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    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

ががんぼさんのレビュー一覧

投稿者:ががんぼ

317 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本永遠の0

2012/08/24 15:48

重いテーマを濃密かつ面白く描ききる作家の力量と倫理性

21人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

見事!

と書いてから、前に読んだ『影法師』の感想もこの一言で感想を始めたことに気が付いた。やはりこれは本物の作家だ。この読みごたえはどうだ。

前に読んだこの作家の2冊、『ボックス!』と『影法師』も面白くてかつ内容が濃かったし、またこの作品の素材が太平洋戦争、それも特攻ということで、重厚な内容であることは想像はしていた。が、あらためて作家の力量に感服する。泣かせる。

特攻隊員として死んだ謎の祖父について、孫であるジャーナリストの姉と、語り手となる弟とが、複数の人物の証言をもとに迫っていく、という話。生きて家族の元に帰りたい、と当時としては異端の発言をし、臆病者とも見られながらとんでもない飛行技術を持っていた男とはいったい何者なのか。

人物をめぐる謎解きの物語でもあり、その点は『影法師』とも似ている。素材は重いが娯楽的要素も十分、ミステリー的な仕掛けも見事。そしてその結果明らかになるのが深い人間の真実であるというのがもっと見事。

この作家は放送作家としてのキャリアがあるが、小説はこれがデビュー作という。そこへこの重い素材を取り上げたというのは、おそらく前々から、太平洋戦争当時の軍、あるいは戦後の国家に対する半端ではない義憤があったのだろうと思う。そうした強い思いが感じられる。

しかしそれはいわゆるイデオロギーとは違った、何よりも人間の生き方の問題であるのは、ほかの作品を読んでも感じられることだ。あえてまとめるなら、人間が生きていくための真実、何を大切に生きていくべきか、というような思いとつながるように思う。そういう意味でとても倫理的な作家だろうという気がする。

構成としては、姉弟の取材に対して複数の人物が証言し、それによって祖父の人物が浮かび上がる、という形だが、そうした証言は謎解きの材料というだけでなく、それぞれの生きた戦争を映し出し、悲惨な時代を鮮やかに蘇らせる。

当然ながらそれは単純なものではない。生きたいという強い思いがむしろ死につながる皮肉など、苛烈な運命を生きる人間が背負わねばならない複雑さ重さを描き切ってみせる。だからこそ最後に涙を誘われる読者が多いのだろう。

以前、サッカー元日本代表の松井選手がこの本を読んでいるとTVで紹介されて、ちょっと驚いた覚えがある。松井選手も言っていたが、特攻のことなどよく知らない若い世代が読むといいかもしれない。また知ってはいても表面的なレベルで済ませているもっと上の世代も、もっといろいろ考えるためのひとつのきっかけとして、読んでおきたい本という気がする。

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良心的な解説でお買い得な一冊

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これはいい本ですね。
文庫でコンパクトな中に情報量も多いし、
文章もていねいで、図解入りの説明はわかりやすいです。

いわゆる健康本はたくさん出ていますが、実は玉石混交で、
極端な場合、タイトルを聞けば読まなくてもいいものや、
要点は数行で済んで、
あとはわりにどうでもいいことしか書いてないものも少なくないように思います。

この本は、別にスポーツマンでもない一般の人でも、
筋肉がいかに重要か、というポイントを軸に、
筋肉をつけるための体操、トレーニングなどの説明はもちろん、
習慣のなかに取り込める様々な方法、
そもそもの基本的な考え方や食事など日常の心構え、
そうした考えのもとになる医学的知識やデータ、
さらには継続するための気持ちの持って行き方についての工夫など、
多岐にわたる心配りのもとに書かれていて、
これで600円というのはいかにもお得な買い物でしょう。

もちろん読んだだけで健康になるはずもなく(当たり前ですね)
実践するにあたって、
読者のニーズや現状に合うかどうかという判断は大事でしょうが、
総じて多くの人にとって、
手元に置きたいとてもしっかりした本ではないかと思います。

