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  3. 福田 健吾さんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年6月)

福田 健吾さんのレビュー一覧

投稿者:福田 健吾

31 件中 1 件~ 15 件を表示

常識をひっくり返される快感を味わうべき1冊

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ロシア語の同時通訳者である著者のエッセイ集。サブタイトルが、『正義と常識に冷や水を浴びせる13章』とある。おいおい、1ダースは12だろ?と突っ込みを入れたら、もうこっちの負けである。まさに、そのような気付かぬうちに思い込んでしまっていたことをひっくり返されるようなことについて書かれているのだ。

 しかも話題の幅も実に広い。シモネタから歴史へ、はたまた違う言語では可笑しく聞こえてしまう発音について、堅い話と笑い話が実にバランス良く織り交ぜられていて読者を飽きさせることが無い。

 異文化と向き合うと言うときには、しばしば自分の常識を覆されるものだ、とつくづく感じさせられた。常識が覆された結果、異文化に対し反発を覚えることもあれば違う視点を与えてくれたことに感謝したくなることもあるだろう。著者が後者の立場に立って、異文化と接することの面白さを感じている人物であるからこそ優れた通訳者としての現在があるのではなかろうか。

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紙の本真相・杉原ビザ

2001/04/22 00:26

困窮するユダヤ人に救いの手を差し伸べた杉原の真意が誤解されている!

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 各地で右派による宣伝が活発である。ドイツではネオナチが外国人襲撃を行ったり、ヒトラーを崇拝しているが、彼らはユダヤ人虐殺を否定する。収容所で多くのユダヤ人が死んだのは、ソビエト兵の進行に伴い補給がままならずチフスなどが蔓延したためだ、というのだ。

 この様な歴史の捏造は日本でも行われている。所謂右派も左派も歴史の捏造に深く関わっている。
 本書は右派勢力による杉原への攻撃を厳しく批判する。それは、例えばユダヤ人救出は本国の指示に基づくものであり杉原個人の功績に帰させるわけには行かない、といったものや、杉原はユダヤ人から金品を受け取って居たのだ、と言ったような誹謗であったりする。

 だが、冷静に杉原の軌跡を辿ればそのような主張は、根拠を失わざるを得ない。杉原は本国の訓令に反し、ユダヤ人をナチスの手から逃がしたが、それは全て彼の善意から出たものだった。孟子のいうところの、惻隠の情こそが彼の原動力だったことが、本書で明示される。杉原は己の功績を決して誇らなかったし、訓令に反してユダヤ人を救ったことが原因で外務省を追われた後も自分を多く語らなかった。それがため、現在の右派による捏造が許されているのだろう。

 杉原は「憐れに思うからやっているのだ。ただそれだけのことだ。」と述べ、疲労にも負けずにヴィザを書きつづけた。リトアニアを去るその列車の窓から身を乗り出してヴィザを与えた、杉原の行為を、矮小化し、捏造するのは許されないことだと思う。
 本書は杉原千畝という、勇気ある個人の行動を振り返るのに最善の本ではなかろうか。

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紙の本火星の人類学者 脳神経科医と7人の奇妙な患者

2001/06/22 00:59

脳疾患の意外な実態

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 脳神経医オリヴァー・サックスの出会った7人の患者は、ただの一人も平凡ではない。突然色盲になった画家や自閉症の天才的画家、奇妙な振る舞いを繰り返す外科医などなど。

 彼らはなぜそのような症状を呈するようになったのか。著者の注意はもちろんそこに向けられている。が、この本の面白い所は著者が症状の原理に目を向けているだけではなく、症状の結果が患者達にどのような影響を与えているのかを見据えようとしているところであろう。
 決して“健常者が異常者を観察する”スタンスではなく彼らの心の奥底に何があるのかを温かい目で眺め、一時でも世界を共有したいという思いが伝わってくるのである。

 色を失ってしまった画家は絶望・失意の末に立ち直り、白黒の世界で積極的に生きていくことを決意し、自閉症ゆえ他人に共感できず悩んだ学者はやがて自らの抱える疾患を、自分の一部としてかけがいの無いものだと思うようになる。そこにあるのは憐れな精神疾患者の姿ではなく、確かに多くの人とは異なるところもあるかもしれないが決して哀れむべき弱者ではない、たくましい人々であるのだ。彼らの生き様もまた本書を盛り上げているのは間違い無いであろう。

