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先月(2017年4月)

navaさんのレビュー一覧

投稿者:nava

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初々しくも凛々しい自画像

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 作家、名波浩のデビュー作。初々しく、凛々しい(いまや死語となってしまった)自画像が描かれている。歯切れの良い文体に、テンポのよい話の運び。夢をもつ人は圧倒的にロマン主義だ。若ければなおさらなこと。ところがこの著者は若く、しかも壮大な夢をもちながら、リアリストである。転んでもただで起きないリアリストぶりが爽快だ。
 「僕が一つ遠ざかりながら流れることで僕は一度死ぬ。すると、別のもう人の前にスペースができる。彼がそれを感じて走り込んでくれれば、…」というように、たくさんのエピソードの中にサッカー観を織り込んでいるが、それがまたエピソードに還流して人生観、生き方を表現している。「右足が嫌いになっていた。…右足は感覚として許せない」という感覚派名波らしい文章もあちこちに散りばめられている。
 良いサッカーチームは、地上では実現することがまれな社会理念であること、精神の呼応であること、だからこそ人々は理念のつかの間の実現の、その快感を求めてスタジアムに足を運ぶ。私はそう思っていた。名波選手はこう言っている。「考え続けることは僕にとって楽しいサッカーであり、サッカーの理想そのものだ。…他のプレイヤーと息が合うこと、それはどんな遊びよりも楽しいことなんだ。普段の生活では決して味わうことの出来ないものがある」。
 この本はスポーツ・ジャーナリズムに一石を投じることになるに違いない。ピッチの上での彼のプレイに比べると、多少語彙が不足しているのは仕方がない。だが、この先生涯に3,4冊は書くあろうことを予感させる文章ではある。

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