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紙の本忍びの国

2011/03/15 10:46

壮絶アクションになってもなお痛快

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 なるほど只者ではない(物語中の口調になっているか)。デビュー作の『のぼうの城』は痛快だったが、それだけでは一発狙いのまぐれ当たりという可能性も皆無とは言えなかった。しかし2作目のこれを読んで、この作家の才能は間違いないと確信した。並みではないのである。自由奔放に書いているようでいて、参考文献表の多さには唸る。要はちゃんと歴史文書が読める普通の意味での秀才であり、それを優れた物語に造り替えられる一級の才人なのだ。
 『のぼう』に比べれば、こちらにはより戦国時代らしく血で血を洗う戦闘シーンも多くて、この作者に特徴的な、どことなく飄々とユーモラスな調子が一見そぐわないほど、終わりに向けた展開は凄まじい。
 が、かといって痛快度が落ちるわけでもない。主人公無門の人間とも思えぬとんでもない技量、そしてそれでいて愛すべき多少間の抜けた人柄。無門の本性が、まるで忍びの術のように一種のどんでん返しになっているのもいい。
 素材は信長の伊賀攻め(厳密にはその子信雄による最初の伊賀攻めの失敗)だが、まず何が描かれているかといえば、伊賀者と言われる忍びの道の非人間ぶりであろう。それを見事な物語化の中で内側から突き崩して見せた。
 最後の締め方一つとっても才能を感じさせる。そして前作同様、人物の魅力を描き切る手腕は傑出している。ユーモアの味と共に、修羅場のアクションになってもなお痛快な所以である。
 これは今後が楽しみな作家だ。次はどんなものを見せてくれるのか。願わくば変な方向へ行ってしぼんでしまわないように。

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紙の本あなたへ

2012/09/04 15:05

類稀な「小説化」にびっくり

11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

高倉健主演の映画『あなたへ』が現在公開中で、話題になっている。
モントリオール映画祭でも賞をもらったとか。

そして驚いたことに、この小説『あなたへ』は、映画の内容をもとに小説として書かれたものなのだそうだ。
逆、つまり映画の原作がこの小説だと思っていたから、本当にびっくりした。

原作がある映画だと、どちらも楽しみたい、しかしどっちが先かと迷うことが多いが、
この場合は「原作」にしようと読み始めた。

わかってみるとこれは映画の功績なのだろうが、まず、妻の遺言による旅、というアイデアがいい。
遺言で妻は、富山にいる夫に、
彼女の故郷の長崎の小さな漁村まで自分の遺骨を持って行ってその海に散骨してほしいという。
そしてまた、そこで局留めになっている自分からの手紙を読んでほしいと。

いったい何のことか?
手紙には何が書いているのか?
その村には何が待ち受けているのか?

夫はもともと妻のために用意したキャンピングカーで長崎に向かい
読者は謎にひきつけられて話を追う。

そしてその終わりに待っているものもすばらしい。
発見のカタルシスをぜひ味わいたい。

旅の途中でいろんな人間と出会う、という設定もいい。
それだけでは、ありがちなものに聞こえるとしても、要は実際の関わり方である。

一つの死がいくつもの生をよみがえらせる構図の見事さ。

映画はまだ見ていないので、どこまで映画どおりなのかわからないが、
組み立ての細やかさ、描写の豊かさには、作家の腕が相当発揮されているような気がする。

作者の森沢明夫という人は、私はこれまで知らなかったが、
既にいくつもの魅力的な作品を書いている作家らしい。

最初の一章だけでも、その能力の高さはわかる。
死を間近にした妻とその夫、という難しい状況を、
言葉一つ一つを大切に、いつくしむように丹念に紡ぎあげる職人芸。

主人公が刑務所で木工を教える作業技官、というのはおそらく映画からの設定だろうが、
くしくもその木工の細やかな心配りが、まさにこの作家の語りにも感じられて嬉しい。
まるで自分の考えた設定のようではないか。

映画も小説も楽しめる、というのは、ありそうで意外にないことのように思う。
この場合、映画で満足した人が、映画を見たから小説はいいと思うのなら、
それはきっともったいないことだ。
小説の素晴らしさは間違いないからだ。
そして映画もきっと素晴らしいに違いない。