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記憶が簡単に書きかえられ、存在しない悪夢が植え付けられる不気味さ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 読んでいて、ぞっとしてきた。記憶が如何にいい加減なものか、日常生活で味わっていると思ってきたが、それが甘い判断だったことが思い知らされた。

 本書は自分の娘から性的虐待を告発されたある警官が事実を認めた事件が、記憶の“書き換え”にあることを示してセンセーショナルを巻き起こしたという。

 性的虐待が注目されることで多くの専門教育を受けていないカウンセラーが、安易に問題の根源を幼少時の家庭環境に求め、催眠術を使って証拠を出そうと言うのだが、催眠術下での誘導尋問は人の記憶を塗り替えてしまう。そのためありもしなかった“事件”が、刷り込まれてしまうのだ。
 この“事件”は現実には存在しなくとも現実に存在した場合と同じように人を苦しめる。それは、性的虐待の記憶を“回復した”人も、“回復した人”の周囲の人も同じだ。

 フロイトの主張する「抑圧された記憶」神話と「性的虐待」神話が社会を覆っている事が、“回復した記憶”に苦しむ人を生み出し続けている。勿論、性的虐待は現実問題として存在するのだろうし、本当に虐待に苦しむ子供達が居るのは嘆かわしいことだ。しかし、植え付けられた記憶により新たな苦しみを与えられた人もまた多いと言う現実に、目を向けなくてはならないのだろう。

 記憶は多くの喜びを与えてくれるものだが、記憶を操作された時如何に恐ろしい事態が起こるか、教えてくれる。

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日常生活に隠れた化学の面白さ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 化学と聞くと、「白衣を着た人々が怪しげな薬品を混ぜ合わせて胡散臭いことをやっている」イメージがあるかもしれないが、そのようなことは無い。洗剤や病気になったら飲む薬はもちろん、食品だって化学とは無縁ではないのだから。

 といっても、この本に載っている話は、小難しい議論や、反論の余地の無い「正しい話」の押し付けではない。なにしろ、著者は化学者でありながら絶妙の語り口を持つ、ジョー・シュワルツ博士なのだから。はじめの数行で人を惹きつけ、中身を読まずには居られなくさせてくれる、化学論評集の第2弾がついに登場である。

 取り上げられている話題は実に多岐にわたる。サリドマイドのような薬、チョコレートやマーガリンのように日頃口にする食品、ポスト・イットのような事務用品、等々まさに身近なところにあるものの歴史、真実、意外な裏話を面白おかしく、そして冷静でありながら情熱を感じさせられる文章で一気に読ませてくれる。

 そして、冷静な文章の中に時折織り込まれる化学への情熱や好奇心が、ますます本書を魅力溢れるものにしてくれていると思う。それぞれの話題の最後には、あるときにはオチが、あるときには考え込ませる文章が配置されており、読み終わった後にも余韻を残す、すばらしい本である。

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正真正銘の“知の巨人”たちへのインタビュー集

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 インタビューに応じた顔ぶれを見ただけで、この本は凄いと感じさせる。DNA2重らせん構造の発見者のフランシス・クリック、電弱統一理論のスティーヴン・ワインバーグ、類まれな言語学者であるチョムスキー、進化論を巡って論争を繰り広げるリチャード・ドーキンスとスティーヴン・ジェイ・グールド、戦う女性科学者リン・マーギュリスなどなど、どの人物を見てもその際だった研究成果によって知られる人物ばかりである。

 この顔ぶれだけでも、科学に興味のある方は「買い」の価値がある。

 そして扱っている領域も実に広い。進化論、宇宙論、人工知能、クローンなど、様様な分野に当代最高の科学者たちが切りこんでいく。しかも、切り込んでいく先はまだはっきりと明らかになっているわけではないため、見解の相違も勿論ある(あれだけ論争を繰り広げたドーキンスとグールドがここでだけ意見を一致させるわけも無い!)。
 はっきりと分かってることだけ教えてくれ、という方には物足りないかもしれないが科学の営みに興味がある人は、今、科学では何が注目されているのか、次に科学はどこに進んでいこうとしているのかを見るのにも良いだろう。

