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先月(2017年8月)

鍵屋さんのレビュー一覧

投稿者:鍵屋

4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本シモーヌ・ヴェイユ力の寓話

2001/06/28 12:06

ディアロゴスの行方

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「カイエ(3),(4)」、「ギリシャの泉」の翻訳者である冨原真弓による、待望のヴェイユ論考である。数年に渡り断片的に各雑誌に掲載されたものをまとめたものであるが、その態度は一貫して変わらずヴェイユの思索のあとを綿密にたどるという方法を採る。ヴェイユの主張を整理し薄めたような概説書ではなく、あくまで求心的にヴェイユの指し示した方角を目指す。

 「哲学は進化しない」とのヴェイユの主張に賛同するなら、この書もまた新しい点は何もないであろう。だがそれは決してこの書をおとしめるものではない。なぜならこの書はヴェイユの言葉をしっかりと受け止め、今の時代にむけて投げかけるという困難にあえて挑戦したものだから。その試みの正否ではなく志の高さにおいて評価されるものであっていい。

 誤解を恐れずにいえば、ヴェイユのテーマは「力」と「言葉」に集約する。考える手だてとしてヴェイユは寓話的発想を好んだ。ソフォクレスの「イリアス」、ギリシア悲劇の「アンチゴネー」や「エレクトラ」、プラトンによる「国家」などを俎上にあげ解釈を施す。ここに「救われたヴェネツィア」を加えてもよいだろう。そして歴史上に出現した寓話として、ローマ帝国、アルビジョワ十字軍、ヒトラーを。

 冨原女史は常にヴェイユの言葉を地道にたどる方法を採った。決して論の真偽を正否を審判するのではなく、ヴェイユの言葉の意味を理解しようとする。そのためヴェイユの著作からの引用文と冨原女史の地の文が織りなす、アラベスクとしてこの書は存在する。ヴェイユとの絶え間のない対話の成果ともいえる。

 「力」について、「言葉」について、「歴史」について、根源的に問い直す作業が今こそ必要とされているのではないか? 長期的な見通しに立って文明を考える際にヴェイユの思索は示唆に富むものであろう。大衆消費社会において新たな帝国主義でもあるグローバリズムが見え隠れする現代において、「力」について考えることは無益でない筈だ。

 必要なのはヴェイユの読解をこの書から始めること。ヴェイユを聖者、神秘主義者にしてしまわないことであろう。

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紙の本鷗外の坂

2001/05/25 23:35

現在・過去・作品のクロノトポス

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 晩年の森鴎外に「渋江抽斎」という作品がある。事跡を調べたり、人にあったりしたことをそのまま書いたものだが、鴎外が好んで書いているのが判るので、読んでいて楽しい。

 森まゆみのこの書もその方法に則って書かれているが、文体は気負いやてらいもなく等身大で書かれており、鴎外やその周辺の人に対する姿勢はまっすぐで美しいとも思える。樋口一葉を題材にした近作「一葉の四季」では、その文体に磨きがかかりより味わい深いものとなっている。

 鴎外の生きた時代の風景、作品の中に描写された風景と、現代の風景などが、作中の人物や鴎外とその周辺の人、現代のひとと結びつき混ざり合い、作者である森まゆみの作品世界への参加ををうけてこの「鴎外の坂」は成立している。その思考は徹底して歩行者の思考である。作品の中を、今に残る当時の面影を、鴎外だけに焦点を絞るのではなく、周辺にも目配せすることにより、鮮やかに時代の空気を描き出す。
 だが著者は決して現在の物差しで単純に過去をおしはかり、お気軽な批判を加えたりはしない。当時における様々な時代的制約というしがらみのなかで、自ら生きた人にたいして温かいまでのまなざしをむける。

 白眉は「雁」のモデルともなり、鴎外の妾であったといわれるおせきさんに関する章「無縁坂の女」であろうが、この章に関しては男である評者は語る言葉を持ち得ないのが悔しい。この章だけでも読む価値が十分あると思わせる。

 対象に対する愛が深められた作品に結実したときいかに素晴らしいものになるかを判らせてくれる名著といえる。

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生きることの滑稽さについて。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この書は、2001年4月8日にガンで逝去された神科医である著者が生前に書き記したものを元に出版されたものである。頼藤氏は新聞や雑誌などのコラムでも活躍されていたので、ご存じの方も多いと思う。

 不謹慎かとも思うが評者は読みながら何度も笑みがこぼれた。著書を読んだり、講演を聴いたことのある人はご存じの頼藤節は末期に及んでも健在である。その点でこの本は世間に流布する闘病記などとは、確実に一線を画す。そのあたりも考えて「耐病記」とされたのだと思う。
 その点で口当たりの良いセンチメンタリズムとは無縁である。恐らくは頼藤氏個人がその足取りを確かめるためにこの書は書かれたのであろう。

 精神科医やカウンセラーなどの日々臨床に携わる人に求められる能力の一つに「気づき」というものがある。普段何気なくやり過ごす事柄の一つ一つをおざなりにせず、その意味を問い直す作業とでも言えるかと思う。

 この書は、その様な「気づき」に基づく様々な知見が散見される。そのどれもが故人を偲ばせ思わず笑みがこぼれるのである。普通なら悲壮感漂わせ、刹那的な行動にはしったり、感傷的になったり、信仰に目覚めることもあり得るのに、著者はそのどれも拒否する。その姿勢は、滑稽でもあり爽快でもある。
 だが著者に限らずそもそも人生そのものが無益であり振り返れば滑稽なものなのだろう。その点を指摘しているだけでもこの書は読む価値がある。
 人ははどうしても自らの行動に意味を求め、目的を求め、それらにしがみつく。一日を一日として過ごすことの困難な時代に私たちは存在する。それ故、人生の些末な事柄に拘泥しがちであると著者は指摘する。それが現代人に特有の意味喪失の現れであるということはたやすいかも知れない。だが著者が自らの体験を元に語り記されたこの書を前にして、故人である著者の人生が無意味であったとは誰もいわないであろう。この書は精神科医、頼藤氏にして初めて実現し得たものに違いない。

 職業として、生死に関わる方には是非読んで頂きたい書である。

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紙の本ワインコンプレックス解放宣言

2001/04/20 10:00

ワインに愛を〜闘士小仲律子の最初の一歩〜

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 小仲律子は情熱の人である。現代的な文体で装われたこの書を読む人は、そこかしこにその人となりが現れているのに気づくであろう。

 この書はワインの楽しみ方についての豊富なヒントに満ち溢れている。この書はワインを出発点に、どんどん逸脱するかのように様々な領域を横断する。ファッションと、映画と、文学と、歴史と出会うことにより。そしてその遍歴のあとワインはいよいよその輝きを、深みを増すがごときである。

 この本は単なるワインについてのみ書かれた本ではない。そのような本をお望みならこの書を読むべきではない。ここにあるのはワインを手に生きる人の「今」の姿である。ワインはなによりもまず飲まれるものである。知識を玩ぶ為の物ではない。なによりもまずワインは楽しむためにあるのであって、自己顕示の為にあるのではない。そうこの書は説くがごときである。軽やかな文章の底にはワインをかしこまった知識の牢獄から解き放ち生活世界の彩りの中に取り戻さんとする野望を秘めている。その点においてこの書は本邦においてワインを楽しみたい人のために書かれた稀有なる書である。

 願わくばこの書を読まれた方が自分の楽しみ方を見つけられんことを!

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