この作家のほかの作品もぜひ読んでみたくなったし、
映画『あなたへ』ももちろん見てみようと思う。

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紙の本慟哭

2011/12/09 11:54

鳥肌が立った

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 読んだとき、作者のこともこの小説のことも全く知らなかったが、書店の店頭で見かけて興味を惹かれた。なんといっても帯の「題は『慟哭』、書き振りは《練達》、読み終えてみれば《仰天》」(北村薫)が効いている。
 たしかに「仰天」だった。真相が明らかになる一文を読んだときには、全身鳥肌が立った。十数秒、あるいはそれ以上も頭がしびれているのがわかった。読書という精神的な行為で、これほどの肉体的な衝撃を受けたことはないのではないか。文字通り体が震撼した。
 この衝撃は単に意外性によるものでも、トリックへの驚きでもない。それは、堅実で質の高い文章がここに至るまで積み上げてきた人間世界の重さが、一挙に崩れる衝撃にほかならない。解説(椎谷健吾)の「文章から受ける印象自体がトリックを絶大なものにする手法」というのはまったく言い得て妙である。
 たしか朝日新聞の中条省平の書評で、ミステリーというのは、第二次大戦などの悲惨を経て、トリック重視よりも人間の暗面を探る犯罪小説になった、ということが書いてあったと思うが、この著者も、紛れもなく資質としてそうした系譜に属する作家である。そしてそのことと、人を驚かすアイデアとが表裏一体、渾然となっているのがすばらしい。トリック重視の、純本格派の読者には不満もあるらしいから、この小説の好みも分かれるのだろうが、娯楽小説であっても、より文学度の高い、単なる絵空事ではない人間味を求める読者にとっては、嬉しい作家である。
 幼児誘拐殺人とか新興宗教とか黒魔術とか、あまり気持ちのよくない素材を使っていても、往々にしてそうしたものを扱う小説が悪趣味に堕するのに対して、基本的にどろどろしていない描き方なのもいいと思う。他の作品も読んでみたくなった。

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紙の本百舌の叫ぶ夜 改訂新版

2014/05/15 13:48

予想を超えた快作

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

逢坂剛はビッグネームだから名前は知っていたが、
これまで何も読んだことがなかった。
たまたまその親戚という人に会って話したことすらあるのに、
だから読み始めることもなかった。
今回読んだのは、西島秀俊主演のドラマのせいである。
ドラマ自体に興味はないものの、
話として面白そうで、では原作を読んでみようかと思った次第。

読んでみると、これが面白いではないか。
もちろん長く活躍している作家だからそれなりではあるはずなのだが、
ここまで出来るのかと感心。
おみそれしました。

幾重にも張り巡らされた謎の仕掛けと、そしてその答えがすばらしい。
わかってから要素にばらしてしまえばそれほど珍しくはないが、
しかしこんな組み立て方はなかなかできるものではないと思う。
やり過ぎではと思う箇所もないではないものの、
全体のインパクトが強烈なのですぐに忘れてしまう。
ちなみに要素というだけでいうなら、
個人的には天童荒太の『永遠の仔』や、横山秀夫の『64』を連想した。
もちろん全く別の話だから、
それらを読んでいても、またそれらが好きでも嫌いでも特に影響はない。

そして人物。これがとてもいい。
なんといってもドラマで西島秀俊が演じる倉木警視が強烈。
微妙に人間性のタガが外れたような異様さ、激しさの迫力。
しかしそれだけではない。
文庫解説の船戸与一が書いているように「誰もが一筋縄ではいきはしない」のである。
(ちなみにこの解説はネタバレがあるので、先には読まないほうがいいと思う。
逆に作者自身の「後記」は、先に読んでおくと混乱が少ないかもしれない。)
だから役割だけでいえば正義の側が嫌だったり不気味だったり、
悪の側に共感したりということがあっても全然不思議はない。
いずれも癖のある、そしてだからこそ魅力のある人物造型なのだ。
個人的には大杉という刑事が気に入った。
ドラマでは香川照之が演じているらしい(ちょっとイメージが違うが)。

読み終えてから、この「百舌」がシリーズで、本書を入れて5巻、
さらにプロローグ的な前日譚があって、それも入れると6巻あることがわかった。
こうなると全部読まずには済まない気がしてきた。
さらに、逢坂剛というと「スペインもの」が有名で、
その代表作は直木賞受賞の『カディスの赤い星』だそうだが、
解説の船戸与一がいうには、警察ものは変化球なのに対して、
スペインものは速球なのだそうだ。
となるとこちらも気になってきた。