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夏祭りで発生した「集団食中毒」に疑問を抱いた中学生

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 疑問を持つこと。言葉にするのは極めて簡単であるが、これがなかなか難しい。しかし、疑問を持ってしまえば当たり前のように説明されていたことが途端に疑惑に包まれることがある。本書は、毒入りカレー事件に独自の視線を当て、ひとつのレポートを仕上げる。それは後に史上最年少で文芸春秋読者賞を受賞することになる作品だった。

 和歌山で起こった「毒入りカレー事件」。当時中学生だった著者は、第一報のカレーを食べた人が集団食中毒を起こしているという報道に、「カレーで食中毒は起こるのか」と疑問を抱く。すぐに彼女はいくつかの文献と、インターネット上の情報を駆使して毒入りカレー事件の真相を追う。

 結果から言ってしまうと、彼女はいとも簡単に真相を見つけ出した。4人が死んだのは、毒を入れた人物のみの責任ではない。事件発生直後に、警察や医療機関、マスコミ等が抱いて当然の疑問を抱かず、被害者の治療に有効な手を打てなかったこともまた、ひとつの原因であるという。

 本書は上記の結論を非常に明快に、筋道だてて述べる。注意力さえ持っていれば最悪の事態を防ぎ得たかもしれない事件。だが、私を含む多くの人々は疑問を抱かず、4人の死者が生じるのを許してしまったのだ。我々自身に、疑問を持つことの重要さを教えるとともに、警察、医療機関、マスコミへの非常に重要な批判を行っている。

 後半は著者の生活が描かれている。三好 万季さんだけではなく、彼女とそのご家族がこのレポートを生み出したことが良くわかる。カレー事件以外の点でも注目されて良い家庭であろう。

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暗号解読戦争

2001/06/30 23:52

情報はいかにして扱われるべきか、近代の歴史を通して語る

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 太平洋戦争の帰趨を定めたのは、情報戦争の帰結と言っても過言ではない。本書では冒頭において日本が情報を秘密裏に扱えなかった結果として多くの被害を出したことから説きはじめ、戦争の情勢を変えたことなどの豊富な事例を通して情報の扱い方に注意を喚起する。

 アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で他国の通信傍受を行っているというエシュロンがつい先日話題になったが、本書ではエシュロンの成立の経緯と、あとはさわり程度で触れられているので興味のある人はそこだけでも読んでおくべきであろう。

 暗号の数学的背景などは触れられていないので、そういう話を期待する人には物足りないであろうが、近代の暗号開発・使用の歴史を眺めるには大変良い本であるといえる。

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人類を脅かしてきたウイルスとの戦いの記録

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 人類は長い間蔓延する感染症に立ち向かう術が無かった。その一番の原因は、感染症を引き起こすメカニズムが皆目見当もつかなかったためである。感染症は社会を脅かし、戦争の帰結を左右し、国家や民族の盛衰までもその影響から逃れることは出来なかった。
 やがて感染症の原因が目に見えない微生物によって引き起こされることが明らかになり、そして人類は幾つかのウイルスに対抗する手段をも持つようになった。

 本書ではウイルス感染症、中でも多くの感染者を生み出し、人類社会に脅威を与えてきた天然痘、麻疹、黄熱、ポリオ、HIV、インフルエンザの原因ウイルスと人類の戦いを描く。ウイルスと戦ったのは科学者の場合もあれば医者の場合も、或いは医学の専門知識を持たない者のこともあった。彼らに共通していたのは感染症を克服しようとする熱意だった。ウイルスに立ち向かった彼らの姿が、そして意気込みが伝わってくる。ある者はウイルスとの戦いの最中命を落とし(黄熱と戦って散った野口英世など)、ある者は感染の恐怖を乗り越え感染者の介護に尽力した。またある者はボランティアで疫病に自ら罹り、原因究明に力を貸した。
 彼らの努力が如何なるものであったか、そして如何なる方法でウイルス感染症が抑えられて来たのかが生き生きと記されている。

