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先月(2017年4月)

ケイエムさんのレビュー一覧

投稿者:ケイエム

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本あらゆる場所に花束が……

2001/06/26 23:08

惨劇の朝をむかえて…

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 ついに出た中原昌也の長編。しかも三島由紀夫賞をとりました!(青山真治もすごい)。それにしても装幀がまた…。文体に現れているユーモアをたっぷり含んだ不気味さをここにも表しています。インパクトあります。この人の作品を読んでいる時間はとても楽しいのですが、感想を書こうとするとなにも浮かびません。まったく脈絡ないままに行くとこうなっちゃいます。

***

 人間はどんなときに凶器と化すのか。すがすがしい朝の日差しが突然凶器を刺激する。そんな一見結びつかないような出来事がこの作品のベースには流れているようだ。

 会話にだって連続性など無い。ひとは他人の話を聞き続けられるほどの余裕も能力もない。そこにすら自分の内面を投影しているだけなのだから。コミュニケーションも自分の思う方向性への確認作業だ。想像のつかない物語など求めてはいない。すべてが予測通りの展開。人生の大半を、決まり切ったルールに乗せることで築かれる安心。凶器のやどる隙間は沢山に存在する。きっかけを待っているそれらを意識することもない。他人への無関心さが鈍感な自分をもつくる。

 残忍な衝動が不意に口元からあふれる。他者の声となったそれを耳にして、またしてもスイッチがは 花束がいる。突然目の前で惨劇が繰り広げられる。映像に鍛えられた感覚からは、おおきな動揺すら生じない。蓄積された惨劇はいつしか僕らの原風景となって、懐かしさすら伴う。心の「ふるさと」となったそれら残忍さは、ハードディスクへと可能な限り保存され、引き出されるのを待ち望んでいる。

 ストレスはもはやエネルギーでしかない。屈辱も侮蔑もみな保存される。余暇活動にカタルシスを持ち込む。浄化作業。すべてを真っ白に。たいらでむらのない世界へ。世界の惨事に胸をときめかせ、思考のパラダイスを生きる。商品化された浄化グッズはキャラクター化され、言動へと還元される。

 お約束の「キャラ」を生きる時間を人それぞれに使い分けていく。カード対決は隠れキャラの数できまる。妄想されたそれぞれの物語を生きるために。邪魔する者へは、凶器の制裁。

 お笑いは凶器と表裏を為す。ナンセンスは実践への知恵となる。笑いに学んだ凶器を人々は演じる。カットアップされた断片が笑いを生み、カリスマを生む。
 中原の小説はまた一つ既成の事実となって、僕らのハードディスクへと保存されるのだろうか…。

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