今まですれ違っても気が付かないでいたようなこの作家、
もしかしてハマることになるのかもしれない。

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紙の本さようなら、オレンジ

2014/01/13 11:47

二つの顔

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

太宰治賞を受賞した作品だそうだ。
それを掲載した雑誌『ムック』発表当時からじわじわと賞賛の声が上がり、
口コミ的に評価されて異例の増刷だったとか。
私も評判を聞きつけて本を手にとった一人である。

作者の住むオーストラリアを舞台に、
アフリカ難民の女性サリマと、夫について来た日本人妻サユリと、
異国におけるそれぞれの人生の困難とそれとの葛藤を描いた物語である。
他国で暮らす日本人の違和感、というのはありがちな話だろうが、
それとはまるで異質な外国人を絡める設定が魅力的だ。

もちろん苦い現実が描かれるわけだし、
それを単純に乗り越えていけるわけでもないのだが、
二人の女性を内面を語る言葉は美しく、感動を呼ぶ。
なるほど心をつかまれた読者が多いというのも頷ける。
ちょっと不思議な題もいいし、本の装丁も美しい。

物語の中心にあるのは「言葉」というテーマである。
いずれも英語を母国語とするわけではないヒロイン二人が英語の国で暮らす。
それは単に実用上の困難というレベルではなく、
アイデンティティ、それぞれの生き方の問題として捉えられている。

この二人の人生の対比と交錯ぶりが見事だ。
物語は、サリマに焦点を当てた三人称の語りと、
サユリが恩師のオーストラリア人に宛てた手紙からなり、
これらが交互に現れる形で描かれていくのだが、
二人のアイデンティティというだけでなく、
祖国とオーストラリア、過去と未来、現実と夢、絶望と希望など、
いろいろな意味で二つの面が絡み合って描かれる様が印象的である。

少し驚いたのは、芥川賞候補に選ばれていること。
あと数日で選考結果が発表されるが、
芥川賞といえば、前回の藤野可織「爪と目」でもその前の作品でも、
いかにも純文学らしい仕掛けと韜晦さを持つという印象がある。
一方この本は、ある意味ふつうの、一般ウケする内容だからだ不思議な気もするのだ。

そこで選考委員たちは何を見たのかと考えてみると
ちょっと思い当たるものがある。
人物の名前である。

ニックネームは別としても、同一であるはずの人物の名前を別に呼んでいるわけで、
これは何かあると思っていたら、最後にその仕掛けが明らかになる。
これについては、違和感を覚える読者の感想もあるようだし、
試みとして評価できるものなのかどうか簡単には言えないだろうが、
一見ミステリー小説のようなその仕掛けの背後に、
サユリにとって、ないしは作者にとっての、書くこと、あるいは物語を書くこと、
ひいては、現実とどう向き合うかという問題が浮かび上がってくるように思う。
そしてその際、言葉というものが、
己のアイデンティティあるいは生き方にいかに関わってくるか、
という深い問題意識も窺えるような気がする。

作者のことはよくわからないが、在豪20年というから、
多分に個人的な経験が反映した物語であるのはたしかだろう。
ユニークと見えた日本人女性とアフリカ人難民の関わりも
おそらくはそうした事例はいくらでも身近にあるだろうし、
少なくても観察できるところでの自身の体験に基づくのではないか。
そういう現実を小説の形で追体験できたのもよかった。
今後もこの作者がオーストラリアに住み続けるとして、
また作家としての活動を続けていくとして、
これから我々の知らないどのような感覚で、どのような物語を見せてくれるのか。
楽しみである。

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電子書籍おおきく振りかぶって(20)

2012/12/28 22:40

可能性を開く合同練習

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

前の巻に続いてとても楽しい。

かといって、試合はあっても練習試合だし、あとは練習だけ。本番は何もない。
しかし優れた物語というのは、
メジャーな部分、スポーツ系の物語なら、大会とか試合とかだけでない、
それ以外の部分でも読ませるものなのだろう。
単にメリハリを付けるということでもなく、表向きは派手さのない部分にもしっかり魅力があるのだ。

