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先月(2017年4月)

Ayukiさんのレビュー一覧

投稿者:Ayuki

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本遠い山なみの光

2001/12/07 21:03

成立しない会話

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 中年から初老の域に達する日系イギリス人女性。娘の自殺という「事件」のあと彼女の心に去来する、戦後まもない長崎での生活の回想を淡々と描いた作品。

 初め読んでいてどこかしっくりこない、むずがゆいような不快感があったのだが、途中でその原因が不自然な会話にあることに気がついた。あとがきで池澤夏樹も書いてるが、登場人物たちが交わす会話はすれちがい成立していないのに、本人たちはそんな歪みもそのままに話を進めてしまうのだ。

 変な小説、と思って読んでいたけど、実は我々の普段の会話も多かれ少なかれそういうところがある。互いに自分の言いたいことだけを言っているのに、あたかも話が噛み合ってるかのように会話したりするよね。日常会話なんて論理的にはほとんど成立してないようにさえ思う。だから小説でも会話はなべてそうあるべきだ、とは言わないが、きれいにまとまった論理的な会話や打てばかえるような会話ばかりの小説のほうがかえって不自然なのだ。

 そんなことを改めて認識させられた一冊だった。

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内向と幻視の70年代

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ニューウェイヴも一段落した70年代からの収録作品11篇は総じて内向的で幻視的。流暢な語り口で雰囲気たっぷりに書いてくれるのはいいけれど、センス・オヴ・ワンダーにはやや欠ける気がする。逆に主流文学寄りに一皮むけたSFとも言え、テーマに興味さえ持てれば誰でも読めることだろう。これもSFの楽しみの一つであり、ぼくはそういうの結構好きだ。

 以下気になったものをいくつかピックアップします。

ティプトリーJr「接続された女」
 このシリーズにはサイバー美女モノの話がいくつも収録されているのだが、この表題作は少しヒネってある。ただ、今読むと語りは垢抜けないし、ストーリーも予定調和的で寓話みたいではある。

ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」
 主人公の少年が家庭内の問題から逃避するため、作中作の冒険小説「デス博士の島」をなぞった幻想にとりつかれていく話。奇妙な話法を読み解く鍵は最後のセリフにあると思ったのだが、どうだろう。SF味は薄いが、本書最高の一篇と思う。

ル・グィン「アカシア種子文書の著者をめぐる考察ほか〜」
 蟻語で書かれたアカシア種子文書を読み解く前半、行き過ぎた擬人化の馬鹿馬鹿しさが楽しい。

ジョン・ヴァーリィ「逆行の夏」
 本書でいちばんSFらしい作品。灼熱の水星を舞台にしたエキゾチックな未来社会の一断面と登場人物の葛藤のドラマを、短い紙数の中に描き切っているのが素晴らしい。

クリストファー・プリースト「限りなき夏」
 これ、「センティメンタリズムはすべてに優先する」風のやや御都合主義的な作品なのだが、20世紀初頭の若者の恋がとてもとても瑞々しいので、許す。

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