとオレンジ——不適切な比較
異なる時点の統計 (計測方法の変化、変わらない尺度、予測)/異なる場所の比較/集団間の比較/社会問題の比較/比較の論理

5 スタット・ウォーズ——社会統計をめぐる紛争
特定の数字をめぐって論争する——100万人が行進したのか/データ収集をめぐって論争する——国勢調査はどのように人口を数えるか/統計と争点/統計の権威を主張する/スタット・ウォーズを解釈する

6 社会統計を考える——批判的アプローチ
素朴な人々/シニカルな人々/批判的な人々/避けられないものに立ち向かう

謝辞 / 訳者あとがき / 註 / 索引

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