ここでは合同練習というアイデアがすばらしい。
都道府県の境を超え、数校のチームが協同して合同合宿を組むのである。

強くなるためにひたすら鍛えるという直線的な描き方だっとしてもインパクトはあるだろうが、
距離的にも遠い知らない学校のメンバーとの合同練習というアイデアには実に豊かなものがある。

それは一言で言えば多様な可能性ということだろうか。
同じ目標のために、
しかし違ったやり方で、多少とも違った生活環境でがんばっている球児たちとの共同。
そこから得られるものは大きいだろう。
絆ができるのもいいし、一種の異文化交流としての魅力もあって、お国言葉が違うのも楽しい。

このマンガは主人公たる西浦の立場からだけではなく、
ほかの学校の生徒たちの視点からも描かれるのが魅力の一つだが、
それにしてもいつもなら西浦は何といっても馴染みの存在なのが、
ここでは彼らをまるで知らない目から描かれる新鮮さもある。

そしてそのいわば未知の状況の中で、西浦の仲間たちはいろいろ試してみる。
試すのは、戦う方法や、それぞれの能力などだが、
それはとりもなおさず若い彼らの開かれた可能性を感じさせて爽やかだ。

そして、最後には、自分たちのあるべき姿にあらためて到達して一つになる。
コミックの巻の区切りとしてはなかなかないほど巻末で完結しているのだが、この終わり方も実にいい。
グッと締まって、そして次へとしっかりつながっていく。
今後もとても楽しみである。

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紙の本社会を生きるための教科書

2011/03/10 21:14

愛情の感じられる、大人にとっても役に立つ本

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本は岩波ジュニア新書だから、読者として念頭に置いているのは高校生ぐらいだろう。社会に出て暮らして行くときに知っておくべき基本知識をコンパクトにわかりやすくまとめた好著。
 しかし若者だけの話ではない。我ながら、モノ知らんなあと思うことが少なくないが、たぶん他の人も、大人であってもそういうことはけっこうあるのではないか。だから解説本、入門書の類がよく売れている。考えてみれば、実は学校で、けっこう世の中についての基本的な知識は習っていて、いい教科書や参考書もあるのだ。だがその頃にはあまりそのありがたみがわかっていない。受験にも関係ないとかで勉強もしない。あとで、そういえばよさそうな教科書があったなあ、と思った時には手遅れで、既に教科書など処分済みということも多いだろう。そういう人間にはありがたい本である。
 わかりやすさの底に、若者に対して親身に世話をするような、愛情のようなものが感じられていい。終わりにものを知ること一般についての心構え、アドバイスがまとめてあるのもいいと思った。

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絆の力、そして展開の妙

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『キングダム』はなぜ毎回こんなにも面白いのか。
いつも思うのは、メリハリや変化の巧みさということである。

大軍のぶつかり合いがあると思えば一対一の対決がある。
肉弾戦の一方で頭脳戦がある。
戦闘の激しさの合間にしみじみとした心の語らいがある。

今回は前の巻に続く羌?の戦いから始まるが、
暗殺者としての戦いは、いわば信たちの表舞台に対する裏、
光とは別の、影の戦いとして、また違った味わいがあるのがいい。

そしてそこで確認されるのは、
闇の力を超えるものは「絆」の強さなのだという、
この物語の根底にあるテーマである。

羌?の話のあと、
合従軍vs秦の死闘以後の各国の事情が語られる。
ああいう大きな流れが途切れたあとの展開は、誰しも興味の湧くところだろう。
そして物語は、何よりも秦の内乱の話へと移っていく。
つまり政と呂不韋との直接対決がいよいよ始まるのだ。

いつか必ずあるとわかっていたことだから当然といえば当然の展開だし、
この巻は始まりの段階で、まだそれほど大きなアクションはないのだが、
にもかかわらずこのワクワク感はどうだろう。

いろいろ陰謀が見えてきたりほのめかされたり、
新しい登場人物も含めて、何かと意外性に満ちた、
今後大いに楽しめそうな種がいっぱい撒かれている。
変化などといっても、単純な二分法ではない巧さだとあらためて思い知らされて、
描き方の見事さに唸ってしまう。

