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先月(2017年6月)

鈴木 力さんのレビュー一覧

投稿者:鈴木 力

1 件中 1 件~ 1 件を表示

まっとうで、非常識

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 面白おかしく、という言葉がある。通常はあまりいい意味では用いられない。「面白おかしく語って」などといえば興味本位、下世話の極みと人々は受け止めるようである。
 しかし、物事を面白おかしく語ることほど至難の技もないのだ。疑われる向きは、スポーツ新聞や週刊誌をご覧になるがよい。面白おかしくなりそこなった文章のモルグではないか。
 他人の話ですら面白おかしく語るのは難しいのだから、これが自分のこととなるとさらに困難なのは言をまたない。身の上話というものがどれほど聞く者をげんなりさせているか。
 横田順彌は、そんな低いように見えて実は高いハードルを軽々と越えてみせる。時代は一九六〇年代。今は古典SFと明治史の研究で知られる著者が、SFファン活動・大学の落語研究会に熱中した青春を振り返る半自叙伝。本書は、ただそれだけだ。それだけでしかない。
 しかしこれがとてつもなく面白く、またおかしいのだ。落研として慰安に訪れた老人ホームで若い男に飢えたお婆さんたちに迫られたり、見るからにやばいスジの人と雀卓を囲む破目になったり。けれども本人たちが一方的な被害者なのではなく、あまりにもトホホな方法で小銭を稼ぎ、合宿先の民宿でプロレスごっこをやって主人の顰蹙を買っているのだからどっちもどっち、まあ昔の学生というのはなんと無意味なパワーと機知に溢れていたものよと笑いながらふと羨望さえ湧いてくる。
 こんなふうに本書を紹介しておいて言うのは矛盾しているかもしれないが、通読して印象に残るのは著者の「まっとうさ」である。それは、落研にアジりに来た左翼学生を、革命革命と言いながらあなたがたは内ゲバばかり繰り返している、ならばお年寄りを笑わせるほうがどれくらい世のため人のためか、とやりこめるくだりに如実に現れている。現象としてはどんなに馬鹿馬鹿しくあろうとも、その底にあるのは目の前にいるひとを楽しませてあげたい、という人間として至極まっとうで崇高な精神なのである。それは本書の語りにおいても見事なくらいに貫かれている。そう、面白おかしくてなにが悪いのか。
 常識がなければ非常識な話など書けない、とあるSFの大家は喝破した。そういう意味で本書は、偉大なる常識人だからこそ書けた非常識で破天荒な青春記なのである。本書が横田順彌ファン、SFファンのみならず広く読まれることを願ってやまない。

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