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SnakeHoleさんのレビュー一覧

投稿者:SnakeHole

51 件中 1 件~ 15 件を表示

「武士道」の虚実を考える好著

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「ラスト・サムライ」を観たときあっちこっちで「やぁよく出来た映画だ」と褒めたのだが,あとであの映画に描かれている「武士道」を真に受けて「古来日本人はみんな持っていたが今は失われてしまった美しいモノ」みたいな賛美のしかたをしているヒトが多いことに驚いた。あんた,あれはファンタジーでんかな。あの映画は言ってみればトム・クルーズ版の「ダンス・ウィズ・ウルブズ」なんであって,あくまでお話でっせ。
 ……とオレが言ってもあんまり説得力がないので腹フクルル思いでいたところにこの本である。著者の佐伯さんはもともとは平家物語の研究者で,その中に散見でき,しかも非難されるどころか武士の誉れと賞賛されていることが多い「だまし討ち」と,戦場でのフェアプレイを言う「近代武士道」とのギャップを追求するうちにこの本が出来上がった由。
 オビには「サムライは嘘つきだ」とあるが,著者は別段,本当の武士は卑怯者だったと言っているわけではない。ただ「ラスト・サムライ」で美化されたような「近代武士道」が,歴史的に武士のいなくなった明治以降の所産であり,間違っても「日本古来の美風」などではなかったということを検証しているだけである。
 あとがきで「ラスト・サムライ」ブームを取り上げ「近代日本人のアイデンティティのあり方を考える上で興味深い現象ではあるが,同時に,どことなく危ういものを感じないでもない」と仰っているのに同感だ。根拠の怪しい武士道賛美本(大概国家主義のキナ臭さがくっついてくる)よりはこういう研究書が読まれるべきだと思うがなぁ。

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歴史的蛮行となってしまった「革命」への鎮魂歌

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 皆さんはポル・ポトと聞いて何を思い出すだろうか。私のイメージは,70年代後半,ベトナム戦争のあおりを食らって内戦を激化させたカンボジアで一時実権を握った革命政権の親玉で,仏教を否定,教育を否定,都市住民を農村に強制移住させるなどの圧政を敷き,およそ4年間でカンボジアの人口の4分の1を殺しまくった男……というものだ。
 しかし一歩突っ込んで,彼とそのグループはどんな出自で,どうやって政権を奪取したのか。この未曾有の大虐殺に対して国際社会はどう対応したのか,あるいはしなかったのか。そしてその負の遺産は現在カンボジアにどんな影を落としているのか,といった話になるとからきしわからない。
 本書は,讀賣新聞サイゴン支局〜バンコク支局と渡り歩きながら,この歴史的蛮行を間近に見て来た著者が,「まだ分かっていない」「謎のままだ」という表現が頻発することを気にしながらまとめた「革命」への鎮魂歌である。
 なかでも印象深い話,ポル・ポト派は,革命前の教育を受けている大人は信用できないとして子供を重用し獄吏として収容所で働かせてた。ある時囚人全員の処刑命令が下され,37人の大人が殺されたが一人だけ生き残った男がいた。元教師の彼は看守の子供達にイソップや動物などの話をしており,全く教育を受けていない子供等は目を輝かせてそれを聞いていた。処刑命令が下ったとき,皆で相談して「物語名人」だけは残しておこう,となったのだという。芸は身を助くというかなんというか,この話,凄いよねぇ。