巻の最後も、次への期待を存分に膨らませてすごくいい終わり方だ。
満足。

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新しい力、新しい時代

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

函谷関の決戦の隙をついて、秦の首都咸陽を狙う李牧。
気がついて追ったヒョウコウは突如現れたホウケンに倒され
失意の信らは咸陽をめざすも、秦は絶体絶命の危機。
そこへついに秦王政みずからが立ち上がる。

これが前巻の内容だった。

これに続くこの巻では
合流した政と信とが咸陽手前の小さな城で合従軍別働隊を迎え撃つ。
これまでとは趣きを変えて、
城をめぐる攻防である。

迫力という点では、それこそド迫力だったここ数巻よりはやや落ちるだろう。
しかし今回は今回でまた違った味わいがある。
巧みにメリハリをつける作者原さんの職人芸である。

一般の人々をも動かす政の檄の言葉の力。
それはもちろん政の熱いハートの力でもあるが、
こうして言葉で人を大きく動かして歴史を刻んでいくというのは
中国歴史物語では定番ともいえる名場面だ。

そして限られた兵力で圧倒的な敵と戦うわけだし、
敵は何しろあの智将李朴だから
当然のように頭脳戦でもある。

しかしこの巻にきわだつのは、なんといっても若い力の存在だろう。
主だったビッグネームは函谷関に張り付いている中
ここで戦うのは新しい世代のように見える。

今まで豪勢な脇役陣にかすみがちだった大王政も、
ここでそのすごさの一端を見せる。
信と政との再会も数年ぶりだが、ほかにも懐かしい面々も登場。
キョウカイですら、信の脳裏に現れる(でもそろそろ本物に復活して欲しい)。
そして新しい敵もまた若者だ。

信が父と仰いだ王騎もヒョウコウも今は亡い中、
新たな英雄に名乗りを上げるのは、こうした若者たちなのだ。
もちろんその中心には信がいる。

そういえば、今回の帯には、手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞の知らせがあった。
おめでとうございます。
長く親しんできたファンからすれば、もちろん嬉しくもあるが、当然という誇らしい思いもある。
原さん自身も、まさにこれからの日本の漫画界を担っていく新しい力であるのは間違いない。

このあとがいよいよ楽しみである。

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紙の本カフーを待ちわびて

2012/04/15 11:59

傷と癒し、そして絆 ― 南の島に展開する限りない優しさの物語

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

恋愛とは、二人が離れている状態をいう言葉で、
だから一緒に住むようになったりしたら恋愛ではないのだそうだ。

最近たまたま、ある作家の言葉として紹介されているのを何かで読んだ。

定義として考えると反対する声もありそうだが、自分の中ではなるほどと納得。
結ばれる以前、あるいはついに結ばれない関係の、不安、苛立ち、夢想、ときめき、切なさ。
そういうものが恋愛なのだろう。

第1回「日本ラブストーリー大賞」受賞作というこの小説は、沖縄の離島を舞台に、
まさにそうした「恋愛」を見事に感動的に描いた作品である。

実はこの作家、最新作らしい『楽園のカンヴァス』の書評を何かで読むまで、名前も知らずにいた。
一度意識すれば忘れにくい名前だろう。
興味を惹かれて調べてみると、もうずっと活躍している人だとわかる。
ほかの作品も面白そうで、
となるとむしろ先に書かれた本から読んでみたい気になって手に取ったのが本書である。

たまたまわりに最近、南の島に行く機会があったので、そういう気分だったのかもしれない。

沖縄、あるいは他であっても、南の島には癒しを感じる。
現地の人の感覚はまた違うのかもしれないが、外から行く人間にとっては少なからずそうだろう。
だからそういう舞台の物語には、癒しや和みをもたらしてくれるものが少なくない。
池澤夏樹の短編集『南の島のティオ』や、映画の『めがね』が思い浮かぶ。

恋愛が結ばれない状態を意味するとすれば、それは不確かなものとしてあるから、
サスペンス性も強くて物語にはなりやすい。
実際この物語も、謎やトリックもあって、ほとんどミステリーのようにも読めるのがすごい。
だが、そこで沖縄の島が舞台というのがとても大きな要素になる。
最後は広く深く海のように、何か無限に大きな優しさに包まれる感覚があって、それが心地よいのだ。