 勿論現在もウイルスの脅威は続いている。ザイール(現在はコンゴ共和国)で1994年に感染爆発を起こしたエボラ出血熱のようなエマージングウイルスに対抗できる治療方法はまだ見つかっていない。HIVも、人体から追放する方法は見つからず、せいぜい発症を防止すること位しか出来ていないのが現実である。
 しかし猛威を振るった天然痘やポリオに人類は勝利した。今後もウイルスと人間の戦いは続いていくだろうし、人類が悩まされる感染症の数は減っていくだろう。本書を読めば、ウイルスとの長くなるであろう戦いの行く末に光があるという可能性を見る事が出来るのではなかろうか。

 文章も実に読みやすく、医学に疎い者でも容易に読み進める事が出来るし、構成の巧みさもあって一気に読める本であった。

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紙の本六千人の命のビザ 新版

2001/07/17 00:27

杉原千畝に興味があるならまずは目を通すべき本

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ナチに追われたユダヤ人に救いの手を差し伸べた、杉原千畝の奥方である、幸子さんの回顧録。ユダヤ人にビザを発行したカウナスを含め、外交官夫人として欧州各地に赴任したこと、動乱の中で子供達と過ごした思い出、日本に帰国した後の話など、千畝の最も身近にいた彼女だからこそ書くことのできたものである。

 杉原の写真も多く、彼の功績に少しでも興味のある人には入門書としてもってこいのものであろう。

 杉原千畝だけではなく、奥方の幸子さんもまた魅力にあふれた人であり、彼の偉業の裏に彼女がいたことも、大きかったように思える。

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紙の本毒草を食べてみた

2001/06/10 02:12

44の、毒にまつわるエピソード

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は植物から採れる毒についてのエピソード集である。誰もが知っているものとしては、例えばトリカブトのようなものもあるが、意外と身近に毒草はあるものである、と思わされた。

 スイトピーやスズラン、水仙など、幾らでも傍にあるものであるが、なかなかどうして、侮れない毒を持っている。ヒガンバナも毒を持つとは知らなかった。もちろんコカやケシのように傍には無い麻薬の原料となるものも紹介されている。この本は、それら毒の特性だけではなく、それらを食べてしまった人々のエピソードが綴られる。ドクニンジンで処刑されたソクラテスをはじめ多くのケースが取り上げられている。

 これだけ毒草がありふれた存在なら、何が起こっても不思議は無いな、と思わせられる。悲劇も取り上げられている。バッカクの毒は多くの人を死に追いやったし、タバコは今も多くの害を撒き散らしている。しかし、毒があるのも理由があるのも間違いが無い。末期ガンの救いとなるモルヒネはケシからしか取れない。マラリアの治療薬はキニーネから取れる。毒も、使い方を間違わなければ薬となると言うが、毒との付き合い方を学んでいくことも重要なのであろう。

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子供に化学の面白さを伝えるための本

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 ゴキブリが出没したらどうするだろうか? 私は新聞あるいは雑誌にて排除をすることにしている。不潔なイメージが、ゴキブリには付き纏っている。
 マイナスイメージに凝り固まったゴキブリが、人類に愛される存在になる?
 そんなバカな。

 だが、ゴキブリの殻には、カニの甲羅に豊富に含まれているキチンという物質が含有されている。本書はタイトルに反して、ゴキブリそのものが語られることはほとんど無い。そのかわりに語られるのがこのキチンなる物質について、である。

 本書の導入部は、ソ連からやけど治療のため空路やってきたコンスタンチン君の治療に、人工皮膚が使われたことに始まる。そして、キチンを扱うまでに辿った、著者の研究を追うことで、なぜ人工皮膚の研究に目をつけたか、どうやってキチンにめぐり合ったのか、そしてキチンから人工皮膚を作り出すまでのチャレンジが続いていく。

 科学的な話も簡単にまとめられていて分かりやすい。そして、著者の情熱が、特に医療分野で患者の役に立ちたいと言う気持ちがとても素直に伝わってくる。科学の中でも、特に化学分野では進路に悩む年代の少年/少女に、自分の将来をかけてみたい!と思わせる本が少ないように見うけられる(読み手としてそのような選択をすでに終えた大人を対象としている本であれば、良書は沢山あるのだが)。そのような中、子供に化学の魅力を伝えることができる優れた本であろう。