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紙の本反社会学講座

2005/03/25 06:25

年寄りのヒトにこそ読んでいただきたい(でもきっと怒るんだろうな)という類いの本である

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 何を隠そうオレは学生時代「社会学科」というところに所属していたのだが,そのオレに言わせると「反社会学」つうタイトルはピンとこない。「反ー」つうのはどっちかと言えば今現在権力を持っていたり,世間で幅を利かせているものに異を唱えるイメージだと思うのだが,オレが学生だった白亜紀中葉のころから,社会学がそんなに隆盛を誇ったこたぁない,つうか,あの時点で既に「死んだ学問」だったような気がするんだよね……。
 そんな死者を鞭打ってどうする,と,いぶかしく思いながら読み初めてなるほど,と合点がいった。著者が「反ー」を唱えているのは世に溢れている怪しげな「社会学風アプローチ」なのね。そういうもんであれば確かに現在,雲霞のごとく溢れている。ところどころ,まるでオレが書いたのではないかと思うような意見もあり,ちと仰天。……ま,オレだったらこんなに真面目に統計を集めたりしない,つまりオレの方がより社会学から遠いわけだけど。
 どう読んでも書かれている日本語はネイティブ,しかもオレと同年輩か年上のヒトのもののような感じ(ギャグ・センスからの類推)だし,カバー折り返しに記された著者略歴はいかにも怪しげで,一部にはあの偽ユダヤ人山本七平氏の再来か,という声もあるみたいだがそんなことはどうでもいい。ふざけた文体ながら内容は至ってマトモであり,どっちかと言うと年寄りのヒトにこそ読んでいただきたい(でもきっと怒るんだろうな)という類いの本である。

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紙の本蕎麦屋の系図

2005/03/25 06:17

蕎麦屋発祥の地は江戸ではなくて大阪だったんですよ,奥さん

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 砂場,更科,薮などよく見かける蕎麦屋一門の歴史をひもとく光文社新書。著者自身があとがきに書いているように,どの店がうまいまずいかという視点ではなく,あくまで蕎麦屋というものがどう誕生しどのような盛衰を経て現在見られる姿になっているのかを,具体的な事例を追って俯瞰しようという研究書である。
 てな書き方をするとカタイ本のような気がするかも知れぬがそうでもない。江戸に始まる蕎麦屋の歴史にはどうしてどうして一代の名人あり放蕩ものあり女傑あり。夜逃げ廃業から暖簾分けした弟子が本家を助ける人情話までありという波瀾万丈。なかでも目ウロコものだったのがもっとも古い歴史を誇る「砂場」の由来。これはなんと大阪城築城の時の砂・砂利置き場の傍ら人足相手の店を開いたのが最初だそうな。つまり蕎麦屋発祥の地は江戸ではなくて大阪だったんですよ,奥さん。
 その他,更科の名は信州更級の蕎麦の集積所の読みに,初代堀井清右衛門がゆかりの大名保科家の一文字をいただいて名付けたものだとか,名店有楽町更科では戦前,一度に百人前以上を一台の自転車で出前してたという達人話まで(いや眉唾どころか写真が載ってます),実に面白い読み物でありました。

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横浜ベイスターズの関係者はみんなこれを読め,他のチームのヤツはお願いだから読まないでくれ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 まずはオビのアオリをそのまま書き写す。「貧乏球団アスレチックスは,なぜ勝ち続けるのか? 小説ではぜったい書けない男たちの熱いドラマ。」
 アスレチックスというのはサンフランシスコの対岸,オークランドに本拠地を置くメジャーリーグのチームだ。日本人選手もおらず,「A's」という略称を見てニッポンの阿呆な国会議員が「アメリカはすごいな,エイズにかかったヒトのプロ野球チームがあるのか」と言った(知らないヒトは信じないかもしれないが実話です。次から真面目に選挙に行く気になりましたか?)時以来日本の新聞などでメインの話題になったことはない(と思う)。
 が,このアスレチックス,ここ数年の成績は抜群。本書に寄れば「ニューヨーク・ヤンキーズの1/3以下の年俸総額の選手達を使って,ニューヨーク・ヤンキーズ並みの成績を上げ続けている」。まさに奇蹟のチームなのである。これは,その「奇蹟」を可能にした元二流メジャーリーガーのジェネラル・マネージャー,ビリー・ビーンの哲学と思想(というほど形而上的なモンでもないが)を追ったドキュメンタリー。「野球」を徹底的に科学し,文字通りの意味での「勝利の方程式」を作り上げた男の物語である。
 オレの読後感を正直に吐露すると「横浜ベイスターズの関係者はみんなこれを読め,他のチームのヤツはお願いだから読まないでくれ」ということになる。あ,あと一言だけ,1998年我らがベイスターズの優勝監督・権堂さんが「送りバントというのはわざわざ敵にアウトを献上するという世にも馬鹿馬鹿しい作戦だ」と言っていたのはデータ的にも圧倒的に正しかったのだ。まだ遅くない,ダイちゃん,権堂さんの采配を思い出そう!