そのことはおそらく、とことん優しい主人公の人間性
(焦れったいまでの人の良さとも言えるが)とも無関係ではない。

冗談のように旅行先の神社の絵馬に「嫁に来ないか」と書き込んだ主人公のもとに、
「お嫁さんにしてください」という便りが届く。

ありえないような、あるいはバカバカしいとすら感じられる発端だが
(しかしそのわけはちゃんとあとでわかる)、
こうして夢見るような設定もまた沖縄という舞台によく合うのだ。

これは恋愛を描いただけでなく、傷を抱えた者たちが、
絆によってそれを乗り超え、癒されてゆく話である。
そこには単なるラブストーリーを超えた感動がある。

一方で作品のマイナス面を挙げることはそう難しいことではない。
人物設定に疑問を感じたり(腹を立てている自分に苦笑いしたりする)、
ファンタジックな設定とリゾート開発をめぐるリアルさのギャップに釈然としないものを感じたりもする。
そもそもが作り物っぽい、わざとらしい話だし、展開もご都合主義的といえなくもない。

しかしそれらが欠点だとしても、物語に一度浸ってしまえば、
最後は圧倒的な筆力がもたらす海のうねりのような感動に呑み込まれてしまう。
結末に至る部分を読んで泣く読者は少なくないかもしれない。
作者のストーリーテリングの能力は高い。

切ないが優しい。
そして題が暗示するように、待つことには希望が託されているだろう。
南の島の光と風の中で遠くを見つめるような読書体験だった。

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紙の本コシノ洋装店ものがたり

2012/02/02 15:19

前へ!―ドラマな実話

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコといえば、今や世界に名を轟かせるファッション・デザイナー三姉妹である。意識しなくてもたまたま買ったものが彼女たちのブランドだったりする。
この三姉妹の母親の綾子さんがまた、とんでもない女傑なのだった。
その一代記をドラマにしたのが、NHK朝ドラ『カーネーション』である。

これが面白い。
ふだんはあまり関心がないのに、録画して全部見ている。
渡辺あやさんの脚本もいいし、主演の尾野真千子さんはじめ、役者の演技もいい。

あんまり面白いので、どこまで実話なのか、もともとの小篠綾子さんはどんな人なのか、知りたくなった。
で、本を探してみるとたくさんある。
私が知らなかっただけで、その筋では既に有名な人らしく、
2006年に92歳でなくなったが、テレビのインタビューなどにもけっこう出ていたらしい。

私が選んだこの1冊は、総合的に人生を振り返っている本で、
前に書かかれた『やんちゃくれ』を88歳のときに再編集したものだとか。

プロのライターではないから、文章に特別の味わいがあるとかいうわけではないが、
なかなかどうして巧みな表現力で、しっかり自分の考えを伝えられる人である。読みやすい。

しかし何といっても驚くべきは、その内容であろう。
事実は小説より奇なりとはよくいったもので、綾子さんの人生はそのままドラマである。
ここに書いてある内容は、多少の演出は加えられているにしても、ほとんどそのままドラマに使われている。
自分の好きな道をみつけて突進する少女時代、戦中戦後の苦しい時代、恋と子育て。波乱万丈である。
この時代を生き抜いた人生には、人に知られなくてもドラマチックなものが少なくないという気がするが、
その中でもこれだけ力強い生き方はそうあるものではあるまい。
それが娘たちの華やかな活躍のおかげで広く世に知られるようになったのは、我々読者の僥倖でもあろう。

何しろ強烈な個性の軌跡だから、誰もが読んで喜ぶというわけにはいかないかもしれないが、
ひとつの興味深い人生の記録であることは否定しようがない。

何よりも、好きなことをやる、それもとことんやるという徹底ぶり、
常に、前へ、上へ、と向かうエネルギーがすごい。
それは娘たちにも受け継がれていくわけで、その辺を描いた結末部は感動的である。
気持ちよく読み終えることができた。