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金融機関を蝕んだものはなんなのか

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 なぜ金融機関をめぐる一連の不祥事は発生したのか。本書が光を当てようとしているのはこの一点であろう。不祥事の結果として大手都市銀行の会長や政治家を含む6名が自殺という形で世を去ったのである。彼らを自殺に追いやったのは何物なのか。その謎を追い、金融機関にたかる総会屋や政治家の姿を追いかける。

 もちろん、金融機関の外にも大きな問題はあった。その代表選手が今回問題となった総会屋小池隆一であったり自殺をした新井将敬議員だったりした。しかし、一番の問題は株主総会で揉めることが会社、ひいては経営陣にたいする不信を生むのではないかという恐れこそが裏社会の力にすがる根源となり彼らに付けこまれる隙を与えてしまうのである。
 おおよそこの様な視点に立って事件を振返る本書は金融機関が抱え込む問題はもちろん、多くの日本企業が持つであろう同じ体質について知るのに適したものである。

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「味覚を測る」に挑んだ研究者

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 プリンに醤油をかけたらウニの味になる。はじめてこのことを聞いたときには驚いた。そして、“そんなばかな”と思ったものだ。ところが実験してみると本当にウニの味がする。そのときに、味覚はなんてインチキなものなのか、と思ったものだ。

 しかし、インチキなのは私の考えだった。ひとつの食品の中には数百種類にも及ぶ化学物質が隠されていることも珍しいことではない。含まれる化学物質一つ一つを探り、味を調べようとしても時間が無い。そこで、発想の転換である。我々人間が感じるのと同じように味を感じてくれるセンサーがあれば良いのである。

 本書はこのような考えに立ち、味覚センサーの開発の歴史を述べた後で実際のセンサーがどこまで味覚を分類できるか、その精度を示した上でセンサーの活用によって見える未来の姿までをも追う。ワインの銘柄による味の違いまでも分類可能なこのセンサーの威力は絶大だ。なにしろ、食品のロットによる味の違いまで測れるのだから。

 もちろん、味と快・不快は文化、薬の服用の有無はもちろんその日の体調まで様々な要素で変わり得るので、誰に対しても美味しい味覚など、探るべくも無いが、しかし主観にしか頼れなかった味覚の世界を分析可能とした成果は大きいであろう。

 とにかく面白く、一気に読める本である。平易な言葉で書かれており、専門知識が不要であることもありがたい。

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革命の父・孫文の後継者は、如何にして日本傀儡政権のリーダーとなったか

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 汪兆銘の目指す先は、中国を破壊させないというその一点にあった。彼は日中の戦力差を考えたとき、満州国を強引に樹立させ、中国各地で進撃を続ける日本軍と、各地で敗退を重ねる中国軍とを比較したとき、抵抗だけが続けば中国は滅んでしまうと考えた。そして、その最悪の事態だけは避けようとして、「一面抵抗、一面交渉」と唱えて日中和平に奔走することになる。

 共産党と結んでまずは大陸から日本勢力追い落としを図る蒋介石と、共産党勢力の伸張を恐れる汪兆銘はまずは国内を固めるのが先決でありそのためには日本との和平を行うべきだとして蒋介石と決裂、南京に臨時政府を樹立するに至る。

 本書は汪兆銘の親族らへのインタビューを行う事で汪兆銘の人物像を描き、南京政権樹立までの経緯を追い、文人政治家であり夢見がちな彼に対し日本側が採った行動を示す。

 汪兆銘は、日本と対等の立場で外交が行えるほどの力を持つ事が出来なかった。日本はそれを知り、汪兆銘に幾つもの苦しい選択を強いながら、彼の頭ごしに蒋介石とのルートをも作ろうとしてしまった。この日本の態度が、中国(及び台湾)の、汪兆銘に対する評価を決定させてしまったと言って良い。即ち、“汪兆銘は売国奴(漢奸)である”というものだ。

 しかし、本書を一読すれば彼が売国奴であったわけが無い事が良くわかる。彼は彼なりの判断で中国を良く導こうとしたのだ。上巻では汪兆銘の思想、行動原理を証言をもとに追いかける事で彼の目指した世界を描き出す。それは冷徹な現実とは微妙にずれた、理想に傾きがちなものだったかもしれない。しかし、汪兆銘が身を削ってでも中国を守ろうとしたことは良く伝わってくる。

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