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ブラック・リスト

2005/03/25 08:24

これぞリベラル,パレツキー版の「華氏911」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いやぁ面白かった。白状するが久々に「読み終えるまで眠れない」状態になって徹夜してしまいましたがな。恋人モレルをアフガニスタンに送り出して情緒不安定気味のヴィクのもと,お得意さんである実業家ダロウ・グレアムからイレギュラーな依頼が舞い込む。91歳になる彼の母親が,窓から見える空き家の大邸宅に明かりが見えたと騒ぐので調べてくれというのだ。早速調査を開始したその夜,ヴィクはそこでティーン・エイジャーの女の子と遭遇。その上彼女に逃げられて落ちた池で,掴んだものはオトコの死体……。
 9・11の同時多発テロに端を発したアメリカ社会の右傾化を背景に,人種の問題,宗教の問題,階級の問題そして思想,信条,自由の問題を見事なハードボイルド・エンターテインメントに昇華してみせた大傑作,これぞリベラル,パレツキー版の「華氏911」である。こんだけの作品,なかなかお目にかかれないですぞ。……あ,一個だけ疑問があった,ハヤカワは江口寿史にカバー絵を頼むのやめちゃったの?

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紙の本魔術師

2005/03/25 08:14

期待を裏切らないリンカーン・ライムシリーズの新作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 リンカーン・ライムシリーズの新作。ニューヨークの音楽学校で横溝正史張りの猟奇殺人が発生する。被害者は首と足首をロープで結ばれ,身体を延ばすと首が絞まるというマジック「手持ち無沙汰の絞首刑執行人」の演者に見立てられており,警察が踏み込んだ時そこにいた犯人は,早変わりの手法でまんまと逃走。市警殺人課の依頼を受けて事件を追うリンカーンをあざ笑うかのように,第二の殺人が……。
 マジックにおける「誤導」の手法を駆使した前代未聞の犯罪をしかける犯人マレリックは怪盗ルパン,怪人二十面相さながら。裏のウラのうらの裏を読みあう頭脳戦は見事のヒトコト。これ,ひさびさの「読まなかったら損」レベルの傑作であります。そそ,ちらっと「悪魔の涙」のパーカー・キンケイドが出て来るサービスも嬉しいっす。

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売春関係者,売春無関係者,売春予備軍から潜在的顧客の皆さんまで是非ご一読を

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 人類最古の職業と言われる売春,しかしながら,この行為をまともに研究したヒトは古来稀である。本書は副題にある通り,ニューヨーク州立大学自然・社会科学部の学部長を務めた歴史学者バーン・ブーローと,同じく看護学部の元学部長で,州看護従事者連盟の会長でもあるボニー・ブーローが,古代オリエントから現代に至る売春とそれにまつわる種々の問題についてまとめた,実になんというか感動の大冊。
 まず認識しなければならないのは,売春の歴史はそのまま女性の地位の歴史であり,婚姻制度や男女関係の歴史でもあるということである。霊長類のメス(あるいは若いオス)は餌を貰ったお礼や,相手の攻撃をかわすために性的なサービスを行なう。これを売春と呼べばその歴史は人類以前に遡ることになるわけだが,そう呼ばないのであれば,つまり売春とは人間の問題なのである。
 著者らはこの問題の根本に,男性優位の社会が内包する二重規範(ダブル・スタンダード)の存在を指摘する。同じ性行動に関して男性のそれはとがめ立てせず(しばしば賞賛し),女性のそれを白眼視する。オトコは女性を自分の所有物と見なしその貞操を守ろうとする一方で他の女性との性交渉も希求する。ほとんどの女性が誰かの所有物としてそうした行為を禁じられているとすれば,それに応じる女性に市場価値が生まれるのは当然なのである……。
 古くから宗教が,王権が,そして社会運動家が挑み,ことごとく敗れ去ったこの問題に関して,これほど正面から真面目に取り組んだ研究は貴重である。ちとお高いが,売春関係者,売春無関係者,売春予備軍から潜在的顧客の皆さんまで,広く読まれるべき好著であると推薦しておく。