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紙の本ふたがしら 第1集

2012/01/16 17:26

若さの魅力、コンビの魅力、絵の魅力

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

オノナツメのことをよく知っているわけではないからファンとはいえない。
しかしたまたま『さらいや五葉』を読む機会があって、その腕に唸った。
時代劇風にいえば、「おぬし、只者ではないな」という感じ。

その『さらいや』では脇役だった人物二人を主人公に据えて、
彼らの過去を描く新シリーズの登場である。
『さらいや』などではまったファンには嬉しいニュースだろう。

『さらいや』では、主役たちがあれこれ過去の傷を背負っていて、
過去についての謎と共に、その重くほの哀しい叙情のようなものが魅力だった。
それはそれでよかったが、今度はまた違った味わいだ。

若くて、これから何かでかいことをしてやろうと夢見る主人公がかもし出す雰囲気は
いかにも明るくてワクワク感がある。これからという二人だからというだけでなく、
『さらいや』を知っている読者には、「若返った」魅力が感じられる効果もあるだろう。

ストーリー展開なども、並みの力量ではない。私は時代小説をけっこう読むが、
その一流作家にもひけをとらない才能だと思う。

対等の関係だが、対照的な個性の二人によるコンビという設定も、
定番ではあるがとても魅力的だ。

またマンガといえばやはり絵の魅力である。

ちゃんと絵が描けるかどうかが基本であった昔のマンガに比べると、
正直この頃は、絵自体は下手なのに話の面白さで強引に持っていってしまう場合も少なくない。
それはそれで、絵の不足を補うほどのストーリーというのでたいしたことではあるのだが、
絵も楽しめるのにこしたことはない。

その点、オノナツメの絵は一級品である。とりあえず話を無視しても、
絵だけで味わえるレベルである。

人物を描くにしても、正面よりは横顔、うつむいた顔、やや斜めからの後姿などを好んで描き、
さらに手とか足とか、いわば外れた部分部分を描く。そうしたいわば間接の表現には
静かな間(ま)のようなものが生まれて、何もないようでいて何かを深く感じさせる独特の豊かな空間になる。
これはとてもいいと思う。

というわけで今後もおおいに楽しみである。

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紙の本噓つきアーニャの真っ赤な真実

2011/11/12 11:19

亡くなった名エッセイストが残した激動の時代の記録は小説のように面白い

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ロシア語の通訳として名を馳せ、その後手練のエッセイストとして評価の高かった米原さんは、突然のように逝ってしまったが、その米原さんが残してくれた、半ば自伝で、小説のように読めるエッセー集。いや、それともやはりある種の小説というべきか。
 米原さんは、日本共産党党員であったお父さんの仕事の関係で、プラハのソビエト学校に、日本で言えば、小学校の終わりから中学ぐらいの5、6年通っていたらしい。そこで身につけたロシア語が生涯の仕事にもなったわけだが、このエッセーは、当時プラハの学校でクラスメートだった友人3人の話を別々にまとめたものである。
 当時の思い出(と呼ぶにはあまりに複雑だったり辛かったりするのだが)と、その後著者が友人たちと再会を果たす様子などが生き生きと描かれて、ほんとうに小説のようだ。昔NHKでやっていた『世界こころの旅』のようでもあった。当時のプラハといえばソ連共産党の主導のもと、国際共産主義の連携の拠点のようになっていたようで、学校の子どもたちはそうした共産党がらみの親たちの子弟である。出身国もいろいろで、3人の友人はギリシア人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、そしてユーゴ人のヤスミンカ。ひとくちに共産主義と言っても国家によっていろいろで、たとえばユーゴとソ連、中共とソ連、日本共産党とソ連共産党の対立やらある。時代から言ってもプラハの春やら、その後には東欧及びソ連自体の崩壊があって、その中を生きて来て、また後半は通訳として関わった米原さんはまさに激動の時代の証人である。
 とかく我々にとっての「世界」とは欧米であり、ヨーロッパと言っても西側止まりであるところへ、こうした生活と生きた感情を伴った記録はとても貴重だと思う。もちろん語り部としての能力もすばらしい。
 その米原さんもほんの数年前、病気で亡くなってしまった。友人たちはそれを知っているのだろうか。まだまだ若いし、活躍の真っ最中だっただけに残念である。本書を読んで、もっと語ってほしかった、という思いがいっそう強い。

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