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なぜ動物は時として損と思える協力行動を取るのか

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 くだけた邦題(まぁ原題も「Cheating Monkeys and Citizen Bees」でカタイわけぢゃないが)ながらなかなかタメになる進化生物学の解説書である。動物の協力行動というのは,例えば邦題になっている吸血コウモリの,飢えた仲間に自分の吸って来た血を吐き出して与える行動のこと。
 もちろん動物たちが「良心」にしたがってそんなことをしているわけはないので,つまり現実にそうした行動が観察できるということは,そうした行動をとることが今までの自然淘汰の過程でその動物に有利に働いた結果であるといえる。では彼らはどんなメカニズムにしたがってそうした,個体にとっては「損」にみえるような行動を取るのだろうか……てな話を豊富な実例を挙げながら展開するわけだ。
 なかでも興味深かったのは群内淘汰と群間淘汰の関係。小川に住むグッピーは一定規模の群れを作って行動する。捕食者らしい生物の気配を感じると,物陰に逃れる他の仲間から離れて敵の方に向かい敵を「偵察」し,得た情報を仲間に「報告」する数匹の個体がいるという。もちろんこの行為は偵察する本人(本魚?)にとって大変危険なものであり,群れの他のメンバーに比べて彼の生き延びられる確率は少ない(群内淘汰)。ではそんな行動を取る個体が一匹もいない群れの方が生き延びる確率が高いか? ちょっと考えればわかるがそんなことはない。そういう群れはあっという間に捕食者に喰い尽くされてしまうのである(群間淘汰)。ね,面白いでしょ?
 例えばここに「ビジネス」というものがある。金儲け至上主義のヒトに言わせればこの世は弱肉強食である,と。つまりこれは協力行動を拒否,あるいはズルして群内淘汰における有利を得ればいいという考え方である。しかし国内にそういう考え方が蔓延し貧富の差が激しくなると国力が衰える。なので,群内協力がちゃんと出来ている(ように見えるだけだったが)共産主義陣営健在なりし頃はアメリカン・キャピタリズムもそう無茶はしなかった。が,冷戦終結グローバル化で今や地球全体が「群内」になったので,ヒトを協力行動に追い立てる圧力が雲散しようとしてるわけだ。……別に敵対する他の群がなくても淘汰される可能性はあるんだが,分かんないヒトが多いんだよな。

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繙く価値は十二分にある「進化心理学」の一般向け解説

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 著者ピンカーはMITの教授でジョン・ホーガンの「続・科学の終焉」にも出て来る「進化心理学」の論客の一人である。同書の1997年に出版されたこの本の原著「How The Mind Works」に言及した部分でホーガンは,このヒトを「あと先を考えずに自分が思いついたことを喋りまくる」と評している。アメリカの学者には(いや,学者に限らないが)その言説の正当性とマスコミ受けの度合いに相関があると思ってんのかこいつ,というようなヒトが少なくないが,ピンカーにもそういうところがあるんだろう。
 しかし逆に言えば,彼が巻き毛でロックスター風のルックスを維持していることと,彼の唱える学説の正当性の間には負の相関もないのであり,ホーガンの見方にもちょっと孔子的帰納法(「巧言令色鮮矣仁」つうのは帰納的推論であり例外はいつもあり得る)のバイアスがかかっているような気がしないでもない。朴訥である方が人を騙すのに有利ならペテン師は簡単に朴訥になる,実例を挙げてみせるまでもないでしょ? ……まぁいいや,本の中身に入らねば。
 この大冊の主題は「我々の『心』をリバース・エンジニアリングする」ことだ。ピンカーら進化心理学の考え方では,我々人間の「心」(およびそれを宿す脳)も,ゾウの鼻やキリンの首,ペリカンの下顎やアイアイの中指と同様な,進化の過程における「適応」の産物であるとする。ピンカーはまず脳が網膜に写った二次元映像を如何に三次元に再構成して認知するかを語り,この臓器(意外かも知れないが脳も「臓器」である)が問題を意味論的に分散処理していることを明らかにする。
 脳の情報処理が分散型であるとすれば,そうした方がより適応的な環境が存在したはずであり,その視点から脳のあれこれを分析して行けば,衝動や夢や強迫観念といった心の働きについても必ず納得の行く説明がつくはずだ,として認知,情動,家族の価値へとその推論を拡げて行く。
 確かにホーガンが指摘する通り,人間心理の最も不可解な部分,哲学や宗教,芸術を好む心理に対する解釈については牽強付会的なところも見える(一応ピンカーだってそこは「仮説だ」と書いてるんだけど)。が,男の子は全て母親と寝たがっている,と言ったフロイドの説よりも首肯できるエディプス・コンプレックスの説明がここにはあるし,バルカン人スポックを引き合いに出して分析する「情動の目的」に関する議論はこれだけで一読の価値があろう。

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読み通せば目からウロコの2枚や3枚落ちてしまうこと必定

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 また霊感商法なんかのトンデモ話をバカにする類いの本かって? そーぢゃない。そーゆーのは「トンデモ話」かも知れないが「トンデモ科学」とは言えません。この本で取り上げられている諸説は,そーゆー「ヒトを騙してツボを売りつけよう」みたいな市井の詐欺師ではなくて,一応ちゃんとした学者が大真面目に論文とかを書いているシロモノなのよ。
 俎上に載せられた諸説は以下の9つ。「銃を普及させれば犯罪率は低下する」「エイズの原因はHIVぢゃない」「紫外線はからだにいいことの方が多い」「放射線も微量なら浴びた方がいい」「太陽系には遠くにもう1つ太陽がある」「石油や天然ガスは生物起源ではない」「未来へも過去へも時間旅行は可能」「光より速い粒子『タキオン』は存在する」「『宇宙の始まりはビッグバン』つうのは嘘」……。
 物理学者でもある著者はこれら一つ一つについてまずは丁寧に解説し,問題点を挙げ,検証方法を検討し,最後に「私見」としての「トンデモ度」を判定する。SFや科学に全く縁のないヒトには辛い部分もあるかも知れないが,キチンと読み通せば目からウロコの2枚や3枚チャリンチャチンと落ちること必定の良書である。
 ちなみに上の9つのウチ,著者がトンデモ度ゼロ(本当であってもおかしくはない)と判定したものが3つある。……どれがそうかは読んでのお楽しみ。

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紙の本職人学

2004/04/30 09:38

エンジニア必読。政治家とかも読め。

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 やぁなんともいい本である。捨ててもいい金があったら1,000册ばかり買いこみ友人知己親族縁者海砂利水魚に送って読めと言って送ってやりたいような本。著者の小関さんは小説家として芥川賞候補になったりしながら50年間旋盤工として働いて来た「職人」である。その小関さんが,自らの体験やその間に出会った他の職人たちの話を通して,技術ではなく技能を磨くことの必要性と素晴らしさを説く。実になんというか読んでいて気持ちのいい本であります。
 例えば「鉄を平に磨く」という仕事がある。最先端はどのくらいの平らさか。なんと1/10,000ミリの世界である。こんなものは機械では作れない。測定機器のトップメーカー「ミツトヨ」でこのレベルの原器(マスター)を作っている木村さん,常に気温20度に保たれたクリーンルームで,狂いが限りなくゼロに近い定盤(これも実は木村さんの作だそうな)の上に1辺40cmほどのマスターを乗せ,研磨剤を塗って滑らせる。軽い金属音がして一往復,これでその日の仕事は終わりである。たったこれだけの摩擦でも金属のマスターは膨張してしまうので,冷めるまで2時間ほど待って測定する。と,2/10,000〜3/10,000あった凸凹が1/10,000になっている。……すごいでしょ,こういう話が満載なのよ。エンジニア必読。政治家とかも読め。

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紙の本外伝・麻雀放浪記

2004/04/06 10:01

身につまされつつ笑ってしまう「ひとり博打」収録

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 麻雀小説で虚名を売るようになったかつての雀ゴロ「坊や哲」が消えたかつての仲間を探して過去を探訪する「11人目の雀鬼」シリーズ4編を含む小説集。麻雀・博打小説はいつもの味わい変わらぬ面白さだが,おまけみたいな形で色川武大名義で書かれた「ひとり博打」が収録されていてこれが滅法面白い。
 ロバート・クーバーというヒトが書いた「ユニヴァーサル野球協会」というとんでもない小説がある。野球ゲーム(だから野球ぢゃなくてサイコロやカードを使って行う野球ゲームなんだよ)に取り憑かれたヒトリの男が主人公で,彼はただゲームをやるだけでは飽き足らず,そのゲームを行うリーグを作り全米にチームを配しそれぞれに所属選手を割り当て,彼らの性格,力量,年収から性的嗜好までを決め,年間に1チームにつき百試合以上をこなし(ゲームだから彼自身がサイコロを振ってカードをめくってスコアブックをつけるのだ)……という話なんだが,「ひとり博打」の主人公の「私」(色川さん本人としか読めないが)はそれの相撲版を小学生の時に始めてしまうのである。
 最初は幕内力士だけでやっているのだが,そうすると下の方の力士は負けても地位が変わらないのでやる気がでない(ってやる気もヘチマも力士役は彼の両手なんだが)。これを解消するためにってんで十両を作り幕下,三段目,序二段……とエスカレートしていくところは「ユニヴァーサル野球協会」にそっくり。力士ごとにカードを作りその整理と取り組みで学校に行く時間がなくなってしまう。……ここまでひどくはないものの,こういう傾向が実はオレにもあるので,身につまされつつ笑ってしまうんだよね。

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「呪い」はこうして機能する?!

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 映画「死国」にも出て来たが,四国には伝統的に市井のシャーマン「拝み屋」が多数在住し,占い,まじない,加持祈祷などを行っている。彼らの役割,社会的位置などを文化人類学の観点から構造主義的に分析した研究は多い。が,それらの研究の多くは,基本的に彼らの行為の真偽や効果についての言及は避けてきた。本書はそれらの研究とは逆に,呪術や託宣,霊視や念力などの効果を現実のものとして認め,それが機能する心理的世界の模式を提起しようと試みたものである。
 愛媛大学で社会心理学を教えている著者は,同時にちゃんと資格を取った神主(神職というのが正確らしいが)でもあり,主に「呪術的実践と神道的世界観の心理学的研究」というのを行っている……そうな。
 多少牽強付会的な印象もあるが,ユング呼ぶところの「ヌミノーシティ(霊性体験)」を,多くの場合その励起要因となる宗教性から切り離し,逆に全ての宗教がこの「霊性」の顕現に他ならないとする論理展開は興味深く,世界観としても面白い。また,この現象(というかチカラというか)を悪用しての呪詛やオウムのような人心収攬の危険性についてもキチンと言及しており,所謂「トンデモ本」ではない……いやトンデモ本を楽しもうと思って読んでも十分楽しいけどね(笑)。

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内容もだが巻末の担当編集者座談会がまた佳し。

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 嵐山光三郎編集の好評「熟年篇」に続いて編集された傑作選(編者は重松清)……といってもタイトルを見ればわかる通り,初出はこっちのが先である。正確な日付は不明だが,最も初期のものは山口さん30代,すなわち今のオレよりも若い時に書かれたものと思われる。うーん,やっぱり昔のオトナはオトナだったんだなぁ(ヘンな物言いだが他に表現のしようがない,わかるでしょ?)。
 巻末に収録されている編者司会「歴代山口瞳担当編集者座談会」が実によい。それによれば当時「週刊新潮」には斉藤十一という天才編集者がいて,面白くないと大家の連載でも一回で打ち切ろうとする。山口センセイによれば彼に打ち切られまいと毎回頑張ったと。その斉藤氏は晩年「『週刊新潮』は『男性自身』でモっているんだ」と言ってたと。いや,この辺の機微に「昭和」を感じでしまうのは私だけかしら。

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